食品学 第二部 食品の種類のはなし
穀類
はじめに
第二部では、食品を一つずつ取り上げ、その成分と特徴を学ぶ。最初に取り上げるのは穀類である。
穀類は、人類が最も多くのエネルギーを得てきた食品である。米・小麦・とうもろこしは三大穀類と呼ばれ、世界の多くの人々の主食となっている。菓子づくりにおいても、穀類は欠かせない。洋菓子の土台となる小麦粉、和菓子の餅や団子をつくる米粉、焼き菓子のとろみや軽さを生むコーンスターチは、いずれも穀類からつくられる。
本章では、穀類に共通する特徴を確認したあと、米と小麦を詳しく学び、大麦・ライ麦・えん麦・とうもろこし・そば・雑穀の特徴を整理する。第一部で学んだでんぷんの糊化と老化、たんぱく質の性質が、ここで具体的な食品の性質として現れてくる。
1. 穀類の特徴
1-1. 穀類とは
穀類は、主にイネ科の植物の種子である。米、小麦、大麦、ライ麦、えん麦、とうもろこし、あわ、ひえ、きびなどがこれにあたる。そばはタデ科の植物であるが、種子を同じように利用するため、穀類に含める(擬穀類)。
1-2. 穀類の構造
穀類の種子は、大きく3つの部分からなる。
| 部分 | 割合(目安) | 内容 |
|---|---|---|
| 外皮(ぬか層・ふすま) | 約5〜8% | 種子を包む皮。食物繊維、ミネラル、ビタミンB群を多く含む |
| 胚芽 | 約2〜3% | 芽になる部分。脂質、たんぱく質、ビタミンB₁・E、ミネラルを多く含む |
| 胚乳 | 約80〜90% | 芽が育つための栄養の貯蔵庫。でんぷんが主体で、たんぱく質も含む |
精米や製粉では、主に胚乳を食用にする。外皮と胚芽を除くと、食べやすく保存性もよくなるが、ビタミン・ミネラル・食物繊維は減る。
1-3. 穀類の成分
| 成分 | 特徴 |
|---|---|
| 炭水化物 | 約70〜75%と最も多い。大部分はでんぷん |
| たんぱく質 | 約6〜14%。穀類によって量と性質が異なる |
| 脂質 | 少ない(約1〜3%)。主に胚芽に含まれる |
| 水分 | 約12〜15%。乾燥しているため貯蔵性が高い |
| ビタミン・ミネラル | 外皮と胚芽に多く、精白で減る |
穀類のたんぱく質は、必須アミノ酸のリシン(リジン)が少ない(第一制限アミノ酸)。リシンの多い豆類や動物性食品と組み合わせて食べると、たんぱく質の栄養価が補われる(栄養学の本を参照)。
穀類は水分が少なく、貯蔵性・輸送性にすぐれているため、主食として長く利用されてきた。
2. 米
2-1. 米の種類
| 分類 | 種類 | 特徴 |
|---|---|---|
| 栽培法 | 水稲/陸稲 | 日本の米のほとんどは水田でつくる水稲。陸稲は畑でつくる |
| 品種群 | ジャポニカ米(日本型) | 粒が短く丸い。炊くと粘りが強い。日本で主に食べられる |
| 品種群 | インディカ米(インド型) | 粒が細長い。炊くと粘りが少なくぱらぱらしている |
| でんぷんの性質 | うるち米 | 半透明。アミロース約20%、アミロペクチン約80%。ご飯・上新粉 |
| でんぷんの性質 | もち米 | 乳白色で不透明。アミロペクチンほぼ100%。強い粘り。餅・白玉粉・道明寺粉 |
うるち米ともち米の違いは、でんぷんの組成の違いである(第3章参照)。もち米をヨウ素液で調べると、アミロペクチンの赤紫色を示す。
2-2. 精米
収穫した稲の実(もみ)から、もみがらを除いたものが玄米である。玄米から、ぬか層と胚芽を削り取ることを精米(とう精)という。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 玄米 | もみがらだけを除いたもの。ぬか層と胚芽が残る |
| 五分つき米・七分つき米 | ぬか層を一部だけ除いたもの |
| 胚芽精米 | ぬか層を除き、胚芽を80%以上残したもの |
| 精白米(白米) | ぬか層と胚芽をほぼ除き、胚乳だけにしたもの。玄米の約90%の重さになる |
精白すると、炊いたときの食味と消化はよくなるが、ぬか層と胚芽に多いビタミンB₁、脂質、食物繊維、ミネラルが減る。精白米のビタミンB₁は、玄米のおよそ5分の1程度である。
ぬかを除いた米ぬかは、脂質を多く含み、米ぬか油(米油)の原料になる。ぬかの脂質はリパーゼによって分解されやすく、酸敗しやすい。
2-3. 米の貯蔵と古米
米は、もみの状態が最も貯蔵性が高く、玄米、精白米の順に低くなる。精白米は、表面の脂質が空気にふれて酸化しやすい。
収穫から1年以上たった米を古米という。古米は、脂質が分解されて遊離脂肪酸が増え、それが酸化することで古米臭が生じる。また、粘りが少なくなり、炊いたご飯の食味が落ちる。
2-4. 米の調理
米は、吸水させてから炊く。米は水に浸すと30分ほどで急速に吸水し、2時間ほどでほぼ吸水が終わる。炊飯では、米の重さの約1.5倍(体積の約1.2倍)の水を加える。炊き上がったご飯の重さは、もとの米の約2.2〜2.3倍になる。
炊飯によって、米のでんぷんは糊化する。炊いたご飯が冷めるとかたくなるのは、でんぷんの老化による。もち米は、浸水で十分に吸水するため、炊くのではなく蒸して加熱することが多い(おこわ、赤飯)。
2-5. 米の加工品
米を粉にしたもの(米粉)は、和菓子の材料として非常に重要である。原料の米の種類と、生のまま粉にするか、加熱して糊化させてから粉にするかによって、性質が大きく異なる。
| 粉 | 原料 | つくり方 | 用途 |
|---|---|---|---|
| 上新粉(新粉) | うるち米 | 精白米を水洗い・乾燥させてから粉にする(生) | 柏餅、団子、ういろう、すあま |
| 上用粉(薯蕷粉) | うるち米 | 上新粉より粒子を細かくしたもの(生) | 薯蕷饅頭、かるかん |
| 白玉粉(寒晒し粉) | もち米 | 水に浸したもち米を水とともにすりつぶし、沈殿させて乾燥させる(生) | 白玉団子、求肥、大福 |
| もち粉(求肥粉) | もち米 | もち米を水洗い・乾燥させてから粉にする(生) | 求肥、大福、草餅 |
| 道明寺粉 | もち米 | もち米を蒸して乾燥させ(糒)、粗く砕く(糊化済み) | 関西風の桜餅(道明寺)、椿餅 |
| 上南粉 | もち米 | 道明寺粉を細かく砕いて炒ったもの(糊化済み) | 和菓子の表面のまぶし、桜餅 |
| 寒梅粉 | もち米 | もち米を蒸してついた餅を、焼いて乾燥させてから粉にする(糊化済み) | 落雁、押し物、豆菓子 |
| みじん粉 | もち米 | もち米を蒸して乾燥させ、粉にする(糊化済み) | 落雁、和菓子の打ち粉 |
生の米粉(上新粉・白玉粉・もち粉)は、水を加えてこね、加熱して糊化させてから使う。一方、道明寺粉・寒梅粉・みじん粉は、すでに糊化しているため、水分を加えるだけで粘りが出たり、そのまま押し固めたりできる。
このほかの米の加工品として、次のようなものがある。
| 加工品 | 内容 |
|---|---|
| α化米 | 炊いたご飯を急速に乾燥させ、糊化した状態を保ったもの。湯や水を加えるだけで食べられる(非常食) |
| ビーフン | うるち米(主にインディカ米)の粉でつくる麺 |
| きりたんぽ | うるち米のご飯をつぶして棒に巻き、焼いたもの |
| せんべい | うるち米の生地を焼いたもの(あられ・おかきはもち米) |
| 製パン用・製菓用米粉 | 粒子を細かくして、パンや洋菓子に使えるようにした米粉 |
| 酒・みりん・米みそ・米酢 | 米を原料とする発酵食品(第12章) |
3. 小麦
3-1. 小麦の種類
小麦は、粒のかたさによって分けられ、粒のかたさとたんぱく質の量によって、つくられる小麦粉の種類が決まる。
| 種類 | 粒の性質 | たんぱく質 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 硬質小麦 | かたい。粒の断面がガラス質 | 多い | 強力粉(パン) |
| 中間質小麦 | 中程度 | 中程度 | 中力粉(うどん) |
| 軟質小麦 | やわらかい。断面が粉状 | 少ない | 薄力粉(菓子・天ぷら) |
| デュラム小麦 | 非常にかたい | 多い | セモリナ(パスタ) |
小麦は、秋にまいて翌年の初夏に収穫する冬小麦と、春にまいて秋に収穫する春小麦にも分けられる。日本で栽培される小麦は、主に中力粉に向くものが多いが、近年はパン用・菓子用の品種も増えている。日本で使われる小麦の多くは、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどからの輸入であり、小麦の自給率は約16%(令和7年度)と低い(第14章参照)。
3-2. 製粉
米が粒のまま食べられるのに対して、小麦はふつう粉にして利用する。小麦の粒は、外皮がかたく胚乳がもろいうえ、粒の中央に深い溝があるため、米のように外皮だけを削り取ることがむずかしい。そこで、粒を砕いて、胚乳の部分だけをふるい分けて粉にする。これを製粉という。
製粉では、小麦をロールで少しずつ砕いてはふるい分けることを繰り返し、胚乳の中心部から順に粉を取り出す。胚乳の中心に近い部分ほど、外皮の混入が少なく、白く上質な粉になる。外皮の部分はふすまとして、胚芽は小麦胚芽として分けられる。
| 製品 | 内容 |
|---|---|
| 小麦粉 | 胚乳を粉にしたもの |
| 全粒粉 | 外皮・胚芽を含めて粒全体を粉にしたもの。食物繊維・ミネラル・ビタミンが多い |
| ふすま(ブラン) | 外皮。食物繊維が多い。飼料、シリアル |
| 小麦胚芽 | ビタミンE・B₁、脂質が多い |
| セモリナ | デュラム小麦の胚乳を粗く砕いたもの |
3-3. 小麦粉の種類
小麦粉は、たんぱく質の量によって分けられる。
| 種類 | たんぱく質(目安) | グルテン | 原料の小麦 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 強力粉 | 約11.5〜13% | 多く、強い | 硬質小麦 | パン、シュー、パイ、中華麺 |
| 準強力粉 | 約10.5〜12.5% | やや多い | 硬質小麦 | フランスパン、中華麺 |
| 中力粉 | 約7.5〜10.5% | 中程度 | 中間質小麦 | うどん、そうめん、和菓子、焼き菓子 |
| 薄力粉 | 約6.5〜9% | 少なく、弱い | 軟質小麦 | スポンジケーキ、クッキー、天ぷら |
小麦粉の成分の大部分は炭水化物(でんぷん)で、約70〜75%を占める。たんぱく質の量の違いは数%であるが、この違いが、生地の性質を大きく変える。
3-4. 小麦粉の等級
小麦粉は、同じ種類の中でも、灰分(ミネラル)の量によって等級が分けられる。灰分は外皮に多いため、灰分が少ないほど胚乳の中心部に近い上質な粉であり、色が白い。
| 等級 | 灰分 | 色 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 特等粉 | 最も少ない | 最も白い | 胚乳の中心部 |
| 1等粉 | 少ない | 白い | 一般的な家庭用・業務用 |
| 2等粉 | やや多い | やや褐色をおびる | |
| 3等粉 | 多い | 褐色をおびる | |
| 末粉 | 最も多い | 灰色 | 主に工業用(のりなど) |
「強力粉・薄力粉」の区別はたんぱく質の量、「特等・1等・2等」の区別は灰分の量による。2つの基準を取り違えないようにする。
製粉した直後の小麦粉は、しばらく寝かせる(熟成、エージング)ことで、空気による酸化が進み、生地の性質が安定する。また、小麦粉のわずかな黄色はカロテノイドによるもので、熟成によって少し白くなる。
3-5. グルテン
小麦粉の最大の特徴は、水を加えてこねるとグルテンができることである。
小麦粉の主なたんぱく質は、グリアジンとグルテニンである。これに水を加えてこねると、2つのたんぱく質が結びついて、網目状の構造を持つグルテンができる。
| たんぱく質 | 分類 | グルテンに与える性質 |
|---|---|---|
| グリアジン | プロラミン | 粘着性・伸展性(よく伸びる) |
| グルテニン | グルテリン | 弾力性(元に戻ろうとする力) |
グルテンは、パン生地の中で、酵母がつくる二酸化炭素を閉じこめて膨らみを支え、焼くと固まって骨格になる。菓子では、グルテンが強すぎると生地がかたく縮みやすくなるため、薄力粉を使い、混ぜすぎないように注意する。
グルテンの形成には、次の条件が影響する。
| 条件 | グルテンへの影響 |
|---|---|
| こねる・混ぜる | 強く、長くこねるほど強くなる |
| 食塩 | グルテンを引きしめ、強くする |
| 水の温度 | 適度に温かい(30℃前後)とできやすい |
| 寝かせる | 生地がなじみ、伸びやすくなる |
| 砂糖 | 水を奪い、グルテンができにくくなる |
| 油脂 | たんぱく質の結合を妨げ、グルテンができにくくなる(ショートニング性) |
グルテンについての詳しい説明と、生地づくりへの応用は、製菓理論の本の小麦粉の章で扱う。小麦はアレルギーの特定原材料(表示義務)の一つである(第13章参照)。
3-6. 小麦の加工品
| 加工品 | 内容 |
|---|---|
| パン | 強力粉・酵母・水・食塩などを発酵させて焼いたもの |
| めん類 | うどん(中力粉・食塩)、中華麺(強力粉・準強力粉・かんすい)、パスタ(デュラムセモリナ) |
| 麩(ふ) | グルテンを取り出して加工したもの。生麩・焼き麩 |
| 小麦でんぷん(浮き粉) | 小麦粉からグルテンを除いたでんぷん。点心の皮、和菓子 |
中華麺が黄色いのは、かんすい(アルカリ性)によって小麦粉のフラボノイドが黄色に変わるためである(第4章参照)。
4. その他の穀類
4-1. 大麦
大麦は、イネ科の穀類で、粒の並び方によって二条大麦と六条大麦に分けられる。
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| 二条大麦 | ビール・ウイスキーの原料となる麦芽 |
| 六条大麦 | 麦茶、押し麦、麦ご飯 |
| はだか麦(六条大麦の一種) | 麦みそ、押し麦 |
大麦のたんぱく質はグルテンをつくらないため、パンには向かない。大麦は水溶性食物繊維のβ-グルカンを多く含む。
大麦を発芽させたものを麦芽(モルト)という。麦芽には、でんぷんを分解するアミラーゼが多く含まれる。麦芽の酵素で米やいものでんぷんを分解すると、麦芽糖を主成分とする水あめ(麦芽水あめ)ができる。ビールも、麦芽のアミラーゼででんぷんを糖に変え、酵母で発酵させてつくる。
4-2. ライ麦
ライ麦は、寒さややせた土地に強く、北欧・東欧・ロシアなどで栽培される。ライ麦のたんぱく質は、小麦のようなグルテンをほとんどつくらない。そのため、ライ麦粉だけでパンをつくる場合は、サワー種(乳酸菌と酵母で発酵させた種)を使い、酸の働きと、ライ麦に多いペントサン(多糖類)の粘りを利用して生地をまとめる。ライ麦パンは、ずっしりと重く、酸味がある。
4-3. えん麦(オーツ麦)
えん麦は、たんぱく質と脂質が比較的多く、水溶性食物繊維のβ-グルカンも多い。えん麦を蒸して押しつぶしたものがオートミールで、グラノーラ、クッキー、シリアルなどに使われる。
4-4. とうもろこし
とうもろこしは、世界で最も多く生産される穀類の一つで、食用・飼料用・工業用に広く使われる。
| 種類 | 特徴・用途 |
|---|---|
| デントコーン(馬歯種) | 飼料、コーンスターチの原料 |
| フリントコーン(硬粒種) | 飼料、コーングリッツ |
| スイートコーン(甘味種) | 未熟なうちに収穫して野菜として食べる(成分表では野菜類) |
| ポップコーン(爆裂種) | 加熱すると粒がはじける |
とうもろこしの主なたんぱく質はツェイン(プロラミン)で、グルテンはつくらない。また、とうもろこしはナイアシンが体に利用されにくい形で含まれ、必須アミノ酸のトリプトファンも少ないため、とうもろこしを主食とする地域では、ナイアシン欠乏症(ペラグラ)が問題になった(栄養学の本を参照)。
とうもろこしの胚乳から取り出したでんぷんがコーンスターチであり、カスタードクリーム、焼き菓子、とろみづけに使われる。胚乳を粗く砕いたものはコーングリッツ(ビール原料、コーンフレーク)、細かく砕いたものはコーンミール、胚芽からとった油はコーン油である。
4-5. そば
そばはタデ科の植物で、イネ科の穀類とは異なる。そば粉のたんぱく質はグルテンをつくらないため、そば粉だけでは生地がつながりにくい。そのため、そば切り(めん)をつくるときは、つなぎとして小麦粉や山芋、卵などを加えることが多い。小麦粉とそば粉の割合が2:8のものを「二八そば」という。
そばには、毛細血管を丈夫にするといわれるルチン(フラボノイドの一種)が含まれる。ルチンは水溶性で、ゆで汁(そば湯)にも溶け出す。
そばは、アレルギーの特定原材料(表示義務)の一つであり、重い症状を起こすことがある。そば粉は、そばぼうろ、そばまんじゅう、ガレットなどの菓子にも使われる。
4-6. 雑穀
| 雑穀 | 特徴 |
|---|---|
| あわ | イネ科。うるち種ともち種がある。あわ餅、あわおこし |
| きび | イネ科。きび団子(現在は米粉や白玉粉でつくるものも多い) |
| ひえ | イネ科。寒さに強い |
| はと麦 | イネ科。はと麦茶 |
| アマランサス、キヌア | ヒユ科(擬穀類)。たんぱく質・ミネラルが比較的多い |
5. 製菓とのつながり
5-1. 粉を選ぶ
洋菓子では、軽くやわらかい食感を出したいスポンジケーキやクッキーには薄力粉、生地をしっかり膨らませて骨格をつくりたいパンやシュー、パイには強力粉を使う。焼き菓子では、香ばしさと歯ごたえを出すために、中力粉や準強力粉を合わせることもある。粉の種類はたんぱく質の量の違いであり、グルテンのでき方の違いとして生地に現れる。
和菓子では、うるち米の粉(上新粉)は歯ごたえのある団子や柏餅に、もち米の粉(白玉粉・もち粉)はやわらかく伸びる求肥や大福に使う。糊化した米粉(道明寺粉・寒梅粉・みじん粉)は、蒸すだけでつぶつぶの食感が出る道明寺や、押し固めてつくる落雁に使われる。同じ「米の粉」でも、原料のでんぷんの組成と、糊化しているかどうかで、まったく別の材料になる。
5-2. でんぷんを使う
コーンスターチは、グルテンをつくらないため、小麦粉の一部をコーンスターチに置きかえると、生地はより軽く、ほろほろとした食感になる。また、カスタードクリームをコーンスターチでつくると、小麦粉より透明感があり、口どけのよいクリームになる。小麦でんぷん(浮き粉)や葛粉、片栗粉なども、とろみや食感の調整に使われる(第7章参照)。
5-3. グルテンフリーと米粉
グルテンをつくらない米粉は、小麦アレルギーの人に向けた菓子や、グルテンを避けたい人向けの菓子の材料として利用が広がっている。ただし、グルテンがないため、パンや一部の焼き菓子では膨らみを支える力が弱く、配合や製法の工夫が必要になる。また、製造の過程で小麦が混ざらないよう、器具や工程を分けることが大切である。
5-4. 穀類と国内の生産
菓子の主な原料である小麦の多くは輸入に頼っている。一方、米はほぼ国内で自給できる。国産の米粉を使った菓子や、国産小麦を使った菓子は、食料自給率を高める取り組みとしても注目されている(第14章参照)。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1上新粉は、もち米を原料とする
Q2そばに含まれるルチンは、フラボノイドの一種である
Q3薄力粉はグルテンの含量が多く、パンの製造に適している
Q4グリアジンは弾力性を、グルテニンは粘着性と伸展性を与える
Q5寒梅粉や道明寺粉は、もち米を加熱して糊化させてからつくる
Q6麦芽にはアミラーゼが多く含まれ、水あめやビールの製造に利用される
Q7古米は、たんぱく質の分解によって古米臭が生じる
Q8精白米は、玄米よりビタミンB₁を多く含む
Q9小麦粉の等級(特等・1等・2等)は、たんぱく質の量によって分けられる
Q10穀類のたんぱく質は、必須アミノ酸のリシンが不足しやすい
Q11そばはイネ科の植物である
Q12コーンスターチは、とうもろこしの胚乳から取り出したでんぷんである
Q13とうもろこしの主なたんぱく質はグルテニンである
Q14強力粉は、軟質小麦からつくられ、たんぱく質が少ない
Q15小麦粉は、灰分が少ないほど等級が高く、色が白い
Q16白玉粉は、うるち米を水挽きしてつくる
Q17小麦粉に水を加えてこねると、グリアジンとグルテニンが結びついてグルテンができる
Q18デュラム小麦の胚乳を粗く砕いたものをセモリナといい、パスタの原料となる
Q19道明寺粉は、生のもち米をそのまま粉にしたものである
Q20強力粉は硬質小麦を原料とし、たんぱく質を多く含むため、パンの製造に適している
Q21食塩を加えると、グルテンの形成は弱くなる
Q22小麦は、主に外皮の部分を粉にして小麦粉とする
Q23大麦のたんぱく質は、水を加えてこねると強いグルテンをつくる
Q24もち米のでんぷんは、アミロースとアミロペクチンがおよそ2:8である
Q25小麦粉に含まれる成分の中で最も多いのはたんぱく質である
Q26米は精白米の状態が最も貯蔵性が高い
まとめ
穀類は主にイネ科の植物の種子で、タデ科のそばも含まれる。種子は外皮・胚芽・胚乳からなり、食用にする胚乳の大部分はでんぷんである。穀類のたんぱく質はリシンが不足しやすい。
米は、日本ではジャポニカ米の水稲が主体で、うるち米(アミロース約20%)ともち米(ほぼアミロペクチン100%)がある。精白するとビタミンB₁などが減る。貯蔵性はもみ米が最も高く、古米は脂質の分解で古米臭が出る。米粉は、原料(うるち米かもち米か)と製法(生か糊化済みか)で分けられ、上新粉(うるち・生)、白玉粉・もち粉(もち・生)、道明寺粉・寒梅粉(もち・糊化済み)は、和菓子の性格を決める材料である。
小麦は胚乳を粉にして利用する。小麦粉の種類はたんぱく質の量で分けられ、硬質小麦からの強力粉はパンに、軟質小麦からの薄力粉は菓子に向く。等級は灰分の量で分けられ、灰分が少ないほど上質で白い。小麦粉のグリアジン(粘着性・伸展性)とグルテニン(弾力性)は、水を加えてこねるとグルテンになる。デュラム小麦のセモリナはパスタになる。
大麦(麦芽・β-グルカン)、ライ麦(サワー種)、えん麦(オートミール)、とうもろこし(ツェイン、コーンスターチ)、そば(タデ科、ルチン、アレルギー)は、いずれもグルテンをほとんどつくらない。
菓子づくりでは、粉の種類と性質を知ることが、食感をつくる第一歩である。次章では、穀類と並んででんぷんの供給源となるいも類と、たんぱく質や脂質に富む豆類・種実類を学ぶ。
※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

