製菓理論 第18章:製パンの理論

18

第4部 製品理論編

製パンの理論

はじめに

パンは、菓子とは根本的に異なる原理で作られる。菓子が「膨張剤や気泡で膨らませる」のに対し、パンは「生きた微生物が発生させるガス」で膨らむ。そして菓子がグルテンをできるだけ抑えようとするのに対し、パンはグルテンを積極的に育て、その網目でガスを閉じ込める。つまり製パンとは、グルテンという骨格を作り、イーストという生き物を管理する技術である。本章では、パンの主原料から発酵の理論、製造工程、各種製法までを体系的に解説する。

1. パンの主原料

パンの基本材料は、小麦粉・イースト・水・食塩の4つである。これだけあればパンは作れる。この4つを「主原料」、それ以外の砂糖・油脂・卵・乳製品などを「副材料」と呼ぶ。

1-1. 小麦粉

主に強力粉を使用する。グルテンを多く含み、発酵で発生した炭酸ガスを保持できるためである(第2章参照)。

フランスパンには、グルテンの量と質がやや異なる「フランスパン用粉(準強力粉)」が用いられる。

1-2. イースト(パン酵母)

働き:糖質を分解して炭酸ガスとアルコールを発生させる。同時に有機酸やエステル類を生成し、パン特有の風味を作る。

生イースト:水分約70%。1gあたり約150億の細胞を含む。風味がよく、発酵力が穏やか。

ドライイースト:水分約5%。使用量は生イーストの1/2量。予備発酵(ぬるま湯で戻す)が必要なタイプもある。

インスタントドライイースト(IDY):粉に直接混ぜられる。使用量はさらに少ない。

1-3. 水

役割:グルテンの形成に不可欠。でんぷんの糊化に必要。イーストの活動の場となる。生地温度の調整にも用いる。

硬度の影響:適度な硬度(100〜200mg/L程度)の水が適する。軟水すぎるとグルテンが軟らかくなりすぎ、硬水すぎるとグルテンが締まりすぎて発酵が遅れる。

1-4. 食塩

役割第13章参照):

  • グルテンを引き締め、生地に弾力を与える
  • イーストの活動を抑制し、発酵を安定させる
  • 味を整える
  • 雑菌の繁殖を抑える

食塩を入れ忘れると、生地がだれて腰がなくなり、発酵が進みすぎて風味も損なわれる。

1-5. 副材料

砂糖:イーストの栄養源となり発酵を促進する(2〜3%)。ただし10%以上では浸透圧により発酵が抑制される。焼き色、風味、保水性にも寄与する。

油脂:生地の伸展性を高め、ボリュームを増す。老化を遅らせる。クロワッサンなどでは折り込み用(ロールイン油脂)として使う。

:風味とコク、色を与える。乳化性が生地をなめらかにする。

脱脂粉乳:風味と焼き色を向上させ、生地の伸展性を高める。

モルト(モルトエキス):発芽大麦を糖化・濃縮した麦芽糖。糖が少ないハード系パンで、イーストの栄養源となり焼き色を助ける。

2. 発酵の理論

2-1. 発酵で何が起こるか

イーストは生地中の糖を分解し、以下を生成する。

炭酸ガス(二酸化炭素):グルテンの網目に閉じ込められ、生地を膨らませる。

アルコール(エタノール):焼成中に揮発するが、風味の前駆物質となる。

有機酸・エステル類:パン特有の香りを形成する。

2-2. 自家製酵母種法

市販イーストの代わりに、自ら培養した酵母を使う製法。

種類培養材料
サワー種法ライ麦+水
酒種法こうじ
ホップ種法ホップ+馬鈴薯でんぷん
果物種法果実(レーズン、リンゴ等)+水

酒種は日本のあんパンの原点である。木村屋の木村安兵衛・英三郎親子が、欧米のイーストが入手困難だった時代に、日本の酒造技術に着目して開発した。

ルヴァン:フランス語で酵母や発酵種を指す。液状のものをルヴァン・リキッドという。

3. 製パンの工程

基本工程は以下の9段階である。

①計量 → ②ミキシング → ③一次発酵(フロアタイム)→ ④パンチ → ⑤分割・丸め → ⑥ベンチタイム → ⑦成形 → ⑧最終発酵(ホイロ)→ ⑨焼成

3-1. ミキシングの6段階

ミキシングは、グルテンを形成・発展させる工程である。生地の状態は以下の6段階で変化する。

段階状態
つかみ取り材料が混ざり始めた状態。生地はべたつき、まとまらない
巻付き(水切れ)生地がフックに巻き付き、ボウルの水気がなくなる
結合グルテンが形成され、生地に弾力が出てくる
最終結合(最終段階)グルテンが十分に発展。薄い膜が張る(薄膜テスト)
レットダウン(麩切れ)こねすぎ。グルテンが切れ始め、生地がだれる
破壊完全にグルテンが破壊された状態。もう戻らない

ミキシングの終点:パンの種類により異なる。

  • 食パン・菓子パン:④最終結合まで(しっかりこねる)
  • バターロール:油脂投入前は③結合段階まで
  • クロワッサン:控えめ(折り込み工程でグルテンが形成されるため)
  • リュスティック:1速3分のみ(①つかみ取り段階)

アンダーミキシング:こね不足。ボリュームが出ず、きめが粗くなる。

オーバーミキシング:こねすぎ。ボリューム過多で味が淡白になり、生地がだれる。

3-2. こね上げ温度

ミキシング終了時の生地温度。パンの種類により目標値が異なる。

  • 一般的な食パン・菓子パン:26〜28℃
  • フランスパン:23〜24℃
  • クロワッサン・ブリオッシュ:24℃

こね上げ温度は、水温で調整する。夏は冷水や氷を、冬はぬるま湯を使う。

3-3. 一次発酵(フロアタイム)

イーストが活動し、炭酸ガスを発生させる工程。同時にグルテンが熟成し、伸展性が向上する。

標準的な条件:温度28〜30℃、湿度75%程度。

フィンガーテスト:指に粉をつけて生地に差し込み、発酵度合いを確認する。

  • 穴がそのまま残る → 発酵完了
  • 穴が塞がる → 発酵不足
  • 生地が縮む・しぼむ → 過発酵

3-4. パンチ(ガス抜き)

発酵途中で生地を押したり折りたたんだりする工程。

4つの目的
① 溜まった炭酸ガスを放出する(ガスが多すぎるとイーストの活動が鈍る)
新しい酸素を取り込む
気泡を均一化する
④ 生地の温度を均一にし、発酵を促進する

菓子パンのように砂糖が多く生地の力が弱くなりやすいものは、パンチで補強する。逆に、素材の風味を活かしたいバターロールなどはノーパンチ発酵とすることもある。

3-5. 分割・丸め

生地を製品ごとの重量に分割し、丸めて表面に張りを持たせる。

型生地比容積の計算

生地重量 = 型容積 ÷ 型生地比容積

例えば1.5斤型(容積約2,570cm³)で型生地比容積3.9なら、生地重量は約660g(220g×3個)となる。

3-6. ベンチタイム

分割・丸めで引き締まった生地を休ませる時間。グルテンが緩み、次の成形がしやすくなる。

目安:フランスパン20〜30分、菓子パン10〜20分。

3-7. 成形

製品の形に成形する。ロール型、俵型、棒状、リング状など。

3-8. 最終発酵(ホイロ)

成形した生地を、焼成前に最後に発酵させる工程。

標準的な条件:温度35〜38℃、湿度75〜85%

発酵の目安:型の70〜80%まで膨らんだら窯入れする。

特殊なホイロ条件

  • クロワッサン・ブリオッシュ30℃以下(バターの溶解温度以下。溶け出すと製品がぱさつく)
  • カレーパン・メロンパン乾ホイロ(湿度が低い)。カレーパンは吸油量を減らすため、メロンパンは表面のひび割れ模様を出すため

3-9. 焼成

窯伸び(オーブンスプリング):焼成初期にガスが急激に膨張し、生地が大きく膨らむ現象。

焼減率:焼成により水分が蒸発して重量が減少する割合(%)。

ショック:食パンなど型焼きのパンは、窯出し直後に型ごと台に落として衝撃を与える。これにより腰折れ(ケービング)を防ぐ。焼き上がりの内部構造を固定する効果がある。

4. スチームの理論

ハード系パンを焼成するとき、庫内に水蒸気を充満させる。

4-1. スチームの4つの効果

① 水蒸気が冷たい生地表面で水滴となり、表面がどろどろの状態になる → 表面の焼成を遅らせ、内部の膨張を助長する
② 熱が対流し、均一に火が入る
③ クラスト(外皮)に光沢を与え、外観が美しくなる
きめ細かいクラストを形成する

4-2. スチームが不要な場合

油脂を5%以上配合したパンにスチームは不要である。

油脂が表面の乾燥を防ぐため、スチームの必要がない。むしろ油脂の多いパンにスチームを入れると、膨らみすぎて後で縮んでしまう。

「スチームは表面を早く焼き固めるため」というのは誤りである。 目的は逆で、表面の焼成を遅らせるためである。

5. 製法の種類

5-1. 直捏法(ストレート法)

全材料を一度にミキシングする製法。

長所:工程が単純。発酵の香りがよく、素材の特徴が出る
短所:ソフトさにやや欠ける。作業に長時間かかる場合がある。

5-2. 中種法

粉の50%以上を先にミキシングして発酵させ(中種)、後から残りの材料を加える製法。

長所:直捏法よりソフトでボリュームがあり、老化が遅い。大量生産に向く。
短所:工程が複雑。時間がかかる。

中種のポイント

  • こねすぎるとグルテンが熟成を妨げ、酸味が出る
  • 中種の見極め=網目が粗く、香りが多少酸味を帯びた状態
  • 70%中種なら、粉の70%を中種に使う

加糖中種法:砂糖の多い菓子パン生地では、中種に少し砂糖を加えて発酵させる。これによりイーストに力をつけ、スムーズな発酵につながる。

5-3. 発酵種法(生地種法)

前日に仕込んだ発酵生地を30%程度加える製法。製造時間を短縮し、老化を遅らせる。

5-4. 液種法(ポーリッシュ法)

粉と水を同量で合わせた液種を30%程度使用する製法。

特徴:伸展性・作業性がよい。ボリュームが大きく日持ちがよいが、味は淡白になる。

5-5. 冷蔵発酵法(リターダー法)

生地を低温(0〜2℃)で15〜20時間発酵させる製法。

利点:作業時間の分散ができる。生地のべたつきが抑えられる。リッチな生地(ブリオッシュ、クロワッサン、デニッシュ)では腰が強くなり作業性が向上する。

5-6. オートリーズ

粉と水だけを混ぜて30分程度放置する前処理。小麦粉中の酵素が働き、生地の伸展性が向上する。

効果:窯伸びが大きくなり、火通りのよい製品になる。フランスパンで多用される。

6. 主なパンの分類

分類特徴代表例
ハード系直焼き。クラストが硬い。リーンな配合フランスパン(バゲット等)、カイザーゼンメル
食パン類型焼き。軟らかいホワイトブレッド、イギリスパン、パン・ド・ミ
ロールパン類小型に成形ソフトロール、バターロール
菓子パン類嗜好的要素が強いあんパン、クリームパン、メロンパン、クロワッサン、ブリオッシュ
その他揚げ・蒸し・無発酵パンドーナツ、ベーグル、ピタ、ナン

リーン:油脂や卵が少ない配合。
リッチ:油脂や卵が多い配合。

7. 各国の代表的なパン

代表的なパン
フランスバゲット、バタール、パン・ド・カンパーニュ、クロワッサン、ブリオッシュ、クグロフ
ドイツプレッツェル、シュトーレン、プンパニッケル
イタリアチャバタ、フォカッチャ、ピッツァ、グリッシーニ、パネトーネ
イギリススコーン、マフィン、プルマンブレッド
アメリカテーブルロール、ベーグル、コーンブレッド、ドーナツ
インドチャパティ、ナン、ロティ
オーストリアカイザーゼンメル

8. 特徴的な製品の理論

クロワッサン

洋菓子のパイ生地とパンの発酵を融合させた製品。温度管理が最重要である。

4つのポイント
① ミキシングは控えめ(折り込み工程でグルテンが形成されるため)
ロールイン油脂と生地の硬さを同じにする
③ 生地が冷えた状態で作業する
④ ホイロは油脂の溶解温度以下(バターなら30℃以下

発祥:ウィーン。現在の折り込み製法はフランスで確立された。

ベーグル

最大の特徴は、焼成前に「ケトリング(ゆでる)」を行うこと

原理:表面のでんぷんがα化(糊化)して引き締まり、独特のもちもちとした食感になる。

温度:モラセス(糖蜜)入りの湯を80〜90℃に保つ。沸騰させると表面が荒れる

発祥:ユダヤ。

リュスティック

フランス語で「田舎風の」「素朴な」の意味。パンの原型に近い。

特徴:水分が多く、あまりこねない(1速3分のみ)。成形せず、分割後そのまま焼く。ガスを必要以上に抜かない。

イングリッシュマフィン

水分量が多い生地。表面にコーングリッツを付ける。白焼きなので長時間焼成しない。専用の型(セルクル状)を使い、上に鉄板をのせて膨らみを抑制する。

ブリオッシュ

バターと卵をたっぷり使用したリッチな生地。腰が弱いため、一晩冷却して腰を強め、作業性を向上させる

ホイロは30℃まで。バターが溶け出すと製品がぱさつく。

9. 日本の菓子パンの歴史

あんパン(1874年・明治7年):銀座木村屋總本店木村安兵衛・英三郎親子が考案。欧米のイーストが入手困難だったため、日本の酒造技術に着目し酒種(さかだね)を使用した。ケシの実やゴマを付ける。1875年に明治天皇に献上された。

クリームパン(1904年・明治37年)中村屋相馬愛蔵が、シュークリームをヒントに考案。グローブ型の切り込みは、空気抜きと子どもへのアピールを兼ねている。

メロンパン(1930年代):当初はサンライズという名前だった。格子模様がマスクメロンに似ていることから改名された。メロン生地はバター+砂糖+卵+薄力粉。乾ホイロが望ましい。

カレーパン:日本独特の揚げパン。明治後半〜昭和初期に考案。中のカレーは硬めにする(揚げる途中で飛び出すのを防ぐため)。乾ホイロで吸油量を減らす

日本のパンの祖江川太郎左衛門英龍1842年(天保13年)4月12日、伊豆韮山の代官として、沿岸警備の兵士用の兵糧として「乾パン(兵糧パン)」を焼いた。これにちなみ、毎月12日が「パンの日」、4月12日が「パンの記念日」と制定されている。

なお、日本語の「パン」はポルトガル語の「pão」に由来し、日本で最も古い外来語の一つである。

10. 製パン用語集

用語意味
アンダーミキシングこね不足
オーバーミキシングこねすぎ。ボリューム過多で味が淡白に
オートリーズ粉+水で30分放置し伸展性を向上させる前処理
窯伸び焼成中にガスの膨張で生地が急激に膨らむこと。オーブンスプリング
乾ホイロ湿度が低いホイロ。カレーパン・メロンパンに使用
クープフランスパン等に入れる切り込み
クラストパンの外皮(硬い部分)
クラムパンの中身(軟らかい部分)
ケトリング生地をゆでること。ベーグルの焼成前に行う
腰折れ膨張した製品の表面や側面がくぼむこと。ケービング
こね上げ温度ミキシング終了時の生地温度
焼減率焼成で水分が蒸発し重量が減少する割合(%)
すだちパン内相にある気泡
手粉(打ち粉)くっつかないように使う粉。使いすぎると硬くなる
ドウ生地のこと
パンチ発酵中の生地を押す工程。ガス放出→新酸素→気泡均一化→発酵促進
フィリング中に入れる詰めもの
フィンガーテスト指を突き刺して発酵度合いを確認するテスト
ベーカーズパーセント粉量を100%として他材料の割合を表す。外割とも
ベンチタイム分割・丸めで引き締まった生地を休ませる時間
ホイロ最終発酵。または発酵室
モラセス糖蜜。ベーグルのケトリングに使用
モルト発芽大麦を糖化・濃縮した麦芽糖。ハード系パンに使用
リーン油脂や卵が少ないパン
リッチ油脂や卵が多いパン
リターダー冷凍・冷蔵機能を持つホイロ
ルヴァンフランス語で酵母や発酵種
ロールイン油脂クロワッサン等の折り込み用油脂
ワンローフ400〜500g程度の枕型パン(日本独特の名称)

試験対策:よくある間違いポイント

試験でよく出る「ひっかけ」の文です。正しいか間違いか、選んでから答えを確かめてください。

Q1スチームはすべてのパンに必要

正しくは:油脂5%以上のパンには不要。

Q2スチームはパン表面を早く焼き固めるため

正しくは:表面の焼成を「遅らせ」、内部の膨張を助長するため。

Q3ベーカーズパーセントは全材料の合計を100%とする

正しくは:「粉量」を100%とする。

Q4クラストはパンの中身、クラムは外皮

正しくは:逆。クラスト=外皮、クラム=中身。

Q5ケトリングとは生地を冷やすこと

正しくは:ケトリングは焼成前に生地をゆでること。

Q6ベーグルのケトリングは沸騰した湯で行う

正しくは:80〜90℃。沸騰させると表面が荒れる。

Q7クロワッサンのホイロ温度は35〜38℃

正しくは:30℃以下(バターの溶解温度以下)。

Q8パンチの目的はガスを抜いてしぼませること

正しくは:ガス放出に加え、新酸素の取り込み、気泡の均一化、発酵促進が目的。

Q9食塩はイーストの発酵を促進する

正しくは:食塩はイーストの活動を抑制し、発酵を安定させる。

Q10ドライイーストの使用量は生イーストの2倍

正しくは:生イーストの1/2量。

Q11中種はしっかりこねるほどよい

正しくは:こねすぎるとグルテンが熟成を妨げ、酸味が出る。

Q12液種法(ポーリッシュ法)は味が濃厚になる

正しくは:ボリュームは大きく日持ちはよいが、味は淡白になる。

Q13オートリーズは粉と水にイーストを加えて休ませる

正しくは:粉と水だけを混ぜて休ませる。

Q14窯出し後のショックは製品を傷めるので行わない

正しくは:ショックは腰折れ(ケービング)を防ぐために行う。

Q15あんパンの考案者は中村屋の相馬愛蔵

正しくは:あんパンは木村屋の木村安兵衛・英三郎親子。相馬愛蔵はクリームパン。

Q16メロンパンは当初からメロンパンと呼ばれた

正しくは:当初は「サンライズ」。格子模様がマスクメロンに似ていることから改名。

Q17型生地比容積の計算式は生地重量×型容積

正しくは:生地重量=型容積÷型生地比容積。
結果:

まとめ

パンは小麦粉・イースト・水・食塩という4つの主原料から成り、イーストが糖を分解して発生させる炭酸ガスを、グルテンの網目が保持することで膨らむ。菓子がグルテンを抑えるのに対し、パンはグルテンを育てる点が根本的に異なる。ミキシングは6段階で進行し、製品に応じて適切な終点を見極める。一次発酵ではイーストの活動とグルテンの熟成が同時に進み、パンチによりガス放出・酸素供給・気泡均一化・発酵促進が図られる。ホイロは35〜38℃・湿度75〜85%が標準だが、バターを多く含むクロワッサンやブリオッシュは30℃以下に抑える。スチームは油脂の少ないハード系にのみ用い、表面の焼成を遅らせて窯伸びを助ける。製法は直捏法(風味重視)、中種法(ソフト・老化遅延)、液種法(作業性)、冷蔵発酵法(時間分散)などがあり、目的に応じて選択される。パンづくりとは、生きた酵母と対話しながら、温度と時間を設計する技術である。

タイトルとURLをコピーしました