食品学 第三部 食品と社会のはなし
食品の表示と保健機能食品
はじめに
食品の包装には、名称、原材料、期限、保存方法、栄養成分、アレルゲンなど、多くの情報が書かれている。これらの食品表示は、食品を選ぶ人にとって、その食品の中身を知るための唯一の手がかりである。特に、食物アレルギーのある人にとって、表示は命にかかわる情報である。
一方、菓子をつくって売る人にとって、表示は「つくる側の責任」を示すものである。どの原材料をどれだけ使ったか、添加物は何か、いつまで安全においしく食べられるか、アレルゲンは含まれるか。表示をつくるためには、本書でこれまで学んできた食品の成分・加工・保存の知識がすべて必要になる。
食品表示の法律としての決まり(食品表示法の目的、罰則、行政のしくみなど)は、衛生法規の本の食品表示法の章で詳しく扱っている。本章では、表示を読み、表示をつくる人の目線で、食品表示の内容を整理し、健康にかかわる表示を持つ保健機能食品と特別用途食品を学ぶ。
1. 食品表示のしくみ
1-1. 食品表示法
食品の表示についての決まりは、かつて食品衛生法、JAS法(日本農林規格等に関する法律)、健康増進法の3つの法律に分かれていた。これらの表示に関する規定を一つにまとめたものが食品表示法である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制定・施行 | 平成25年制定、平成27年(2015年)4月1日施行 |
| まとめた法律 | 食品衛生法・JAS法・健康増進法の表示に関する規定 |
| 具体的な決まり | 食品表示基準(内閣府令)で定める |
| 担当する国の機関 | 消費者庁 |
1-2. 表示の対象
食品表示基準では、食品を加工食品、生鮮食品、添加物に分けて、それぞれ表示する事項を定めている(第1章参照)。
表示の義務は、主に容器に入れたり包装したりして販売される食品(容器包装に入れられた加工食品)にかかる。洋菓子店や和菓子店で、店内でつくった菓子を、その場で量り売りしたり、包装せずに対面で販売したりする場合などは、表示の義務の多くが免除される。ただし、その場合でも、アレルゲンなどの情報を、店頭の掲示や口頭で伝えることが望まれる。表示が免除される場合の詳しい決まりは、衛生法規の本で扱う。
1-3. 加工食品の主な表示事項
容器包装に入れられた加工食品には、原則として次の事項を表示する。
| 表示事項 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | その食品の内容を表す一般的な名称 |
| 原材料名 | 使用した原材料を、重量の多い順に書く |
| 添加物 | 原材料と区分して、重量の多い順に書く |
| 原料原産地名 | 重量割合が1位の原材料の原産地 |
| 内容量 | 重量・体積・個数など |
| 期限表示 | 消費期限または賞味期限 |
| 保存方法 | 「直射日光を避け、常温で保存」「10℃以下で保存」など |
| 食品関連事業者 | 表示に責任を持つ者の氏名(名称)と住所 |
| 製造所 | 製造所の所在地と製造者の氏名(名称) |
| 栄養成分表示 | 熱量など5項目 |
| アレルゲン | 特定原材料を含む場合 |
| 遺伝子組換え | 対象の食品の場合 |
2. 期限表示
2-1. 消費期限と賞味期限
期限表示には、消費期限と賞味期限の2種類がある。どちらを表示するかは、食品の傷みやすさによって決まる。
| 項目 | 消費期限 | 賞味期限 |
|---|---|---|
| 意味 | 安全に食べられる期限 | おいしく食べられる期限(品質が保たれる期限) |
| 対象 | 劣化が速い食品(製造日を含めておおむね5日以内に品質が急に落ちるもの) | 比較的劣化が遅い食品 |
| 期限を過ぎたら | 食べないほうがよい | すぐに食べられなくなるわけではない |
| 書き方 | 年月日 | 年月日(製造から3か月を超えるものは年月でもよい) |
| 食品の例 | 弁当、サンドイッチ、生菓子、洋生菓子、生めん、調理パン | 焼き菓子、スナック菓子、カップめん、缶詰、ペットボトル飲料、牛乳(多くの製品) |
どちらの期限も、表示された保存方法を守り、開封していない状態での期限である。開封したあとは、期限にかかわらず早めに食べる必要がある。
製造年月日の表示は、現在は義務ではない。製造者が任意で表示することはできる。
2-2. 期限の決め方
期限は、その食品を製造・加工した事業者などが、微生物の試験、理化学的な試験(水分、酸価、過酸化物価など)、においや味の官能検査などを行って、科学的・合理的な根拠にもとづいて設定する。実際の期限は、試験で得られた期間に、安全を見こんだ1未満の係数を掛けて、短めに設定するのが一般的である。
菓子の期限を考えるときには、第2章(水分活性)、第5章(変質)、第12章(保存)で学んだことが、そのまま根拠になる。
2-3. 期限表示を省略できる食品
品質の変化がきわめて少ない食品は、期限表示を省略できる。砂糖、食塩、アイスクリーム類、チューインガム、うま味調味料、酒類、飲料水などがある。アイスクリーム類は、−18℃以下で保存すれば品質の変化がきわめて少ないため、期限表示の代わりに保存方法などを表示する(第10章参照)。
3. 原材料と添加物の表示
3-1. 原材料の表示
原材料は、使用した重量の多い順に表示する。たとえば、スポンジケーキの原材料が「鶏卵、砂糖、小麦粉、バター」の順に書かれていれば、鶏卵が最も多く使われていることがわかる。
2種類以上の原材料からなるもの(たとえば、ケーキに使ったカスタードクリーム)は、複合原材料として、その名称のあとに括弧書きで中身の原材料を書く。
3-2. 添加物の表示
添加物は、原材料と明確に区分して、重量の多い順に表示する。区分のしかたは、記号「/」で区切る、改行する、別の欄を設けるなどの方法がある。
添加物は、原則として物質名で表示する。ただし、次のような決まりがある。
| 表示の方法 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 用途名の併記 | 消費者の関心が高い8種類の用途の添加物は、物質名に用途名を併記する | 甘味料(ステビア)、着色料(クチナシ)、保存料(ソルビン酸K)、増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料、酸化防止剤(ビタミンE)、発色剤(亜硝酸Na)、漂白剤、防かび剤 |
| 一括名 | 複数の物質を組み合わせて使うことが多い添加物は、まとめた名前で表示できる | 膨脹剤、乳化剤、香料、酸味料、調味料(アミノ酸等)、pH調整剤、ガムベース、イーストフードなど |
| 表示の免除 | 最終の食品にほとんど残らないものなどは、表示が免除される | 加工助剤、キャリーオーバー、栄養強化の目的で使うもの(一部を除く) |
菓子では、ベーキングパウダーや重曹は「膨脹剤」、卵黄レシチンやグリセリン脂肪酸エステルは「乳化剤」、バニラなどの香りづけは「香料」と表示されることが多い。添加物の種類と安全性、表示の詳しい決まりは、食品衛生学の本(準備中)で扱う。
4. 栄養成分表示
4-1. 表示する項目
容器包装に入れられた加工食品には、原則として栄養成分表示が必要である。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 義務(この順番で表示) | 熱量(エネルギー)、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量 |
| 推奨 | 飽和脂肪酸、食物繊維 |
| 任意 | 糖質、糖類、コレステロール、ミネラル、ビタミンなど |
ナトリウムは、消費者にわかりやすいように「食塩相当量」として表示する。食塩相当量は、ナトリウムの量から計算する。
食塩相当量(g)= ナトリウム(mg)× 2.54 ÷ 1000
表示する値は、食品100g、100ml、1食分、1個分など、食品の単位あたりで示す。値は、分析して求めるか、日本食品標準成分表などのデータを使って計算して求める(第1章参照)。計算で求めた値の場合は、「推定値」などと表示する。
小規模の事業者や、表示する面積が非常に小さい食品などは、栄養成分表示を省略できる場合がある(衛生法規の本を参照)。
4-2. 強調表示
「カロリーゼロ」「糖類ゼロ」「低脂肪」「高たんぱく」「カルシウムたっぷり」などの表示を強調表示という。強調表示をするには、食品表示基準で定められた基準値を満たす必要がある。
| 表示の種類 | 例 |
|---|---|
| 含まない旨の表示 | 「ゼロ」「ノン」「無」(例:糖類ゼロは食品100gあたり糖類0.5g未満、カロリーゼロは100g(100ml)あたり5kcal未満) |
| 低い旨の表示 | 「低」「ひかえめ」「ライト」 |
| 高い旨の表示 | 「高」「多」「豊富」 |
| 含む旨の表示 | 「源」「供給」「含有」「入り」 |
| 相対的な表示 | 「〇〇%カット」「〇〇g減」(比較の対象と、減った量や割合を書く) |
「ゼロ」という表示でも、まったく含まれないとは限らず、基準値未満であれば表示できる点に注意する。
5. アレルゲンの表示
5-1. 特定原材料と推奨品目
食物アレルギーを起こす原因となる物質をアレルゲンという。食品表示基準では、アレルギーの発症数が多い、または症状が重いものを特定原材料として、表示を義務づけている。また、それに準ずるものを、表示が推奨される品目としている。
| 区分 | 品目 |
|---|---|
| 特定原材料(表示義務)9品目 | えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)、カシューナッツ |
| 特定原材料に準ずるもの(表示推奨)20品目 | アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、ピスタチオ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン |
最近の主な変更は、次のとおりである。
| 時期 | 変更 |
|---|---|
| 令和5年3月 | くるみを特定原材料(義務)に追加(経過措置は令和7年3月末まで) |
| 令和6年3月 | 推奨品目にマカダミアナッツを追加し、まつたけを削除 |
| 令和8年4月 | カシューナッツを特定原材料(義務)に追加し、推奨品目にピスタチオを追加(カシューナッツの経過措置は令和10年3月末まで) |
くりは、特定原材料にも推奨品目にも含まれない(第7章参照)。
5-2. アレルゲンの表示のしかた
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 個別表示(原則) | 原材料ごとに、直後の括弧内に表示する。例:「マヨネーズ(卵を含む)」 |
| 一括表示 | 原材料と添加物の表示のあとに、まとめて表示する。例:「(一部に小麦・卵・乳成分を含む)」 |
| 少量でも表示 | 特定原材料は、ごく微量でも症状を起こすことがあるため、含まれていれば量にかかわらず表示する(数μg/g以上の含有が目安とされる) |
| 代替表記 | 特定原材料と同じものであることが理解できる表記を使うことができる。例:卵 →「玉子」「たまご」「鶏卵」、乳 →「ミルク」「バター」「チーズ」など |
| 可能性表示の禁止 | 「入っているかもしれません」のように、含まれる可能性があるという表示(可能性表示)は認められない |
| 注意喚起 | 同じ製造ラインで特定原材料を使った製品をつくっているなど、混入(コンタミネーション)のおそれがある場合は、原材料表示の欄外で注意を呼びかけることができる。例:「本品製造工場では、そばを含む製品を生産しています」 |
6. 原料原産地表示と遺伝子組換え表示
6-1. 原料原産地表示
生鮮食品には、原産地(国産品は都道府県名など、輸入品は原産国名)を表示する。
加工食品には、国内で製造したすべての加工食品について、重量割合が1位の原材料の原産地を表示する。この決まりは平成29年に始まり、令和4年4月から完全に施行された。原産地が複数ある場合は、重量の多い順に国名を書く(国別重量順表示)のが原則であるが、原産国が多く順番が変わりやすい場合などは、「又は」でつなぐ表示や、「輸入」とまとめる表示(大括り表示)も認められている。重量1位の原材料が加工品(たとえば小麦粉)の場合は、その加工品をつくった国を「国内製造」などと表示することができる。
6-2. 遺伝子組換え表示
遺伝子組換えの技術を使ってつくられた農産物と、その加工食品には、表示の決まりがある。
| 対象 | 品目 |
|---|---|
| 対象の農産物(9品目) | 大豆、とうもろこし、ばれいしょ(じゃがいも)、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしな |
| 対象の加工食品 | 豆腐、納豆、みそ、コーンスナック菓子、ポップコーンなど33の加工食品群 |
| 表示 | 内容 |
|---|---|
| 「遺伝子組換え」(義務) | 遺伝子組換えの農産物を分けて流通させたものを使った場合 |
| 「遺伝子組換え不分別」(義務) | 遺伝子組換えのものと、そうでないものを分けずに流通させたものを使った場合 |
| 「分別生産流通管理済み」など(任意) | 遺伝子組換えでないものを分けて管理し、意図せず混ざる量を5%以下に抑えたもの |
| 「遺伝子組換えでない」(任意) | 令和5年4月から、遺伝子組換えのものが検出されない(不検出)場合に限って表示できるようになった |
しょうゆや大豆油、コーン油、異性化糖などは、加工の過程で組換えられた遺伝子(DNA)やそれによってできたたんぱく質が分解・除去され、検出できないため、表示の義務はない。
古い教材では、対象の農産物を「8品目」としているものがある。現在は、からしなを加えた9品目である。
7. 保健機能食品
7-1. 保健機能食品とは
保健機能食品は、国が定めた制度にもとづいて、食品の機能(体への働き)を表示できる食品である。次の3つがある。
| 種類 | 国の関与 | 表示できる内容 | マーク |
|---|---|---|---|
| 特定保健用食品(トクホ) | 消費者庁長官の許可(製品ごとに国が審査) | 「おなかの調子を整える」「血圧が高めの方に」など、保健の用途 | 許可マークあり |
| 栄養機能食品 | 許可も届出も不要(国の定めた基準を満たせばよい:自己認証) | 国が定めた栄養成分の機能(例:「カルシウムは、骨や歯の形成に必要な栄養素です」) | なし |
| 機能性表示食品 | 販売前に消費者庁長官に届出(事業者の責任) | 科学的根拠にもとづく機能(例:「脂肪の吸収を抑える」) | なし |
保健機能食品は、医薬品ではない。どの種類でも、病気の治療や予防を目的とするような、医薬品と誤解される表示はできない。
7-2. 特定保健用食品(トクホ)
特定保健用食品は、からだの生理学的機能などに影響を与える成分(関与成分)を含み、その摂取によって特定の保健の目的が期待できることを表示する食品である。製品ごとに、有効性と安全性について国の審査を受け、消費者庁長官の許可を受ける。
トクホには、通常の審査を受けるもののほか、許可の実績が十分にある成分について規格基準に適合すれば許可される「規格基準型」、科学的根拠が限定的であることを表示する「条件付き特定保健用食品」、病気のリスクを減らす表示を認める「疾病リスク低減表示」がある。
関与成分の例として、難消化性デキストリン(おなかの調子を整える、血糖値・中性脂肪の上昇をおだやかにする)、オリゴ糖(おなかの調子を整える)、茶カテキン(体脂肪が気になる方に)などがある。第3章で学んだ食物繊維やオリゴ糖の三次機能が、表示に生かされている。
7-3. 栄養機能食品
栄養機能食品は、不足しがちな栄養成分を補うために利用する食品で、国が定めた規格基準(1日あたりの摂取目安量に含まれる栄養成分の量の上限と下限)に適合すれば、許可も届出もなく、定められた文言で栄養成分の機能を表示できる。
対象となる栄養成分は、ビタミン13種類、ミネラル6種類(亜鉛、カリウム、カルシウム、鉄、銅、マグネシウム)、n-3系脂肪酸である。機能の表示とあわせて、摂取するうえでの注意事項なども表示する。
7-4. 機能性表示食品
機能性表示食品は、平成27年(2015年)4月に始まった制度で、事業者の責任で、科学的根拠にもとづいた機能性を表示する食品である。販売前に、安全性と機能性の根拠などの情報を消費者庁長官に届け出る。国が個別に審査や許可をするものではない。
令和6年に起きた健康被害の問題を受けて、制度が見直され、令和6年9月から、事業者には健康被害の情報を把握したときの報告が義務づけられた。また、錠剤やカプセルなどのサプリメントの形をした製品には、製造工程の管理(GMP)が求められるようになった(経過措置あり。詳しくは衛生法規の本を参照)。
8. 特別用途食品
特別用途食品は、乳児、幼児、妊産婦、病者など、特別な配慮が必要な人の発育や健康の保持・回復に適するという、特別の用途を表示する食品である。健康増進法にもとづき、表示には消費者庁長官の許可が必要で、許可を受けた食品には許可マークがつく。
| 区分 | 内容・例 |
|---|---|
| 病者用食品 | 低たんぱく質食品、アレルゲン除去食品、無乳糖食品、総合栄養食品、糖尿病用・腎臓病用の組合せ食品など |
| 妊産婦・授乳婦用粉乳 | 妊娠中・授乳中の人のための粉乳 |
| 乳児用調製乳 | 乳児用調製粉乳、乳児用調製液状乳(液体ミルク) |
| えん下困難者用食品 | 飲みこむことがむずかしい人のための食品。とろみ調整用食品を含む |
| 特定保健用食品 | 上の7-2のとおり |
特定保健用食品は、保健機能食品の一つであると同時に、健康増進法の特別用途食品の一つにも位置づけられている。
9. 健康食品との違い
「健康食品」「栄養補助食品」「サプリメント」などと呼ばれて売られている食品のうち、保健機能食品でないもの(いわゆる健康食品)は、法律上は一般の食品と同じ扱いであり、機能を表示することはできない。
| 区分 | 機能の表示 |
|---|---|
| 医薬品(医薬部外品を含む) | 効能・効果を表示できる |
| 特定保健用食品 | 許可された保健の用途を表示できる |
| 栄養機能食品 | 国が定めた栄養成分の機能を表示できる |
| 機能性表示食品 | 届け出た機能性を表示できる |
| いわゆる健康食品・一般の食品 | 機能を表示できない |
10. 製菓とのつながり
10-1. 表示は配合表から始まる
菓子の表示をつくるには、まず正確な配合表が必要である。原材料を重量の多い順に並べ、添加物を区分し、複合原材料(カスタードクリーム、フォンダン、ジャムなど)の中身も確認する。仕入れた材料(チョコレート、マーガリン、ミックス粉など)の表示を必ず確認し、含まれる添加物やアレルゲンを漏れなく書き出す。
10-2. アレルゲンは最も大切な情報
菓子の主な材料である小麦、卵、乳、ナッツ類(くるみ、落花生、カシューナッツ、アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ)、ごま、大豆、ゼラチンは、アレルゲンの表示にかかわる。特に、一つの厨房で多くの種類の菓子をつくる菓子店では、器具や作業台を通じた混入(コンタミネーション)が起こりやすい。原材料の管理、作業の順番、器具の洗浄を徹底し、混入のおそれがある場合は注意喚起の表示を行う。表示の義務がない店頭の対面販売でも、問い合わせに正確に答えられるよう、アレルゲンの一覧表を用意しておくことが望ましい。
10-3. 期限と保存方法
生クリームやカスタードを使った洋生菓子、餅やあんを使った和生菓子は消費期限、焼き菓子は賞味期限を表示することが多い。期限は、水分活性、使った材料、包装(脱酸素剤・乾燥剤・アルコール揮散剤)、保存温度によって変わるため、自店の製品で保存試験を行って根拠を持って決める(第12章参照)。
10-4. 栄養成分表示と成分表
菓子の栄養成分表示は、配合した材料ごとに日本食品標準成分表の値を使って計算することが多い。焼成で水分が減ることを考えて、製品の重さあたりの値を求める。「糖類ゼロ」「低カロリー」などの強調表示をするときは、基準値を満たしているかを必ず確認する。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1国内で製造したすべての加工食品には、重量割合1位の原材料の原産地を表示する
Q2アイスクリーム類には、賞味期限の表示が義務づけられている
Q3焼き菓子やスナック菓子には、消費期限を表示する
Q4混入のおそれがある場合は、原材料欄に『〇〇が入っているかもしれません』と表示する
Q5消費期限は、おいしく食べられる期限である
Q6飽和脂肪酸と食物繊維の表示は義務である
Q7特定保健用食品は、消費者庁長官への届出だけで販売できる
Q8アレルゲンの特定原材料(表示義務)は、えび・かに・小麦・そば・卵・乳・落花生の7品目である
Q9栄養機能食品の対象となるミネラルには、カルシウム・鉄・亜鉛・マグネシウム・銅・カリウムがある
Q10機能性表示食品は、製品ごとに国が審査し、許可する
Q11特定保健用食品は、保健機能食品の一つであり、特別用途食品の一つでもある
Q12『カロリーゼロ』と表示された食品には、エネルギーがまったく含まれていない
Q13いわゆる健康食品や栄養補助食品は、保健機能食品に含まれる
Q14製造年月日の表示は、すべての加工食品に義務づけられている
Q15遺伝子組換え表示の対象の農産物は8品目である
Q16原材料名は、重量の少ない順に表示する
Q17食品表示法は、食品衛生法・JAS法・健康増進法の表示に関する規定を一元化したものである
Q18食品表示法は、平成20年4月に施行された
Q19大豆、ごま、アーモンドは、アレルゲンの特定原材料(表示義務)である
Q20食品表示法は、食品衛生法・JAS法・薬機法の表示規定を一元化したものである
Q21消費期限は、劣化の速い食品に表示する、安全に食べられる期限である
Q22栄養機能食品は、消費者庁長官の許可を受けなければならない
Q23期限表示は、開封したあとでも有効である
Q24推奨表示の品目には、ゼラチンやバナナ、ピスタチオが含まれる
Q25栄養成分表示の義務項目は、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5つである
Q26添加物は、原材料と区分して、重量の多い順に表示する
Q27栄養成分表示の義務項目は、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウムである
Q28カシューナッツは、令和8年4月から特定原材料(表示義務)に加えられた
Q29しょうゆや大豆油にも、遺伝子組換えの表示が義務づけられている
Q30特別用途食品の表示には、消費者庁長官の許可が必要である
まとめ
食品の表示は、食品表示法(平成27年4月施行。食品衛生法・JAS法・健康増進法の表示規定を一元化)と食品表示基準で定められ、消費者庁が担当する。容器包装に入れられた加工食品には、名称、原材料(重量の多い順)、添加物(原材料と区分して重量順)、原料原産地、内容量、期限、保存方法、事業者、栄養成分、アレルゲンなどを表示する。
消費期限は劣化が速い食品の安全に食べられる期限、賞味期限はおいしく食べられる期限で、どちらも未開封の状態での期限である。製造年月日の表示は義務ではなく、砂糖・食塩・アイスクリーム類などは期限表示を省略できる。
栄養成分表示の義務は、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5項目で、飽和脂肪酸と食物繊維は推奨である。強調表示には基準値がある。
アレルゲンは、特定原材料9品目(えび・かに・くるみ・小麦・そば・卵・乳・落花生・カシューナッツ)が表示義務、20品目が表示推奨である。可能性表示は認められない。原料原産地表示は重量1位の原材料について行い、遺伝子組換え表示の対象は9農産物(からしなを含む)と33加工食品群である。
保健機能食品には、消費者庁長官の許可が必要な特定保健用食品、自己認証の栄養機能食品、届出による機能性表示食品がある。特別用途食品は、病者・乳児・妊産婦・えん下困難者などのための食品で、許可が必要である。特定保健用食品は、保健機能食品であり特別用途食品でもある。いわゆる健康食品は機能を表示できない。
菓子をつくる人にとって、正確な表示は、配合表の管理とアレルゲンの管理から始まる。次章では、食品学の最後のテーマとして、日本の食料の生産と消費、食料自給率を学ぶ。
※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

