食品学 第7章:いも類・豆類・種実類

第7章

食品学 第二部 食品の種類のはなし

いも類・豆類・種実類

はじめに

本章では、いも類・豆類・種実類の3つを学ぶ。いずれも植物が栄養を蓄えた器官であり、私たちはその蓄えを食べている。

いも類は、植物が地下の根や茎に、でんぷんを蓄えたものである。水分が多い点で穀類と異なり、和菓子の芋ようかんやスイートポテト、葛やわらびのでん粉として菓子に使われる。豆類は、マメ科植物の種子で、大豆のようにたんぱく質と脂質を蓄えるものと、あずきのようにでんぷんを蓄えるものがある。和菓子の中心であるあんは、豆類の性質を巧みに利用した食品である。種実類は、木の実や草の種で、アーモンドやくるみのように脂質を多く蓄えるものと、くりのようにでんぷんを蓄えるものがある。

同じ「植物の蓄え」でも、何を蓄えているかによって、食品の性質と使い方は大きく変わる。本章では、その違いに注目しながら学んでいく。

1. いも類

1-1. いも類の特徴

いも類は、植物の地下にある根や茎が肥大し、でんぷんなどを蓄えたものである。

特徴内容
水分約65〜85%と多い。穀類(約15%)よりはるかに多い
主成分炭水化物(主にでんぷん)。生のいもで約13〜32%
その他ビタミンC、カリウム、食物繊維を比較的多く含む
貯蔵性水分が多いため、穀類より貯蔵性・輸送性が劣る

いも類は、肥大した部分によって、次のように分けられる。

分類肥大した部分例
塊根根さつまいも、キャッサバ、やまのいもの一部
塊茎地下の茎じゃがいも、さといも、こんにゃくいも、きくいも

1-2. さつまいも

項目内容
分類ヒルガオ科。塊根
成分水分約65%、炭水化物約30%(でんぷんと糖)。いも類の中で甘味が強い
ビタミンビタミンCを約25〜30mg(100gあたり)含み、でんぷんに守られて加熱しても比較的残りやすい。品種によってカロテン(橙色)やアントシアニン(紫いも)を含む
食物繊維多い
ヤラピン切り口から出る白い乳液。空気にふれると黒くなる

さつまいもには、でんぷんを分解するβ-アミラーゼが多く含まれる。β-アミラーゼは、でんぷんが糊化したあとに働きやすく、およそ60〜70℃前後で特によく働く。そのため、ゆっくり時間をかけて加熱すると、この温度帯に長くとどまり、でんぷんが麦芽糖に分解されて甘くなる。石焼き芋が甘いのはこのためである。電子レンジで短時間に加熱すると、この温度帯をすぐに通過して酵素が失活するため、甘味が少なくなる。

さつまいもは寒さに弱く、10℃以下で保存すると低温障害を起こして傷みやすい。13℃前後での保存が適している。

1-3. じゃがいも

項目内容
分類ナス科。塊茎
成分水分約80%、炭水化物約17%(主にでんぷん)、ビタミンC、カリウム
品種男爵(粉質。ほくほくして粉ふきいも・マッシュポテト向き)、メークイン(粘質。煮くずれしにくく煮物向き)
有毒成分芽と、光に当たって緑色になった皮にソラニン・チャコニンを含む(第4章参照)
褐変切り口がチロシナーゼによって褐変する(第5章参照)

じゃがいもを低温(冷蔵庫など)で長く保存すると、でんぷんの一部が分解されて糖(還元糖)が増え、甘くなる。このようなじゃがいもを揚げたり焼いたりすると、メイラード反応が進んで焦げやすくなり、アクリルアミドもできやすくなる(第5章参照)。じゃがいもは、光を避け、冷暗所で保存する。

1-4. さといも

さといもは、サトイモ科の塊茎である。独特のぬめりは、ガラクタンなどの糖とたんぱく質が結合した物質による。ぬめりは煮汁を濁らせ、ふきこぼれの原因になるため、下ゆでや塩もみで除くことがある。

さといものえぐ味はホモゲンチジン酸による。また、さといもの皮をむくと手がかゆくなるのは、針のような形のシュウ酸カルシウムの結晶が皮膚を刺激するためである。

1-5. やまのいも

やまのいもはヤマノイモ科のいもで、形によってながいも(細長く水分が多い)、いちょういも(扁平)、やまといも(つくねいも。球形で粘りが強い)に分けられる。山野に自生するものは自然薯と呼ばれる。

やまのいもの特徴は、すりおろしたときの強い粘りである。この粘りは、糖とたんぱく質が結合した物質(糖たんぱく質)による。また、やまのいもはアミラーゼを多く含み、でんぷんが消化されやすいため、他のいもと異なり生で食べられる。すりおろすと、酵素的褐変で色が変わりやすい。皮をむくとかゆくなるのは、さといもと同じくシュウ酸カルシウムによる。

和菓子では、やまのいもの粘りが、生地に空気を抱きこむ力として利用される。薯蕷饅頭やかるかんは、すりおろしたやまのいもに砂糖と米粉を加えた生地を蒸してつくる。やまのいもの粘りが気泡を保ち、蒸すと気泡が膨らんで、ふっくらと白い生地になる。

1-6. こんにゃくいも

こんにゃくいもはサトイモ科の塊茎で、主成分はグルコマンナンという水溶性の多糖類である。グルコマンナンは人の消化酵素では消化されない難消化性の炭水化物(食物繊維)であり、たんぱく質ではない。

こんにゃくは、こんにゃくいもの粉(精粉)に水を加えて膨潤させ、水酸化カルシウム(消石灰)などのアルカリを加えて加熱し、固めてつくる。グルコマンナンはアルカリによって、熱を加えても溶けない丈夫なゲルになる。こんにゃくのエネルギーが非常に低いのは、主成分が消化されない食物繊維だからである。

1-7. キャッサバ

キャッサバは、熱帯で栽培されるトウダイグサ科の塊根で、でんぷんを多く含む。キャッサバのでんぷんがタピオカであり、タピオカパールやでん粉として使われる。キャッサバには、青酸を生じる成分(リナマリン)を含む品種があり、十分な水さらしと加熱が必要である。

1-8. でん粉類

いもや穀類、豆などから取り出したでんぷんをでん粉という。でん粉は、原料によって粒の大きさや糊化の性質が異なり、菓子での使い方も変わる。

でん粉原料特徴菓子での用途
じゃがいもでん粉(市販の片栗粉)じゃがいも粒が大きい。比較的低い温度で糊化し、粘りが強く、透明感が高い。加熱を続けると粘りが落ちやすいとろみづけ、わらびもち風の菓子、打ち粉
くず粉(くずでん粉)くずの根透明感と弾力があり、口どけがよい。吉野葛(奈良)が有名くずもち、くず切り、くずまんじゅう
わらび粉わらびの根弾力と粘りが強い。本わらび粉は非常に高価で、多くはさつまいもでん粉などを混ぜたものわらびもち
コーンスターチとうもろこし粒が小さい。糊化すると白っぽく不透明。冷えるとかたいゲルになるカスタード、ブラマンジェ、焼き菓子
タピオカでん粉キャッサバ粘りと弾力が強いタピオカパール、もちもちした生地
小麦でん粉(浮き粉)小麦糊化すると半透明点心の皮、和菓子
緑豆でん粉緑豆ゲルが強くこしがあるはるさめ

本来の片栗粉は、ユリ科のカタクリの鱗茎からとったでん粉であるが、生産量が少なく高価なため、現在市販されている片栗粉は、ほとんどがじゃがいもでん粉である。同じように、市販のくず粉やわらび粉にも、ほかのでん粉が混ぜられているものがある。

2. 豆類

2-1. 豆類の特徴と分類

豆類は、マメ科の植物の完熟した種子を乾燥させたものである。豆類は、成分によって、大きく2つに分けられる。

分類主な成分例
たんぱく質・脂質の多い豆たんぱく質約34%、脂質約20%。でんぷんをほとんど含まない大豆
炭水化物(でんぷん)の多い豆炭水化物約55〜60%、たんぱく質約20%、脂質は少ない(約2%)あずき、いんげん豆、えんどう、そら豆、ささげ、緑豆、ひよこ豆

落花生はマメ科の植物であるが、脂質が多いため、成分表では種実類に分類される(第3節参照)。また、未熟な大豆であるえだまめ、えんどうの若いさやのさやえんどう、大豆や緑豆を発芽させたもやしは、成分表では野菜類に分類される。

2-2. 大豆

大豆の成分

大豆(国産・乾燥)の成分は、可食部100gあたり、たんぱく質約34g、脂質約20g、炭水化物約30gである。たんぱく質が多いことから「畑の肉」と呼ばれる。

成分特徴
たんぱく質主にグリシニン(グロブリンの一種)。穀類に少ないリシンを多く含む。米と組み合わせると栄養価を補い合う
脂質不飽和脂肪酸のリノール酸が多い。大豆油の原料
炭水化物でんぷんはほとんど含まない。食物繊維と、ラフィノース・スタキオースなどのオリゴ糖が主
その他イソフラボン、サポニン、レシチン(乳化剤として利用)、カルシウム、鉄、ビタミンB₁

生の大豆には、たんぱく質の消化を妨げるトリプシンインヒビターや、赤血球を固まらせるレクチンなどが含まれるが、いずれも加熱によって壊れる。大豆は必ず十分に加熱して食べる。また、大豆特有の青臭さは、リポキシゲナーゼという酵素が脂質を酸化してできるにおいである。

大豆はアレルギーの表示が推奨される品目の一つである(第13章参照)。

大豆の加工品

大豆はそのままでは消化されにくいため、さまざまな形に加工されて食べられてきた。

加工品つくり方ポイント
豆乳大豆を水に浸してすりつぶし、加熱してこしたものしぼりかすがおから
豆腐豆乳に凝固剤を加えて固めたもの凝固剤:にがり(塩化マグネシウム)、すまし粉(硫酸カルシウム)、グルコノデルタラクトン
木綿豆腐/絹ごし豆腐木綿:固めたものをくずして型に入れ、水を切る。絹ごし:濃い豆乳をそのまま型の中で固める
油揚げ・厚揚げ豆腐を油で揚げたもの
凍り豆腐(高野豆腐)豆腐を凍らせてから乾燥させたものたんぱく質の凍結変性を利用(スポンジ状)
湯葉豆乳を加熱し、表面にできる膜をすくい取ったものたんぱく質の熱変性による膜
きな粉大豆をいってから粉にしたものいることで香ばしい香り(メイラード反応)と消化のよさ
納豆蒸した大豆に納豆菌を加えて発酵させたもの糸を引く粘りが出る。ビタミンKが多い
みそ・しょうゆ大豆と麹(こうじかび)、食塩を発酵・熟成させたものこうじかび+酵母+乳酸菌(第12章参照)
大豆油大豆からしぼった油しぼったあとの脱脂大豆はしょうゆや大豆たんぱく食品の原料

2-3. あずき

あずきは、和菓子のあんの原料として最も重要な豆である。

項目内容
成分炭水化物約60%(でんぷんと食物繊維が多い)、たんぱく質約20%、脂質約2%
色皮の赤い色はアントシアニンなどのポリフェノールによる
サポニン皮に含まれる。泡立ちの原因になり、渋味や苦味がある
産地北海道が国内生産の大部分を占める。大粒の品種は大納言と呼ばれる

あずきの皮はかたく、水を通しにくい。あずきは、皮全体からではなく、主にへそ(種子が莢についていた部分の近く)から水を吸う。そのため、吸水に時間がかかり、また吸水が不均一になって皮が破れやすい(胴割れ)。あずきは、大豆と違って、一晩水に浸さずにそのまま煮始めることが多い。

あずきを煮るとき、最初に煮立てた湯を捨てることを渋切りという。渋切りによって、サポニンやタンニンなどのあく(渋味・苦味)を除き、すっきりした味のあんにする。

2-4. あんができるしくみ

あずきなどのでんぷんの多い豆を十分に煮ると、豆の細胞の中のでんぷんが糊化する。同時に、細胞の中のたんぱく質が熱で変性して固まり、でんぷんを包みこむ。この状態で豆をつぶしても、一つひとつの細胞はこわれず、ばらばらの粒(あん粒子)になる。

あん粒子:豆の細胞1個1個が、熱で固まったたんぱく質と細胞壁に包まれ、中に糊化したでんぷんを閉じこめたもの

でんぷんが細胞の中に閉じこめられているため、あんは、いもをつぶしたときのような強い粘りが出ず、さらりとなめらかな口当たりになる。これが、でんぷんの多い豆があんに適している理由である。大豆はでんぷんをほとんど含まないため、あんには向かない。

あんの種類内容
生あん煮た豆をつぶし、水にさらしてこし、水気をしぼったもの(砂糖を加える前)
こしあん皮を除いた生あんに砂糖を加えて練ったもの
つぶあん皮をつぶさずに粒を残したまま砂糖を加えて練ったもの
小倉あんこしあんに、蜜煮にした大納言などの粒を混ぜたもの
白あん白いんげん豆(手亡、大福豆)や白あずきでつくるあん。練り切りの材料
さらしあん生あんを乾燥させて粉にしたもの
うぐいすあん青えんどうでつくる緑色のあん
ずんだあんえだまめでつくるあん

あんの練り方、砂糖の量と保存性、練り切りへの応用は、製菓理論の本で扱う。

2-5. その他の豆

豆特徴・用途
いんげん豆金時豆(赤)、うずら豆(まだら)、手亡・大福豆・白花豆(白)など。煮豆、甘納豆、白あん。生のいんげん豆はレクチンを含み、加熱が不十分だと食中毒を起こすため、十分に煮る
えんどう青えんどう(うぐいす豆、うぐいすあん、グリーンピース)、赤えんどう(みつ豆、豆大福の豆)
そら豆おたふく豆(甘煮)、いかり豆(揚げ菓子)、豆板醤
ささげあずきに似るが皮が丈夫で煮くずれしにくい(胴割れしにくい)。赤飯に使われる
緑豆もやし、はるさめ(緑豆でん粉)
ひよこ豆フムス、カレー
黒大豆(黒豆)大豆の一種。皮にアントシアニン。おせちの黒豆

3. 種実類

3-1. 種実類の特徴

種実類は、植物の種子や木の実のうち、穀類と豆類を除いたものである。殻(皮)がかたく、水分が少ないため、比較的保存しやすい。成分によって、脂質の多いものと、炭水化物(でんぷん)の多いものに分けられる。

日本食品標準成分表(八訂)にもとづく主な種実類の成分の目安(可食部100gあたり)を示す。

種実脂質たんぱく質炭水化物型
くるみ(いり)約69g約15g約12g脂質型
マカダミアナッツ(いり・味付け)約77g約8g約12g脂質型
ごま(乾)約54g約20g約17g脂質型
アーモンド(乾)約52g約20g約20g脂質型
落花生(乾)約47g約25g約19g脂質型
カシューナッツ(フライ・味付け)約48g約20g約27g脂質型
くり(日本ぐり・生)約0.5g約3g約37g炭水化物型
ぎんなん(生)約2g約5g約35g炭水化物型

くるみやアーモンドなどのナッツ類は、可食部の半分以上が脂質であり、エネルギーが高い。一方、くりとぎんなんは脂質が少なく、でんぷんが主体である。資料によっては「ごまは種実類の中で最も脂質が多い」と書かれていることがあるが、上の表のとおり、くるみやマカダミアナッツのほうが多い。

3-2. 主な種実類

種実特徴
アーモンドバラ科の木の種子の中身(仁)。ビタミンEが非常に多い。甘いアーモンド(スイートアーモンド)を食用にする。苦いアーモンド(ビターアーモンド)はアミグダリンを含む
くるみ脂質の多くが不飽和脂肪酸で、α-リノレン酸(n-3系)が多い。そのため酸化しやすい
ごま白ごま・黒ごま・金ごま。ゴマリグナン(セサミン、セサモリンなど)を含む。ごま油は、焙煎でできる成分(セサモール)が酸化を防ぐため、比較的酸化しにくい
落花生(ピーナッツ)マメ科だが種実類。地中で実を結ぶ。ピーナッツバター
くり主成分はでんぷん。渋皮にはタンニンが多い。和洋の菓子に広く使われる(栗きんとん、栗ようかん、甘露煮、渋皮煮、マロングラッセ、モンブラン)
ぎんなんイチョウの種子。でんぷんが主体。食べすぎると中毒(けいれんなど)を起こすことがあり、特に子どもは注意が必要
ピスタチオ緑色はクロロフィルによる
カシューナッツ、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、ペカンナッツ洋菓子に多く使われる脂質の多いナッツ
松の実、ひまわりの種、かぼちゃの種、はすの実中華菓子、パン、焼き菓子のトッピング
ココナッツココやしの実の胚乳。脂質の多くが飽和脂肪酸

杏仁は、あんずの種の中身(仁)である。苦味のある杏仁にはアミグダリンが含まれるため、食用には甘味のある品種のものや、加工して処理したものが使われる。杏仁豆腐の独特の香りは、ベンズアルデヒドによる(第4章参照)。

3-3. 種実類の保存と安全

脂質の多い種実類は、次の点に注意して保存する。

  • 酸化:不飽和脂肪酸が多いため、空気・光・熱で酸化し、油くさくなる(酸敗)。殻つき・皮つきのほうが酸化しにくい。殻や皮をむいたもの、刻んだもの、ローストしたものほど酸化が早い
  • カビとカビ毒:湿気を吸うとカビが生えやすい。落花生、ピスタチオなどの輸入ナッツ類では、強い発がん性を持つカビ毒アフラトキシンが問題になることがある(第4章参照)
  • 保存方法:密封し、光を避けて冷暗所に置く。長く保存するときは冷凍する

3-4. アレルギー

種実類は、食物アレルギーの原因として重要な食品である。

表示種実類
特定原材料(表示義務)くるみ、落花生、カシューナッツ(令和8年4月に追加)
特定原材料に準ずるもの(表示推奨)アーモンド、ごま、マカダミアナッツ、ピスタチオ

くりは、特定原材料にも、表示が推奨される品目にも含まれていない。

ナッツ類は、少量でも重い症状(アナフィラキシー)を起こすことがある。食品の表示については、第13章と、衛生法規の食品表示法の章で扱う。

4. 製菓とのつながり

4-1. いもの甘さを引き出す

スイートポテトや芋ようかん、大学芋、焼き芋を使った菓子では、さつまいもの甘さが味の決め手になる。蒸し器やオーブンでゆっくり加熱すると、β-アミラーゼが長く働いて甘味が増す。電子レンジで急に加熱すると、甘味が出にくい。また、やまのいもの粘りは、薯蕷饅頭やかるかんで、生地をふっくらと膨らませる力になる。

4-2. でん粉を使い分ける

くずもち、くず切り、わらびもちは、でん粉そのものを糊化させてつくる菓子である。透明感と弾力のあるくず粉、粘りの強いわらび粉、口どけのよいじゃがいもでん粉、白く固まるコーンスターチと、でん粉の種類によって仕上がりが変わる。市販のくず粉やわらび粉には他のでん粉が混ぜられていることがあるため、原材料の表示を確認して使い分けるとよい。

4-3. あんの科学

あんは、でんぷんが細胞の中に閉じこめられた「あん粒子」の集まりである。あずきを強くかき混ぜすぎたり、こすときに細胞をつぶしたりすると、でんぷんが外に出て粘りが生じ、口当たりの悪いあんになる。渋切りであくを除き、さらしで水にさらすことで、色と風味の澄んだあんになる。白あんは、練り切りやこなし、黄身あんなど、さまざまな和菓子の材料に展開される。

4-4. ナッツを生かす

アーモンドパウダーを使ったフィナンシェやダックワーズ、マカロン、プラリネ、ヌガー、くるみのタルトなど、ナッツは洋菓子の香りとこくを支える材料である。ナッツは脂質が多く酸化しやすいため、焼き菓子にしたあとも酸化が進む。脱酸素剤を使う、ローストしたナッツは早めに使い切るなどの工夫が必要である。また、ナッツを使う製品では、アレルギー表示と、製造ラインでの混入防止に特に注意する。

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1大豆は、でんぷんを多く含むため、あんの原料に適している

正しくは:大豆はでんぷんをほとんど含まない。あんにはでんぷんの多いあずきなどを使う

Q2大豆は、たんぱく質を約34%、脂質を約20%含み、たんぱく質にはリシンが多い

この文のとおりです。

Q3さつまいもは、電子レンジで短時間に加熱するほうが甘くなる

正しくは:ゆっくり加熱するほうが、β-アミラーゼが長く働いて甘くなる

Q4湯葉は、豆腐を凍らせて乾燥させたものである

正しくは:それは凍り豆腐。湯葉は豆乳を加熱した表面の膜

Q5納豆は、蒸した大豆をこうじかびで発酵させたものである

正しくは:納豆は納豆菌で発酵させる

Q6大豆のトリプシンインヒビターは、加熱によって失活する

この文のとおりです。

Q7白あんの原料には、手亡などの白いんげん豆が使われる

この文のとおりです。

Q8さつまいもは、冷蔵庫(5℃前後)で保存するのが最も適している

正しくは:さつまいもは10℃以下で低温障害を起こす。13℃前後が適する

Q9さつまいもに含まれるビタミンCは、でんぷんに守られ、加熱しても比較的損失が少ない

この文のとおりです。

Q10豆腐の凝固剤には、水酸化カルシウムが使われる

正しくは:豆腐の凝固剤はにがり(塩化マグネシウム)すまし粉(硫酸カルシウム)など。水酸化カルシウムはこんにゃく

Q11いも類は、穀類より水分が少なく、貯蔵性にすぐれている

正しくは:いも類は水分が多く、貯蔵性は穀類より劣る

Q12落花生は、日本食品標準成分表では豆類に分類される

正しくは:落花生は種実類

Q13きな粉は、生の大豆をそのまま粉にしたものである

正しくは:きな粉は大豆をいってから粉にしたもの

Q14さといものぬめりは、グルコマンナンによる

正しくは:さといものぬめりはガラクタンなど。グルコマンナンはこんにゃくいもの成分

Q15あんは、煮た豆の細胞の中で糊化したでんぷんが、熱で固まったたんぱく質に包まれた粒(あん粒子)の集まりである

この文のとおりです。(粘りが出にくい)

Q16種実類の中で、くりは脂質が最も多い

正しくは:くりは脂質が非常に少なく、でんぷんが主体

Q17やまのいもはアミラーゼを多く含むため、生で食べることができる

この文のとおりです。

Q18こんにゃくは、グルコマンナンに酸を加えて固めたものである

正しくは:水酸化カルシウムなどのアルカリを加えて固める

Q19カシューナッツは、令和8年4月から特定原材料(表示義務)に加えられた

この文のとおりです。(くるみ・落花生とともに義務表示)⚠️ 古い教材では、特定原材料は「8品目」で、カシューナッツは「表示推奨」とされている。

Q20くりは、アレルギー表示が推奨される品目(特定原材料に準ずるもの)である

正しくは:くりは推奨品目にも含まれない

Q21市販の片栗粉は、ほとんどがカタクリの鱗茎からとったでん粉である

正しくは:市販品のほとんどはじゃがいもでん粉

Q22あずきを煮るときの渋切りは、サポニンなどのあくを除くために行う

この文のとおりです。

Q23大豆の脂質に多いリノール酸は、必須アミノ酸である

正しくは:リノール酸は必須脂肪酸

Q24こんにゃくの主成分であるグルコマンナンは、たんぱく質である

正しくは:グルコマンナンは炭水化物(難消化性多糖類)

Q25じゃがいもの芽や緑化した皮には、ソラニンが含まれる

この文のとおりです。

Q26くるみはα-リノレン酸などの不飽和脂肪酸を多く含み、酸化しやすい

この文のとおりです。

Q27じゃがいもは塊根、さつまいもは塊茎である

正しくは:逆。じゃがいもは塊茎、さつまいもは塊根
結果:

まとめ

いも類は、地下の根(塊根:さつまいも)や茎(塊茎:じゃがいも・さといも・こんにゃくいも)にでんぷんを蓄えたもので、水分が多く、穀類より貯蔵性が劣る。さつまいもはβ-アミラーゼの働きで、ゆっくり加熱すると甘くなり、ビタミンCが加熱で残りやすい。じゃがいもの芽にはソラニン、さといものぬめりはガラクタン、やまのいもはアミラーゼを含み生で食べられる。こんにゃくは、炭水化物のグルコマンナンをアルカリで固めたものである。でん粉は原料によって性質が異なり、市販の片栗粉の多くはじゃがいもでん粉である。

豆類のうち、大豆はたんぱく質約34%・脂質約20%で、でんぷんをほとんど含まず、リシンが多い。豆腐(にがり・すまし粉)、凍り豆腐、湯葉、きな粉(いった大豆)、納豆(納豆菌)、みそ・しょうゆなど多くの加工品がある。あずきなどでんぷんの多い豆は、煮ると細胞の中ででんぷんが糊化し、熱で固まったたんぱく質に包まれたあん粒子になるため、あんに適している。あずきの渋切りはサポニンなどのあくを除くために行う。

種実類は、くるみ・マカダミアナッツ・ごま・アーモンド・落花生など脂質の多いものと、くり・ぎんなんなど炭水化物の多いものに分けられる。脂質の多いナッツは酸化しやすく、カビ毒にも注意が必要である。くるみ・落花生・カシューナッツは特定原材料で表示義務がある。

菓子づくりでは、いもの甘さの引き出し方、でん粉の使い分け、あんのしくみ、ナッツの保存とアレルギーへの配慮が、品質と安全を支える。次章では、野菜類・果実類・きのこ類・藻類を学ぶ。

※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

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