食品学 第三部 食品と社会のはなし
食料の生産と消費
はじめに
私たちが毎日食べている食品は、どこでつくられているのだろうか。ショートケーキを例に考えてみると、スポンジの小麦粉の多くはアメリカやカナダ、オーストラリアの小麦から、砂糖の一部は海外の原料糖からつくられている。卵や生クリームは国内でつくられていても、鶏や牛が食べる飼料の多くは輸入である。いちごは国産でも、それを育てる燃料や肥料の原料は輸入に頼っている。
日本は、食料の多くを海外に頼っている国である。その度合いを示す指標が食料自給率であり、製菓衛生師試験でも、総合食料自給率のおおよその値や、品目ごとの自給率の高い・低いがよく問われる。
本章では、食料自給率の種類と計算のしかた、最新の値(令和7年度)、自給率が下がってきた理由を学ぶ。さらに、食料自給率を計算するもとになる食料需給表、食料安全保障の考え方、菓子の原料と輸入の関係を整理し、食品学のまとめとする。
1. 食料自給率とは
1-1. 食料自給率の意味
食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、どのくらいが国内で生産されているかを示す割合である。農林水産省が毎年、食料需給表をもとに計算して公表している。
食料自給率には、計算のしかたによって、いくつかの種類がある。
| 種類 | 何で比べるか | 特徴 |
|---|---|---|
| 品目別自給率 | 重量 | 米・小麦・野菜など、品目ごとの自給の度合いを示す |
| 総合食料自給率(カロリーベース) | 熱量(エネルギー) | 食料全体を、生きるために必要なエネルギーという共通の物差しでまとめる |
| 総合食料自給率(生産額ベース) | 金額 | 食料全体を、経済的な価値という共通の物差しでまとめる |
| 摂取熱量ベース食料自給率 | 熱量 | 令和7年に新しく設けられた指標(後述) |
さまざまな食品をまとめて一つの数字にするためには、重さでは比べられない(米1kgと野菜1kgは価値が違う)。そこで、熱量(カロリー)か金額で換算して、全体をまとめるのが総合食料自給率である。
1-2. 計算のしかた
| 種類 | 計算式 |
|---|---|
| 品目別自給率 | 国内生産量 ÷ 国内消費仕向量 × 100 |
| カロリーベース | 1人1日あたり国産供給熱量 ÷ 1人1日あたり供給熱量 × 100 |
| 生産額ベース | 食料の国内生産額 ÷ 食料の国内消費仕向額 × 100 |
| 摂取熱量ベース | 1人1日あたり国産供給熱量 ÷ 1人1日あたり平時に必要な摂取熱量 × 100 |
国内消費仕向量とは、その年に国内で消費に回された量のことで、次のように求める。
国内消費仕向量 = 国内生産量 + 輸入量 - 輸出量 - 在庫の増加量(+ 在庫の減少量)
1-3. 畜産物の扱い
牛肉・豚肉・鶏肉・鶏卵・牛乳などの畜産物は、国内で生産されていても、家畜に与える飼料の多くを輸入している。そこで、カロリーベースと生産額ベースの総合食料自給率では、輸入した飼料で育てた分を、国産として数えない。たとえば、国内で生産された鶏卵でも、飼料が輸入であれば、その分は自給率に含まれない。
これに対して、飼料が輸入か国産かを問わずに計算した指標を、食料国産率という。食料国産率は、国内の畜産業の生産の実力を示す指標として使われる。
2. 日本の食料自給率(令和7年度)
2-1. 総合食料自給率
農林水産省が令和8年8月に公表した令和7年度(概算)の食料自給率は、次のとおりである。
| 指標 | 計算 | 値 |
|---|---|---|
| カロリーベース総合食料自給率 | 国産供給熱量 830kcal ÷ 供給熱量 2,237kcal(1人1日あたり) | 37% |
| 生産額ベース総合食料自給率 | 国内生産額 14.5兆円 ÷ 国内消費仕向額 21.8兆円 | 66% |
| 摂取熱量ベース食料自給率 | 国産供給熱量 830kcal ÷ 平時に必要な摂取熱量 1,850kcal | 45% |
| 食料国産率(カロリーベース) | 飼料の輸入を差し引かない | 46% |
| 食料国産率(生産額ベース) | 飼料の輸入を差し引かない | 71% |
| 飼料自給率 | — | 24% |
カロリーベースでみると、日本の食料の約4割弱しか国内でまかなえていないことになる。これは、主要な先進国の中で最も低い水準である。
2-2. 最近の推移
| 年度 | カロリーベース | 生産額ベース |
|---|---|---|
| 令和3年度 | 38% | 63% |
| 令和4年度 | 38% | 58% |
| 令和5年度 | 38% | 61% |
| 令和6年度 | 38% | 64% |
| 令和7年度 | 37% | 66% |
カロリーベースは、近年38%前後でほぼ横ばいが続き、令和7年度は37%となった。生産額ベースは、輸入品の価格や為替の影響を受けて、年によって大きく変わる。
2-3. 長期の推移
日本のカロリーベースの食料自給率は、昭和40年度(1965年度)には73%あったが、その後大きく下がり、昭和45年度(1970年度)には60%、平成10年度(1998年度)ごろからは40%前後で推移している。
2-4. カロリーベースと生産額ベースの違い
生産額ベースの自給率がカロリーベースより高いのは、日本の農業が、野菜・果実・畜産物など、カロリーは低いが金額の高い品目を多く生産しているためである。たとえば、国産の野菜はカロリーベースではわずかしか自給率に貢献しないが、生産額ベースでは大きく貢献する。逆に、小麦・大豆・油脂原料・飼料など、カロリーが高く、安い品目の多くを輸入しているため、カロリーベースの自給率は低くなる。
2-5. 摂取熱量ベース食料自給率
カロリーベースの計算に使う供給熱量(2,237kcal)は、国内に供給された食料の熱量であり、実際には食べられずに捨てられる食品ロスの分も含まれている。そこで、令和7年4月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画では、平時に人が必要とする摂取熱量(1,850kcal)を分母とする、摂取熱量ベース食料自給率が新たに設けられた。令和7年度の値は45%である。
3. 品目別の自給率
3-1. 主な品目の自給率
品目によって、自給率は大きく異なる。
カロリーベースの品目別自給率(令和7年度、農林水産省)
| 品目 | 自給率 |
|---|---|
| 米 | 96% |
| 野菜 | 73% |
| 果実 | 28% |
| 大豆 | 25% |
| 砂糖類 | 33% |
| 小麦 | 16% |
| 畜産物 | 17% |
| 油脂類 | 4% |
重量ベースの品目別自給率(目安)
| 品目 | 自給率の目安 |
|---|---|
| 米 | ほぼ100% |
| 鶏卵 | 約97% |
| 野菜 | 約75〜80% |
| 牛乳・乳製品 | 約60%台 |
| 肉類 | 約50%台 |
| 果実 | 約30%台 |
| 小麦 | 約16%(令和7年度:国内生産103.1万トン ÷ 国内消費仕向量658.7万トン) |
| 大豆 | 約7%(令和7年度:国内生産26.1万トン ÷ 国内消費仕向量381.5万トン) |
重量ベースの大豆の自給率(約7%)がカロリーベース(25%)より低いのは、重量ベースでは、油をしぼるために輸入される大量の大豆(油糧用)も分母に含まれるためである。
鶏卵の自給率は、重量ベースでは約97%と高いが、飼料の多くが輸入であるため、カロリーベースではずっと低くなる。
3-2. 傾向をつかむ
自給率の細かい数値は毎年変わるため、試験では、次のような大きな傾向をつかんでおくことが大切である。
- 米は、ほぼ自給できている(自給率が最も高い)
- 鶏卵・野菜は、重量ベースでは比較的高い
- 小麦・大豆・油脂類・飼料は、ほとんどを輸入に頼っている
- 総合食料自給率は、カロリーベースで約4割弱、生産額ベースで約6〜7割
4. 食料自給率が下がってきた理由
日本の食料自給率が下がってきた主な理由は、食生活の変化と、それに国内の生産が対応しきれなかったことにある。
4-1. 米の消費の減少
国内でほぼ自給できる米の消費量は、大きく減ってきた。国民1人1年あたりの米の消費量(供給純食料)は、昭和37年度の118.3kgをピークに減り続け、令和7年度には52.0kgと、半分以下になっている。
4-2. 畜産物と油脂の消費の増加
一方で、肉類・牛乳・乳製品・油脂類の消費は大きく増えた。これらは、生産に必要な飼料(とうもろこしなど)や油の原料(大豆・なたねなど)の多くを輸入しているため、消費が増えるほど自給率は下がる。
| 変化 | 自給率への影響 |
|---|---|
| ご飯中心の食事から、パン・めん・肉・油を多く使う食事へ | 自給率の高い米が減り、輸入に頼る小麦・飼料・油が増える |
| 外食・中食(調理済み食品)の増加 | 加工・業務用の原料に輸入品が多く使われる |
| 農業の担い手の減少と高齢化、農地の減少 | 国内の生産力が低下する |
つまり、自給率の低下は、日本人が「何を食べるようになったか」を映し出している。
5. 食料需給表
5-1. 食料需給表とは
食料需給表は、農林水産省が、国連の食糧農業機関(FAO)の作成の手引きにしたがって、毎年作成している統計である。日本で、どれだけの食料が生産され、輸入・輸出され、国内で消費に回されたかを、品目ごとにまとめたもので、食料自給率を計算する基礎となる。
食料需給表には、主に次のような項目がある。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 国内生産量 | 国内で生産された量 |
| 輸入量・輸出量 | 輸入・輸出された量 |
| 在庫の増減 | 在庫が増えた量・減った量 |
| 国内消費仕向量 | 国内で消費に回された量 |
| 純食料 | 人が実際に食べる部分の量(皮や骨などを除いたもの) |
| 1人1年あたり供給純食料 | 純食料を人口で割ったもの |
| 1人1日あたり供給熱量 | 熱量に換算したもの。カロリーベースの自給率の分母になる |
食料需給表の値は、国内に供給された量であり、実際に食べた量(摂取量)とは異なる。実際の摂取量は、厚生労働省の国民健康・栄養調査で調べられている(栄養学の本を参照)。供給量と摂取量の差には、食品ロスなどが含まれる。
5-2. 熱量への換算
食料需給表で品目の重量を熱量に換算するときには、日本食品標準成分表のエネルギーの値が使われる(第1章参照)。成分表は、食料自給率を計算するもとにもなっている。
6. 食料安全保障と食生活
6-1. 食料安全保障
食料安全保障とは、すべての国民が、将来にわたって、良質な食料を、合理的な価格で、安定して入手できるようにすることである。食料の多くを輸入に頼る日本では、世界の天候不順、紛争、感染症の流行、輸送の混乱、為替の変動などによって、食料の入手が不安定になるおそれがある。
こうした状況を受けて、日本の農業政策の基本を定める食料・農業・農村基本法が令和6年に改正され、食料安全保障の確保が基本理念の中心に位置づけられた。これにもとづき、令和7年4月には新しい食料・農業・農村基本計画が閣議決定され、食料自給率などの目標と、その達成のための施策が示されている。
6-2. 私たちにできること
| 取り組み | 内容 |
|---|---|
| 地産地消 | 地域でつくられた農林水産物を、その地域で消費すること。輸送のエネルギーを減らし、地域の農業を支える |
| 国産の食材を選ぶ | 米・米粉、国産小麦、国産の果実・野菜・乳製品などを積極的に使う |
| 食品ロスを減らす | 食べられるのに捨てられる食品を減らす。日本の食品ロスは、令和6年度で約461万トン(栄養学の本を参照) |
| ご飯を中心とした食事 | 自給率の高い米を中心に、多様な食品を組み合わせる |
6-3. フードマイレージ
フードマイレージは、輸入した食料の重量に、生産地から消費地までの輸送距離を掛けた指標である。食料の輸送にともなう環境への負荷の目安として使われる。日本は、大量の食料を遠い国から輸入しているため、フードマイレージが世界的にみて大きい国である。地産地消は、フードマイレージを小さくする取り組みでもある。
7. 製菓とのつながり
7-1. 菓子の原料と輸入
菓子の主な原料の多くは、輸入に頼っている。
| 原料 | 輸入との関係 |
|---|---|
| 小麦粉 | 小麦の自給率は約16%。製菓用の薄力粉の多くは、アメリカなどの軟質小麦からつくられる |
| 砂糖 | 砂糖類の自給率(カロリーベース)は約33%。国内では北海道のてん菜と、沖縄・鹿児島のさとうきびから生産される |
| 油脂 | 油脂類の自給率(カロリーベース)は約4%。植物油の原料(大豆・なたね・パーム)のほとんどが輸入 |
| バター・生クリーム | 国内で生産されるが、生乳の生産量や需要によって不足し、輸入されることもある。乳牛の飼料の多くは輸入 |
| 鶏卵 | 重量ベースの自給率は高いが、飼料の多くは輸入 |
| カカオ・バニラ・ナッツ類・コーヒー・香辛料 | ほぼすべてを輸入 |
| 果実 | 国産の果実もあるが、自給率は3割程度。加工用の果実やピューレは輸入が多い |
7-2. 国産の原料を生かす
一方で、菓子づくりには国産の原料を生かす道も多い。米粉(第6章参照)、北海道や九州の国産小麦、北海道のてん菜糖や生乳・バター・あずき・白いんげん豆、各地の果実(いちご、りんご、みかん、ももなど)、くり、抹茶などである。地域の特産品を使った菓子は、地産地消と地域の農業の支えにもなる。
7-3. 原料の価格と安定供給
輸入に頼る原料は、世界の天候や為替、国際情勢によって価格や供給が大きく変わる。カカオ、バター、小麦、砂糖の価格の上昇は、菓子店の経営に直接影響する。原料の産地と流通を知ることは、仕入れや価格を考えるうえでも大切である。
7-4. 食品ロスと菓子
生菓子は消費期限が短く、売れ残りが食品ロスになりやすい。需要を予測した製造量の調整、期限の正しい設定(第13章参照)、焼き菓子への加工など、菓子店にもできる食品ロスの削減の工夫がある。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1摂取熱量ベース食料自給率は、令和7年の食料・農業・農村基本計画で新たに設けられた指標である
Q2食料需給表の供給熱量は、国民が実際に摂取した熱量である
Q3国民1人1年あたりの米の消費量は、昭和37年度をピークに半分以下に減っている
Q4フードマイレージは、食料の輸入金額に輸送距離を掛けたものである
Q5大豆は、ほぼ国内で自給できている
Q6米の自給率は、小麦より低い
Q7品目別自給率は、熱量(カロリー)をもとに計算する
Q8油脂類のカロリーベースの自給率は、約50%である
Q9生産額ベースの自給率が高いのは、野菜・果実・畜産物など、金額の高い品目を国内で多く生産しているためである
Q10食料需給表は、FAOの作成の手引きにしたがって作成されている
Q11食料自給率の低下には、ご飯中心の食事から、畜産物や油脂を多く使う食事への変化が影響している
Q12小麦の自給率は、約60%である
Q13品目別自給率は、国内生産量を国内消費仕向量で割って求める
Q14食料自給率が低下した主な理由は、米の消費が増えたことである
Q15食料需給表は、厚生労働省が作成している
Q16地産地消は、地域で生産されたものをその地域で消費する取り組みで、フードマイレージを小さくすることにもつながる
Q17令和7年度のカロリーベース総合食料自給率は37%、生産額ベースは66%である
Q18日本の生産額ベースの食料自給率は、カロリーベースより低い
Q19日本のカロリーベースの食料自給率は、昭和40年度から上昇を続けている
Q20カロリーベースの総合食料自給率では、輸入飼料で育てた畜産物も国産として数える
Q21日本のカロリーベース総合食料自給率は、約60%である
Q22国内消費仕向量は、国内生産量に輸入量を加え、輸出量と在庫の増加量を差し引いたものである
まとめ
食料自給率は、国内で消費される食料のうち国内で生産される割合で、農林水産省が食料需給表をもとに毎年公表している。品目ごとの品目別自給率は重量で、全体の総合食料自給率は熱量(カロリーベース)または金額(生産額ベース)で計算する。カロリーベースと生産額ベースでは、輸入した飼料で育てた畜産物の分を国産に含めない。飼料の輸入を差し引かない指標が食料国産率である。
令和7年度の食料自給率は、カロリーベース37%、生産額ベース66%である。令和7年4月の食料・農業・農村基本計画で新設された摂取熱量ベースは45%である。カロリーベースは、昭和40年度の73%から下がり、近年は約4割で推移している。生産額ベースが高いのは、野菜・果実・畜産物など金額の高い品目を国内で生産しているためである。
品目別では、米はほぼ100%と高く、小麦(約16%)、大豆(重量で約7%)、油脂類(カロリーで約4%)、飼料は低い。自給率が下がった主な理由は、米の消費の減少と、輸入飼料・輸入油脂原料に頼る畜産物・油脂の消費の増加という食生活の変化である。
食料の多くを輸入に頼る日本では、食料安全保障が重要な課題であり、令和6年に食料・農業・農村基本法が改正された。地産地消、国産の食材の利用、食品ロスの削減は、私たちが取り組めることである。フードマイレージは、輸入食料の重量に輸送距離を掛けた指標である。
菓子の主な原料である小麦・砂糖・油脂・カカオ・ナッツなどの多くは輸入に頼っている。原料の産地と流通を知り、国産の原料を生かすことも、これからの菓子づくりに求められる視点である。食品学の本文はここまでとし、次章では、全体を振り返る直前総まとめを行う。
※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

