食品学 第三部 食品と社会のはなし
食品の加工と保存
はじめに
第三部では、食品が私たちの手に届くまでの流れと、食品をとりまく社会のしくみを学ぶ。最初に取り上げるのは、食品の加工と保存である。
収穫したばかりの小麦はそのままでは食べられず、しぼった生乳は数日で傷んでしまう。人類は、食品を粉にし、加熱し、発酵させ、乾かし、塩や砂糖に漬けることで、食べやすく、おいしく、長く保てるものに変えてきた。パン、チーズ、ヨーグルト、みそ、しょうゆ、ジャム、ドライフルーツは、いずれもこうした知恵の産物である。
菓子もまた、加工食品の一つである。そして菓子店にとって、製品をどれだけの期間、安全でおいしい状態に保てるかは、販売のしかたや期限表示を決める大切な問題である。
本章では、食品の加工の目的と方法、加工に利用される微生物と酵素を学び、後半では、第2章(水分活性)や第5章(変質)で学んだ知識をもとに、食品を保存するさまざまな方法を整理する。
1. 食品の加工
1-1. 加工の目的
| 目的 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 保存性を高める | 微生物の増殖や成分の変化を抑え、長く保てるようにする | 乾燥、塩蔵、糖蔵、缶詰、冷凍食品 |
| 食べやすく、消化しやすくする | 不要な部分を除き、やわらかくする | 精米、製粉、豆腐 |
| 嗜好性を高める | 味・香り・色・食感をよくする | パン、菓子、チーズ、焙煎 |
| 栄養価を高める | 栄養素を加えたり、吸収をよくしたりする | 強化米、ビタミン強化食品 |
| 安全性を高める | 有害な成分や微生物を除く | 加熱殺菌、こんにゃくのあく抜き |
| 利便性を高める | 調理の手間を省き、運びやすくする | インスタント食品、冷凍食品、レトルト食品 |
1-2. 加工の方法
| 方法 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 物理的な加工 | 力や熱、圧力などを加えて形や状態を変える | 粉砕(製粉)、混合、分離(遠心分離・ろ過)、加熱、冷却、乾燥、濃縮、成形、乳化 |
| 化学的な加工 | 化学反応を利用して成分を変える | 硬化油(水素添加)、酸による水あめの製造、こんにゃくの凝固 |
| 生物的な加工 | 微生物や酵素の働きを利用する | 発酵食品、酵素を使った糖の製造 |
2. 食用微生物と発酵食品
2-1. 食品の加工に利用される微生物
食品の加工に利用される微生物には、かび、酵母、細菌がある。微生物が食品の成分を分解して、人にとって有用なものをつくる現象が発酵である(第5章参照)。
| 微生物 | 主な種類 | 主な働き | 利用される食品 |
|---|---|---|---|
| かび | こうじかび | でんぷんを糖に、たんぱく質をアミノ酸に分解する強い酵素をつくる | 清酒、みそ、しょうゆ、みりん、甘酒、米酢 |
| かび | 黒こうじかび | クエン酸を多くつくる | 泡盛、焼酎 |
| かび | かつお節かび | かつお節の水分を減らし、脂肪を分解し、香りをよくする | かつお節(枯節) |
| かび | 青かび | チーズの内部で熟成させる | ブルーチーズ(ロックフォール、ゴルゴンゾーラ) |
| かび | 白かび | チーズの表面で熟成させる | カマンベール、ブリー |
| 酵母 | パン酵母、清酒酵母、ビール酵母、ワイン酵母など | 糖をアルコールと二酸化炭素に分解する(アルコール発酵) | パン、清酒、ビール、ワイン、みそ・しょうゆの香り |
| 細菌 | 乳酸菌 | 糖を乳酸に変える(乳酸発酵) | ヨーグルト、チーズ、漬物、発酵バター、みそ・しょうゆ、サワー種のパン |
| 細菌 | 酢酸菌 | アルコールを酢酸に変える(酢酸発酵) | 食酢 |
| 細菌 | 納豆菌 | 大豆のたんぱく質を分解し、粘りをつくる | 納豆 |
日本の発酵食品の多くに使われるこうじかび(アスペルギルス・オリゼー)は、日本の「国菌」とも呼ばれる。こうじかびを、蒸した米・麦・大豆などに繁殖させたものを麹(こうじ)という。こうじかびはかび毒をつくらない、安全性の高いかびである。
2-2. 発酵食品のつくり方の例
| 食品 | かかわる微生物 | 要点 |
|---|---|---|
| パン | 酵母 | 酵母が糖を分解してできる二酸化炭素で生地が膨らむ。アルコールは焼成で大部分が飛び、香りの一部になる |
| ヨーグルト | 乳酸菌 | 乳酸でpHが下がり、カゼインが凝固する(第10章参照) |
| ナチュラルチーズ | 乳酸菌・レンネット(・かび) | 凝固させたカゼインを、乳酸菌やかびで熟成させる |
| みそ・しょうゆ | こうじかび+酵母+乳酸菌 | こうじかびがでんぷんとたんぱく質を分解し、酵母が香りを、乳酸菌が酸味と風味をつくる |
| 清酒 | こうじかび+酵母 | こうじかびによる糖化と、酵母によるアルコール発酵が同時に進む(並行複発酵、第11章参照) |
| 納豆 | 納豆菌 | 蒸した大豆に納豆菌を加え、約40℃で発酵させる |
| 漬物 | 乳酸菌・酵母 | ぬか漬けやすぐき漬けは、乳酸菌が酸味と風味をつくる |
| 食酢 | 酵母+酢酸菌 | 酵母でアルコール発酵させたあと、酢酸菌で酢酸発酵させる |
| かつお節 | かつお節かび | かびを付けては日に干す工程を繰り返し、水分を抜いてうま味と香りを高める |
2-3. 酵素の利用
微生物そのものではなく、微生物や植物などからとった酵素を利用して食品をつくることもある。
| 酵素 | 作用 | 利用 |
|---|---|---|
| アミラーゼ | でんぷんを糖に分解 | 水あめ、ブドウ糖の製造、パンの品質改良 |
| グルコースイソメラーゼ(異性化酵素) | ブドウ糖を果糖に変える | 異性化糖の製造(第11章参照) |
| インベルターゼ | ショ糖をブドウ糖と果糖に分解 | 転化糖の製造、チョコレート菓子の中身をやわらかくする |
| ラクターゼ | 乳糖を分解 | 乳糖を分解した牛乳 |
| キモシン(レンネット) | カゼインを凝固させる | チーズ |
| ペクチナーゼ | ペクチンを分解 | 果汁の濁りをとる(清澄化) |
| プロテアーゼ | たんぱく質を分解 | 調味料、肉をやわらかくする |
3. 食品の保存の考え方
3-1. 食品の品質を落とす原因
食品の品質を落とす主な原因は、次の3つである(第5章参照)。
- 微生物の増殖(腐敗・変敗・食中毒)
- 酵素の作用(褐変・軟化・自己消化)
- 化学的な変化(脂質の酸化、非酵素的褐変、ビタミンの分解)
このほか、乾燥や吸湿、でんぷんの老化、虫やねずみの害なども品質低下の原因になる。
3-2. 保存の基本
食品の保存は、これらの原因を抑えることである。微生物に対しては、次の条件をコントロールする。
| 条件 | 保存の方法 |
|---|---|
| 温度 | 低温にして増殖を遅らせる(冷蔵・冷凍)、高温で殺す(加熱殺菌) |
| 水分(水分活性) | 水分活性を下げる(乾燥・塩蔵・糖蔵) |
| pH | 酸性にする(酢漬け) |
| 酸素 | 酸素を断つ(真空包装・ガス置換・脱酸素剤) |
| その他 | くん煙、放射線照射、保存料などの添加物 |
実際の食品では、一つの方法だけに頼るのではなく、いくつかの方法を組み合わせて保存性を高めることが多い。たとえばジャムは、糖で水分活性を下げ、果実の酸でpHを下げ、加熱殺菌して密封することで、常温で長く保てる。このように、一つひとつはゆるやかな条件でも、組み合わせることで微生物が越えられない「障害物」をいくつも並べる考え方を、ハードル理論という。
4. 物理的な保存方法
4-1. 低温による保存
温度を下げると、微生物の増殖や酵素の働き、化学反応の速さが遅くなる。ただし、低温では多くの微生物は死なずに活動を止めるだけであり、温度が上がれば再び増殖する。
| 方法 | 温度の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 0〜10℃ | 食品衛生法の保存基準では「10℃以下」とされる食品が多い。家庭用冷蔵庫の冷蔵室は約3〜6℃ |
| チルド | 0℃前後(およそ−5〜5℃) | 凍らせずに冷蔵より低い温度で保存する。肉・魚・乳製品 |
| 氷温 | 0℃から食品が凍り始める直前までの温度 | 食品の凍結点は、溶けている成分のために0℃より低いことを利用する |
| パーシャルフリージング(微凍結) | 約−3℃前後 | 食品の表面などが一部凍る状態。魚・肉 |
| 冷凍 | −15℃以下(食品衛生法)、−18℃以下(国際規格・業界の基準) | 長期保存が可能 |
冷凍食品の保存温度について、食品衛生法の保存基準は−15℃以下である。一方、国際的な規格(コーデックス規格)や、日本の冷凍食品業界の自主的な基準では、品質を保つための温度として−18℃以下が用いられている。試験では、どちらの基準を問われているかに注意する。
なお、低温で保存していても増殖できる細菌(リステリアなど)もあるため、冷蔵を過信してはいけない(食品衛生学の本(準備中)を参照)。また、さつまいも・バナナ・きゅうりなどは、低すぎる温度で傷む低温障害を起こす(第7章・第8章参照)。
4-2. 冷凍と解凍
食品を凍らせると、食品中の水が氷の結晶になる。食品中の水が最も多く氷になる温度帯(約−1〜−5℃)を、最大氷結晶生成帯という。
| 凍結の速さ | 最大氷結晶生成帯の通過 | 氷の結晶 | 品質 |
|---|---|---|---|
| 急速凍結 | 短時間で通過する | 小さい | 細胞の損傷が少なく、解凍したときに水分(ドリップ)が流れ出にくい |
| 緩慢凍結 | ゆっくり通過する | 大きい | 細胞が壊れ、ドリップが多く、食感が落ちる |
市販の冷凍食品は、品質を保つため、この温度帯を短時間で通過させる急速凍結でつくられている。
冷凍した食品は、解凍のしかたによっても品質が変わる。冷蔵庫の中でゆっくり解凍する、凍ったまま加熱調理するなどの方法がある。一度解凍した食品を再び凍らせると、氷の結晶が大きくなり、品質が大きく落ちるとともに、解凍中に増えた微生物の問題もあるため、避ける。
冷凍中は、氷が少しずつ昇華して食品の表面が乾燥し、脂質も酸化する(冷凍焼け、第5章参照)。しっかり包装し、温度の変化を少なくすることで防ぐ。
4-3. 乾燥
乾燥は、水分を除いて水分活性を下げることで、微生物の増殖を抑える方法である(第2章参照)。重さと体積が減るため、輸送や保存にも便利である。
| 方法 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 天日乾燥 | 日光と風で乾かす | 干し柿、干ししいたけ、切り干しだいこん、寒天 |
| 熱風乾燥 | 熱い風を当てて乾かす | 乾燥野菜、乾燥果実 |
| 噴霧乾燥(スプレードライ) | 液体を熱い空気の中に霧状に吹きつけ、瞬間的に乾かして粉にする | 粉乳、インスタントコーヒー、粉末果汁 |
| ドラム乾燥 | 加熱したドラムの表面に液を薄く広げて乾かす | α化でんぷん、ベビーフード |
| 真空凍結乾燥(フリーズドライ) | 食品を急速に凍らせ、減圧して氷を昇華させて乾かす | インスタントのみそ汁・スープ、インスタントコーヒー、フリーズドライの果物 |
| 焙乾 | 煙でいぶしながら乾かす | かつお節 |
真空凍結乾燥は、低温で乾燥するため、色・香り・栄養素の損失が少なく、多孔質で水や湯を加えると元の状態に戻りやすい(復元性がよい)。ただし、設備と費用がかかる。
4-4. 加熱殺菌
食品を加熱して、微生物を殺したり、酵素を失活させたりする方法である。
| 方法 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 低温殺菌(パスツリゼーション) | 100℃以下(63℃で30分など)で加熱する。風味の変化が少ないが、すべての微生物は死なないため、冷蔵が必要 | 牛乳、果汁、清酒(火入れ) |
| 高温殺菌 | 100℃以上(加圧して)で加熱する | 缶詰、レトルト食品 |
| 超高温瞬間殺菌 | 120〜150℃で数秒加熱する | 牛乳(第10章参照) |
4-5. 缶詰・びん詰・レトルト食品
缶詰・びん詰は、食品を容器に詰め、中の空気を抜いて(脱気)密封したあと、加熱殺菌し、冷却したものである。密封されているため、外から微生物が入らず、常温で長く保存できる。
殺菌の条件は、食品の酸性度によって異なる。
| 食品の種類 | 殺菌の条件(目安) | 例 |
|---|---|---|
| 酸性の食品(pH4.6以下) | 100℃以下の加熱でよい(酸性ではボツリヌス菌などが増えないため) | 果実の缶詰、ジャム、トマト |
| 低酸性の食品(pH4.6を超え、水分活性0.94を超えるもの) | 食品衛生法の基準により、中心部の温度を120℃で4分間加熱するか、これと同等以上の方法で殺菌する | 魚・肉・野菜の缶詰、レトルト食品 |
低酸性の食品の殺菌条件が厳しいのは、加熱に強い芽胞をつくるボツリヌス菌を確実に殺すためである。
レトルト食品(レトルトパウチ食品)は、光や空気を通さない耐熱性の袋に食品を詰めて密封し、加圧加熱殺菌釜(レトルト)で殺菌したものである。缶詰と同じ考え方で常温保存ができ、袋のまま温められる。
無菌充填包装は、食品と容器をそれぞれ別に殺菌し、無菌の状態で詰めて密封する方法で、LL牛乳などに用いられる(第10章参照)。
4-6. 放射線照射
食品にガンマ線などの放射線を当てて、殺菌・殺虫・発芽防止を行う方法である。放射線は食品の温度をほとんど上げずに処理できる。世界では香辛料の殺菌などに使われている国もあるが、日本では、じゃがいもの発芽防止のためにコバルト60のガンマ線を照射することだけが認められている。照射した食品は、その旨の表示が必要である。
4-7. CA貯蔵
CA貯蔵(空気調整貯蔵)は、貯蔵庫の中の空気の組成を変えて、酸素を減らし、二酸化炭素を増やし、低温を組み合わせることで、果実や野菜の呼吸を抑えて鮮度を保つ方法である。りんごの長期貯蔵に広く使われている。包装の中の気体の組成を調整する方法(MA包装)もある。
5. 化学的な保存方法
| 方法 | しくみ | 例 |
|---|---|---|
| 塩蔵(塩漬け) | 食塩が水を引きつけて自由水を減らし、水分活性を下げる。高い塩分濃度による脱水作用もある | 塩漬けの桜の花・葉、漬物、塩辛、塩さけ、たらこ |
| 糖蔵(砂糖漬け) | 砂糖が自由水を減らし、水分活性を下げる。食塩より多くの量(50〜65%以上)が必要 | ジャム、マーマレード、砂糖漬け、ようかん、甘納豆、加糖練乳 |
| 酢漬け | 酢酸などでpHを下げ、細菌の増殖を抑える | ピクルス、らっきょう漬け、マリネ |
| くん煙 | 木材を燃やした煙でいぶす。煙に含まれるフェノール類などの殺菌・抗酸化作用、表面の乾燥、独特の香りを与える | ハム、ベーコン、ソーセージ、くん製の魚 |
| アルコール | アルコールの殺菌・静菌作用 | 果実酒漬け、洋酒を打った菓子 |
| 添加物 | 保存料、防かび剤、酸化防止剤など | 食品衛生学の本(準備中)を参照 |
くん煙は、温度によって分けられる。低温で長時間いぶす冷燻(保存性が高い、スモークサーモン)、中程度の温度の温燻(ハム・ベーコン・ソーセージ)、高温で短時間いぶす熱燻(香りづけが中心)がある。
6. 包装による保存
包装は、外からの微生物・異物・湿気・光・酸素から食品を守る、保存の重要な手段である。
| 方法 | しくみ | 菓子での例 |
|---|---|---|
| 脱酸素剤 | 袋の中の酸素を吸収する(主に鉄粉が酸化して酸素を取り込む)。カビの発育と脂質の酸化を防ぐ | 焼き菓子、カステラ、和菓子、ナッツ |
| 乾燥剤 | 袋の中の湿気を吸収する(シリカゲル、生石灰など)。吸湿によるしけを防ぐ | クッキー、せんべい、焼き菓子 |
| アルコール揮散剤 | 袋の中にアルコール(エタノール)の蒸気を少しずつ出し、カビや微生物の増殖を抑える | 和洋の生菓子、どら焼き、カステラ、半生菓子 |
| ガス置換包装 | 袋の中の空気を、窒素や二酸化炭素に置きかえる | スナック菓子、粉乳、ナッツ |
| 真空包装 | 袋の中の空気を抜いて密封する | 肉、チーズ、ナッツ |
| 遮光包装 | 光を通しにくいアルミなどの包材 | チョコレート、油脂を多く含む菓子 |
脱酸素剤と乾燥剤は、似た形をしているが働きがまったく異なる。脱酸素剤は酸素を、乾燥剤は湿気を吸う。脂質の酸化やカビを防ぎたいときは脱酸素剤、さくさくした食感を保ちたいときは乾燥剤を選ぶ。両方の働きを持つ製品もある。また、脱酸素剤は、袋の密封性が低いと効果がない。包材は、酸素や湿気を通しにくい(ガスバリア性の高い)ものを選ぶ。
7. 製菓とのつながり
7-1. 菓子の日持ちを設計する
菓子の日持ちは、本章と第2章・第5章の知識を組み合わせて考えることができる。
| 菓子 | 主な保存のしくみ | 期限表示 |
|---|---|---|
| 生クリームのケーキ、カスタードのシュー | 水分活性が高く、微生物が増えやすい。冷蔵が必須 | 消費期限(短い) |
| どら焼き、大福、生菓子 | 水分活性がやや高い。アルコール揮散剤や脱酸素剤で日持ちを延ばすことがある | 消費期限、または賞味期限 |
| カステラ、パウンドケーキ | 糖が多く水分活性がやや低い。脱酸素剤で酸化とカビを防ぐ | 賞味期限 |
| ようかん | 糖が非常に多く(糖蔵)、加熱して密封すると、常温で長く保存できる | 賞味期限(長い) |
| クッキー、サブレ | 水分活性が低い。乾燥剤でしけを防ぎ、脱酸素剤で酸化を防ぐ | 賞味期限 |
| ジャム、砂糖漬け | 糖蔵+酸+加熱殺菌+密封 | 賞味期限(長い) |
期限表示の決め方は、第13章と衛生法規の食品表示法の章で扱う。
7-2. 冷凍の活用
パイ生地、タルト生地、クッキー生地、スポンジケーキ、ムースなどは、冷凍して保存することが多い。急速に凍らせて氷の結晶を小さくし、乾燥と酸化を防ぐために密封する。解凍は冷蔵庫の中でゆっくり行い、一度解凍したものは再び凍らせない。冷凍によってでんぷんの老化を防ぐこともできる(第3章参照)。
7-3. 発酵の恵み
パンの酵母、発酵バターやヨーグルトの乳酸菌、チーズのかび、洋酒や酒まんじゅうの酵母とこうじかびなど、菓子は発酵の産物を多く使っている。酒まんじゅうは、甘酒(こうじかびでつくる)や酒種の酵母で生地を発酵させてつくる和菓子である。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1食酢は、乳酸菌がアルコールを酢酸に変えてつくる
Q2パンは、酵母がつくる二酸化炭素によって生地が膨らむ
Q3アルコール揮散剤は、包装内にアルコールの蒸気を出して、カビなどの増殖を抑える
Q4CA貯蔵は、酸素を増やし、二酸化炭素を減らして保存する方法である
Q5ブルーチーズには青かびが、カマンベールチーズには白かびが利用される
Q6糖蔵では、塩蔵より多くの量の砂糖が必要である
Q7緩慢凍結のほうが、氷の結晶が小さく、ドリップが少ない
Q8冷蔵や冷凍によって、食品中の微生物はすべて死滅する
Q9くん煙には、煙に含まれるフェノール類などによる殺菌作用と抗酸化作用がある
Q10チーズの製造には、カゼインを凝固させる酵素キモシン(レンネット)が使われる
Q11噴霧乾燥は、粉乳やインスタントコーヒーの製造に利用される
Q12みそ・しょうゆの製造には、こうじかびだけが関与する
Q13低酸性の缶詰は、中心部の温度を100℃で4分間加熱すればよい
Q14食品衛生法による冷凍食品の保存基準は、−5℃以下である
Q15ジャムは、糖による水分活性の低下、酸によるpHの低下、加熱殺菌と密封を組み合わせて保存性を高めている
Q16低温殺菌(パスツリゼーション)は、風味の変化が少ないが、殺菌後も冷蔵が必要である
Q17納豆は、こうじかびを利用してつくる
Q18日本では、放射線照射は香辛料の殺菌にも認められている
Q19酢漬けは、pHを上昇させて微生物の増殖を抑える
Q20冷蔵は、10〜20℃で保存する方法である
Q21急速凍結は、最大氷結晶生成帯を短時間で通過させるため、品質の低下が少ない
Q22真空凍結乾燥した食品は、復元性が悪い
Q23脱酸素剤は、袋の中の湿気を吸収して、焼き菓子がしけるのを防ぐ
Q24最大氷結晶生成帯は、−20〜−30℃である
Q25真空凍結乾燥(フリーズドライ)は、高温で水分を蒸発させる方法である
Q26塩蔵や糖蔵は、自由水を増やして保存性を高める方法である
まとめ
食品の加工には、保存性・食べやすさ・嗜好性・栄養価・安全性・利便性を高める目的があり、物理的・化学的・生物的な方法がある。生物的な加工では、こうじかび(清酒・みそ・しょうゆ・みりん)、青かび・白かび(チーズ)、酵母(パン・酒類)、乳酸菌(ヨーグルト・チーズ・漬物)、酢酸菌(食酢)、納豆菌(納豆)などの微生物と、アミラーゼ・インベルターゼ・キモシンなどの酵素が利用される。
食品の保存は、微生物・酵素・化学的変化を抑えることであり、温度・水分活性・pH・酸素などの条件をコントロールする。いくつかの方法を組み合わせるのが基本である(ハードル理論)。
低温保存では、冷蔵(0〜10℃)、チルド、氷温、冷凍(食品衛生法の保存基準は−15℃以下、国際規格・業界の基準は−18℃以下)がある。冷凍は最大氷結晶生成帯(約−1〜−5℃)を短時間で通過する急速凍結がよい。乾燥では、噴霧乾燥(粉乳)や真空凍結乾燥(減圧して氷を昇華させる。復元性がよい)が重要である。低酸性の缶詰・レトルト食品は中心部120℃で4分間以上の加熱殺菌を行う。日本で放射線照射が認められているのはじゃがいもの発芽防止だけである。CA貯蔵は酸素を減らし二酸化炭素を増やして呼吸を抑える。
化学的な方法では、塩蔵・糖蔵(水分活性を下げる)、酢漬け(pHを下げる)、くん煙(フェノール類による殺菌・抗酸化)がある。包装では、脱酸素剤(酸素を吸収)、乾燥剤(湿気を吸収)、アルコール揮散剤、ガス置換、真空包装が使われる。
菓子の日持ちは、水分活性、糖、酸、加熱、包装、温度の組み合わせで決まる。次章では、こうしてつくられた食品を正しく選ぶための、食品の表示と保健機能食品を学ぶ。
※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

