食品学 第10章:乳類と油脂類

第10章

食品学 第二部 食品の種類のはなし

乳類と油脂類

はじめに

牛乳、生クリーム、バター、チーズ、ヨーグルト。洋菓子の多くは、乳と乳製品なしにはつくれない。牛乳は、子牛を育てるために必要な栄養素をほぼすべて含む液体であり、その中には、脂肪の小さな粒、カゼインのかたまり、溶けた乳糖とミネラルが、絶妙なバランスで散らばっている。乳製品は、この構造の一部を取り出したり、壊したり、微生物に変えさせたりしてつくられる。

また、菓子のこくと風味、食感を支えるもう一つの材料が油脂である。バター、マーガリン、ショートニング、植物油、ラードは、それぞれ固さや溶け方、香りが異なり、菓子の種類によって使い分けられる。

本章では、まず牛乳の成分と性質、法律上の規格と殺菌方法を学び、次に主な乳製品の特徴を整理する。後半では、油脂類の種類と、加工油脂であるマーガリン・ショートニングの特徴を学ぶ。油脂が菓子の中でどう働くか(可塑性、ショートニング性、クリーミング性)は、製菓理論の本で詳しく扱う。

1. 牛乳

1-1. 牛乳の成分

日本で飲まれている牛乳の大部分は、乳量の多いホルスタイン種の乳である。ジャージー種の乳は、乳脂肪が多く、色がやや黄色い。

日本食品標準成分表(八訂)の普通牛乳の成分(可食部100gあたり)は、次のとおりである。

成分量特徴
水分87.4g—
たんぱく質3.3gカゼインが約80%、乳清たんぱく質が約20%
脂質3.8g脂肪球として散らばる
炭水化物4.8gほとんどが乳糖
灰分0.7gカルシウムが多い(約110mg)

牛乳の水分以外の成分(乳固形分)の中で最も多いのは、乳糖である。乳固形分から乳脂肪分を除いたものを無脂乳固形分という。

牛乳は、カルシウムを多く含み、しかも吸収されやすい形で含んでいるため、カルシウムのよい供給源である。また、ビタミンA・B₂を含む。一方で、鉄とビタミンCはほとんど含まれない。

牛乳の成分は季節によって変わる。乳脂肪分や無脂乳固形分は、夏に低く冬に高くなる傾向がある。また、青草を多く食べる時期の乳は、カロテン・ビタミンAが多い。

1-2. 乳糖

乳糖(ラクトース)は、ブドウ糖とガラクトースが結合した二糖類で、還元糖である。甘味はショ糖の約5分の1から3分の1と弱い。乳糖は、乳酸菌のえさとなって乳酸に変えられる。また、還元糖であるため、加熱するとメイラード反応を起こし、焼き菓子の焼き色の原因になる(第5章参照)。

乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)の働きが弱い人は、牛乳を飲むとおなかがごろごろしたり下痢をしたりする(乳糖不耐症。栄養学の本を参照)。

1-3. 乳のたんぱく質

牛乳のたんぱく質は、カゼインと乳清(ホエイ)たんぱく質に分けられる。

種類割合性質
カゼイン約80%リンたんぱく質。カルシウムと結びついてカゼインミセルという小さな粒をつくり、牛乳の中に散らばっている。牛乳が白く見えるのは、カゼインミセルと脂肪球が光を散乱させるためである。酸(pH4.6付近)やレンネット(凝乳酵素)で凝固するが、加熱ではほとんど凝固しない
乳清たんぱく質約20%β-ラクトグロブリン、α-ラクトアルブミンなど。酸では凝固しないが、加熱で凝固する

カゼインと乳清たんぱく質の性質の違いは、乳製品の製造に直接かかわる。

  • ヨーグルト:乳酸菌がつくる乳酸でpHが下がり、カゼインが凝固する
  • チーズ:レンネットと乳酸菌でカゼインを凝固させ、乳清(ホエイ)を分ける
  • 牛乳の表面の膜:牛乳を温めると、表面に薄い膜ができる。これは、表面で水分が蒸発し、乳清たんぱく質が熱で変性して、脂肪などを抱きこんで固まったものである。この現象をラムスデン現象といい、約40℃以上に温めると起こりやすい。かき混ぜながら温めると防げる

1-4. 乳脂肪

牛乳の脂肪は、膜(脂肪球膜)に包まれた脂肪球として、水の中に散らばっている。つまり、牛乳は水中油滴型(O/W型)のエマルションである(第3章参照)。

脂肪球は水より軽いため、生乳を放置すると浮き上がって上層にクリームの層ができる。市販の牛乳の多くは、均質化(ホモジナイズ)という処理で脂肪球を細かく砕いてあるため、脂肪が浮き上がりにくい。

乳脂肪は、酪酸などの短い鎖の脂肪酸を含むことが特徴で、これがバターや乳製品の独特の風味のもとになる。

1-5. 牛乳の規格(乳等命令)

牛乳や乳製品の種類、成分の規格、製造・保存の基準は、食品衛生法にもとづく「乳及び乳製品の成分規格等に関する命令」(略して乳等命令)で定められている。この命令は、かつては「乳等省令」と呼ばれていたが、食品衛生基準の行政が厚生労働省から消費者庁に移ったことにともない、令和6年4月から現在の名称になった。

種類内容主な成分規格
牛乳生乳だけを原料とし、成分を調整しないもの(加熱殺菌は行う)無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分3.0%以上
特別牛乳特別の許可を受けた施設で処理した生乳。殺菌しないものもある牛乳より高い規格
成分調整牛乳生乳から乳脂肪分などの成分の一部を除いたもの無脂乳固形分8.0%以上
低脂肪牛乳成分調整牛乳のうち、乳脂肪分を減らしたもの乳脂肪分0.5%以上1.5%以下
無脂肪牛乳成分調整牛乳のうち、乳脂肪分をほとんど除いたもの乳脂肪分0.5%未満
加工乳生乳・牛乳などに、脱脂粉乳やバターなどの乳製品を加えて成分を調整したもの無脂乳固形分8.0%以上
乳飲料乳製品を主な原料とし、コーヒー・果汁・ビタミンなどを加えたもの—

「牛乳」と表示できるのは、生乳100%で、水や乳製品などを加えず、成分を調整していないものだけである。乳脂肪分を減らしたもの(低脂肪牛乳など)や、乳製品を加えて濃くしたもの(加工乳)は、「牛乳」とは区別される。

1-6. 牛乳の殺菌

生乳には微生物が含まれるため、牛乳は加熱殺菌してから出荷される。乳等命令では、63℃で30分間加熱する方法か、これと同等以上の殺菌効果がある方法で殺菌することとされている。

殺菌方法温度と時間(目安)特徴
低温保持殺菌(LTLT)63〜65℃で30分間風味の変化が少ない。パスチャライズ牛乳とも呼ばれる
高温保持殺菌75℃以上で15分以上
高温短時間殺菌(HTST)72℃以上で15秒以上欧米で多い方法
超高温瞬間殺菌(UHT)120〜150℃で1〜3秒日本の牛乳の大部分がこの方法。わずかに加熱臭がある
LL牛乳(ロングライフ牛乳)超高温殺菌と、無菌状態での容器への充填常温で長期間保存できる

1-7. 牛乳の加熱による変化

牛乳を加熱すると、表面に膜ができる(ラムスデン現象)ほか、乳清たんぱく質から硫黄を含む成分が生じて独特の加熱臭が出る。長く加熱すると、乳糖とたんぱく質のメイラード反応によって褐色になる。乳糖の褐変を利用した菓子に、牛乳と砂糖を煮詰めて焦がしたミルクジャム(ドゥルセ・デ・レチェ)がある。

2. 乳製品

2-1. クリーム

種類内容
クリーム(乳等命令)生乳・牛乳から乳脂肪以外の成分を除いたもの。乳脂肪分18.0%以上。添加物を加えないもの。製菓用は乳脂肪分35〜47%程度のものが多い
植物性脂肪のクリーム、乳脂肪と植物性脂肪を混ぜたクリーム乳等命令の「クリーム」には当たらず、「乳等を主要原料とする食品」などとして扱われる。乳化剤や安定剤を加えたものが多い

クリームは、牛乳と同じくO/W型のエマルションである。クリームを泡立てると、空気の泡のまわりに脂肪球が集まり、脂肪球どうしが部分的につながって網目をつくり、泡を支える。これがホイップクリームである。泡立てすぎると、脂肪球がくっつき合ってかたまりになり、水分(バターミルク)が分かれる。これがバターの製造の原理でもある。

2-2. バター

バターは、クリームを強く撹拌(チャーニング)して脂肪球膜を壊し、脂肪を集めて粒にし、水分(バターミルク)を除いたあと、練り合わせて(ワーキング)つくる。

項目内容
成分規格(乳等命令)乳脂肪分80.0%以上、水分17.0%以下
構造油の中に水滴が散らばった油中水滴型(W/O型)のエマルション
種類有塩バター(食塩約1.5%前後)、食塩不使用バター(製菓に多く使う)、発酵バター(クリームを乳酸菌で発酵させてからつくる。ジアセチルなどの芳香が強い)

クリームはO/W型、バターはW/O型であり、チャーニングによって転相が起こっている(第3章参照)。

バターは、乳脂肪分を減らしたり、ほかの食品を混ぜたりして規格を満たさなくなると、「バター」とは表示できず、「乳等を主要原料とする食品」として扱われる。

2-3. チーズ

チーズは、乳に乳酸菌とレンネット(凝乳酵素。主な成分はキモシン)を加えてカゼインを凝固させ、乳清(ホエイ)を除いて固めたものである。

種類内容例
ナチュラルチーズ凝固させたものを、そのまま、または微生物で熟成させたもの。微生物や酵素が生きていて、熟成が続く
フレッシュタイプ(熟成させない)やわらかく、水分が多いクリームチーズ、マスカルポーネ、カッテージ、リコッタ(ホエイからつくる)、モッツァレラ
白かびタイプ表面に白かびを生やして熟成カマンベール、ブリー
青かびタイプ内部に青かびを生やして熟成ロックフォール、ゴルゴンゾーラ
ハード・セミハードタイプ水分を少なくし、細菌で長く熟成ゴーダ、チェダー、エメンタール、パルミジャーノ・レッジャーノ
プロセスチーズナチュラルチーズを砕いて加熱して溶かし、乳化剤を加えて成形したものスライスチーズ、6P チーズ

プロセスチーズは、加熱によって微生物と酵素の働きが止まるため、熟成が進まず、品質が安定し、保存性がよい。一方、ナチュラルチーズは、時間とともに風味が変わる。

2-4. 発酵乳と乳酸菌飲料

種類内容
発酵乳(ヨーグルト)乳を乳酸菌または酵母で発酵させ、糊状または液状にしたもの。乳酸によってカゼインが凝固する。一般的なヨーグルトは、ブルガリア菌とサーモフィラス菌の2種類の乳酸菌を使う
乳酸菌飲料乳を乳酸菌や酵母で発酵させたものを主な原料とした飲料

発酵乳と乳酸菌飲料には、乳等命令で、無脂乳固形分の量と、生きた乳酸菌などの数についての規格が定められている。

2-5. 練乳と粉乳

種類内容特徴
無糖練乳(エバミルク)牛乳を約2〜2.5分の1に濃縮し、缶に詰めて加熱殺菌したもの砂糖を含まない
加糖練乳(コンデンスミルク)牛乳にショ糖を加えて濃縮したもの糖濃度が高く水分活性が低いため、殺菌しなくても保存性が高い(第2章参照)
全粉乳牛乳を濃縮し、噴霧乾燥して粉にしたもの脂肪を含むため酸化しやすい
脱脂粉乳(スキムミルク)脂肪を除いた乳を乾燥させて粉にしたもの脂肪が少なく保存性がよい。製菓・製パンで広く使われる
ホエイパウダーチーズをつくるときに出る乳清を乾燥させたもの焼き菓子・製パン

2-6. アイスクリーム類

乳等命令では、乳固形分と乳脂肪分の量によって、アイスクリーム類を3つに分けている。

種類乳固形分うち乳脂肪分
アイスクリーム15.0%以上8.0%以上
アイスミルク10.0%以上3.0%以上
ラクトアイス3.0%以上(規定なし)

乳固形分が3.0%未満のもの(シャーベット、かき氷など)は、アイスクリーム類ではなく氷菓として、一般の食品の規格が適用される。ラクトアイスやアイスミルクは、乳脂肪の代わりに植物油脂を使っているものが多い。

アイスクリーム類は、マイナス18℃以下で保存すれば品質の変化がきわめて少ないため、期限表示を省略できる(衛生法規の食品表示法の章を参照)。

3. 油脂類

3-1. 油脂の分類

食用の油脂は、原料と状態によって、次のように分けられる。

分類主なもの特徴
植物油(液体)大豆油、なたね油(キャノーラ油)、とうもろこし油、米油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、綿実油不飽和脂肪酸が多く、常温で液体
植物脂(固体)パーム油、やし油(ココナッツ油)、カカオバター植物性だが飽和脂肪酸が多く、常温で固体〜半固体
動物脂(固体)バター(乳脂)、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)飽和脂肪酸が比較的多く、常温で固体
魚油(液体)いわし油などEPA・DHAが多く、非常に酸化しやすい
加工油脂マーガリン、ショートニング、ファットスプレッド油脂を原料に、目的に合わせて加工したもの

3-2. 植物油

植物油は、種子や果実を圧搾(しぼる)したり、溶剤で抽出したりして油を取り出し、不純物を除いて精製する。精製では、ガム質、遊離脂肪酸、色素、においのもとなどを順に取り除き、色が薄く、くせのない油にする。

油特徴
大豆油リノール酸が多い。日本で多く使われる
なたね油(キャノーラ油)オレイン酸が多い。日本で最も多く使われる油の一つ
ごま油焙煎したごまからしぼる香りの強いもの(焙煎ごま油)と、焙煎しない無色のもの(太白ごま油)がある。セサモールなどの成分で酸化しにくい
オリーブ油オリーブの果肉からしぼる。オレイン酸が多い。エクストラバージンは精製しない
米油(米ぬか油)米ぬかからとる。ビタミンEが多い
サラダ油精製度が高く、低温でも濁りにくいように処理した油。生のまま(ドレッシングなど)でも使える

3-3. 植物脂と動物脂

油脂特徴
パーム油油やしの果肉からとる。飽和脂肪酸(パルミチン酸)が多い。マーガリン、ショートニング、揚げ油、即席めん、チョコレート菓子に広く使われる
やし油(ココナッツ油)ココやしの実の胚乳からとる。ラウリン酸などの中くらいの長さの飽和脂肪酸が多く、融点がシャープで口どけがよい
カカオバターカカオ豆の脂。常温ではかたく、体温付近で一気に溶ける。チョコレートの口どけのもと(第11章参照)
ラード(豚脂)豚の脂肪組織から溶かし出す。中華料理、中華菓子(月餅など)、パイ生地のさくさく感
ヘット(牛脂)牛の脂肪組織から溶かし出す。融点が高い(第9章参照)

3-4. マーガリンとファットスプレッド

マーガリンは、もともとバターの代用品として19世紀のフランスで生まれた。現在は、精製した植物油脂や動物油脂に、水、食塩、乳化剤、粉乳、香料などを加えて乳化させ、急冷して練り合わせてつくる。バターと同じ油中水滴型(W/O型)のエマルションである。

日本農林規格(JAS)では、油脂の割合によって、次のように分けている。

種類油脂の割合
マーガリン80%以上
ファットスプレッド80%未満

家庭用の容器入りのものの多くは、ファットスプレッドである。マーガリンは、原料の油脂の配合によって、かたさや溶ける温度を自由に調整できるため、パイ用(折り込み用)、クリーム用、焼き菓子用など、用途に合わせた製品がつくられている。

マーガリンは乳製品ではなく、成分表では油脂類に分類される。

3-5. ショートニング

ショートニングは、精製した植物油脂や動物油脂を原料とし、水分をほとんど含まない固形の油脂である。マーガリンから水分と乳成分を除いたものと考えるとわかりやすい。無味無臭で、製品によっては気泡を細かく含ませてある。

ショートニングという名前は、生地を「ショート」(もろく、さくさくした食感)にすることに由来する。クッキー、クラッカー、パイ、揚げ油などに使われる。

比較バターマーガリンショートニング
原料乳脂肪植物油脂・動物油脂植物油脂・動物油脂
油脂の割合80%以上80%以上ほぼ100%
水分17%以下ありほとんどない
型W/O型W/O型(水を含まない)
風味豊かな乳の香り製品による(香料)ほぼ無味無臭
扱いやすい温度の幅狭い広い(調整できる)広い

3-6. 硬化油とトランス脂肪酸

マーガリンやショートニングの原料には、液体の植物油に水素を付加して固めた硬化油が使われてきた。硬化油をつくる過程(部分水素添加)では、トランス脂肪酸ができることがある(第3章参照)。近年は、硬化油の代わりにパーム油を使ったり、油脂の構造を組み替える技術(エステル交換)を使ったりして、トランス脂肪酸を減らした製品が増えている。

3-7. 油脂の保存と劣化

油脂は、空気・光・熱・金属によって酸化し、においと味が悪くなる。バターは、においを吸いやすく、光で酸化しやすいため、包装したまま密閉して冷蔵または冷凍で保存する。揚げ油の劣化については、第5章で学んだ。

4. 製菓とのつながり

4-1. 牛乳と生クリーム

牛乳は、菓子に水分・乳糖・カゼイン・乳脂肪を与える。乳糖とたんぱく質は焼き色を濃くし、乳脂肪はこくを与える。カスタードクリームやアングレーズソースでは、牛乳を温めて卵と合わせる。牛乳を温めるときに膜(ラムスデン現象)ができるのを防ぐには、かき混ぜながら加熱する。

生クリームは、乳脂肪分によって泡立ちやすさとこくが変わる。乳脂肪分が高いほど泡立ちが早く、こくがあるが、分離しやすい。泡立てるときにボウルを氷水で冷やすのは、脂肪球を固い状態に保ち、泡を安定させるためである。植物性脂肪のクリームは、乳化剤などによって安定性が高く、分離しにくいが、風味は乳脂肪のクリームと異なる。

4-2. バター・マーガリン・ショートニングの使い分け

バターは、風味がすばらしい反面、固さを保てる温度の幅が狭く、扱いがむずかしい。折り込みパイ生地をバターでつくるときは、生地とバターの温度を細かく管理する必要がある。マーガリンは、扱いやすい温度の幅が広く、作業性にすぐれる。ショートニングは、水分を含まないため、クッキーやパイをよりさくさくと軽く仕上げる。風味と作業性のどちらを重視するかによって、油脂を選んだり組み合わせたりする。

4-3. 乳製品の多様さ

チーズケーキにはクリームチーズ、ティラミスにはマスカルポーネ、ヨーグルトムースにはヨーグルト、焼き菓子やパンには脱脂粉乳、アイスクリームには牛乳・生クリーム・練乳が使われる。乳製品は種類が多く、脂肪分・水分・酸味・風味がそれぞれ異なる。配合を考えるときは、脂肪分と水分の量に注目すると、置きかえたときの変化を予測しやすい。

4-4. 表示と規格

洋菓子店でアイスクリームを製造・販売する場合、乳固形分と乳脂肪分によって、アイスクリーム・アイスミルク・ラクトアイスのどれにあたるかが決まる。また、製品に「バター」や「生クリーム」と表示するには、規格を満たした乳製品を使っている必要がある。牛乳・乳製品は、アレルギーの特定原材料「乳」にもあたる。

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1牛乳の固形分の中で最も多いのは、たんぱく質である

正しくは:最も多いのは乳糖

Q2バターは、クリームをチャーニングしてつくる油中水滴型(W/O型)のエマルションである

この文のとおりです。

Q3ショートニングは、バターと同じく約16%の水分を含む

正しくは:ショートニングは水分をほとんど含まない

Q4牛乳を温めたときに表面にできる膜は、カゼインが熱で凝固したものである

正しくは:主に乳清たんぱく質が熱で変性し、脂肪などを抱きこんだもの(ラムスデン現象)

Q5マーガリンは乳製品である

正しくは:マーガリンは油脂類(加工油脂)

Q6生乳に脱脂粉乳を加えて成分を調整したものも、『牛乳』と表示できる

正しくは:乳製品を加えて調整したものは加工乳。牛乳は生乳だけで成分を調整しないもの

Q7乳固形分3.0%未満のシャーベットやかき氷は、アイスクリーム類ではなく氷菓に分類される

この文のとおりです。

Q8加糖練乳は、糖濃度が高く水分活性が低いため、保存性が高い

この文のとおりです。

Q9ヨーグルトは、乳酸菌がつくる乳酸によってカゼインが凝固したものである

この文のとおりです。

Q10プロセスチーズは、微生物が生きているため、熟成が進む

正しくは:それはナチュラルチーズ。プロセスチーズは加熱で熟成が止まり、品質が安定する

Q11日本の市販の牛乳の大部分は、低温保持殺菌(63〜65℃で30分間)で殺菌されている

正しくは:大部分は超高温瞬間殺菌(120〜150℃で1〜3秒)

Q12低脂肪牛乳の乳脂肪分は、0.5%未満である

正しくは:0.5%未満は無脂肪牛乳。低脂肪牛乳は0.5%以上1.5%以下

Q13バターの成分規格は、乳脂肪分60%以上である

正しくは:乳脂肪分80.0%以上、水分17.0%以下

Q14パーム油やカカオバターは植物性なので、不飽和脂肪酸が多く常温で液体である

正しくは:これらは植物性だが飽和脂肪酸が多く、常温で固体〜半固体

Q15牛乳のたんぱく質の約80%は、乳清たんぱく質である

正しくは:約80%はカゼイン。乳清たんぱく質は約20%

Q16牛乳は油中水滴型(W/O型)のエマルションである

正しくは:牛乳は水中油滴型(O/W型)。W/O型はバター・マーガリン

Q17JAS規格では、油脂の割合が80%以上のものをマーガリン、80%未満のものをファットスプレッドという

この文のとおりです。

Q18牛乳は鉄とビタミンCを多く含む

正しくは:牛乳は鉄・ビタミンCをほとんど含まない。カルシウムが多い

Q19牛乳のカルシウムは、吸収率が低い

正しくは:牛乳のカルシウムは吸収されやすい

Q20LL牛乳は、超高温殺菌と無菌充填により、常温で長期間保存できる

この文のとおりです。

Q21ごま油は、セサモールなどの成分を含むため、比較的酸化しにくい

この文のとおりです。

Q22アイスクリームは、乳固形分10.0%以上、うち乳脂肪分3.0%以上のものである

正しくは:それはアイスミルク。アイスクリームは乳固形分15.0%以上、うち乳脂肪分8.0%以上

Q23カゼインは、加熱すると凝固しやすいが、酸では凝固しない

正しくは:逆。カゼインは酸(pH4.6付近)やレンネットで凝固し、加熱ではほとんど凝固しない

Q24乳糖は、ブドウ糖とガラクトースからなる還元糖で、甘味はショ糖より弱い

この文のとおりです。

Q25牛乳の成分規格は、乳脂肪分8.0%以上、無脂乳固形分3.0%以上である

正しくは:逆。無脂乳固形分8.0%以上、乳脂肪分3.0%以上

Q26乳等省令は、令和6年4月から『乳及び乳製品の成分規格等に関する命令(乳等命令)』に名称が変わった

この文のとおりです。⚠️ 古い教材では「乳等省令(厚生省令)」と書かれている。規格の数値は変わっていない。

Q27クリームの成分規格は、乳脂肪分18.0%以上である

この文のとおりです。(乳等命令)
結果:

まとめ

牛乳は、水分約87%で、固形分の中では乳糖が最も多い。たんぱく質の約80%はカゼイン(リンたんぱく質)で、酸(pH4.6付近)やレンネットで凝固し、加熱ではほとんど凝固しない。約20%の乳清たんぱく質は加熱で凝固し、牛乳を温めたときの膜(ラムスデン現象)になる。乳脂肪は脂肪球として散らばり、牛乳はO/W型のエマルションである。牛乳は吸収のよいカルシウムを多く含むが、鉄とビタミンCはほとんど含まない。

牛乳・乳製品の規格は「乳等命令」(令和6年4月に乳等省令から名称変更)で定められる。牛乳は生乳だけを原料に成分を調整しないもので、無脂乳固形分8.0%以上・乳脂肪分3.0%以上。低脂肪牛乳は乳脂肪分0.5〜1.5%、無脂肪牛乳は0.5%未満、乳製品を加えたものは加工乳である。日本の牛乳の大部分は超高温瞬間殺菌される。

乳製品では、クリーム(乳脂肪分18.0%以上、O/W型)、バター(乳脂肪分80.0%以上・水分17.0%以下、W/O型)、熟成が続くナチュラルチーズと熟成が止まるプロセスチーズ、乳酸菌で発酵させた発酵乳、保存性の高い加糖練乳、脱脂粉乳が重要である。アイスクリーム類は、アイスクリーム(乳固形分15.0%以上・乳脂肪分8.0%以上)、アイスミルク(10.0%以上・3.0%以上)、ラクトアイス(3.0%以上)に分けられる。

油脂類は、植物油(不飽和脂肪酸が多く液体)、植物脂(パーム油・カカオバター:飽和脂肪酸が多い)、動物脂(バター・ラード・ヘット)、加工油脂に分けられる。マーガリン(油脂80%以上、W/O型、油脂類)、ファットスプレッド(80%未満)、水分をほとんど含まないショートニングは、バターと比べて扱いやすい温度の幅が広い。

次章では、菓子の甘味の主役である砂糖・甘味料と、調味料・香辛料、嗜好飲料を学ぶ。

※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

タイトルとURLをコピーしました