製菓理論 第1章:甘味料

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第1部 素材編

甘味料

はじめに

甘味料は、菓子製造における最も基本的かつ重要な原材料である。甘味を付与するだけでなく、保水性、防腐性、結晶制御、焼き色の形成、食感の調整など、菓子の品質を左右する多面的な機能を持つ。本章では、菓子製造に用いられる主要な甘味料について、その分類、性質、および製菓における役割を体系的に解説する。

1. 糖質の基礎知識

1-1. 糖質とは

糖質とは、炭素・水素・酸素から構成される有機化合物の総称であり、生体のエネルギー源として重要な役割を果たす。菓子製造において使用される糖質は、以下のように分類される。

単糖類:これ以上加水分解されない最小単位の糖である。代表的なものにブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)がある。ブドウ糖は自然界に最も広く存在する糖であり、血糖として血液中にも存在する。果糖は天然の糖の中で最も甘味が強い。

二糖類:単糖が2分子結合した糖である。ショ糖(スクロース)はブドウ糖と果糖が1分子ずつ結合したもので、砂糖の主成分である。ショ糖は還元基同士で結合しているため還元性を持たない「非還元糖」であり、比較的安定性が高い。麦芽糖(マルトース)はブドウ糖が2分子結合したもので、水飴の主成分である。乳糖(ラクトース)はブドウ糖とガラクトースが結合したもので、牛乳に含まれる。トレハロースはブドウ糖が2分子、還元基同士で結合した非還元糖である。

多糖類:多数の単糖が結合した高分子化合物である。でんぷん、セルロース、デキストリンなどがこれに該当する。甘味はほとんどないが、水飴の原料として重要である。

1-2. 甘味度

甘味度とは、甘味の強さを数値で表したものである。ショ糖の甘味度を1.00とした場合の相対値で示す。主な糖質の甘味度は以下のとおりである。

  • 果糖(フルクトース):1.20〜1.50(低温でβ型が増えるとさらに甘くなる)
  • ショ糖(スクロース):1.00(基準値)
  • マルチトール:0.80〜0.90
  • ブドウ糖(グルコース):0.60〜0.70
  • ソルビトール:0.60〜0.70
  • キシリトール:0.60
  • トレハロース:0.45
  • 水飴:0.35〜0.40
  • 乳糖(ラクトース):0.15〜0.40

甘味度は温度によって変動する。特に果糖は低温でβ型の分子が増加し、甘味が著しく強くなるため、冷菓に使用すると効果的である。

2. 砂糖(ショ糖)

2-1. 砂糖の原料

砂糖の主成分はショ糖(スクロース)であり、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が1分子ずつ結合した二糖類である。ショ糖は還元基同士で結合しているため還元性を持たない非還元糖であり、比較的安定性が高い特徴がある。

砂糖は主に以下の植物から製造される。

サトウキビ(甘蔗):高温多湿な地域で栽培されるイネ科の植物である。茎を圧搾して得た汁液から砂糖を製造する。世界の砂糖生産量の約70〜80%を占める。

サトウダイコン(甜菜・テンサイ・ビート):冷涼な地域で栽培されるヒユ科の植物である。根部に蓄えられたショ糖を抽出して砂糖を製造する。日本では北海道が主産地である。世界の砂糖生産量の約20〜30%を占める。

このほか、少量生産のものとしてサトウカエデ(メープルシロップ・メープルシュガーの原料)やサトウヤシから作られる砂糖もある。

サトウキビから得られる砂糖とテンサイから得られる砂糖は、精製された状態ではいずれも純度の高いショ糖であり、化学的には同一の物質である。

2-2. 砂糖の分類

砂糖は製法により、大きく分蜜糖含蜜糖の2種類に分類される。

分蜜糖:結晶と糖蜜を分離して製造した砂糖である。精製度が高く、ショ糖純度が高い。さらに「ざらめ糖」「車糖」「加工糖」に細分される。

含蜜糖:糖蜜を分離せず、そのまま結晶化または乾燥させた砂糖である。ミネラル分や風味成分を含み、独特のコクがある。黒砂糖、和三盆、きび砂糖などが該当する。

2-3. 砂糖の種類と特徴

【分蜜糖・ざらめ糖】

グラニュー糖:ショ糖純度99.95%、転化糖0.01%以下、水分0.02%以下。白色で結晶の大きさは0.2〜0.7mm。サラサラとした質感で、くせのない淡白な甘味が特徴。ショ糖純度が最も高い砂糖であり、素材の風味を生かす菓子づくりに適している。洋菓子全般、メレンゲ、シロップ、カラメルなどに幅広く使用される。世界的に最も一般的に使用される砂糖である。

白ざら糖:ショ糖純度99.95%、転化糖0.01%以下、水分0.01%以下。白色でグラニュー糖より結晶が大きく、無色透明で光沢がある。純度が高く上品な甘味を持つ。高級菓子、ゼリー、キャンディー、果実酒、綿菓子などに用いられる。

中ざら糖:ショ糖純度99.7%、転化糖0.08%、水分0.03%。黄褐色を呈する。純度は99.7%と非常に高い(見た目の色から純度が低いと誤解されやすいので注意)。独特の風味があり、煮物や和菓子に用いられる。

【分蜜糖・車糖】

上白糖:ショ糖純度97.8%、転化糖1.3%、水分0.8%。白色で結晶の大きさは0.1〜0.2mmと細かい。日本独自の砂糖であり、日本の砂糖生産量において最も多く生産されている。製造工程でショ糖の結晶にビスコ(転化糖液)を少量ふりかけてあるため、しっとりとした質感と、グラニュー糖に比べてコクのある甘味を持つ。和菓子や日本の家庭菓子に広く用いられる。海外ではほとんど使用されない。

中白糖:ショ糖純度95.7%、転化糖1.9%、水分1.6%。薄茶色を呈する。上白糖と三温糖の中間的な性質を持つ。

三温糖:ショ糖純度95.0%、転化糖2.1%、水分1.65%。黄褐色を呈する。上白糖やグラニュー糖の結晶を取り出した後の糖液を、さらに数回加熱して煮詰めて製造する。加熱によりショ糖の一部がカラメル化するため黄褐色になる。独特の風味とコクのある甘味が特徴。分蜜糖であるため、含蜜糖である黒砂糖とは製法が根本的に異なる。ミネラル分は上白糖とほぼ同等であり、「三温糖の方がミネラルが多くて健康に良い」というのは誤解である。

【加工糖】

粉砂糖(粉糖):ショ糖純度99.8%、転化糖0.02%、水分0.02%。グラニュー糖を粉砕して微粉末にしたもの。固結防止のためにコーンスターチを3%程度混合したものが一般的である(「純粉糖」はコーンスターチを含まない)。アイシング、デコレーション、マカロン、バタークリームなどに用いられる。

氷砂糖:ショ糖純度99.8%、転化糖0.06%、水分0.06%。大きな結晶状の砂糖。ゆっくりと溶ける性質を活かし、果実酒やシロップ漬けに用いられる。徐々に糖分を溶かして液体中の糖分を上げていくことで、果実の組織にバランスよく糖分を染み込ませることができる。

【含蜜糖】

黒砂糖(黒糖):ショ糖純度75〜86%、転化糖2〜7%、水分5〜8%。黒褐色。含蜜糖の代表。サトウキビの搾汁をそのまま煮詰めて固めたもので、精製していないためカルシウム、カリウム、鉄などのミネラル分を豊富に含む。独特の強い風味とコクがあり、和菓子(かりんとう、黒棒など)に用いられる。転化糖の含有量が多いため、吸湿性が高い。

和三盆:日本の伝統的な含蜜糖であり、主に香川県・徳島県で生産される。在来品種の「竹糖」と呼ばれるサトウキビを原料とし、「研ぎ」と呼ばれる独特の手作業による精製工程を経て製造される。粒子が極めて細かく(約5μm)、口溶けがよい。上品でまろやかな甘味と、かすかな風味が特徴。高級和菓子(干菓子、落雁など)に用いられる。

3. ショ糖の調理特性

砂糖は単に甘味を付与するだけの調味料ではない。菓子製造において、以下のような多面的かつ重要な機能を果たしている。

3-1. 甘味の付与

砂糖の最も基本的な機能である。ショ糖は他の糖類と比較して、最も「好ましい甘味」を有するとされる。後味が少なく、他の材料の風味を引き立てる特性がある。

3-2. 溶解性

ショ糖は水に非常に溶けやすい物質である。20℃の水100gに約204g(約2倍量)のショ糖が溶ける。温度が上がるほど溶解度が高まり、100℃では水100gに約487gが溶ける。この高い溶解性が、シロップや飴などの製造を可能にしている。

3-3. 親水性と保水性

砂糖は水と強く結びつく親水性を持つ。菓子生地や製品中の水分を保持し、しっとりとした食感を維持する効果がある。カステラやバターケーキがしっとり仕上がるのは、砂糖の保水性による。

3-4. 防腐効果と水分活性

砂糖は食品中の自由水を結合水に変える性質を持ち、水分活性(Aw)を低下させることで微生物の繁殖を抑制する。水分活性が低いほど、細菌→酵母→カビの順に増殖が抑制される。ジャム(糖度60〜65%以上)や練り羊羹が長期保存できるのはこの原理による。

3-5. 浸透圧と脱水作用

高濃度の砂糖液は浸透圧により細胞から水を引き出す脱水作用がある。この性質は砂糖漬け、甘納豆、コンフィ(果物の砂糖煮)などの製造に利用されている。

3-6. でんぷんの老化防止

でんぷんは時間の経過とともに老化(β化)し、硬くなる。砂糖はでんぷん分子の間に入り込んで水分を保持し、α化状態を維持してでんぷんの再結晶化(老化)を抑制する。餅菓子に砂糖を多く配合すると硬くなりにくいのは、この作用による。

3-7. タンパク質の熱凝固抑制

砂糖はタンパク質の熱凝固温度を上昇させる作用がある。卵液に砂糖を加えると、プリンが「す」が立ちにくくなめらかに仕上がるのは、卵のタンパク質の凝固温度が上昇するためである。

3-8. 卵白の起泡性の安定化

卵白を泡立てる際に砂糖を加えると、卵白のタンパク質の変性を抑制する。そのため泡立ちにくくなるが、できたメレンゲはきめ細かく安定性が高まる。砂糖は気泡膜中の水分を保持し、泡の排液(液だれ)を抑制する。ただし、砂糖を加えるタイミングが早すぎると泡立ちにくくなるため、ある程度泡立ててから数回に分けて加えるのが基本である。

3-9. 油脂の酸化防止

砂糖は油脂と共存することで、油脂の酸化を抑制する効果がある。バターケーキやクッキーにおいて、砂糖が油脂の酸化を遅らせ、風味の劣化を防ぐ。

3-10. メイラード反応(アミノカルボニル反応)

アミノ化合物(アミノ酸等)と還元糖が共存する状態で加熱すると、褐色物質(メラノイジン)が生成され、香ばしい香りと焼き色を生じる。これをメイラード反応(アミノカルボニル反応)と呼ぶ。パンやスポンジ生地の焼き色は、この反応による。ショ糖自体は非還元糖であるためメイラード反応を起こしにくいが、加熱や酸の存在によりブドウ糖と果糖に転化(加水分解)されると、還元糖となり反応に関与する。

3-11. カラメル化

砂糖を160〜180℃以上に加熱すると、糖分子の分解・重合が進行し、褐色のカラメルが生成される。カラメル化はメイラード反応とは異なり、アミノ酸を必要としない。砂糖単独の加熱による化学変化である。独特の苦味と香ばしい風味を生じ、プリンのカラメルソースや焼き菓子の風味に寄与する。

3-12. 転化反応

ショ糖に酸を加えて加熱したり、酵素(インベルターゼ)を作用させると、ブドウ糖と果糖に加水分解される。この反応を「転化反応」、できた混合物を「転化糖」と呼ぶ。転化糖はショ糖よりも甘味が強く、吸湿性が高い。また、還元糖であるためメイラード反応を起こしやすく、焼き色がつきやすくなる。

3-13. 結晶性

砂糖は過飽和溶液から結晶を析出する性質を持つ。この性質を利用したものがフォンダン(糖衣)やすり蜜である。一方、飴細工のように結晶化を防ぎたい場合には、水飴や転化糖、酸(クエン酸など)を添加して結晶の生成を阻害する。結晶を制御する技術は製菓において極めて重要である。

3-14. 発酵への影響

少量の砂糖(2〜3%程度)は酵母(イースト)の発酵を促進する。しかし、10%以上になると浸透圧の上昇により酵母の活動が抑制され、発酵が遅くなる。菓子パンのように糖分の多い生地では、耐糖性酵母を使用するなどの工夫が必要である。

4. 砂糖の加熱変化(煮詰め温度と状態変化)

砂糖水溶液を加熱すると、温度の上昇に伴い水分が蒸発し、濃度が上がることで物理的・化学的性質が段階的に変化する。各温度帯における状態、ショ糖濃度、および対応する菓子の例を以下に示す。なお、冷却時に撹拌を行うかどうかで「再結晶する菓子」と「再結晶しない菓子」に分岐する。

100℃(ショ糖濃度 約83%):シロップ状。無色透明で濃厚な砂糖液。シロップ、コンポートに用いられる。

105℃:非常に濃いシロップ。ゼリーのシロップなどに用いられる。

110℃(ショ糖濃度 約84%):糸状に粘る。再結晶なし=マシュマロ。再結晶あり=ボンボン。

113〜115℃(ショ糖濃度 約87%):冷水に落とすと軟らかい球状(ソフトボール)。再結晶あり=フォンダン、すり蜜。冷ましながら撹拌すると微細な結晶が析出し、白く不透明な糖衣となる。

115〜118℃(ショ糖濃度 約89%):普通の球状。再結晶なし=イタリアンメレンゲ(117〜118℃のシロップを泡立てた卵白に加える)。再結晶あり=ファッジ。

120〜130℃(ショ糖濃度 約90%):やや硬い球状(ハードボール)。キャラメル菓子に用いられる。

130〜132℃(ショ糖濃度 約95%):硬い球状。トフィに用いられる。

135〜138℃:ややもろく割れる。ヌガーに用いられる。

138〜154℃:もろく割れやすい(ハードクラック)。水分が1%以下。飴細工に用いられる。

160〜180℃(ショ糖濃度 約98%):糖が分解して褐色に色づく。カラメル。プリンのカラメルソースなどに用いられる。

180℃以上:徐々に黒褐色になり、甘味は消失して苦味が強くなる。煙が出始める。濃いカラメル。着色用。これ以上の加熱は炭化(焦げ)となる。

注意事項:上記の温度はグラニュー糖を水に溶かして加熱した場合の目安であり、糖の種類、加熱速度、湿度などの条件によって多少変動する。温度計を用いた正確な管理が不可欠である。

5. 砂糖以外の甘味料

5-1. 糖類

果糖(フルクトース)

単糖類の一種。甘味度1.20〜1.50で、天然の糖の中で最も甘味が強い。果糖にはα型とβ型の分子構造があり、低温ではβ型の割合が増加してさらに甘味が強くなる。この性質から、冷たい飲料や冷菓に適している。果実やはちみつに多く含まれる。

ブドウ糖(グルコース)

単糖類の一種。甘味度0.60〜0.70で、ショ糖の約65〜75%の甘味。血糖として血液中に存在し、生体のエネルギー源として重要である。還元糖であるため、メイラード反応に関与しやすい。

麦芽糖(マルトース)

ブドウ糖2分子が結合した二糖類。甘味度0.35〜0.40。水飴の主成分である。まろやかで穏やかな甘味を持つ。

乳糖(ラクトース)

ブドウ糖とガラクトースが結合した二糖類。甘味度0.15〜0.40で、ショ糖の約1/5〜2/5程度の甘味。牛乳中に約4.5%含まれる。メイラード反応に関与するため、乳製品を含む菓子の焼き色に影響する。

水飴

でんぷん(トウモロコシ、馬鈴薯、甘藷など)を酸または酵素で加水分解して製造される粘稠な液状の甘味料。主成分は麦芽糖(マルトース)、ブドウ糖(グルコース)、デキストリンなどの混合物。甘味度はショ糖の約0.35〜0.40と低く、まろやかで上品な甘味を持つ。高い粘性と保水性を有し、菓子にしっとりとした食感を与える。砂糖の再結晶を抑制する「シャリ止め」としての機能がある。飴細工、求肥、羊羹、ヌガーなどに広く用いられる。

水飴には酸糖化飴と酵素糖化飴があり、糖組成が異なる。酸糖化飴はブドウ糖の割合が高く甘味が強い。酵素糖化飴は麦芽糖の割合が高く、まろやかな甘味である。

転化糖

ショ糖を酸または酵素(インベルターゼ)で加水分解して得られる、ブドウ糖と果糖の等量混合物。商品名として「トリモリン」が広く知られている。ショ糖より甘味度が高い(約1.30)。吸湿性が高く、保水性に優れる。焼き菓子に使用すると、しっとりとした食感が長く持続する。ショ糖より焼き色がつきやすい(還元糖であるためメイラード反応に関与しやすい)。砂糖の再結晶を抑制する「シャリ止め」としての機能がある。ガナッシュ、ガトー・ショコラ、ギモーヴ、ジャムなどに用いられる。

異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)

でんぷんを酵素で分解してブドウ糖を生成し、さらにその一部を果糖に変換(異性化)した液状の甘味料。果糖含有率55%のものは甘味度がショ糖と同等(1.00)。低温では甘味が強くなる特性がある。清涼飲料水や菓子の工業的製造に広く使用されている。

トレハロース

ブドウ糖が2分子、還元基同士で結合した天然の二糖類(非還元糖)。キノコ、酵母、海藻などに広く存在する。現在はでんぷんから酵素を用いて工業的に大量生産されている。甘味度はショ糖の約0.45と低く、上品でやわらかな甘味を持つ。甘さを抑えたい製品において、砂糖の一部(2〜3割)を置き換えて使用できる。でんぷんの老化防止に極めて優れた効果がある。タンパク質の変性抑制、脂質の酸化抑制にも効果がある。非還元糖であるため、メイラード反応を起こしにくく、焼き色が抑えられる。和菓子(餅菓子の硬化防止)、洋菓子(スポンジのしっとり感維持)、冷凍菓子などに用いられる。虫歯になりにくい糖である。

5-2. はちみつ

ミツバチが花の蜜を採集し、巣の中で転化酵素(インベルターゼ)により加工・濃縮した天然の甘味料。水分は約20%で、固形分の大部分はブドウ糖と果糖である。甘味度はショ糖の約1.30。蜜源となる花の種類(アカシア、レンゲ、クローバー、ソバなど)により、色・香り・風味が異なる。保水性が高く、焼き菓子をしっとりさせる。還元糖を多く含むため、メイラード反応により焼き色がつきやすい。マドレーヌ、パン・デピス、ヌガー、ソフトクッキー、カステラなどに用いられる。1歳未満の乳児に与えてはならない(ボツリヌス菌の芽胞混入リスク)。

5-3. メープルシロップ

サトウカエデ(シュガーメープル)の樹液を煮詰めて濃縮した天然の甘味料。主な産地はカナダのケベック州で、世界生産量の約70%を占める。主成分はショ糖。グレードは色と風味の濃さにより、ゴールデン(最も淡い色・繊細な風味)、アンバー(琥珀色・豊かな風味)、ダーク(濃い色・力強い風味)、ベリーダーク(最も濃い色・非常に強い風味)の4段階に分類される。採取時期が遅いほど色と風味が濃くなる。

5-4. 糖アルコール

糖アルコールとは、糖の還元によって得られるアルコール基を持つ甘味料の総称である。共通する特性として、メイラード反応を起こさない、カラメル化を起こしにくい、カロリーがショ糖より低い、虫歯菌に利用されない、という点がある。

ソルビトール:ブドウ糖を還元して得られる。甘味度0.60〜0.70。吸湿性が高く、保水性に優れる。菓子の日持ち向上にも使用される。

マルチトール:麦芽糖を還元して得られる。甘味度0.80〜0.90。ショ糖に近い甘味質を持つ。虫歯菌に利用されない。

キシリトール:白樺などの原料から製造される。甘味度0.60。虫歯予防効果が広く知られている。溶解時に吸熱反応を起こすため、口の中でひんやりとした清涼感がある。

5-5. 非糖質系甘味料

天然甘味料

ステビア:南米原産のキク科植物「ステビア」の葉から抽出。甘味度はショ糖の100〜150倍。

グリチルリチン:甘草(カンゾウ)の根から抽出。甘味度はショ糖の50〜100倍。醤油や味噌の甘味付けにも使用される。

ソーマチン:西アフリカ原産の植物の果実から得られるタンパク質系甘味料。甘味度はショ糖の2,000〜3,000倍と極めて高い。

合成(人工)甘味料

サッカリン:最初に発見された人工甘味料。甘味度はショ糖の200〜700倍。

アスパルテーム:アミノ酸系の人工甘味料。甘味度はショ糖の100〜200倍。ショ糖に近い甘味質を持つ。

アセスルファムK:甘味度はショ糖の約200倍。

6. 製菓における甘味料の選択

菓子を製造する際、どの甘味料を選択するかは、製品の品質を大きく左右する。選択の際に考慮すべき主な要素を以下にまとめる。

甘味の質と強さ:あっさりとした甘味にはグラニュー糖、コクのある甘味には上白糖や三温糖、上品で控えめな甘味にはトレハロースが適する。

焼き色への影響:焼き色を鮮やかに出したい場合は、還元糖(転化糖、はちみつ、ブドウ糖)を含む甘味料が有効である。焼き色を抑えたい場合は、非還元糖であるトレハロースやショ糖純度の高いグラニュー糖が適する。糖アルコールはメイラード反応を起こさないため焼き色がつかない。

保湿性と食感:しっとりとした食感を重視する場合は、転化糖、はちみつ、水飴、トレハロースの活用が有効である。

結晶制御:フォンダンやすり蜜のように意図的に結晶化させたい場合はグラニュー糖を、飴細工やガナッシュのように結晶(シャリ)を防ぎたい場合は水飴や転化糖を併用する。

保存性:高糖度で水分活性を下げることにより保存性を高める場合は、砂糖を高配合とする。

風味の付与:はちみつ、メープルシロップ、黒砂糖、和三盆など、それぞれ固有の風味を持つ甘味料は、製品に特有の風味を付加する目的で選択される。

試験対策:よくある間違いポイント

試験でよく出る「ひっかけ」の文です。正しいか間違いか、選んでから答えを確かめてください。

Q1日本で生産量最多の精製糖はグラニュー糖

正しくは:日本で最多は「上白糖」。グラニュー糖が標準なのは海外。

Q2中ざら糖は粒子が細かく純度が低い

正しくは:中ざら糖は純度99.7%と「非常に高い」。色が黄褐色なのは純度とは無関係。

Q3黒砂糖は分蜜糖

正しくは:黒砂糖は「含蜜糖」の代表。

Q4砂糖の原料のサトウキビの別名はテンサイ

正しくは:テンサイは「サトウダイコン(甜菜・ビート)」の別名。サトウキビの別名は「甘蔗(かんしょ)」。

Q520℃の水100gに砂糖400gが溶ける

正しくは:約204g(約2倍)。

Q6砂糖の濃度が高いと微生物の繁殖を促進する

正しくは:高濃度は繁殖を「抑制」する(防腐作用)。

Q7ショ糖はブドウ糖が2分子結合した二糖類

正しくは:ショ糖は「ブドウ糖と果糖」が各1分子ずつ結合。ブドウ糖2分子の結合はマルトース(麦芽糖)。

Q8アスパルテームは天然甘味料

正しくは:アスパルテームは「合成(人工)甘味料」。
結果:

まとめ

甘味料は菓子の「甘さ」だけを担うものではない。保水、防腐、結晶制御、焼き色、食感、保存性といった、菓子の品質を構成するほぼすべての要素に関与している。砂糖の種類ごとの成分数値の違い、ショ糖が非還元糖であるという化学的性質、加熱による状態変化と対応する菓子、砂糖以外の甘味料(糖類・糖アルコール・非糖質系)それぞれの特性を正しく理解し、製品の目的に応じて適切に選択・使用することが、菓子製造における基本であり、品質向上の鍵である。

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