栄養学 第10章:食生活と疾病

第10章

栄養学 第三部 食生活と健康のはなし

食生活と疾病

はじめに

食べものは、体をつくり、動かす力になる。しかし、食べ方がかたよったり、量が多すぎたり少なすぎたりする生活が長く続くと、体はしだいに変調をきたし、病気につながっていく。日本人の死因の上位を占めるがん・心臓病・脳卒中の多くも、毎日の食生活と深く結びついている。

第三部では、これまでに学んだ栄養素と体のしくみの知識を、実際の生活に生かす方法を学ぶ。その最初として、本章では、食生活と関係の深い病気について、それぞれ「どんな病気か」「どのような基準で判断するか」「食事で何に気をつければよいか」を整理する。

試験では、BMIやメタボリックシンドロームの基準、糖尿病の合併症、高血圧と食塩、病気と栄養素の組み合わせがよく問われる。高血圧については、2025年に新しいガイドラインが出ているので、その点にも注意してほしい。

菓子は、こうした病気と無縁ではない。しかし、菓子を「悪いもの」と決めつける必要もない。病気のしくみを正しく知ることは、お客様に安心して菓子を楽しんでもらうための大切な知識である。

1. 生活習慣病

1-1. 生活習慣病とは

生活習慣病とは、食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒などの生活習慣が、発症や進行に深くかかわる病気の総称である。

かつては、中高年になると増えることから「成人病」と呼ばれていた。しかし、子どものころからの生活習慣が影響し、生活習慣を改めることで予防できることから、1996年に、当時の厚生省が「生活習慣病」という呼び方を提唱した。

主な生活習慣病主にかかわる生活習慣
肥満、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症(痛風)食習慣、運動習慣、飲酒
高血圧食習慣(特に食塩)、運動習慣、飲酒、肥満
心臓病(狭心症・心筋梗塞)、脳卒中上記すべて、喫煙
がん(大腸がん・胃がん・肺がんなど)食習慣、喫煙、飲酒、運動習慣
歯周病、むし歯食習慣、歯みがきの習慣、喫煙
骨粗鬆症食習慣、運動習慣

1-2. 日本人の死因

近年の日本人の死因は、1位が悪性新生物(がん)、2位が心疾患であり、脳血管疾患も上位を占めている。これらの多くは、生活習慣病が積み重なった結果として起こる。

1-3. 食事摂取基準と生活習慣病

食事摂取基準(2025年版)では、高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎臓病(CKD)に、新たに骨粗鬆症を加えた5つの病気について、発症予防と重症化予防の観点から、とるべき量が示されている(第12章参照)。

2. 肥満とやせ

2-1. 肥満とは

肥満とは、体に脂肪が過剰にたまった状態をいう。体重が重いことではなく、体脂肪が多いことが問題である。

肥満の判定には、BMI(体重kg÷身長m÷身長m)を用いる(第8章参照)。日本人では、BMIが22前後のときに病気になりにくいとされ、日本肥満学会は次のように判定している。

BMI判定
18.5未満低体重(やせ)
18.5以上25未満普通体重
25以上肥満(25以上30未満:肥満1度、30以上35未満:肥満2度)
35以上高度肥満(35以上40未満:肥満3度、40以上:肥満4度)

世界保健機関(WHO)は、BMI30以上を肥満としている。日本人は欧米人に比べ、軽い肥満でも糖尿病などになりやすいため、日本の基準は25以上とされている。

2-2. 肥満症

BMIが25以上の肥満のうち、肥満が原因となる健康障害(糖尿病、高血圧、脂質異常症、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群、ひざや腰の痛みなど)があるか、それが起こりやすい内臓脂肪型肥満(内臓脂肪面積100cm²以上)である場合を、肥満症という。肥満症は、医学的に減量が必要な「病気」として扱われる。

2-3. 内臓脂肪型肥満と皮下脂肪型肥満

型脂肪のつく場所体型多い人健康への影響
内臓脂肪型肥満おなかの中(腸のまわり)りんご型(おなかがぽっこり出る)男性、閉経後の女性生活習慣病になりやすい
皮下脂肪型肥満皮膚のすぐ下(腰・お尻・太もも)洋なし型女性内臓脂肪型より生活習慣病のリスクは低い

内臓脂肪からは、血糖値・血圧・血液中の脂質を悪くする物質が出る。そのため、内臓脂肪がたまると、複数の生活習慣病が同時に起こりやすくなる。

2-4. 肥満の原因と対策

主な原因対策
食べすぎ、エネルギーの多い食事(脂質・砂糖の多い食事、清涼飲料、アルコール)適正なエネルギーで、栄養のバランスをとる
運動不足日常生活で体を動かす、有酸素運動と筋力トレーニング
早食い、まとめ食い、夜遅い食事、朝食の欠食よくかんでゆっくり食べる(第9章参照)、1日3食を規則正しく
睡眠不足、ストレス十分な睡眠、ストレスへの対処

体脂肪を減らすには、急激な減量ではなく、食事と運動の両方を見直して、少しずつ体重を減らしていくことが大切である。食事だけを極端に減らすと、脂肪だけでなく筋肉も減り、基礎代謝が下がって、かえってリバウンドしやすくなる(第8章参照)。

2-5. やせと低栄養

肥満と同じように、やせすぎも健康の問題になる。

対象問題
若い女性20歳代の女性のおよそ5人に1人が、BMI18.5未満のやせである。月経の異常、骨量の減少、貧血のほか、妊娠したときに低出生体重児が生まれるリスクが高まる
高齢者食事の量が減り、低栄養になりやすい。筋肉が減ってフレイルやサルコペニアにつながり、転倒・骨折・寝たきりの原因になる(第11章参照)

3. メタボリックシンドローム

3-1. メタボリックシンドロームとは

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)とは、内臓脂肪型肥満に加えて、高血糖・高血圧・脂質異常のうち2つ以上が重なった状態をいう。一つひとつは軽くても、重なることで動脈硬化が急速に進み、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険が大きく高まる。

3-2. 診断基準

区分基準
必須項目腹囲(へその高さのウエスト周囲径):男性85cm以上、女性90cm以上(内臓脂肪面積100cm²以上に相当)
上記に加えて、次の3つのうち2つ以上
① 脂質中性脂肪 150mg/dL以上 かつ/または HDLコレステロール 40mg/dL未満
② 血圧収縮期(最高)血圧 130mmHg以上 かつ/または 拡張期(最低)血圧 85mmHg以上
③ 血糖空腹時血糖 110mg/dL以上

腹囲の基準は女性のほうが大きい
女性は皮下脂肪が多いため、同じ内臓脂肪の量でも腹囲が大きくなる。そのため、腹囲の基準は男性85cm、女性90cmと、女性のほうが大きく設定されている。逆に覚えないよう注意する。

3-3. 特定健康診査と特定保健指導

2008年から、40〜74歳のすべての人を対象に、メタボリックシンドロームに着目した健康診断(特定健康診査、いわゆるメタボ健診)が行われている。その結果、生活習慣病のリスクが高い人には、生活習慣を見直すための特定保健指導が行われる。医療保険者(健康保険組合や市町村の国民健康保険など)が実施する。

2024年度からの第4期では、特定保健指導の成果を評価する目安の一つとして、腹囲2cm・体重2kgの減少が示されている。

4. 糖尿病

4-1. 糖尿病とは

糖尿病とは、膵臓から出るインスリンの量が足りなかったり、はたらきが悪くなったりして、血糖値が高い状態が慢性的に続く病気である(第9章参照)。

型原因特徴
1型糖尿病膵臓のB細胞がこわれ、インスリンがほとんど出なくなる子どもや若い人に多い。生活習慣とは関係なく発症する。インスリン注射が欠かせない
2型糖尿病インスリンの出が悪い、または効きが悪い日本人の糖尿病の約95%を占める。遺伝的な体質に、食べすぎ・運動不足・肥満などの生活習慣が加わって発症する
妊娠糖尿病妊娠中にはじめて見つかる血糖値の異常出産後に正常に戻ることが多いが、将来2型糖尿病になりやすい

4-2. 診断の目安

検査糖尿病型
空腹時血糖値126mg/dL以上
75gブドウ糖負荷試験(2時間値)200mg/dL以上
随時血糖値(食事の時間に関係なく測る)200mg/dL以上
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)6.5%以上
  • HbA1cは、血液中のヘモグロビンに、どれだけブドウ糖が結びついているかを示す値で、過去1〜2か月の血糖値の平均を反映する。検査の直前に食事を控えても、ごまかすことはできない
  • 空腹時血糖値が110mg/dL未満などの場合を「正常型」、正常型と糖尿病型の間を「境界型」という。境界型は、糖尿病の予備群である

4-3. 症状と合併症

初期には、自覚症状がほとんどない。血糖値がかなり高くなると、のどが渇く、水をたくさん飲む、尿の量が増える、体重が減る、疲れやすいなどの症状が現れる。

糖尿病がこわいのは、高い血糖値が長く続くことで、全身の血管が傷つき、さまざまな合併症が起こることである。

種類合併症内容
三大合併症(細い血管の障害)糖尿病網膜症目の網膜の血管が傷つき、視力が落ちる。失明の原因の一つ
〃糖尿病腎症腎臓の血管が傷つき、腎臓のはたらきが落ちる。人工透析を始める原因の第1位
〃糖尿病神経障害手足のしびれ、痛み、感覚が鈍くなる。足の傷に気づかず、壊疽(えそ)を起こすことも
太い血管の障害心筋梗塞、脳梗塞動脈硬化が進む

令和6年の国民健康・栄養調査の推計では、糖尿病が強く疑われる人は約1,100万人で、増え続けている。

4-4. 食事療法

2型糖尿病の治療の基本は、食事療法と運動療法である。

  • 体格や活動量に合った適正なエネルギーの量を守る
  • 炭水化物・たんぱく質・脂質のバランスをとり、ビタミン・ミネラルも不足しないようにする
  • 食物繊維を多くとる(血糖値の上昇をゆるやかにする。第4章参照)
  • 1日3食を規則正しく、ゆっくりよくかんで食べる
  • 砂糖を多く含む菓子や清涼飲料、果物のとりすぎ、アルコールに注意する

日本糖尿病学会の「糖尿病食事療法のための食品交換表」では、食品を栄養素の特徴によって6つの表に分け、80kcalを1単位として、同じ表の中で食品を交換しながら献立を立てられるようにしている。

5. 高血圧

5-1. 高血圧とは

血圧とは、心臓から送り出された血液が、血管の壁を押す力のことである。心臓が縮んで血液を送り出すときの収縮期血圧(最高血圧)と、心臓が広がって血液をためているときの拡張期血圧(最低血圧)で表す。

高血圧とは、血圧が高い状態が続く病気である。日本の患者数は約4,000万人ともいわれ、最も身近な生活習慣病の一つである。高血圧の約9割は、はっきりした原因の病気がない本態性高血圧で、遺伝的な体質に、食塩のとりすぎ・肥満・飲酒・運動不足・ストレスなどが重なって起こる。

自覚症状はほとんどないが、放っておくと、血管が傷ついて動脈硬化が進み、脳卒中、心臓病、腎臓病の原因になる。

5-2. 診断の基準と治療の目標

区分診察室血圧家庭血圧
高血圧の診断基準140/90mmHg以上135/85mmHg以上
降圧目標(治療で目指す血圧)130/80mmHg未満125/75mmHg未満

⚠️ 2025年8月に発表された日本高血圧学会の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、それまで年齢や持病によって分かれていた降圧目標が、年齢にかかわらず診察室血圧130/80mmHg未満に統一された。古い教材では、75歳以上は140/90mmHg未満などとされている。

5-3. 食事と生活のポイント

項目内容
減塩食塩は1日6g未満(ガイドライン2025でも変わらず)。食事摂取基準(2025年版)でも、高血圧の重症化予防のための食塩相当量は6.0g/日未満
カリウム野菜・果物・いもなどに多いカリウムは、ナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる。ガイドライン2025でも重要性が強調された(ただし、腎臓の病気がある人は医師に相談)
適正体重肥満の人は、減量すると血圧が下がる
節酒アルコールのとりすぎは血圧を上げる
運動ウォーキングなどの有酸素運動に、筋力トレーニングを組み合わせる
禁煙たばこは血管を縮め、動脈硬化を進める

減塩の工夫
だしのうま味、酢やレモンの酸味、香辛料・香味野菜(しょうが、しそ、ねぎ)の香りを生かすと、食塩を減らしてもおいしく食べられる。汁ものは具を多くして汁を減らす、しょうゆやソースは「かける」より「つける」、麺類の汁は残す、なども効果的である。

6. 脂質異常症と動脈硬化

6-1. 脂質異常症とは

脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が多すぎる、またはHDLコレステロールが少なすぎる状態をいう(第3章参照)。自覚症状はないが、動脈硬化の大きな原因になる。

6-2. 診断の基準(空腹時)

項目基準判定
LDLコレステロール140mg/dL以上高LDLコレステロール血症(120〜139は境界域)
HDLコレステロール40mg/dL未満低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセライド)150mg/dL以上(随時は175mg/dL以上)高トリグリセライド血症
non-HDLコレステロール170mg/dL以上高non-HDLコレステロール血症

(日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」による)

6-3. 動脈硬化

動脈硬化とは、動脈の壁が厚く硬くなり、血管の内側が狭くなる状態である。LDLコレステロールが多いと、血管の壁にコレステロールがたまってこぶのような塊ができ、血液の流れが悪くなる。この塊がはがれて血管をふさぐと、心筋梗塞(心臓の血管)や脳梗塞(脳の血管)が起こる。

動脈硬化を進める主な要因は、脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、肥満などである。

6-4. 食事のポイント

減らすもの増やすもの
飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、生クリーム、ラード)不飽和脂肪酸(魚のEPA・DHA、植物油)
トランス脂肪酸食物繊維(野菜、海藻、豆類、きのこ)
コレステロールの多い食品(卵黄、レバー、魚卵)大豆製品
砂糖・果糖、アルコール(中性脂肪を増やす)―

食事摂取基準(2025年版)では、脂質異常症の重症化予防のため、コレステロールは1日200mg未満が望ましいとされている。

7. そのほかの食生活と関係の深い病気

7-1. 高尿酸血症・痛風

尿酸は、細胞の中の遺伝子の材料などに含まれるプリン体が分解されてできる老廃物である。血液中の尿酸の濃さが7.0mg/dLを超える状態を高尿酸血症という。尿酸が関節にたまって結晶になると、足の親指のつけ根などが突然はれて激しく痛む痛風の発作が起こる。患者の大部分は男性である。

食事のポイント内容
プリン体を控えるレバー、白子、魚卵、干物、肉や魚のエキス(スープ)などのとりすぎに注意
アルコールを控えるアルコールそのものが尿酸を増やす。プリン体の多いビールは特に注意
果糖を控える果糖のとりすぎも尿酸を増やす。清涼飲料や甘い菓子のとりすぎに注意
水分を十分にとる尿の量を増やして、尿酸を排泄しやすくする
適正体重を保つ肥満の解消

7-2. 骨粗鬆症

骨粗鬆症とは、骨の量が減り、骨の中がすかすかになって、骨折しやすくなる病気である。背骨がつぶれて背中が丸くなったり、太ももの付け根を骨折して寝たきりになったりすることがある。

  • 閉経後の女性に多い。女性ホルモン(エストロゲン)の減少で、骨からカルシウムが溶け出しやすくなるため(第9章参照)
  • 高齢、やせ、運動不足、喫煙、過度の飲酒も危険因子
  • 予防のポイント:カルシウム(第6章)、ビタミンD(カルシウムの吸収)、ビタミンK(骨の形成)、適量のたんぱく質をとる。日光浴、運動(骨に刺激を与える)
  • 骨量は20歳代ごろに最大になる。若いうちに骨量を増やしておくことが、将来の予防になる

7-3. 鉄欠乏性貧血

鉄が不足して、赤血球のヘモグロビンが十分につくれなくなる貧血である(第6章参照)。月経のある女性、妊婦、成長期の子どもに多い。ヘム鉄を含む肉・魚、吸収を助けるビタミンC、材料になるたんぱく質をとる。

7-4. 慢性腎臓病(CKD)

腎臓のはたらきが低下した状態が続く病気である。進行すると、人工透析が必要になる。原因として、糖尿病、高血圧が多い。食事では、食塩を控え、病気の進み具合によって、医師の指示のもとでたんぱく質・カリウム・リンを制限する。

7-5. がん

がんは、日本人の死因の第1位である。がんの原因には、喫煙、飲酒、食事、運動不足、肥満、感染などがある。

国立がん研究センターは、科学的な根拠にもとづいて「がんを防ぐための新12か条」を示している。

  1. たばこは吸わない
  2. 他人のたばこの煙をできるだけ避ける
  3. お酒はほどほどに
  4. バランスのとれた食生活を
  5. 塩辛い食品は控えめに
  6. 野菜や果物は不足にならないように
  7. 適度に運動
  8. 適切な体重維持
  9. ウイルスや細菌の感染予防と治療
  10. 定期的ながん検診を
  11. 身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
  12. 正しいがん情報でがんを知ることから

食事に関係するものでは、食塩のとりすぎが胃がんの、赤身の肉や加工肉(ハム・ソーセージ)のとりすぎが大腸がんのリスクを高めるとされている。

7-6. 食物アレルギー

食物アレルギーとは、特定の食べものに含まれるたんぱく質などに対して、体の免疫が過剰に反応し、じんましん、せき、腹痛、下痢などの症状が出るものである(第2章参照)。

  • 乳幼児に多く、原因は鶏卵、牛乳、小麦が多い。近年はくるみなどの木の実類によるアレルギーが増えている
  • 全身に強い症状が急に現れるアナフィラキシーは、血圧が下がって意識を失う(アナフィラキシーショック)など、命にかかわることがある
  • 食品の表示では、特定原材料9品目(卵・乳・小麦・えび・かに・くるみ・そば・落花生・カシューナッツ)の表示が義務づけられている(衛生法規の食品表示法の章を参照)

7-7. むし歯と歯周病

むし歯は、口の中の細菌(ミュータンス菌など)が、食べものの糖(特に砂糖=ショ糖)を分解して酸をつくり、その酸で歯が溶かされる病気である。

  • むし歯のなりやすさは、砂糖の量だけでなく、とる回数と時間に大きく左右される。だらだらと長い時間かけて甘いものを食べたり、何度も口にしたりすると、口の中が酸性になっている時間が長くなり、むし歯になりやすい
  • 間食の時間を決める、食べたら歯をみがく・口をすすぐことが予防になる
  • 糖アルコール(キシリトールなど)は、むし歯の原因になりにくい(第4章参照)

歯周病は、歯ぐきや歯を支える骨がこわされる病気で、成人が歯を失う大きな原因である。糖尿病とも深い関係がある。

8020(ハチマルニイマル)運動は、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという運動である。自分の歯でかめることは、高齢期の栄養状態を保つためにも大切である。

8. 製菓とのつながり

8-1. 菓子と病気の上手なつき合い方

菓子は、砂糖・脂質が多く、エネルギーが高くなりやすい。だからといって、菓子が病気の原因そのものというわけではない。大切なのは、量・回数・時間・組み合わせである。

病気菓子を楽しむときのポイント
肥満、メタボリックシンドローム1日の食事全体のエネルギーの中で量を決める。小さめのサイズを選ぶ
糖尿病医師や管理栄養士の指導のもとで、量と食べるタイミングを決める。食後に少量を楽しむ
高血圧菓子にも食塩は含まれる(有塩バター、塩味の焼き菓子、せんべい)。量に気をつける
脂質異常症バター・生クリームの多い菓子は飽和脂肪酸が多い
痛風果糖を多く含む菓子や甘い飲み物のとりすぎに注意
むし歯だらだら食べない。時間を決めて食べ、そのあと歯をみがく
食物アレルギー原材料を必ず確認する。店では正確な表示と、問い合わせへの誠実な対応を

8-2. 菓子をつくる人として

  • 砂糖の量を工夫した菓子、食物繊維を多く含む全粒粉やナッツを使った菓子など、健康に気をつけている人にも楽しんでもらえる選択肢を用意できる
  • ただし、「血糖値が上がらない」「病気が治る」などの表示は、根拠がなければ健康増進法や景品表示法の違反になるおそれがある(衛生法規の健康増進法・食品表示法の章を参照)
  • アレルゲンの表示ミスは、お客様の命にかかわる。製造工程での混入(コンタミネーション)にも注意を払う

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1日本人は、BMI22前後のときに病気になりにくいとされる

この文のとおりです。

Q2HbA1cは、検査の直前の血糖値を示す

正しくは:HbA1cは、過去1〜2か月の血糖値の平均を反映する

Q3日本肥満学会では、BMI30以上を肥満としている

正しくは:日本ではBMI25以上を肥満とする。30以上はWHOの基準

Q4特定健康診査の対象は、20〜74歳である

正しくは:特定健康診査の対象は40〜74歳である

Q5高血圧の約9割は、腎臓病などの原因がはっきりした二次性高血圧である

正しくは:高血圧の約9割は、原因のはっきりしない本態性高血圧である

Q6内臓脂肪型肥満は、りんご型肥満とも呼ばれる

この文のとおりです。

Q7アルコールや果糖のとりすぎは、尿酸値を上げる

この文のとおりです。

Q8カリウムは、血圧を上げるはたらきがある

正しくは:カリウムはナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる

Q9生活習慣病は、遺伝によってのみ発症する病気である

正しくは:生活習慣病は、食習慣・運動・休養・喫煙・飲酒などの生活習慣が発症にかかわる病気である

Q10生活習慣病という呼び方は、2008年に提唱された

正しくは:「生活習慣病」は1996年に提唱された。2008年は特定健康診査が始まった年

Q11LDLコレステロールが40mg/dL未満のとき、脂質異常症と診断される

正しくは:40mg/dL未満が基準になるのはHDLコレステロール。LDLコレステロールは140mg/dL以上

Q12高血圧の診断基準は、診察室血圧140/90mmHg以上である

この文のとおりです。

Q13動脈硬化を防ぐには、飽和脂肪酸を多くとるとよい

正しくは:飽和脂肪酸は控え、魚のEPA・DHAなど不飽和脂肪酸をとる

Q14痛風の予防には、水分を控えるとよい

正しくは:水分を十分にとって、尿酸を排泄しやすくする

Q151型糖尿病は、主に食べすぎや運動不足が原因で起こる

正しくは:1型糖尿病は、膵臓のB細胞がこわれてインスリンが出なくなる病気で、生活習慣とは関係なく発症する

Q168020運動は、80歳で自分の歯を20本以上保つことを目指す運動である

この文のとおりです。

Q17糖尿病は、初期から強い自覚症状が現れる

正しくは:糖尿病は、初期には自覚症状がほとんどない

Q18HbA1cが6.5%以上の場合、糖尿病型と判定される

この文のとおりです。

Q19日本人の糖尿病の大部分は、1型糖尿病である

正しくは:日本人の糖尿病の約95%は2型糖尿病である

Q20糖尿病の三大合併症は、網膜症・腎症・脳梗塞である

正しくは:三大合併症は、網膜症・腎症・神経障害である

Q21骨粗鬆症は、閉経前の若い女性に多い

正しくは:骨粗鬆症は、閉経後の女性や高齢者に多い

Q22痛風は、血液中のカルシウムが関節にたまって起こる

正しくは:痛風は、プリン体からできる尿酸が関節にたまって起こる

Q23高血圧管理・治療ガイドライン2025では、75歳以上の降圧目標は140/90mmHg未満とされている

正しくは:ガイドライン2025では、年齢にかかわらず130/80mmHg未満に統一された⚠️ 以前のガイドラインでは、75歳以上は140/90mmHg未満とされていた

Q24骨粗鬆症の予防には、カルシウム・ビタミンD・ビタミンKをとり、運動をすることが大切である

この文のとおりです。

Q25BMI18.5以上25未満は低体重である

正しくは:BMI18.5以上25未満は普通体重。18.5未満が低体重

Q26メタボリックシンドロームは、腹囲の基準に加えて、高血糖・高血圧・脂質異常のうち1つ以上があれば診断される

正しくは:腹囲の基準に加えて、2つ以上が必要である

Q27むし歯のなりやすさは、砂糖の量だけで決まり、食べる回数は関係ない

正しくは:砂糖の量だけでなく、とる回数と時間が大きく影響する

Q28中性脂肪150mg/dL以上は、脂質異常症の診断基準の一つである

この文のとおりです。

Q29皮下脂肪型肥満は、内臓脂肪型肥満より生活習慣病になりやすい

正しくは:内臓脂肪型肥満のほうが生活習慣病になりやすい

Q30食塩のとりすぎは、胃がんのリスクを高める

この文のとおりです。

Q31糖尿病の食品交換表では、100kcalを1単位とする

正しくは:食品交換表では80kcalを1単位とする

Q32糖尿病腎症は、人工透析を始める原因の第1位である

この文のとおりです。

Q33メタボリックシンドロームの腹囲の基準は、男性85cm以上、女性90cm以上である

この文のとおりです。

Q34メタボリックシンドロームの腹囲の基準は、男性90cm以上、女性85cm以上である

正しくは:腹囲の基準は男性85cm以上、女性90cm以上である

Q35高血圧の人の食塩の摂取目標は、1日8g未満である

正しくは:高血圧の人の食塩の目標は1日6g未満である
結果:

まとめ

  • 生活習慣病は、食習慣・運動・休養・喫煙・飲酒などがかかわる病気。1996年に「成人病」から呼び方が改められた。死因はがんが1位、心疾患が2位
  • 食事摂取基準(2025年版)は、高血圧・脂質異常症・糖尿病・慢性腎臓病に骨粗鬆症を加えた5つの病気を扱う
  • 肥満=体脂肪が過剰な状態。日本ではBMI25以上(WHOは30以上)、35以上は高度肥満、18.5未満はやせ。BMI22が標準
  • 内臓脂肪型(りんご型)は生活習慣病になりやすい。若い女性のやせと高齢者の低栄養も問題
  • メタボリックシンドローム:腹囲男性85cm・女性90cm以上+脂質(中性脂肪150以上/HDL40未満)・血圧(130/85以上)・血糖(空腹時110以上)の2つ以上。特定健康診査は40〜74歳(2008年〜)
  • 糖尿病:2型が約95%。空腹時血糖126以上、随時血糖200以上、HbA1c6.5%以上など。HbA1cは過去1〜2か月の平均。三大合併症は網膜症・腎症・神経障害(腎症は透析の原因第1位)。食品交換表は80kcal=1単位。強く疑われる人は約1,100万人
  • 高血圧:診断140/90以上。約9割は本態性。ガイドライン2025で降圧目標は年齢にかかわらず130/80未満に統一。食塩1日6g未満、カリウム、減量、節酒、運動、禁煙
  • 脂質異常症:LDL140以上、HDL40未満、中性脂肪150以上。動脈硬化→心筋梗塞・脳梗塞。飽和脂肪酸を控え、EPA・DHA・食物繊維をとる。コレステロールは200mg/日未満が望ましい
  • 痛風:プリン体からできる尿酸(7.0mg/dL超)が原因。アルコール・果糖を控え、水分を十分に
  • 骨粗鬆症:閉経後の女性に多い。カルシウム・ビタミンD・ビタミンK・運動・日光浴
  • がん:「がんを防ぐための新12か条」。食塩は胃がん、加工肉は大腸がんのリスク
  • 食物アレルギーの原因は鶏卵・牛乳・小麦が多く、木の実類が増加。特定原材料は9品目
  • むし歯は、砂糖の量だけでなく回数と時間が影響する。8020運動

※ 本書は「日本人の食事摂取基準(2025年版)」と令和8年(2026年)9月時点の情報にもとづいています。病気の診断や治療については、必ず医師にご相談ください。

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