公衆衛生学 第四部 ライフステージと職場の健康
産業保健(労働衛生)
はじめに
大人の多くは、一日の3分の1以上の時間を職場で過ごす。職場の環境や働き方は、働く人の健康に大きく影響する。暑い作業場での熱中症、重い物を運ぶことによる腰痛、機械の騒音による難聴、長時間の労働による過労やこころの不調。仕事が原因となる病気やけがは、決して少なくない。
働く人の健康と安全を守り、さらに健康を増進して、快適に働ける職場をつくる取り組みを産業保健(労働衛生)という。第1章で学んだラマツィーニが「産業医学の父」とよばれるように、職業と病気の関係は、古くから公衆衛生の大切な課題であった。
菓子をつくる仕事も例外ではない。オーブンの熱、重い粉袋、絞り袋を握り続ける手、早朝からの立ち仕事、濡れた床。菓子づくりの現場には、多くの健康上の危険がひそんでいる。また、将来、自分の店をもったり、従業員を雇ったりすれば、働く人の健康を守る事業者としての責任を負うことになる。
試験では、労働衛生の3管理、健康診断の種類、産業医の選任、職業性疾病と職業の組み合わせ、メンタルヘルス対策がよく出題される。本章では、産業保健の法律と体制、健康管理、職業性疾病、こころの健康を学ぶ。労働に関する法律の条文は、衛生法規の本で扱う。
1. 産業保健の法律
1-1. 主な法律
| 法律 | 制定 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 労働基準法 | 1947年 | 労働条件の最低基準を定める。労働時間、休憩、休日、年次有給休暇、年少者・妊産婦の保護など |
| 労働安全衛生法 | 1972年 | 労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境をつくる。安全衛生管理体制、健康診断、ストレスチェック、作業環境の管理など |
| 労働者災害補償保険法 | 1947年 | 仕事や通勤による病気、けが、障害、死亡に対して、保険による補償を行う(労災保険) |
| 男女雇用機会均等法 | 1985年 | 雇用での男女の均等な機会と待遇。妊娠中・出産後の女性の健康管理(母性健康管理) |
| じん肺法 | 1960年 | 粉じんを吸う作業をする労働者の健康管理 |
労働安全衛生法は、もともと労働基準法の中にあった安全衛生の規定を独立させ、より充実させた法律である。労働衛生行政は、厚生労働省 → 都道府県労働局 → 労働基準監督署の系統で行われる(第2章参照)。
1-2. 労働基準法の主な規定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法定労働時間 | 原則として、1日8時間、1週40時間を超えて働かせてはならない |
| 時間外労働 | 労使協定(36協定)を結び、労働基準監督署に届け出た場合に限り、時間外・休日労働が認められる。時間外労働には、原則として月45時間・年360時間の上限がある |
| 休憩 | 労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩を、労働時間の途中に与える |
| 休日 | 少なくとも毎週1日(または4週間に4日以上)の休日を与える |
| 年次有給休暇 | 6か月間継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に、10日の年次有給休暇を与える。年10日以上の年次有給休暇がある労働者には、そのうち年5日を確実に取得させなければならない |
| 年少者の保護 | 満18歳未満の者は、原則として深夜業(午後10時〜午前5時)や危険・有害な業務に就かせてはならない |
| 妊産婦の保護 | 産前6週間(多胎妊娠は14週間)は、本人が請求すれば休業させる。産後8週間は、原則として就業させてはならない(産後6週間を過ぎ、本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務は可)。妊産婦が請求した場合は、時間外労働や深夜業をさせてはならない |
| 育児時間 | 生後1年未満の子を育てる女性は、1日2回、それぞれ少なくとも30分の育児時間を請求できる |
2. 労働衛生の管理
2-1. 労働衛生の3管理と5管理
職場の健康を守るための基本的な対策を、労働衛生の3管理という。これに労働衛生教育と総括管理を加えたものを5管理という。
| 管理 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 作業環境管理 | 作業場の環境の中の有害な要因を取り除き、よい作業環境を保つ | 換気装置や局所排気装置の設置、冷房、騒音の低減、照明の改善、作業環境の測定 |
| 作業管理 | 作業の方法、労働時間、作業の負担を適切にして、体への影響を少なくする | 作業手順の見直し、作業姿勢の改善、休憩の確保、保護具(マスク、耳栓、手袋)の使用、重い物の運搬方法の工夫 |
| 健康管理 | 健康診断などによって働く人の健康状態をつかみ、その結果にもとづいて、健康障害を防ぐ | 健康診断と事後措置、保健指導、長時間労働者への面接指導、ストレスチェック |
| 労働衛生教育 | 働く人に、安全と健康についての知識を教える | 雇入れ時の教育、作業内容を変えたときの教育 |
| 総括管理 | 3管理と教育を、計画的・組織的に進める体制をつくる | 安全衛生委員会の運営、年間計画の策定 |
⚠️ 労働衛生の3管理は「作業環境管理・作業管理・健康管理」である。「労働時間管理」「安全管理」は3管理にふくまれない。また、「作業方法、労働時間、作業の負担を適切にする」のは作業管理であり、「作業環境管理」と取り違えないように注意する。
2-2. 安全衛生管理体制
労働安全衛生法では、事業場の業種と規模(常時使用する労働者の数)に応じて、安全と衛生を管理する人を選任し、委員会を設けることを事業者に義務づけている。菓子製造業は、製造業(食料品製造業)にあたる。
| 常時使用する労働者の数 | 製造業(菓子製造業をふくむ) | その他の業種(小売業の一部、飲食店など) |
|---|---|---|
| 10〜49人 | 安全衛生推進者 | 衛生推進者 |
| 50人以上 | 安全管理者、衛生管理者、産業医 | 衛生管理者、産業医 |
| 300人以上 | 総括安全衛生管理者 | (1,000人以上で総括安全衛生管理者) |
委員会は、次のように設置しなければならない。
| 委員会 | 設置が必要な事業場 |
|---|---|
| 衛生委員会 | すべての業種で、常時50人以上 |
| 安全委員会 | 業種によって異なる。食料品製造業は常時100人以上(木材・化学・金属などの製造業は50人以上) |
| 安全衛生委員会 | 衛生委員会と安全委員会の両方を設ける必要がある場合は、二つをまとめて安全衛生委員会とすることができる |
委員会は、毎月1回以上開き、働く人の健康障害や危険の防止について調べ、話し合う。
産業医は、医学の専門家として、健康診断の結果にもとづく意見、長時間労働者やストレスの高い人への面接指導、職場の巡視などを行う。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、産業医を選任しなければならない。常時1,000人以上(有害な業務では500人以上)の事業場では、その事業場専属の産業医が必要である。
⚠️ 菓子製造業(製造業)で10〜49人の事業場に必要なのは「安全衛生推進者」である。「衛生推進者」は、製造業以外の「その他の業種」の場合である。古い教材や資料では、菓子製造施設について「衛生推進者」と書かれていることがある。
⚠️ 「常時30人以上の労働者を使用する事業場は、産業医の選任が義務づけられている」は誤り。産業医の選任は「50人以上」である。また、食料品製造業の安全委員会は「100人以上」で、衛生委員会(50人以上)と基準が異なる。
なお、食品衛生監視員は、食品衛生法にもとづいて保健所などに置かれる公務員であり、労働安全衛生法で事業場に選任する者ではない。
3. 健康管理
3-1. 健康診断
労働安全衛生法では、事業者に、次のような健康診断を行うことを義務づけている。
| 健康診断 | 対象・時期 |
|---|---|
| 雇入れ時の健康診断 | 常時使用する労働者を雇い入れるとき |
| 定期健康診断 | 常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回 |
| 特定業務従事者の健康診断 | 深夜業など、特定の業務に就く労働者に、配置替えのときと、6か月以内ごとに1回 |
| 海外派遣労働者の健康診断 | 6か月以上海外に派遣する労働者に、派遣する前と、帰国して国内の業務に就くとき |
| 給食従業員の検便 | 事業場に附属する食堂や炊事場で給食の業務に従事する労働者に、雇入れのときと、その業務に配置替えするとき |
| 特殊健康診断 | 有機溶剤、鉛、粉じん(じん肺)、電離放射線など、有害な業務に従事する労働者に |
健康診断の費用は、事業者が負担する。常時50人以上の労働者を使用する事業者は、定期健康診断の結果を労働基準監督署に報告しなければならない。
健康診断は、受けるだけでは意味がない。事業者は、健康診断の結果、異常の所見がある労働者について医師の意見を聴き、必要に応じて、作業の転換や労働時間の短縮などの就業上の措置をとる(事後措置)。また、労働者には健康診断の結果を通知し、必要な人には保健指導を行うよう努める。
⚠️ 「雇入れ時の健康診断は、採用の可否を決めることを目的とする」は誤り。雇入れ時の健康診断は、雇い入れた労働者を適切な仕事に配置し、入社後の健康管理に役立てるためのものである。
⚠️ 「すべての事業場の事業者は、健康診断の結果を労働基準監督署に報告しなければならない」は誤り。定期健康診断の結果の報告が義務づけられているのは、常時「50人以上」の労働者を使用する事業者である。
⚠️ 食品を扱う人の検便の頻度は、労働安全衛生法ではなく、食品衛生の基準(大量調理施設衛生管理マニュアルなど)にもとづいて、事業者が定める(食品衛生学の本の施設と食品取扱者の衛生管理の章を参照)。「飲食業の従事者の検便は、労働安全衛生法で2か月に1回と定められている」は誤り。
3-2. 長時間労働と面接指導
長時間の労働は、脳・心臓疾患(過労死)や、こころの不調の大きな原因となる。事業者は、時間外・休日労働が月80時間を超え、疲労の蓄積が認められる労働者が申し出たときは、医師による面接指導を行わなければならない。
4. 職業性疾病と労働災害
4-1. 職業性疾病
仕事が原因で起こる病気を職業性疾病(職業病)という。
| 原因 | 主な健康障害 | 主な職業・作業の例 |
|---|---|---|
| 高温 | 熱中症 | ガラスの溶融、金属の圧延、鋳造、夏の屋外作業、厨房作業 |
| 低温 | 凍傷、低体温症 | 冷凍倉庫での作業 |
| 騒音 | 騒音性難聴(初めは4,000Hz付近の高い音が聞こえにくくなる) | 造船、機械・金属工業、建設、製缶 |
| 振動 | 振動障害(手指が白くなるレイノー現象〔白ろう病〕、しびれ) | チェーンソー、削岩機などの振動工具の使用 |
| 異常な気圧 | 減圧症(潜函病) | 潜水作業、潜函(ケーソン)作業 |
| 粉じん | じん肺(肺の線維化)、石綿肺、中皮腫 | 窯業、採石業、鉱業、トンネル工事、石綿の取扱い |
| 有機溶剤 | 有機溶剤中毒(頭痛、めまい、意識障害、肝臓・神経の障害) | 塗装、接着、印刷、ドライクリーニング |
| 金属 | 鉛中毒、水銀中毒など | 鉛を使う作業、電池の製造 |
| 電離放射線 | 放射線障害(白血病、白内障など) | 放射線を扱う医療、原子力施設 |
| 酸素の不足 | 酸素欠乏症 | タンク、マンホール、穀物の倉庫などでの作業 |
| 重量物・不自然な姿勢 | 腰痛、頸肩腕症候群、腱鞘炎 | 運搬、介護、保育、建設 |
| 情報機器作業(VDT作業) | 眼精疲労、首・肩のこり、腰痛、こころの疲労 | パソコン、タブレットなどを長時間使う作業 |
仕事による病気(休業4日以上)の中では、腰痛がもっとも多く、全体の約6割をしめる。近年は、熱中症も増えている。
⚠️ 職業性疾病と職業の組み合わせの問題では、「ウイルス感染:コンピュータ作業」のような誤った組み合わせに注意する。情報機器作業による主な健康障害は、眼精疲労や首・肩のこりなどである。
情報機器作業では、一連続の作業時間が1時間を超えないようにし、次の作業までに10〜15分の作業休止時間を設け、作業中にも小休止をとることがすすめられている。
4-2. 熱中症対策の義務化
職場の熱中症による死亡者が多いことから、2025年6月1日から、事業者に熱中症対策が義務づけられた。WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上、または1日4時間を超えて作業を行うことが見込まれる場合、事業者は、次のことをしなければならない(第4章参照)。
| 義務 | 内容 |
|---|---|
| 報告の体制 | 熱中症の自覚症状がある人や、熱中症のおそれがある人を見つけた人が、すぐに報告できる体制をつくる |
| 手順の作成 | 作業からの離脱、体を冷やす、医療機関への搬送など、重症化を防ぐための手順を決める |
| 周知 | 体制と手順を、関係する作業者に知らせる |
4-3. 労働災害と労災保険
仕事中や通勤中に起きた事故によるけがや死亡を労働災害という。労働災害(休業4日以上)の原因では、転倒がもっとも多く、次いで、重い物を持ち上げるときなどの動作の反動・無理な動作(腰痛など)が多い。
労災保険(労働者災害補償保険)は、労働者が業務上、または通勤によって病気になったり、けがをしたり、障害が残ったり、死亡したりしたときに、治療費や休業中の生活費などを給付する制度である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加入 | 労働者を1人でも雇用する事業は、原則として加入しなければならない |
| 保険料 | 事業主が全額負担する。労働者の負担はない |
| 対象 | パートタイマーやアルバイトをふくむ、すべての労働者 |
| 給付の例 | 療養補償給付(治療費)、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付 |
5. 職場のこころの健康
5-1. メンタルヘルス対策
仕事や職業生活に関して、強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者は、半数を超えている。仕事による強いストレスが原因で、精神障害を発病し、労災と認定される人も増えている。
厚生労働省の指針では、職場のメンタルヘルス対策を、次の4つのケアで進めることとしている。
| ケア | 内容 |
|---|---|
| セルフケア | 労働者自身が、ストレスに気づき、対処する |
| ラインによるケア | 管理監督者(上司)が、部下の様子の変化に気づき、職場の環境を改善し、相談にのる |
| 事業場内産業保健スタッフ等によるケア | 産業医、保健師、衛生管理者などが、労働者と管理監督者を支援する |
| 事業場外資源によるケア | 外部の専門機関(医療機関、地域産業保健センターなど)の支援を受ける |
5-2. ストレスチェック制度
ストレスチェック制度は、労働者のストレスの状態を調べ、本人に気づきをうながすとともに、職場の環境の改善につなげて、こころの不調を未然に防ぐ(一次予防)ための制度である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 開始 | 2015年12月 |
| 対象 | 常時50人以上の労働者を使用する事業場では、年1回の実施が義務 |
| 50人未満の事業場 | これまでは努力義務であったが、2025年5月の法改正で義務化されることが決まった(公布から3年以内に施行) |
| 結果の扱い | 結果は本人に直接通知され、本人の同意なく事業者に伝えてはならない |
| 面接指導 | 高ストレスと判定された人が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を行う |
⚠️ ストレスチェック制度の目的は、こころの不調の「未然防止」(一次予防)である。こころの病気の人を見つけ出すこと(二次予防)が主な目的ではない。
5-3. ハラスメントの防止
職場でのパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメントは、働く人のこころの健康を大きく損なう。法律によって、事業主には、ハラスメントを防ぐための相談体制の整備などの措置が義務づけられている。
6. 製菓とのつながり
6-1. 菓子製造で起こりやすい健康障害
菓子づくりの現場には、次のような健康上の危険がある。
| 危険 | 主な場面 | 予防の工夫 |
|---|---|---|
| 腰痛 | 小麦粉や砂糖の袋(20〜25kg)の運搬、中腰での作業、長時間の立ち仕事 | 重い物は二人で、または台車で運ぶ。ひざを曲げて持ち上げる。作業台の高さを体に合わせる |
| 腱鞘炎・頸肩腕症候群 | 絞り袋を握り続ける、泡立て、生地をのばす、同じ動作のくり返し | 作業の交代、ストレッチ、道具や機械の活用 |
| やけど | オーブン、天板、煮つめた砂糖液(あめ)、揚げ油、蒸気 | 耐熱手袋の使用、天板の置き場所の決まりをつくる、声をかけ合う |
| 切り傷 | 包丁、スライサー、缶のふた、ガラス | 刃物の正しい扱いと保管、切創防止手袋の使用 |
| はさまれ・巻き込まれ | ミキサー、シーター、スライサーなどの機械 | 機械を止めてから清掃・調整する、安全装置を外さない |
| 転倒 | 水や油、粉で濡れた床、段差 | こまめな清掃、滑りにくい靴、整理整頓 |
| 熱中症 | 夏のオーブンまわり、蒸し器の前 | 冷房・換気、こまめな水分と塩分の補給、WBGTの確認(第4章参照) |
| 低温による障害 | 冷凍庫・冷蔵庫での作業 | 防寒着、作業時間の短縮。中から開けられる扉の確認 |
| 職業性ぜんそく | 小麦粉などの粉じんを長年吸いこむ(「パン職人のぜんそく」ともよばれる) | 粉をふるう・投入するときに粉を舞い上げない、換気、マスクの着用 |
菓子製造業をふくむ食料品製造業は、製造業の中でも労働災害の多い業種の一つである。とくに、機械によるはさまれ・巻き込まれ、転倒、切れ・こすれ、やけどなどの災害が多い。
6-2. 早朝の仕事と健康診断
菓子店やパン店では、早朝から仕込みを始めることが多い。労働安全衛生法では、午後10時から午前5時までの深夜業を常時行う労働者は、特定業務従事者として、6か月以内ごとに1回の健康診断の対象となる。不規則な生活や睡眠不足は、生活習慣病やこころの不調の原因にもなる(第9章参照)。
6-3. 自分の店をもつときに
将来、自分の菓子店を開き、従業員を雇うときは、事業者として、働く人の健康と安全を守る責任を負う。労災保険への加入、雇入れ時と年1回の健康診断、労働時間と休憩・休日の管理、熱中症対策、そして従業員が体調の悪いときに無理をせずに申し出られる雰囲気づくり。従業員の健康を守ることは、食中毒を防ぎ、お客様に安全な菓子を届けることにもつながる。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1労災保険は、労働者を1人でも雇用する事業に原則として適用される
Q2過重労働対策として、時間外・休日労働時間の削減などが求められている
Q3衛生委員会は、業種にかかわらず、常時50人以上の労働者を使用する事業場に設置しなければならない
Q4労働衛生の3管理とは、作業環境管理・作業管理・労働時間管理である
Q5作業方法や労働時間、作業の負担を適切にして労働負担を軽減する管理を、作業環境管理という
Q6メンタルヘルスケアは、セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4つで進める
Q76か月以上海外に派遣する労働者に対して、健康診断を実施しなければならない
Q8ストレスチェック制度は、常時10人以上の事業場で年2回の実施が義務づけられている
Q9深夜業に従事する労働者には、6か月以内ごとに1回、健康診断を行わなければならない
Q10すべての事業場の事業者は、健康診断の結果を労働基準監督署に報告しなければならない
Q11食料品製造業では、常時50人以上の事業場に安全委員会を設置しなければならない
Q12常時30人以上の労働者を使用する事業場は、産業医の選任が義務づけられている
Q13飲食業の従事者に対する検便による健康診断は、労働安全衛生法で2か月に1回と定められている
Q14労働安全衛生法にもとづき事業場が選任する者には、食品衛生監視員がふくまれる
Q15労働時間が8時間を超える場合、休憩は少なくとも30分与えればよい
Q16高温多湿な環境での作業は熱中症の危険があるため、環境の改善が必要である
Q17ストレスチェック制度は、メンタルヘルス不調を未然に防止することを目的とする
Q18労働衛生の3管理は、作業環境管理・作業管理・健康管理である
Q19熱中症:ガラス溶融、じん肺:窯業、腰痛症:保育士という職業性疾病と職業の組み合わせは正しい
Q20じん肺は、主に有機溶剤を扱う作業で起こる
Q21コンピュータ作業による主な健康障害は、ウイルス感染である
Q22菓子製造業で常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、衛生推進者を選任する
Q23騒音性難聴は、初めは低い音から聞こえにくくなる
Q24労働基準法では、法定労働時間を1日10時間・週48時間と定めている
Q25雇入れ時の健康診断は、採用の可否を決定することを目的とする
Q26労災保険の保険料は、事業主と労働者が半分ずつ負担する
まとめ
働く人の健康と安全を守る産業保健は、労働基準法(1947年。1日8時間・週40時間、休憩は6時間超で45分・8時間超で60分)、労働安全衛生法(1972年)、労災保険法などにもとづく。行政の系統は、厚生労働省 → 都道府県労働局 → 労働基準監督署である。
労働衛生の基本は3管理(作業環境管理=有害要因の除去、作業管理=作業方法・時間・負担の適正化、健康管理=健康診断と事後措置)で、労働衛生教育と総括管理を加えて5管理となる。
菓子製造業(製造業)では、常時10〜49人で安全衛生推進者、50人以上で衛生管理者・産業医・安全管理者を選任し、衛生委員会(全業種50人以上)を設ける。食料品製造業の安全委員会は100人以上で必要となり、両方を置く場合は安全衛生委員会にまとめられる。
健康診断には、雇入れ時、定期(年1回)、特定業務従事者(深夜業など、6か月以内ごと)、海外派遣(6か月以上)、有害業務の特殊健康診断などがある。雇入れ時の健診は採否を決めるためのものではなく、結果の報告義務は50人以上の事業者にある。
職業性疾病には、熱中症(高温)、騒音性難聴(4,000Hz付近から)、振動障害(レイノー現象)、じん肺(粉じん・窯業)、有機溶剤中毒、腰痛(業務上疾病で最多)、情報機器作業による眼精疲労などがある。2025年6月から熱中症対策が義務化された。労災保険は、労働者を1人でも雇えば加入し、保険料は事業主が全額負担する。
こころの健康は、4つのケアと、ストレスチェック制度(50人以上で年1回義務、50人未満も義務化が決定、目的は未然防止)で守る。
菓子づくりの現場では、腰痛、腱鞘炎、やけど、機械によるけが、転倒、熱中症、粉じんによるぜんそくに注意が必要である。次章は巻末の直前総まとめである。これまでの11章の要点と、試験によく出るひっかけを総点検する。
※ 本書は、令和7年の人口動態統計、令和7年簡易生命表、令和8年10月時点の法令・制度にもとづいています。

