食品学 第11章:砂糖・甘味料、調味料・香辛料、嗜好飲料

第11章

食品学 第二部 食品の種類のはなし

砂糖・甘味料、調味料・香辛料、嗜好飲料

はじめに

第二部の最後に取り上げるのは、食事の主役ではないが、味と香りを決める食品である。

砂糖は、菓子の甘味の主役である。しかし砂糖の役割は甘くすることだけではない。水を抱えて日持ちをよくし、でんぷんの老化を遅らせ、卵の泡を安定させ、焼き色をつけ、煮詰めればあめにもなる。砂糖には精製度や結晶の大きさの違う多くの種類があり、さらに、はちみつ、水あめ、糖アルコール、高甘味度甘味料など、さまざまな甘味料がある。

調味料と香辛料は、少量で食品の味と香りを大きく変える。菓子では、ひとつまみの塩、バニラやシナモンの香りが、仕上がりの印象を左右する。嗜好飲料である茶・コーヒー・ココア・酒類は、それ自体を楽しむだけでなく、抹茶や紅茶の菓子、チョコレート菓子、洋酒の香りを生かした菓子の材料として欠かせない。

本章では、これらの食品の原料・製法・成分の特徴を整理する。菓子の中での砂糖や洋酒の具体的な働きは、製菓理論の本で詳しく扱う。

1. 砂糖

1-1. 砂糖の原料

砂糖の主成分はショ糖(スクロース)である。ショ糖は、ブドウ糖と果糖が結合した二糖類で、還元性を持たない(第3章参照)。砂糖は、主に次の2つの植物からつくられる。

原料特徴日本での産地
さとうきび(甘しょ)イネ科の多年草。茎の汁にショ糖を含む。暖かい地域で育つ沖縄県、鹿児島県の南西諸島
てん菜(甜菜、ビート、砂糖大根)ヒユ科の植物。根にショ糖を蓄える。寒い地域で育つ北海道

さとうきびからつくった砂糖と、てん菜からつくった砂糖は、精製すると成分はほとんど同じになる。日本で消費される砂糖の多くは、海外から輸入した原料糖(粗糖)を国内で精製したものである。砂糖類の品目別自給率(カロリーベース)は約33%(令和7年度)である(第14章参照)。

1-2. 砂糖の製法

さとうきびは、産地の工場で汁をしぼり、石灰などで不純物を除いて煮詰め、結晶を取り出して原料糖(粗糖)にする。原料糖は、精製糖工場に運ばれ、結晶の表面を洗い、溶かし、不純物をろ過し、活性炭などで色を除いてから、再び煮詰めて結晶させる。結晶を取り出したあとに残る液を糖蜜という。

てん菜は、北海道の工場で根を細かく切り、温水でショ糖を溶かし出して、精製・結晶化までを一貫して行う。

1-3. 砂糖の種類

砂糖は、結晶と糖蜜を分けるかどうかによって、分蜜糖と含蜜糖に分けられる。

分蜜糖(精製糖など)

結晶と糖蜜を分離してつくる砂糖である。

分類種類特徴菓子での用途
ハードシュガー(ざらめ糖)グラニュー糖純度が高く(ショ糖99.9%以上)、結晶が小さめでさらさらしている。くせのない甘さ洋菓子全般、メレンゲ、シロップ
ハードシュガー白双糖(しろざら)結晶が大きく、純度が高い綿菓子、ゼリー、高級和菓子、果実酒
ハードシュガー中双糖(ちゅうざら)結晶が大きく、黄褐色(表面にカラメルをかけたもの)カステラの底、煮物
ソフトシュガー(車糖)上白糖結晶が細かく、転化糖液(ビスコ)をかけてあるためしっとりしている。日本で最も多く使われる和菓子、家庭の料理
ソフトシュガー三温糖上白糖をとったあとの糖液を、加熱を繰り返して煮詰めたもの。黄褐色で、こくと独特の風味がある煮物、佃煮、和菓子
加工糖角砂糖グラニュー糖を固めたもの飲みもの
加工糖氷砂糖大きな結晶に育てたもの。溶けるのが遅い果実酒
加工糖粉糖(粉砂糖)グラニュー糖を細かく粉砕したもの。固まりを防ぐためにコーンスターチを加えたものもあるアイシング、仕上げ、クッキー
加工糖顆粒状糖溶けやすくした顆粒飲みもの

三温糖の茶色は、糖蜜を除いていないためではなく、加熱を繰り返す間にできたカラメルの色である。三温糖は分蜜糖であり、黒糖のようにミネラルを多く含むわけではない。

上白糖は、表面の転化糖(ブドウ糖と果糖)のため、グラニュー糖より焼き色がつきやすく、しっとり仕上がる。

含蜜糖

糖蜜を分けずに、さとうきびの汁をそのまま煮詰めて固めた砂糖である。

種類特徴菓子での用途
黒糖(黒砂糖)さとうきびのしぼり汁を煮詰めて固めたもの。ミネラル(カリウム・カルシウム・鉄)が多く、独特の濃い風味がある黒糖まんじゅう、かりんとう、黒蜜
和三盆香川県・徳島県で伝統的な方法でつくる。さとうきび(竹糖)の汁を煮詰めたものを、水を加えて練り、重しをかけて糖蜜を抜く工程を繰り返してつくる。きめが細かく、口どけがよい上品な甘さ干菓子、高級和菓子
きび砂糖など精製の途中の糖液を煮詰めたもので、ほどよくミネラルと風味を残す焼き菓子

1-4. 砂糖の性質

砂糖は、菓子の中でさまざまな働きをする。ここでは、食品学で学んだ性質との関係を整理し、詳しい働きは製菓理論の本で扱う。

性質内容関連する章
甘味ショ糖の甘味は温度によって変わりにくく、甘味の基準となる第3章
溶けやすさ非常に溶けやすい。20℃の水100gに約200gが溶ける—
保水性・吸湿性水を引きつけて離さない。しっとり感を保ち、乾燥を防ぐ第2章
防腐性水分活性を下げて微生物の増殖を抑える(ジャム、ようかん)第2章
でんぷんの老化防止求肥・カステラがかたくなりにくい第3章
たんぱく質の凝固を遅らせるプリンをなめらかに固める第9章
泡の安定メレンゲの泡を安定させる第9章
ペクチンのゲル化高メトキシルペクチンのゲルをつくる第8章
焼き色・香り加熱で一部が分解し、メイラード反応やカラメル化に加わる第5章
結晶化煮詰めた糖液を冷やしたりかき混ぜたりすると、再び結晶になる(フォンダン、すり蜜)第5章

1-5. 転化

ショ糖を酸とともに加熱したり、酵素インベルターゼを作用させたりすると、ブドウ糖と果糖に分解される。これを転化といい、できたものを転化糖という(第3章参照)。シロップにレモン汁や酒石酸を加えて煮詰めると、ショ糖の一部が転化して、結晶化しにくくなる。

2. その他の甘味料

2-1. はちみつ

はちみつは、みつばちが花のみつを集め、体内の酵素で分解・濃縮したものである。

項目内容
成分水分約18%。糖の大部分は果糖とブドウ糖(転化糖に近い)
甘味果糖が多いため、砂糖より甘く感じられることが多い
色と香り花の種類(れんげ、アカシア、そば、百花など)によって色・香り・味が大きく異なる
結晶化気温が低くなる(15℃前後以下)と、ブドウ糖が結晶して白く固まる。品質の劣化ではなく、湯せん(40℃前後)で温めると溶ける
注意1歳未満の乳児には与えない(乳児ボツリヌス症の原因になることがある。栄養学・食品衛生学の本を参照)

はちみつは、成分表では「砂糖及び甘味類」に分類される(第1章参照)。果糖とブドウ糖は還元糖であるため、焼き菓子に加えると焼き色が濃くなり、吸湿性によってしっとり仕上がる(カステラ、どら焼き)。

2-2. 水あめ

水あめは、でんぷんを酸や酵素で分解(糖化)してつくる、粘りのある甘味料である。

種類製法特徴
酸糖化水あめでんぷんを酸で分解—
酵素糖化水あめでんぷんをアミラーゼで分解現在の主流
麦芽水あめ麦芽のアミラーゼで米やいものでんぷんを分解昔ながらの製法。麦芽糖が多い

水あめは、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、デキストリンなどの混合物で、甘味は砂糖より弱い。つやを出し、砂糖の結晶化を防ぎ、保湿性が高いため、ようかん、あめ、求肥、ジャム、焼き菓子のしっとり感に使われる。

2-3. 異性化糖

異性化糖は、でんぷんを分解してつくったブドウ糖液に、酵素(異性化酵素)を作用させて、ブドウ糖の一部を果糖に変えた液状の糖である。安価で、冷やすと甘味が強くなるため、清涼飲料水や冷菓に多く使われる。果糖の割合によって、「ぶどう糖果糖液糖」(果糖50%未満)、「果糖ぶどう糖液糖」(果糖50%以上90%未満)、「高果糖液糖」(果糖90%以上)と呼び分けられる。

2-4. メープルシロップ

メープルシロップは、サトウカエデなどの樹液を煮詰めたもので、主成分はショ糖である。カナダが主な産地。煮詰める間のメイラード反応やカラメル化によって、独特の色と香りが生まれる。

2-5. 糖アルコール

糖アルコールは、糖を還元してつくる甘味料である(第3章参照)。

糖アルコール甘味度(ショ糖=1)特徴
ソルビトール約0.6果実(りんご・なしなど)にも含まれる。保湿性が高い
マルチトール(還元麦芽糖)約0.8〜0.9砂糖に近い甘さと性質
キシリトール約1.0口に入れると清涼感(ひんやり感)がある。むし歯予防のガム
エリスリトール約0.7〜0.8果実や発酵食品にも含まれる。体内でほとんど利用されず、エネルギーはほぼ0
還元水あめ—水あめを還元したもの

糖アルコールの共通の特徴は次のとおりである。

  • むし歯の原因になりにくい
  • 血糖値を上げにくく、エネルギーが砂糖より低い
  • 還元性がないため、メイラード反応による焼き色がつきにくい
  • 一度に多くとると、おなかがゆるくなることがある

2-6. オリゴ糖とトレハロース

オリゴ糖(フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖など)は、消化されにくく、腸内のビフィズス菌を増やす働きがある。トレハロースは、甘味がショ糖の約半分で、でんぷんの老化やたんぱく質の変性を抑える働きが強く、餅やあん、生菓子の品質保持に使われる。

2-7. 高甘味度甘味料

ごく少量で強い甘味を持つ甘味料を高甘味度甘味料という。エネルギーをほとんど持たないため、低カロリー食品に使われる。

甘味料由来甘味度の目安(ショ糖=1)
ステビア(ステビオシドなど)キク科ステビアの葉(天然)約200〜300倍
甘草(グリチルリチン)マメ科カンゾウの根(天然)約150〜250倍
アスパルテーム2種類のアミノ酸から合成約200倍
アセスルファムカリウム合成約200倍
スクラロースショ糖からつくる約600倍

高甘味度甘味料は、甘味をつけることはできるが、砂糖が持つ保水性・防腐性・焼き色・ボリュームなどの性質は持たない。そのため、菓子で砂糖をそのまま置きかえることはむずかしい。アスパルテームを使った食品には、アミノ酸の一種フェニルアラニンを含む旨の表示が必要である。食品添加物としての扱いは、食品衛生学の本(準備中)で扱う。

3. 調味料

3-1. 食塩

食塩の主成分は塩化ナトリウムである。海水からつくる塩と、岩塩がある。精製塩は塩化ナトリウムが99%以上で、自然塩と呼ばれるものには、にがり成分(マグネシウムなど)が残っているものがある。

菓子では、量はわずかでも、甘味を引き立てる(対比効果、第4章参照)、グルテンを引きしめる(第6章参照)、風味を引き締めるなどの働きをする。

3-2. しょうゆ

しょうゆは、大豆と小麦でつくった麹(こうじかび)に食塩水を加えたもろみを、発酵・熟成させてしぼったものである。発酵には、こうじかび、酵母、乳酸菌がかかわる(第12章参照)。日本農林規格(JAS)では、次の5種類に分けられる。

種類特徴
こいくちしょうゆ生産量の約8割を占める。色・香り・味のバランスがよい
うすくちしょうゆ色が淡い。関西で多く使われる。色は薄いが、食塩はこいくちより多い
たまりしょうゆ主に大豆でつくる。とろみとうま味が強い。中部地方
さいしこみしょうゆ食塩水の代わりにしょうゆで仕込む。色・味が濃い
しろしょうゆ主に小麦でつくる。色が非常に淡い

しょうゆの色は、熟成中のメイラード反応による(第5章参照)。みたらし団子のたれ、せんべいの味付け、和菓子の隠し味に使われる。

3-3. みそ

みそは、蒸した大豆に、麹と食塩を加えて発酵・熟成させたものである。麹の原料によって、米みそ(最も多い)、麦みそ、豆みそ(大豆だけでつくる。八丁みそなど)に分けられる。色は、熟成の期間や温度によって淡色から赤色まで変わり、これもメイラード反応による。白みそ(西京みそなど)は、麹が多く塩分が少ないため、甘みが強い。和菓子では、みそ松風、柏餅のみそあん、くるみゆべしなどに使われる。

3-4. 食酢

食酢は、主成分の酢酸(約4〜5%)を含む酸味の調味料である。

種類製法
醸造酢穀物や果実を、酵母でアルコール発酵させたあと、酢酸菌で酢酸発酵させたもの。米酢、穀物酢、りんご酢、ぶどう酢(ワインビネガー)、バルサミコ酢
合成酢酢酸を薄めて調味したもの(現在は少ない)

3-5. みりん

本みりんは、蒸したもち米と米麹を、焼酎(アルコール)の中で熟成させたもので、アルコールを約14%、糖分を多く含む。酒類として酒税法の対象になる。上品な甘味とてり、つやを与え、煮くずれを防ぐ。アルコール分の少ない「みりん風調味料」は、酒類ではない。

3-6. その他の調味料

調味料内容
うま味調味料グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウムなど(第4章参照)
風味調味料かつお節・こんぶなどの粉末やエキスにうま味調味料などを加えたもの(顆粒だし)
ソースウスターソース、中濃ソース、とんかつソース
トマトケチャップトマトの濃縮物に砂糖・酢・食塩・香辛料を加えたもの
マヨネーズ卵黄(または全卵)、植物油、食酢を乳化させたもの(O/W型、第9章参照)

4. 香辛料

4-1. 香辛料の働き

香辛料(スパイス)は、植物の種子、果実、花、つぼみ、葉、樹皮、根などを乾燥させたもので、少量で食品に香り・辛味・色を与える。葉を使うものを特にハーブと呼ぶことが多い。

働き内容例
香りづけ(賦香)よい香りをつけるバニラ、シナモン、ナツメグ、クローブ、カルダモン
辛味づけ辛味をつけ、食欲を増すこしょう、唐辛子、しょうが、からし、わさび、山椒
着色色をつけるサフラン、ターメリック、パプリカ、くちなし
臭み消し(矯臭)肉や魚の臭みを消すしょうが、にんにく、ローリエ、ナツメグ

4-2. 菓子に使われる主な香辛料

香辛料使う部分主な成分・特徴菓子の例
バニララン科の植物のさや(種子のさや)緑色のさやを収穫し、発酵・乾燥(キュアリング)を繰り返すことで、香りの成分バニリンが生じる。マダガスカル産が有名カスタード、アイスクリーム、焼き菓子
シナモンクスノキ科の木の樹皮シンナムアルデヒド。セイロンシナモンとカシアがあるアップルパイ、シナモンロール、八つ橋(ニッキ)
ナツメグ・メース同じ木の種子(ナツメグ)と、種子を包む赤い膜(メース)甘く刺激のある香り焼き菓子、プディング、肉料理
クローブフトモモ科の木のつぼみオイゲノール。甘く強い香りスパイスケーキ、焼きりんご
カルダモンショウガ科の植物の種子さわやかな香り。「香りの王様」とも呼ばれる北欧の菓子パン、チャイ
アニス・スターアニス(八角)果実アネトール。甘い香り焼き菓子、リキュール
ジンジャー根茎ジンゲロール(第4章参照)ジンジャーブレッド、ジンジャークッキー
オールスパイス果実シナモン・クローブ・ナツメグを合わせたような香りスパイスケーキ
サフランアヤメ科の花のめしべ水溶性の黄色の色素クロシン。非常に高価サフランパン、着色
ポピーシード(けしの実)種子香ばしいあんパンの飾り、焼き菓子
ミント葉メントール(清涼感)チョコレート、デザートの飾り

くちなしの実の黄色い色素もサフランと同じクロシンで、栗きんとんやたくあんの黄色をつけるのに使われる。

香辛料の香りの成分は揮発性で、光・熱・空気で失われやすい。ホール(形のまま)は香りが長持ちし、パウダー(粉末)は香りが早く失われる。密閉して冷暗所で保存する。

5. 嗜好飲料

5-1. 茶

緑茶、ウーロン茶、紅茶は、どれも同じチャノキ(ツバキ科)の葉からつくられる。違いは、茶葉に含まれる酸化酵素を働かせるかどうか、つまりカテキン類をどの程度酸化させるか(茶の世界ではこれを「発酵」と呼ぶ)による(第5章参照)。

分類製法種類色
不発酵茶摘んだ葉をすぐに加熱(蒸す・炒る)して酵素を失活させる緑茶(煎茶、玉露、かぶせ茶、てん茶・抹茶、番茶、ほうじ茶、釜炒り茶)緑(クロロフィル)
半発酵茶酸化を途中で止めるウーロン茶、包種茶黄〜褐色
発酵茶葉をもんで細胞を壊し、十分に酸化させる紅茶紅〜褐色(テアフラビン、テアルビジン)
後発酵茶加熱して酵素を止めたあと、微生物で発酵させるプーアル茶、碁石茶褐色

紅茶やウーロン茶の「発酵」は、茶葉自身の酵素による酸化であり、微生物による発酵ではない。微生物による発酵を行うのは、プーアル茶などの後発酵茶だけである。

茶の主な成分は次のとおりである。

成分味・働き多い茶
カテキン類(タンニン)渋味。抗酸化作用煎茶、番茶
カフェイン苦味。興奮作用玉露、抹茶(若い芽に多い)
テアニンうま味・甘味(アミノ酸の一種)玉露、抹茶(日光を遮って育てると多くなる)
ビタミンC—緑茶(紅茶は製造中にほとんど失われる)
クロロフィル緑色抹茶、玉露

抹茶は、茶摘みの前に覆いをかけて日光を遮って育てた茶葉を、蒸して、もまずに乾燥させ(てん茶)、石臼で細かく挽いたものである。日光を遮ることで、うま味のテアニンが多く、渋味のカテキンが少なくなり、クロロフィルが増えて鮮やかな緑色になる。ほうじ茶は、番茶や煎茶を強く焙煎したもので、香ばしい香りがあり、カフェインが少なめである。

5-2. コーヒー

コーヒーは、アカネ科のコーヒーノキの種子(コーヒー豆)を焙煎し、粉にして湯で抽出したものである。主な品種に、香りと酸味にすぐれたアラビカ種と、苦味が強く病気に強いロブスタ種(カネフォラ種)がある。

成分特徴
カフェイン苦味。焙煎しても大きくは減らない
クロロゲン酸ポリフェノール。渋味・酸味。焙煎すると分解されて減る
トリゴネリン苦味。焙煎で分解されて香りの成分になる
焙煎でできる成分メイラード反応やカラメル化による褐色と香り(第5章参照)

焙煎が浅いと酸味が強く、深いと苦味が強くなる。インスタントコーヒーは、抽出液を噴霧乾燥や凍結乾燥(フリーズドライ)で粉にしたものである。

5-3. ココアとチョコレート

カカオは、アオイ科(旧分類ではアオギリ科)のカカオノキの種子(カカオ豆)である。

カカオ豆からココアとチョコレートができるまでの流れは、次のとおりである。

  1. 発酵:カカオの実を割り、種子を果肉ごと積み重ねて数日間置く。果肉の糖を微生物(酵母・乳酸菌・酢酸菌)が発酵させ、その熱と酸で種子の中の成分が変化し、チョコレートらしい香りのもとと色ができ、渋味が減る
  2. 乾燥:天日などで乾燥させて輸出する
  3. 焙煎:香りと色を引き出す(メイラード反応)
  4. 皮を除いて砕いたものがカカオニブ
  5. カカオニブをすりつぶしたものがカカオマス(脂質が約半分以上)
  6. カカオマスをしぼると、カカオバター(脂)と、しぼりかす(ココアケーキ)に分かれる。ココアケーキを粉にしたものがココアパウダー
  7. カカオマスに、砂糖、カカオバター、(乳製品)を加えて練り上げたものがチョコレート

ココアパウダーには、アルカリで処理して色を濃くし、酸味をやわらげ、水に分散しやすくしたもの(ダッチプロセス)がある。

カカオの苦味の主な成分はテオブロミンで、カフェインも少量含む(第4章参照)。カカオバターは、常温ではかたく、体温付近で一気に溶ける性質を持つ(第10章参照)。チョコレートを美しく固めるためのテンパリング(温度調整)は、カカオバターの結晶の形をそろえる作業であり、製菓理論の本で扱う。

5-4. 酒類

酒類は、酒税法で、アルコール分1度(1%)以上の飲料と定められている。製造方法によって、次の3つに分けられる。

分類製法例
醸造酒原料を発酵させて、そのまま、またはこしてつくる清酒(日本酒)、ビール、ワイン
蒸留酒醸造酒やもろみを蒸留して、アルコール分を高めたもの焼酎、ウイスキー、ブランデー、ラム、ウォッカ、ジン
混成酒醸造酒や蒸留酒に、果実・香料・糖類などを加えたものリキュール、梅酒、本みりん

醸造酒は、原料の違いによって、発酵のしかたが異なる。

発酵のしかた内容例
単発酵原料に糖が含まれ、酵母がそのままアルコール発酵するワイン(ぶどうの糖)
単行複発酵でんぷんを先に糖化し、そのあとでアルコール発酵させるビール(麦芽のアミラーゼで糖化)
並行複発酵糖化とアルコール発酵を同じ容器の中で同時に進める清酒(こうじかびが糖化し、酵母が発酵)

5-5. 菓子に使われる洋酒

洋菓子では、香りづけや風味の強化のために、さまざまな洋酒が使われる。

洋酒分類原料・特徴菓子の例
ブランデー蒸留酒ぶどうなどの果実の酒を蒸留し、樽で熟成させたもの。コニャック(フランス)が有名フルーツケーキ、ガナッシュ
カルヴァドス蒸留酒りんごのブランデー(フランス・ノルマンディー地方)りんごの菓子
キルシュ(キルシュヴァッサー)蒸留酒さくらんぼを発酵させて蒸留した無色透明の酒シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテ、フルーツの菓子
ラム蒸留酒さとうきびの糖蜜やしぼり汁を発酵・蒸留したものサバラン、ラムレーズン、フルーツケーキ
グラン・マルニエ混成酒(リキュール)コニャックにオレンジの香りをつけたものオレンジの菓子、クレープ・シュゼット
コアントロー混成酒(リキュール)オレンジの皮でつくる無色のリキュール(ホワイトキュラソー)オレンジの菓子
アマレット混成酒(リキュール)杏仁(あんずの種)などで香りをつけた、アーモンドのような香りのリキュールティラミス、焼き菓子
カルーア混成酒(リキュール)コーヒーのリキュールティラミス、コーヒーの菓子
クレーム・ド・カシス混成酒(リキュール)カシス(黒すぐり)のリキュールムース、ゼリー

洋酒のアルコールは、加熱しても完全には飛ばないことがある。特に、焼成後にシロップとして打つ(しみこませる)場合や、加熱せずに加える場合は、アルコールがそのまま残る。洋酒を使った菓子は、子どもや妊娠中の人、車を運転する人などに配慮し、使っていることを伝えることが大切である。

6. 製菓とのつながり

6-1. 砂糖を選ぶ

洋菓子では、くせがなく溶けやすいグラニュー糖が基本である。メレンゲやシロップは、グラニュー糖を使うと澄んだ甘さに仕上がる。和菓子では、しっとりとした上白糖が多く使われ、カステラやどら焼きでは、上白糖の転化糖とはちみつ・水あめの還元糖が、焼き色としっとり感を生む。白双糖は、雑味のない上品な甘さが求められる錦玉や高級和菓子に、黒糖・和三盆は、それぞれの風味そのものを味わう菓子に使われる。

6-2. 甘味料で配合を工夫する

砂糖の一部を水あめや転化糖に置きかえると、結晶化を防ぎ、しっとり感を長く保てる。トレハロースは、餅やあんのかたくなるのを防ぐ。糖アルコールや高甘味度甘味料を使えば、エネルギーを抑えた菓子をつくれるが、焼き色、ボリューム、保存性などが変わるため、配合全体の見直しが必要になる。

6-3. 香りで印象を決める

バニラ、シナモン、ナツメグ、クローブ、カルダモン、ジンジャーなどの香辛料、抹茶・紅茶・ほうじ茶・コーヒー・ココアなどの嗜好飲料、ブランデー・ラム・キルシュ・オレンジのリキュールなどの洋酒は、菓子の印象を決める香りの素材である。香りの成分は揮発しやすいため、加えるタイミング(加熱の最後、冷ましてから)と保存方法に注意する。

6-4. ひとつまみの塩

キャラメル、あんこ、チョコレート、クッキーなどに少量の塩を加えると、甘味が引き立ち、味が引き締まる(対比効果)。しょうゆやみそも、みたらし団子やみそ松風のように、和菓子の味の要素として使われる。

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1酒税法では、アルコール分1度以上の飲料を酒類という

この文のとおりです。

Q2サフランとくちなしの黄色の色素は、どちらもクロシンである

この文のとおりです。

Q3はちみつの糖の大部分は、果糖とブドウ糖である

この文のとおりです。(転化糖に近い)

Q4黒糖は、結晶と糖蜜を分離してつくる分蜜糖である

正しくは:黒糖は糖蜜を分けない含蜜糖

Q5三温糖は、糖蜜を多く含むため、黒糖と同じくミネラルが多い

正しくは:三温糖は分蜜糖で、茶色は加熱を繰り返してできたカラメルの色

Q6抹茶は、日光を遮って育てた茶葉からつくるため、テアニンが多く、カテキンが少ない

この文のとおりです。

Q7砂糖は、さとうきびとてん菜からつくられ、精製すれば成分はほとんど同じである

この文のとおりです。

Q8ブランデーは、さとうきびを原料とする蒸留酒である

正しくは:ブランデーはぶどうなどの果実が原料。さとうきびが原料なのはラム

Q9分蜜糖には、グラニュー糖、上白糖、三温糖、白双糖などがある

この文のとおりです。

Q10うすくちしょうゆは、色が淡いので、こいくちしょうゆより塩分が少ない

正しくは:うすくちしょうゆは、こいくちより塩分が多い

Q11はちみつが白く固まるのは、品質が劣化したためである

正しくは:低温でブドウ糖が結晶したもので、劣化ではない。湯せんで溶ける

Q12グラニュー糖は、転化糖液をかけてしっとりさせた砂糖である

正しくは:転化糖液をかけてあるのは上白糖。グラニュー糖はさらさらしている

Q13紅茶の発酵は、微生物の働きによるものである

正しくは:紅茶の発酵は、茶葉自身の酸化酵素による

Q14はちみつは、1歳未満の乳児にも安心して与えることができる

正しくは:1歳未満の乳児には与えない(乳児ボツリヌス症)

Q15てん菜は、主に沖縄県で栽培される砂糖の原料である

正しくは:てん菜は寒い地域の作物で、主に北海道で栽培される。沖縄・鹿児島はさとうきび

Q16バニラの香りの主な成分バニリンは、さやを発酵・乾燥させる過程で生じる

この文のとおりです。(キュアリング)

Q17カカオマスをしぼると、カカオバターとココアの原料(ココアケーキ)に分かれる

この文のとおりです。

Q18キルシュは、オレンジを原料とするリキュールである

正しくは:キルシュはさくらんぼを原料とする蒸留酒

Q19水あめは、でんぷんを酸や酵素で分解してつくる

この文のとおりです。

Q20茶のうま味成分はカテキンである

正しくは:茶のうま味成分はテアニン。カテキンは渋味

Q21清酒は、単行複発酵によってつくられる

正しくは:清酒は糖化と発酵を同時に進める並行複発酵。単行複発酵はビール

Q22キシリトールは、むし歯の原因になりにくい糖アルコールで、口に入れると清涼感がある

この文のとおりです。

Q23上白糖は、グラニュー糖より焼き色がつきにくい

正しくは:上白糖は転化糖を含むため、焼き色がつきやすい

Q24カカオの主な苦味成分はカフェインである

正しくは:カカオの主な苦味成分はテオブロミン

Q25砂糖の主成分はブドウ糖である

正しくは:砂糖の主成分はショ糖(スクロース)

Q26糖アルコールは還元糖であるため、焼き菓子に使うとよく焼き色がつく

正しくは:糖アルコールは還元性がなく、焼き色がつきにくい

Q27緑茶、ウーロン茶、紅茶は、それぞれ異なる植物の葉からつくられる

正しくは:どれも同じチャノキの葉からつくられる
結果:

まとめ

砂糖の主成分はショ糖で、さとうきび(沖縄・鹿児島)とてん菜(北海道)からつくられる。糖蜜を分ける分蜜糖には、さらさらで純度の高いグラニュー糖、転化糖液でしっとりした上白糖、カラメルで色づいた三温糖、結晶の大きい白双糖、粉糖、氷砂糖などがあり、糖蜜を分けない含蜜糖には、ミネラルの多い黒糖、きめ細かな和三盆がある。砂糖は甘味だけでなく、保水性・防腐性・老化防止・泡の安定など多くの働きを持つ。

はちみつは果糖とブドウ糖が主で、低温でブドウ糖が結晶する。1歳未満の乳児には与えない。水あめはでんぷんの分解物でつやと保湿を与え、異性化糖はブドウ糖の一部を果糖に変えたものである。糖アルコールは、むし歯になりにくく、エネルギーが低いが、焼き色がつきにくい。高甘味度甘味料は少量で強い甘味を持つが、砂糖のほかの働きは持たない。

調味料では、しょうゆ(こいくち・うすくちは塩分が多い・たまり・さいしこみ・しろ)、みそ、食酢(酢酸菌)、本みりんが発酵によってつくられる。香辛料は香り・辛味・色・臭み消しの働きを持ち、菓子ではバニラ(キュアリングでバニリン)、シナモン、ナツメグ、クローブ、カルダモン、サフラン(クロシン)が重要である。

茶は同じチャノキから、酸化させない緑茶、途中で止めるウーロン茶、十分に酸化させる紅茶がつくられ、この「発酵」は酵素による酸化である。茶のうま味はテアニン、渋味はカテキン、苦味はカフェインである。カカオは微生物で発酵させてから焙煎し、カカオマス・カカオバター・ココアパウダーになる。苦味はテオブロミン。酒類はアルコール分1度以上の飲料で、醸造酒・蒸留酒・混成酒に分けられ、清酒は並行複発酵でつくられる。菓子の洋酒では、ブランデー(ぶどう)、ラム(さとうきび)、キルシュ(さくらんぼ)を区別して覚える。

第二部はここまでとし、次章からは第三部として、食品の加工と保存、表示、食料の生産と消費を学ぶ。

※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

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