公衆衛生学 第2章:衛生行政と保健・医療・福祉の制度

第2章

公衆衛生学 第一部 公衆衛生のしくみ

衛生行政と保健・医療・福祉の制度

はじめに

第1章で学んだように、公衆衛生は「地域社会の組織的な努力」によって人々の健康を守る取り組みである。その組織的な努力を、法律にもとづいて計画的に進めるのが衛生行政である。

菓子店を開くときに営業許可を申請する先、食中毒が起きたときに調査に来る人、乳幼児健診のお知らせを出すところ、職場の健康診断を指導するところ。これらはすべて衛生行政の一部であり、それぞれ担当する機関が決まっている。

試験では、保健所と市町村保健センターの違い、保健所の業務にふくまれないもの、衛生行政の分類、国民健康づくり対策の歴史が繰り返し出題される。とくに「保健所の業務として誤っているものはどれか」という問題は、毎年のように各地で出題されている。

本章では、衛生行政のしくみと担い手を確認したうえで、保健所と市町村保健センター、国民健康づくり対策、医療保険や介護保険などの社会保障制度、医療の提供体制、国際保健の機関を学ぶ。法律の条文そのものは、衛生法規の本の地域保健法と健康増進法の章で詳しく扱う。

1. 衛生行政のしくみ

1-1. 衛生行政とは

衛生行政とは、国や地方公共団体が、法律にもとづいて、国民の健康の保持と増進を図るために行う行政である。その根拠は、日本国憲法第25条第2項の「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」という規定である(第1章参照)。

衛生行政は、国(中央)、都道府県、市町村の三つの段階で行われる。

段階主な役割
国法律や制度をつくり、全国的な方針と基準を決める
都道府県広い地域にかかわる専門的な業務を行う。保健所を設置する
市町村住民に身近な保健サービスを行う。市町村保健センターを設置できる

なお、指定都市・中核市などの大きな市や、東京の特別区は、都道府県と同じように保健所を設置する(2-1参照)。

1-2. 衛生行政の分類

衛生行政は、対象とする人と担当する機関によって、次のように分類される。

分類対象行政の系統
一般衛生行政(地域保健行政)家庭や地域で生活する住民全体厚生労働省など → 都道府県(衛生主管部局)→ 保健所 → 市町村(市町村保健センター)
学校保健行政児童・生徒・学生と教職員文部科学省 → 都道府県教育委員会 → 市町村教育委員会 → 学校
労働衛生行政職場で働く人厚生労働省 → 都道府県労働局 → 労働基準監督署
環境保全行政生活環境と自然環境環境省 → 都道府県・市町村

教材によっては、一般衛生行政・学校保健行政・労働衛生行政の三つに分け、環境保全行政を別に扱うものもある。

試験では、学校保健行政は文部科学省、労働衛生行政は労働基準監督署の系統であることがよく問われる。職場の健康管理(労働衛生)は、保健所の業務ではない(2-2参照)。

1-3. 国の主な機関

衛生行政にかかわる国の機関は一つではない。近年、担当の移管が続いているため、新しい分担を確認しておく。

機関主な担当
厚生労働省衛生行政の中心。医療、感染症、健康づくり、食品衛生の監視指導、医薬品、労働衛生、年金、介護
こども家庭庁(2023年4月発足)母子保健、子育て支援、児童福祉
文部科学省学校保健、学校給食
環境省公害の防止、廃棄物、地球環境の保全、水道の水質基準
消費者庁食品の表示、食品の規格・基準の策定(2024年4月から)
国土交通省水道の整備・管理(2024年4月から)、下水道

⚠️ 2023年4月にこども家庭庁が発足し、母子保健の担当は厚生労働省からこども家庭庁へ移った。2024年4月には、水道の整備・管理が国土交通省へ、水道の水質基準が環境省へ、食品の規格・基準の策定が消費者庁へ移った。食品衛生の監視指導(保健所による営業施設の検査など)は、引き続き厚生労働省の担当である(食品衛生学の本の食品衛生学の基礎と食品安全行政の章を参照)。古い教材では、これらがすべて厚生労働省の担当として書かれていることがある。

また、感染症などの健康危機に備えるため、2025年4月に、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターが統合されて国立健康危機管理研究機構が発足した。

2. 保健所と市町村保健センター

2-1. 保健所

保健所は、地域保健法にもとづいて設置される、地域保健の第一線の機関である。広い地域を受け持ち、専門的・技術的な業務や、感染症・食中毒などの健康危機管理の拠点としての役割を担う。

設置主体は、都道府県、指定都市、中核市、その他の政令で定める市、特別区(東京23区)である。一般の市町村は保健所を設置しない。

全国の保健所の数は、令和7年(2025年)4月1日現在で、本所462か所、支所123か所である。

設置主体保健所(本所)の数
都道府県352
指定都市20
中核市62
その他の政令市5
特別区23
合計462

保健所の数は、市町村合併や中核市への移行、保健所の統合によって変わる。試験で数そのものが問われることは少ないが、「設置主体」は頻出である。

保健所には、医師、保健師、薬剤師、獣医師、管理栄養士、診療放射線技師、臨床検査技師などの専門職が配置されている。食品衛生監視員や環境衛生監視員として、営業施設の監視や指導を行う職員もいる。保健所長は、原則として医師である。

2-2. 保健所の業務

保健所の業務は、地域保健法第6条に、次の14項目として定められている。

#業務
1地域保健に関する思想の普及及び向上
2人口動態統計その他地域保健に係る統計
3栄養の改善及び食品衛生
4住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生
5医事及び薬事
6保健師に関する事項
7公共医療事業の向上及び増進
8母性及び乳幼児並びに老人の保健
9歯科保健
10精神保健
11治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病により長期に療養を必要とする者の保健
12エイズ、結核、性病、感染症その他の疾病の予防
13衛生上の試験及び検査
14その他地域住民の健康の保持及び増進

※ 条文の表現は一部を簡略化している。

試験では、「保健所の業務として誤っているもの」を選ぶ問題が多い。保健所の業務にふくまれないものと、その担当機関を整理しておく。

保健所の業務ではないもの担当する機関
生活保護福祉事務所
国民健康保険市町村(国民健康保険の担当課)・都道府県
労働衛生(職場の健康管理)労働基準監督署(労働衛生行政)
学校保健教育委員会・学校(学校保健行政)
年金日本年金機構

⚠️ 「母性及び乳幼児並びに老人の保健」は保健所の業務にふくまれる。「老人の保健は保健所の業務ではない」とする選択肢は誤りである。一方、乳幼児健診などの身近なサービスの多くは、実際には市町村(市町村保健センター)が行っている(2-3参照)。

菓子店にとって身近な保健所の仕事は、食品衛生である。保健所は、飲食店や菓子製造業の営業許可と営業届出の受付、営業施設の監視指導、食中毒の調査と原因の究明、食品の収去検査、食品衛生に関する講習会などを行っている。

2-3. 市町村保健センター

市町村保健センターは、地域保健法にもとづいて市町村が設置することができる施設である。住民に身近な場所で、健康相談、保健指導、健康診査など、地域住民一人一人に直接かかわる対人保健サービスを行う。

主な事業例
母子保健母子健康手帳の交付、乳幼児健診(1歳6か月児・3歳児など)、両親学級
成人・高齢者の保健がん検診、健康相談、健康教室
予防接種定期予防接種の実施
健康づくり栄養・運動・禁煙の教室

市町村保健センターの中心となる職員は保健師である。保健所とは異なり、所長が医師である必要はない。

また、2024年4月からは、母子保健と児童福祉の相談支援を一体的に行うこども家庭センターの設置が、市町村の努力義務とされた(第10章参照)。

2-4. 保健所と市町村保健センターの違い

項目保健所市町村保健センター
根拠法地域保健法地域保健法
設置主体都道府県・指定都市・中核市・その他の政令市・特別区市町村
設置設置しなければならない設置することができる
役割広域的・専門的・技術的な業務、健康危機管理の拠点住民に身近な対人保健サービス
主な業務の例食品衛生、環境衛生、感染症対策、医事・薬事、精神保健、難病健康相談、保健指導、健康診査、乳幼児健診、予防接種
所長原則として医師医師である必要はない

覚え方としては、「保健所=専門家が広い地域を守る」「保健センター=身近な場所で住民一人一人を支える」と考えるとよい。

2-5. 地域保健法の成り立ち

保健所は、1937年(昭和12年)の保健所法によって始まり、1947年(昭和22年)の全面改正で、現在につながる保健所の仕組みがつくられた(第1章参照)。

その後、人口の高齢化や疾病構造の変化に対応するため、1994年(平成6年)に保健所法は地域保健法に改められた(1997年に全面施行)。このとき、次のような見直しが行われた。

見直しの内容説明
身近なサービスは市町村へ母子保健サービスなど、住民に身近な対人保健サービスを市町村が一元的に行うことになった
保健所は専門的な拠点へ保健所は、広域的・専門的・技術的な業務と、市町村への支援を担うことになった
市町村保健センターの法定化市町村保健センターが法律に位置づけられた

3. 国民健康づくり対策

3-1. 国民健康づくり対策のあゆみ

国は、生活習慣病などを防ぐため、1978年(昭和53年)から、ほぼ10年ごとに国民健康づくり対策を進めてきた。

対策開始名称・主な内容
第1次1978年(昭和53年)健康づくりの三要素(栄養・運動・休養)。生涯を通じた健康診査・保健指導の体制づくり。市町村保健センターの整備、保健婦(現在の保健師)・栄養士の確保
第2次1988年(昭和63年)アクティブ80ヘルスプラン。三要素のうち遅れていた運動習慣の普及に重点。健康運動指導士の養成
第3次2000年(平成12年)健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)。一次予防の重視、数値目標の設定と評価。2002年に健康増進法が制定された
第4次2013年(平成25年)健康日本21(第二次)。健康寿命の延伸と健康格差の縮小
第5次2024年(令和6年)健康日本21(第三次)。「誰一人取り残さない健康づくり」

⚠️ 「健康日本21(第三次)」は、国民健康づくり対策としては第5次にあたる。「第三次」は健康日本21の中での回数である。名前の数字と対策の回数を取り違えないように注意する。

⚠️ 第2次国民健康づくり対策(アクティブ80ヘルスプラン)の開始は1988年(昭和63年)度である。教材によっては1989年と書かれていることがある。

3-2. 健康日本21(第三次)

健康日本21(第三次)は、2024年度から2035年度までの12年間の計画である。

項目内容
ビジョン全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現
方向性誰一人取り残さない健康づくり、より実効性をもつ取組の推進
基本的な方向(4つ)①健康寿命の延伸と健康格差の縮小 ②個人の行動と健康状態の改善 ③社会環境の質の向上 ④ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり

ライフコースアプローチとは、胎児期から高齢期までの人生の経過を通して健康づくりを考えることである。たとえば、子どものころの食習慣や運動習慣は、大人になってからの生活習慣病に影響する。また、女性は、ライフステージごとに女性ホルモンが変化し、健康課題が変わるため、特に配慮が必要とされている。

健康日本21は、栄養・食生活、身体活動・運動、休養・睡眠、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康などの分野ごとに目標を定め、その達成状況を評価しながら進められる。栄養・食生活の目標については、栄養学の本で詳しく扱う。

健康日本21の考え方は、第1章で学んだヘルスプロモーションにもとづいている。個人の努力だけでなく、社会環境の質の向上(健康に関心の薄い人も自然に健康になれる環境づくり)を重視している点が特徴である。

3-3. 健康増進法

健康増進法は、健康日本21を法律の面から支えるため、2002年(平成14年)に制定され、2003年(平成15年)に施行された。主な内容は次のとおりである。

主な内容説明
国民の責務国民は、生涯にわたって自らの健康状態を自覚し、健康の増進に努める
基本方針国が健康増進の基本方針(健康日本21)を定める。都道府県は健康増進計画を定める
国民健康・栄養調査国民の身体の状況、栄養摂取量、生活習慣を毎年調べる
受動喫煙対策2018年の改正で、望まない受動喫煙を防ぐ仕組みが強化された(2020年4月全面施行)
特別用途食品病者用・乳児用など、特別の用途に適する旨の表示の許可

条文の詳しい内容は、衛生法規の本の健康増進法の章で扱う。

4. 社会保障制度

4-1. 社会保障の四つの柱

社会保障とは、病気、けが、出産、老齢、障害、失業、貧困など、生活の困難に対して、社会全体で支え合う仕組みである。日本の社会保障は、次の四つの柱で構成されている。

柱内容主な制度
社会保険加入者が保険料を出し合い、困ったときに給付を受ける医療保険、年金保険、介護保険、雇用保険、労働者災害補償保険(労災保険)
公的扶助生活に困っている人に、税金で最低限度の生活を保障する生活保護
社会福祉支援が必要な人に、サービスや施設を提供する児童福祉、障害者福祉、高齢者福祉、母子・父子・寡婦福祉
保健医療・公衆衛生国民の健康を守るための予防や環境の整備感染症対策、健康づくり、環境衛生、食品衛生

4-2. 医療保険

日本では、1961年(昭和36年)に国民皆保険が実現し、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入している。病院の窓口で保険証(現在はマイナ保険証が基本)を示せば、医療費の一部を負担するだけで医療を受けられる。

種類加入する人保険者(運営する団体)
被用者保険会社などに勤める人とその家族健康保険(全国健康保険協会〔協会けんぽ〕・健康保険組合)、共済組合(公務員など)、船員保険
国民健康保険自営業者、農業者、無職の人など都道府県と市町村、国民健康保険組合
後期高齢者医療制度75歳以上の人(2008年4月から)後期高齢者医療広域連合(都道府県ごと)

医療機関の窓口で支払う自己負担の割合は、年齢などによって次のように決められている。

年齢自己負担の割合
義務教育就学前2割
義務教育就学後〜69歳3割
70〜74歳2割(現役並みの所得がある人は3割)
75歳以上1割(一定以上の所得がある人は2割、現役並みの所得がある人は3割)

多くの自治体では、子どもの医療費の自己負担を独自に助成している。

4-3. 介護保険

介護保険制度は、高齢化にともなって介護を必要とする人が増えたことから、介護を社会全体で支えるために、2000年(平成12年)に始まった。

項目内容
保険者市町村(特別区をふくむ)
被保険者第1号被保険者:65歳以上の人/第2号被保険者:40〜64歳の医療保険加入者
サービスを受けられる人第1号:原因を問わず、介護や支援が必要と認定された人。第2号:末期がん、脳血管疾患など、加齢にともなう特定疾病が原因で介護や支援が必要と認定された人
認定市町村が要介護認定を行う。要支援1・2、要介護1〜5の7段階
自己負担原則1割(所得に応じて2割または3割)
相談の窓口地域包括支援センター(市町村が設置)

介護保険のサービスや、高齢者の保健については第10章で詳しく扱う。

4-4. 年金保険・雇用保険・労災保険

制度内容
年金保険老齢、障害、死亡(遺族)に対して年金を支給する。国民年金(20歳以上60歳未満のすべての人が加入する基礎年金)と、会社員や公務員が加入する厚生年金がある。1961年に国民皆年金が実現した
雇用保険失業したときの給付、育児休業や介護休業の給付、職業訓練などを行う
労働者災害補償保険(労災保険)仕事中や通勤中のけが・病気・死亡に対して給付を行う。保険料は事業主が全額負担する(第11章参照)

4-5. 公的扶助と社会福祉

生活保護は、生活に困っている人に、国が最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度である。日本国憲法第25条の生存権を具体的に実現する制度で、相談や申請の窓口は福祉事務所である。保健所ではない。

社会福祉の主な相談機関には、次のようなものがある。

機関主な役割
福祉事務所生活保護、児童・母子・高齢者・障害者の福祉に関する相談と援助
児童相談所子どもに関する相談、児童虐待への対応、一時保護
地域包括支援センター高齢者の総合的な相談、介護予防の支援

5. 医療の提供体制

5-1. 医療施設

医療施設は、医療法によって、病院と診療所に分けられる。

区分定義
病院患者を入院させるための施設(病床)を20床以上もつもの
診療所病床をもたないもの、または19床以下のもの

病院の中には、高度な医療を提供する特定機能病院や、地域の医療機関を支える地域医療支援病院などがある。

5-2. 医療計画

都道府県は、医療法にもとづいて、地域の実情に応じた医療計画を定める。医療計画では、病床の整備の目標などとともに、次の5疾病・6事業と在宅医療について、医療を提供する体制を定める。

区分内容
5疾病がん、脳卒中、心筋梗塞等の心血管疾患、糖尿病、精神疾患
6事業救急医療、災害時における医療、へき地の医療、周産期医療、小児医療(小児救急医療をふくむ)、新興感染症の発生・まん延時における医療

⚠️ 「新興感染症の発生・まん延時における医療」は、新型コロナウイルス感染症の経験をふまえて、2024年度からの医療計画に加わった。古い教材では「5疾病・5事業」と書かれている。

5-3. 医療従事者

医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、管理栄養士などの医療・保健の専門職は、それぞれの法律で資格と業務が定められている。製菓衛生師も、製菓衛生師法で定められた国家資格(都道府県知事の免許)である(衛生法規の製菓衛生師法の章を参照)。

6. 国際保健の機関

健康の問題は、国境を越えて広がる。感染症の世界的な流行や、食品の国際的な流通に対応するため、国際的な機関が活動している。

機関内容
WHO(世界保健機関)国連の専門機関。1948年に発足し、本部はスイスのジュネーブ。感染症対策、保健統計、健康の基準づくりなどを行う。日本は1951年に加盟
UNICEF(国連児童基金)子どもの健康、栄養、教育、予防接種などを支援する
FAO(国連食糧農業機関)食料の生産と栄養の改善を進める
ILO(国際労働機関)労働条件の改善と、働く人の安全と健康を進める
コーデックス委員会(FAO/WHO合同食品規格委員会)消費者の健康を守り、公正な食品の貿易を進めるため、国際食品規格をつくる。HACCPのガイドラインもここで示された

7. 製菓とのつながり

7-1. 菓子店と保健所

菓子店にとって、保健所はもっとも身近な衛生行政の機関である。菓子製造業を始めるときは、保健所に営業許可を申請し、施設が基準に合っているかの確認を受ける。営業を始めてからも、保健所の食品衛生監視員が施設を訪れ、衛生管理の状況を確認する。HACCPに沿った衛生管理の指導や、食品衛生責任者の講習会なども、保健所や食品衛生協会を通じて行われる(食品衛生学の本のHACCPと衛生管理計画の章を参照)。

万一、食中毒が疑われるときは、保健所が患者の聞き取り、施設の調査、食品の検査を行い、原因を突き止める。保健所は、店を「取り締まる」だけの存在ではなく、地域の食の安全を店と一緒に守るパートナーでもある。わからないことがあれば、早めに保健所に相談することが大切である。

7-2. 働く人を守る社会保障

菓子店で働く人も、社会保障に守られている。従業員を雇う店は、条件に応じて、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険に加入する必要がある。とくに労災保険は、労働者を一人でも雇えば原則として加入しなければならず、保険料は事業主が全額負担する。オーブンでのやけど、包丁での切り傷、重い粉袋の運搬による腰痛など、仕事中のけがや病気は労災保険の対象となる(第11章参照)。

7-3. 健康づくりと菓子

健康日本21(第三次)は、個人の努力だけでなく、自然に健康になれる環境づくりを重視している。菓子は楽しみの食品であるが、糖質や脂質が多く、食べ過ぎれば生活習慣病の原因にもなる(第9章参照)。

小さめのサイズの商品や、甘さや塩分をひかえた商品をつくること、栄養成分表示をわかりやすく示すことは、お客様が自分に合った量や種類を選びやすくする工夫である。菓子をつくる人も、健康を支える食環境の担い手の一人として、おいしさと健康の両立を考えることが求められている。

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1後期高齢者医療制度の対象は、65歳以上の人である

正しくは:後期高齢者医療制度の対象は75歳以上

Q2アクティブ80ヘルスプランは、第1次国民健康づくり対策の名称である

正しくは:アクティブ80ヘルスプランは第2次国民健康づくり対策(1988年〜)

Q3地域保健法に規定する保健所の業務には、老人の保健に関する事項はふくまれない

正しくは:母性及び乳幼児並びに老人の保健は保健所の業務にふくまれる

Q4健康増進法にもとづき、国民健康・栄養調査が行われている

この文のとおりです。

Q5市町村保健センターは、都道府県が設置する

正しくは:市町村保健センターは市町村が設置することができる

Q6地域保健法に規定する保健所の業務には、栄養の改善及び食品衛生に関する事項がふくまれる

この文のとおりです。

Q7保健所法は、1994年に健康増進法に改められた

正しくは:1994年に地域保健法に改められた。健康増進法は2002年制定

Q8労働者災害補償保険の保険料は、事業主が全額を負担する

この文のとおりです。

Q9第1次国民健康づくり対策では、健康づくりの三要素として栄養・運動・睡眠が示された

正しくは:三要素は栄養・運動・休養

Q10保健所は、住民に身近な健康相談や乳幼児健診などの対人保健サービスを主に行う施設である

正しくは:身近な対人保健サービスを主に行うのは市町村保健センター。保健所は広域的・専門的・技術的な業務を行う

Q11地域保健法に規定する保健所の業務には、住宅、水道、下水道、廃棄物の処理、清掃その他の環境の衛生に関する事項がふくまれる

この文のとおりです。

Q12健康日本21(第三次)は、国民健康づくり対策の第3次にあたる

正しくは:健康日本21(第三次)は国民健康づくり対策の第5次(2024年度〜)。健康日本21(最初)が第3次

Q13地域保健法に規定する保健所の業務には、国民健康保険に関する事項がふくまれる

正しくは:国民健康保険は保健所の業務ではない

Q14保健所は、すべての市町村が設置しなければならない

正しくは:保健所を設置するのは都道府県・指定都市・中核市・その他の政令市・特別区。市町村が設置できるのは市町村保健センター

Q15介護保険制度は2000年に始まり、保険者は市町村である

この文のとおりです。(特別区をふくむ)

Q16日本の社会保障は、社会保険、公的扶助、社会福祉、保健医療・公衆衛生の四つの柱で構成される

この文のとおりです。

Q17地域保健法に規定する保健所の業務には、生活保護に関する事項がふくまれる

正しくは:生活保護は福祉事務所が担当し、保健所の業務ではない

Q18市町村保健センターは、住民に対し、健康相談、保健指導及び健康診査その他地域保健に関し必要な事業を行う施設である

この文のとおりです。

Q19医療法では、病床が10床以上の施設を病院という

正しくは:病院は病床が20床以上。19床以下は診療所⚠️ 古い教材の「5疾病・5事業」は、2024年度から「5疾病・6事業」(新興感染症の医療を追加)になっている。

Q20労働衛生行政は、厚生労働省 → 都道府県 → 保健所 の系統で行われる

正しくは:労働衛生行政は厚生労働省 → 都道府県労働局 → 労働基準監督署の系統

Q21健康日本21(第二次)では、健康寿命の延伸と健康格差の縮小が目標とされた

この文のとおりです。(第三次でも基本的な方向の一つ)

Q22地域保健法に規定する保健所の業務には、労働衛生管理に関する事項がふくまれる

正しくは:労働衛生は労働基準監督署(労働衛生行政)が担当し、保健所の業務ではない

Q23学校保健行政は、厚生労働省 → 都道府県 → 保健所 の系統で行われる

正しくは:学校保健行政は文部科学省 → 教育委員会 → 学校の系統

Q24介護保険の第2号被保険者は、65歳以上の人である

正しくは:65歳以上は第1号被保険者。第2号被保険者は40〜64歳の医療保険加入者

Q25地域保健法に規定する保健所の業務には、医事及び薬事に関する事項がふくまれる

この文のとおりです。

Q26保健所は、地域保健法にもとづき、都道府県、指定都市、中核市、その他の政令で定める市、特別区が設置する

この文のとおりです。
結果:

まとめ

衛生行政は、日本国憲法第25条を根拠に、国・都道府県・市町村の三段階で行われる。対象と系統によって、一般衛生行政(厚生労働省 → 都道府県 → 保健所 → 市町村)、学校保健行政(文部科学省 → 教育委員会 → 学校)、労働衛生行政(厚生労働省 → 都道府県労働局 → 労働基準監督署)、環境保全行政(環境省)に分けられる。2023年には母子保健がこども家庭庁へ、2024年には水道の整備が国土交通省へ、水質基準が環境省へ、食品の規格・基準の策定が消費者庁へ移った。

保健所は、地域保健法にもとづき、都道府県・指定都市・中核市・その他の政令市・特別区が設置する地域保健の第一線機関で、広域的・専門的な業務と健康危機管理を担う(本所462か所、令和7年4月)。業務は14項目で、食品衛生、環境衛生、医事・薬事、母性・乳幼児・老人の保健、精神保健、感染症の予防などをふくむが、生活保護(福祉事務所)、国民健康保険、労働衛生(労働基準監督署)はふくまない。市町村保健センターは市町村が設置でき、健康相談・保健指導・健康診査などの身近な対人保健サービスを行う。

国民健康づくり対策は、第1次(1978年・栄養・運動・休養)、第2次(1988年・アクティブ80ヘルスプラン)、第3次(2000年・健康日本21)、第4次(2013年・健康日本21(第二次))、第5次(2024年・健康日本21(第三次)、「誰一人取り残さない健康づくり」)と進められてきた。

社会保障は、社会保険(医療・年金・介護・雇用・労災)、公的扶助(生活保護)、社会福祉、保健医療・公衆衛生の四つの柱からなる。1961年に国民皆保険・国民皆年金が実現し、2000年に介護保険(保険者は市町村、第1号は65歳以上、第2号は40〜64歳)、2008年に後期高齢者医療制度(75歳以上)が始まった。医療法では、20床以上が病院、19床以下が診療所である。

菓子店は、営業許可や監視指導、食中毒の調査を通じて保健所とかかわり、働く人は社会保障に守られている。次章では、公衆衛生の現状をとらえる道具である衛生統計と疫学を学ぶ。

※ 本書は、令和7年の人口動態統計、令和7年簡易生命表、令和8年10月時点の法令・制度にもとづいています。

タイトルとURLをコピーしました