食品学 第14章:食料の生産と消費

第14章

食品学 第三部 食品と社会のはなし

食料の生産と消費

はじめに

私たちが毎日食べている食品は、どこでつくられているのだろうか。ショートケーキを例に考えてみると、スポンジの小麦粉の多くはアメリカやカナダ、オーストラリアの小麦から、砂糖の一部は海外の原料糖からつくられている。卵や生クリームは国内でつくられていても、鶏や牛が食べる飼料の多くは輸入である。いちごは国産でも、それを育てる燃料や肥料の原料は輸入に頼っている。

日本は、食料の多くを海外に頼っている国である。その度合いを示す指標が食料自給率であり、製菓衛生師試験でも、総合食料自給率のおおよその値や、品目ごとの自給率の高い・低いがよく問われる。

本章では、食料自給率の種類と計算のしかた、最新の値(令和7年度)、自給率が下がってきた理由を学ぶ。さらに、食料自給率を計算するもとになる食料需給表、食料安全保障の考え方、菓子の原料と輸入の関係を整理し、食品学のまとめとする。

1. 食料自給率とは

1-1. 食料自給率の意味

食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、どのくらいが国内で生産されているかを示す割合である。農林水産省が毎年、食料需給表をもとに計算して公表している。

食料自給率には、計算のしかたによって、いくつかの種類がある。

種類何で比べるか特徴
品目別自給率重量米・小麦・野菜など、品目ごとの自給の度合いを示す
総合食料自給率(カロリーベース)熱量(エネルギー)食料全体を、生きるために必要なエネルギーという共通の物差しでまとめる
総合食料自給率(生産額ベース)金額食料全体を、経済的な価値という共通の物差しでまとめる
摂取熱量ベース食料自給率熱量令和7年に新しく設けられた指標(後述)

さまざまな食品をまとめて一つの数字にするためには、重さでは比べられない(米1kgと野菜1kgは価値が違う)。そこで、熱量(カロリー)か金額で換算して、全体をまとめるのが総合食料自給率である。

1-2. 計算のしかた

種類計算式
品目別自給率国内生産量 ÷ 国内消費仕向量 × 100
カロリーベース1人1日あたり国産供給熱量 ÷ 1人1日あたり供給熱量 × 100
生産額ベース食料の国内生産額 ÷ 食料の国内消費仕向額 × 100
摂取熱量ベース1人1日あたり国産供給熱量 ÷ 1人1日あたり平時に必要な摂取熱量 × 100

国内消費仕向量とは、その年に国内で消費に回された量のことで、次のように求める。

国内消費仕向量 = 国内生産量 + 輸入量 - 輸出量 - 在庫の増加量(+ 在庫の減少量)

1-3. 畜産物の扱い

牛肉・豚肉・鶏肉・鶏卵・牛乳などの畜産物は、国内で生産されていても、家畜に与える飼料の多くを輸入している。そこで、カロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率では、輸入した飼料で育てた分を、国産として数えない。たとえば、国内で生産された鶏卵でも、飼料が輸入であれば、その分は自給率に含まれない。

これに対して、飼料が輸入か国産かを問わずに計算した指標を、食料国産率という。食料国産率は、国内の畜産業の生産の実力を示す指標として使われる。

2. 日本の食料自給率(令和7年度)

2-1. 総合食料自給率

農林水産省が令和8年8月に公表した令和7年度(概算)の食料自給率は、次のとおりである。

指標計算値
カロリーベース総合食料自給率国産供給熱量 830kcal ÷ 供給熱量 2,237kcal(1人1日あたり)37%
生産額ベース総合食料自給率国内生産額 14.5兆円 ÷ 国内消費仕向額 21.8兆円66%
摂取熱量ベース食料自給率国産供給熱量 830kcal ÷ 平時に必要な摂取熱量 1,850kcal45%
食料国産率(カロリーベース)飼料の輸入を差し引かない46%
食料国産率(生産額ベース)飼料の輸入を差し引かない71%
飼料自給率—24%

カロリーベースでみると、日本の食料の約4割弱しか国内でまかなえていないことになる。これは、主要な先進国の中で最も低い水準である。

2-2. 最近の推移

年度カロリーベース生産額ベース
令和3年度38%63%
令和4年度38%58%
令和5年度38%61%
令和6年度38%64%
令和7年度37%66%

カロリーベースは、近年38%前後でほぼ横ばいが続き、令和7年度は37%となった。生産額ベースは、輸入品の価格や為替の影響を受けて、年によって大きく変わる。

2-3. 長期の推移

日本のカロリーベースの食料自給率は、昭和40年度(1965年度)には73%あったが、その後大きく下がり、昭和45年度(1970年度)には60%、平成10年度(1998年度)ごろからは40%前後で推移している。

2-4. カロリーベースと生産額ベースの違い

生産額ベースの自給率がカロリーベースより高いのは、日本の農業が、野菜・果実・畜産物など、カロリーは低いが金額の高い品目を多く生産しているためである。たとえば、国産の野菜はカロリーベースではわずかしか自給率に貢献しないが、生産額ベースでは大きく貢献する。逆に、小麦・大豆・油脂原料・飼料など、カロリーが高く、安い品目の多くを輸入しているため、カロリーベースの自給率は低くなる。

2-5. 摂取熱量ベース食料自給率

カロリーベースの計算に使う供給熱量(2,237kcal)は、国内に供給された食料の熱量であり、実際には食べられずに捨てられる食品ロスの分も含まれている。そこで、令和7年4月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画では、平時に人が必要とする摂取熱量(1,850kcal)を分母とする、摂取熱量ベース食料自給率が新たに設けられた。令和7年度の値は45%である。

3. 品目別の自給率

3-1. 主な品目の自給率

品目によって、自給率は大きく異なる。

カロリーベースの品目別自給率(令和7年度、農林水産省)

品目自給率
米96%
野菜73%
果実28%
大豆25%
砂糖類33%
小麦16%
畜産物17%
油脂類4%

重量ベースの品目別自給率(目安)

品目自給率の目安
米ほぼ100%
鶏卵約97%
野菜約75〜80%
牛乳・乳製品約60%台
肉類約50%台
果実約30%台
小麦約16%(令和7年度:国内生産103.1万トン ÷ 国内消費仕向量658.7万トン)
大豆約7%(令和7年度:国内生産26.1万トン ÷ 国内消費仕向量381.5万トン)

重量ベースの大豆の自給率(約7%)がカロリーベース(25%)より低いのは、重量ベースでは、油をしぼるために輸入される大量の大豆(油糧用)も分母に含まれるためである。

鶏卵の自給率は、重量ベースでは約97%と高いが、飼料の多くが輸入であるため、カロリーベースではずっと低くなる。

3-2. 傾向をつかむ

自給率の細かい数値は毎年変わるため、試験では、次のような大きな傾向をつかんでおくことが大切である。

  • 米は、ほぼ自給できている(自給率が最も高い)
  • 鶏卵・野菜は、重量ベースでは比較的高い
  • 小麦・大豆・油脂類・飼料は、ほとんどを輸入に頼っている
  • 総合食料自給率は、カロリーベースで約4割弱、生産額ベースで約6〜7割

4. 食料自給率が下がってきた理由

日本の食料自給率が下がってきた主な理由は、食生活の変化と、それに国内の生産が対応しきれなかったことにある。

4-1. 米の消費の減少

国内でほぼ自給できる米の消費量は、大きく減ってきた。国民1人1年あたりの米の消費量(供給純食料)は、昭和37年度の118.3kgをピークに減り続け、令和7年度には52.0kgと、半分以下になっている。

4-2. 畜産物と油脂の消費の増加

一方で、肉類・牛乳・乳製品・油脂類の消費は大きく増えた。これらは、生産に必要な飼料(とうもろこしなど)や油の原料(大豆・なたねなど)の多くを輸入しているため、消費が増えるほど自給率は下がる。

変化自給率への影響
ご飯中心の食事から、パン・めん・肉・油を多く使う食事へ自給率の高い米が減り、輸入に頼る小麦・飼料・油が増える
外食・中食(調理済み食品)の増加加工・業務用の原料に輸入品が多く使われる
農業の担い手の減少と高齢化、農地の減少国内の生産力が低下する

つまり、自給率の低下は、日本人が「何を食べるようになったか」を映し出している。

5. 食料需給表

5-1. 食料需給表とは

食料需給表は、農林水産省が、国連の食糧農業機関(FAO)の作成の手引きにしたがって、毎年作成している統計である。日本で、どれだけの食料が生産され、輸入・輸出され、国内で消費に回されたかを、品目ごとにまとめたもので、食料自給率を計算する基礎となる。

食料需給表には、主に次のような項目がある。

項目内容
国内生産量国内で生産された量
輸入量・輸出量輸入・輸出された量
在庫の増減在庫が増えた量・減った量
国内消費仕向量国内で消費に回された量
純食料人が実際に食べる部分の量(皮や骨などを除いたもの)
1人1年あたり供給純食料純食料を人口で割ったもの
1人1日あたり供給熱量熱量に換算したもの。カロリーベースの自給率の分母になる

食料需給表の値は、国内に供給された量であり、実際に食べた量(摂取量)とは異なる。実際の摂取量は、厚生労働省の国民健康・栄養調査で調べられている(栄養学の本を参照)。供給量と摂取量の差には、食品ロスなどが含まれる。

5-2. 熱量への換算

食料需給表で品目の重量を熱量に換算するときには、日本食品標準成分表のエネルギーの値が使われる(第1章参照)。成分表は、食料自給率を計算するもとにもなっている。

6. 食料安全保障と食生活

6-1. 食料安全保障

食料安全保障とは、すべての国民が、将来にわたって、良質な食料を、合理的な価格で、安定して入手できるようにすることである。食料の多くを輸入に頼る日本では、世界の天候不順、紛争、感染症の流行、輸送の混乱、為替の変動などによって、食料の入手が不安定になるおそれがある。

こうした状況を受けて、日本の農業政策の基本を定める食料・農業・農村基本法が令和6年に改正され、食料安全保障の確保が基本理念の中心に位置づけられた。これにもとづき、令和7年4月には新しい食料・農業・農村基本計画が閣議決定され、食料自給率などの目標と、その達成のための施策が示されている。

6-2. 私たちにできること

取り組み内容
地産地消地域でつくられた農林水産物を、その地域で消費すること。輸送のエネルギーを減らし、地域の農業を支える
国産の食材を選ぶ米・米粉、国産小麦、国産の果実・野菜・乳製品などを積極的に使う
食品ロスを減らす食べられるのに捨てられる食品を減らす。日本の食品ロスは、令和6年度で約461万トン(栄養学の本を参照)
ご飯を中心とした食事自給率の高い米を中心に、多様な食品を組み合わせる

6-3. フードマイレージ

フードマイレージは、輸入した食料の重量に、生産地から消費地までの輸送距離を掛けた指標である。食料の輸送にともなう環境への負荷の目安として使われる。日本は、大量の食料を遠い国から輸入しているため、フードマイレージが世界的にみて大きい国である。地産地消は、フードマイレージを小さくする取り組みでもある。

7. 製菓とのつながり

7-1. 菓子の原料と輸入

菓子の主な原料の多くは、輸入に頼っている。

原料輸入との関係
小麦粉小麦の自給率は約16%。製菓用の薄力粉の多くは、アメリカなどの軟質小麦からつくられる
砂糖砂糖類の自給率(カロリーベース)は約33%。国内では北海道のてん菜と、沖縄・鹿児島のさとうきびから生産される
油脂油脂類の自給率(カロリーベース)は約4%。植物油の原料(大豆・なたね・パーム)のほとんどが輸入
バター・生クリーム国内で生産されるが、生乳の生産量や需要によって不足し、輸入されることもある。乳牛の飼料の多くは輸入
鶏卵重量ベースの自給率は高いが、飼料の多くは輸入
カカオ・バニラ・ナッツ類・コーヒー・香辛料ほぼすべてを輸入
果実国産の果実もあるが、自給率は3割程度。加工用の果実やピューレは輸入が多い

7-2. 国産の原料を生かす

一方で、菓子づくりには国産の原料を生かす道も多い。米粉(第6章参照)、北海道や九州の国産小麦、北海道のてん菜糖や生乳・バター・あずき・白いんげん豆、各地の果実(いちご、りんご、みかん、ももなど)、くり、抹茶などである。地域の特産品を使った菓子は、地産地消と地域の農業の支えにもなる。

7-3. 原料の価格と安定供給

輸入に頼る原料は、世界の天候や為替、国際情勢によって価格や供給が大きく変わる。カカオ、バター、小麦、砂糖の価格の上昇は、菓子店の経営に直接影響する。原料の産地と流通を知ることは、仕入れや価格を考えるうえでも大切である。

7-4. 食品ロスと菓子

生菓子は消費期限が短く、売れ残りが食品ロスになりやすい。需要を予測した製造量の調整、期限の正しい設定(第13章参照)、焼き菓子への加工など、菓子店にもできる食品ロスの削減の工夫がある。

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1摂取熱量ベース食料自給率は、令和7年の食料・農業・農村基本計画で新たに設けられた指標である

この文のとおりです。(令和7年度は45%)⚠️ 古い教材には載っていない新しい指標である。

Q2食料需給表の供給熱量は、国民が実際に摂取した熱量である

正しくは:供給熱量は国内に供給された熱量で、食品ロスなども含む。実際の摂取量は国民健康・栄養調査で調べる

Q3国民1人1年あたりの米の消費量は、昭和37年度をピークに半分以下に減っている

この文のとおりです。(118.3kg→令和7年度52.0kg)

Q4フードマイレージは、食料の輸入金額に輸送距離を掛けたものである

正しくは:フードマイレージは、輸入した食料の重量に輸送距離を掛けたもの

Q5大豆は、ほぼ国内で自給できている

正しくは:大豆の自給率は、重量ベースで約7%と非常に低い

Q6米の自給率は、小麦より低い

正しくは:米はほぼ100%で、品目の中で最も高い

Q7品目別自給率は、熱量(カロリー)をもとに計算する

正しくは:品目別自給率は、原則として重量をもとに計算する

Q8油脂類のカロリーベースの自給率は、約50%である

正しくは:油脂類は約4%と非常に低い

Q9生産額ベースの自給率が高いのは、野菜・果実・畜産物など、金額の高い品目を国内で多く生産しているためである

この文のとおりです。

Q10食料需給表は、FAOの作成の手引きにしたがって作成されている

この文のとおりです。

Q11食料自給率の低下には、ご飯中心の食事から、畜産物や油脂を多く使う食事への変化が影響している

この文のとおりです。

Q12小麦の自給率は、約60%である

正しくは:小麦の自給率は約16%と低い

Q13品目別自給率は、国内生産量を国内消費仕向量で割って求める

この文のとおりです。

Q14食料自給率が低下した主な理由は、米の消費が増えたことである

正しくは:米の消費は減少し、畜産物や油脂の消費が増加したことが主な理由

Q15食料需給表は、厚生労働省が作成している

正しくは:食料需給表は農林水産省が作成している

Q16地産地消は、地域で生産されたものをその地域で消費する取り組みで、フードマイレージを小さくすることにもつながる

この文のとおりです。

Q17令和7年度のカロリーベース総合食料自給率は37%、生産額ベースは66%である

この文のとおりです。(農林水産省、令和8年8月公表)

Q18日本の生産額ベースの食料自給率は、カロリーベースより低い

正しくは:生産額ベース(令和7年度66%)は、カロリーベース(37%)より高い

Q19日本のカロリーベースの食料自給率は、昭和40年度から上昇を続けている

正しくは:昭和40年度の73%から大きく低下し、近年は約4割で推移している

Q20カロリーベースの総合食料自給率では、輸入飼料で育てた畜産物も国産として数える

正しくは:輸入飼料で育てた分は国産として数えない。数えるのは食料国産率

Q21日本のカロリーベース総合食料自給率は、約60%である

正しくは:カロリーベースは約4割弱(令和7年度37%)。約6割台なのは生産額ベース⚠️ 自給率の数値は毎年変わる。古い教材では「約38%」「約39%」「約40%」などとされている。試験では「約4割」という大きな傾向で判断する。

Q22国内消費仕向量は、国内生産量に輸入量を加え、輸出量と在庫の増加量を差し引いたものである

この文のとおりです。
結果:

まとめ

食料自給率は、国内で消費される食料のうち国内で生産される割合で、農林水産省が食料需給表をもとに毎年公表している。品目ごとの品目別自給率は重量で、全体の総合食料自給率は熱量(カロリーベース)または金額(生産額ベース)で計算する。カロリーベースと生産額ベースでは、輸入した飼料で育てた畜産物の分を国産に含めない。飼料の輸入を差し引かない指標が食料国産率である。

令和7年度の食料自給率は、カロリーベース37%、生産額ベース66%である。令和7年4月の食料・農業・農村基本計画で新設された摂取熱量ベースは45%である。カロリーベースは、昭和40年度の73%から下がり、近年は約4割で推移している。生産額ベースが高いのは、野菜・果実・畜産物など金額の高い品目を国内で生産しているためである。

品目別では、米はほぼ100%と高く、小麦(約16%)、大豆(重量で約7%)、油脂類(カロリーで約4%)、飼料は低い。自給率が下がった主な理由は、米の消費の減少と、輸入飼料・輸入油脂原料に頼る畜産物・油脂の消費の増加という食生活の変化である。

食料の多くを輸入に頼る日本では、食料安全保障が重要な課題であり、令和6年に食料・農業・農村基本法が改正された。地産地消、国産の食材の利用、食品ロスの削減は、私たちが取り組めることである。フードマイレージは、輸入食料の重量に輸送距離を掛けた指標である。

菓子の主な原料である小麦・砂糖・油脂・カカオ・ナッツなどの多くは輸入に頼っている。原料の産地と流通を知り、国産の原料を生かすことも、これからの菓子づくりに求められる視点である。食品学の本文はここまでとし、次章では、全体を振り返る直前総まとめを行う。

※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

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