衛生法規 第二部 製菓と食品の法律
食品表示法と表示に関わる法律
はじめに
食品表示法は、容器包装に入った食品に何を、どのように表示するかを定めた法律である。表示は、消費者が食品を選び、安全に食べるための唯一の手がかりとなる。特にアレルギーをもつ人にとって、原材料の表示は命に関わる情報である。
菓子店で焼き菓子を袋に詰めて販売する場合も、この法律にもとづく表示が必要になる。試験では、法律の目的、アレルゲンの品目、期限表示の違い、栄養成分表示の項目、保健機能食品の区別などが問われる。
アレルゲンの制度は、令和8年(2026年)4月に大きく改正された。古い教材や過去問と答えが異なるので、特に注意して読んでほしい。
本章の後半(10〜13)では、食品表示法とあわせて出題されるJAS法(品質の規格とJASマーク)、計量法(内容量)、景品表示法(うそや大げさな表示・過大な景品の禁止)を扱う。「どの表示を、どの法律が決めているか」を区別できるようにしておくこと。
1. 制定の経緯と目的
1-1. 3つの法律の統合
食品の表示に関するルールは、かつて次の3つの法律に分かれていた。
| 旧制度 | 主な表示内容 |
|---|---|
| 食品衛生法 | 添加物、アレルゲン、期限、保存方法など(安全のための表示) |
| JAS法 | 名称、原材料名、原産地など(品質のための表示) |
| 健康増進法 | 栄養成分表示など(健康のための表示) |
同じ食品の表示が3つの法律で別々に規制されていたため、わかりにくく、用語の定義も法律ごとに異なっていた。そこで、3つの法律の食品表示に関する規定を統合し、食品表示法が制定された。
| 年月 | できごと |
|---|---|
| 平成25年(2013年)6月 | 食品表示法が公布される |
| 平成27年(2015年)4月1日 | 食品表示法と食品表示基準が施行される。機能性表示食品制度が始まる |
| 令和2年(2020年)3月末 | 加工食品の表示の経過措置期間が終わる |
| 令和4年(2022年)3月末 | すべての加工食品の原料原産地表示の経過措置期間が終わる |
| 令和8年(2026年)4月1日 | 特定原材料にカシューナッツ、推奨表示にピスタチオが追加される |
1-2. 目的(第1条)
食品表示法の目的は、要約すると次のとおりである。
食品に関する表示が、食品を摂取する際の安全性の確保と、自主的かつ合理的な食品の選択の機会の確保に関し重要な役割を果たしていることにかんがみ、表示について基準の策定などを行うことにより、その適正を確保し、もって一般消費者の利益の増進を図るとともに、国民の健康の保護・増進、食品の生産・流通の円滑化、消費者の需要に即した食品の生産の振興に寄与すること。
1-3. 基本理念(第3条)
食品表示の施策は、消費者基本法にもとづく消費者政策の一環として、消費者の権利(安全の確保、選択の機会の確保、必要な情報の提供)の尊重と、消費者の自立の支援を基本として行われる。あわせて、小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響などに配慮する。
2. 食品表示基準(第4条)
内閣総理大臣は、食品を安全に摂取し、自主的かつ合理的に選択するために必要な表示のルールとして、食品表示基準(内閣府令)を定める。食品表示基準を定めるときは、厚生労働大臣・農林水産大臣・財務大臣(酒類について)と協議し、消費者委員会の意見を聴く。
食品関連事業者は、食品表示基準に従った表示がされていない食品を販売してはならない(第5条)。
行政の担当
- 食品表示基準の策定:内閣総理大臣(消費者庁)
- 指示・命令・立入検査:消費者庁のほか、農林水産大臣(品質に関する事項)、財務大臣(酒類)、都道府県知事・保健所設置市長などに権限が分担・委任されている
3. 加工食品の義務表示事項
容器包装に入れられた一般用の加工食品には、原則として次の事項を表示しなければならない。
| 表示事項 | 内容・注意点 |
|---|---|
| 名称 | その内容を表す一般的な名称 |
| 保存の方法 | 常温で保存できる食品は省略できる |
| 消費期限または賞味期限 | 品質の劣化が極めて少ないもの(砂糖、食塩、チューインガム、アイスクリーム類など)は省略できる |
| 原材料名 | 使用した原材料を、重量の割合の高いものから順に表示する |
| 添加物 | 原材料とは区分して、重量の割合の高いものから順に表示する |
| 内容量または固形量・内容総量 | 重量、体積、数量で表示する |
| 栄養成分の量および熱量 | 本章6参照 |
| 食品関連事業者の氏名または名称・住所 | 表示内容に責任をもつ者 |
| 製造所または加工所の所在地と製造者などの氏名または名称 | 製造所固有記号を用いることができる場合がある |
| 原料原産地名 | 重量の割合が最も高い原材料の原産地(本章7参照) |
| 原産国名 | 輸入品の場合 |
| アレルゲン | 本章4参照 |
表示が必要ない場合
- 店内で製造・加工し、その場で販売する菓子(容器包装に入れず対面で販売する場合など)は、原則として表示の義務がない
- ただし、アレルギー事故を防ぐため、店頭の掲示や口頭などで、アレルゲンの情報を提供することが望ましい
表示面積が小さい場合
表示可能面積がおおむね30cm²以下の場合は、原材料名などの表示を省略できる。ただし、名称、保存の方法、期限、表示責任者、アレルゲンなど、安全に関わる事項は省略できない。
4. アレルゲン表示
4-1. 特定原材料(表示義務)
食物アレルギーの原因となる原材料のうち、発症数が多いもの、症状が重いものとして、表示が義務づけられているものを特定原材料という。令和8年(2026年)4月1日から、次の9品目である。
卵、乳、小麦、えび、かに、くるみ、そば、落花生(ピーナッツ)、カシューナッツ
- 平成13年(2001年)の制度開始時は5品目であった
- えび・かには平成20年(2008年)に、くるみは令和5年(2023年)に追加された
- カシューナッツは令和8年(2026年)4月1日に追加された。ただし、2年間の経過措置があり、表示の義務が本格的に適用されるのは令和10年(2028年)4月1日からである
4-2. 特定原材料に準ずるもの(表示推奨)
表示が推奨(努力規定)されているものを、特定原材料に準ずるものという。令和8年4月1日から、次の20品目である。
アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、マカダミアナッツ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、ピスタチオ
最近の品目の変更
| 時期 | 変更 |
|---|---|
| 令和6年(2024年)3月 | マカダミアナッツを追加し、まつたけを削除(20品目) |
| 令和8年(2026年)4月 | カシューナッツが特定原材料へ移り、ピスタチオを追加(20品目) |
製菓で特に注意する原材料
特定原材料の9品目のうち、卵、乳、小麦、くるみ、落花生、カシューナッツは、菓子に日常的に使われる。推奨のアーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ、ゼラチン、大豆、ごま、オレンジ、りんご、ももなども、菓子にはよく使われる。表示が推奨にとどまるものであっても、菓子店では積極的に表示することが望ましい。
4-3. 表示の方法
- 原材料ごとに、その直後にかっこ書きで表示する個別表示が原則である(例:「マヨネーズ(卵・大豆を含む)」)
- 表示面積が限られるなどの場合は、原材料欄の最後にまとめて表示する一括表示もできる(例:「(一部に小麦・卵・乳・大豆を含む)」)
- 使った量がごく微量であっても、特定原材料を含む場合は表示が必要である。おおむね食品1gあたり数μg(数ppm)以上含まれる場合が対象とされる
- 同じ製造ラインで特定原材料を使う製品をつくっているなど、意図せず混入(コンタミネーション)するおそれがある場合は、「本品製造工場では、落花生を含む製品を製造しています」のような注意喚起を表示できる。「入っているかもしれません」のような可能性表示は認められていない
5. 期限表示
| 表示 | 意味 | 対象となる食品 | 表示の方法 |
|---|---|---|---|
| 消費期限 | 定められた方法で保存した場合に、腐敗・変敗などにより安全性を欠くおそれがない期限 | 品質が急速に劣化しやすい食品(おおむね製造日を含めて5日以内に劣化するもの)。生菓子、洋生菓子、弁当、サンドイッチ など | 年月日 |
| 賞味期限 | 定められた方法で保存した場合に、すべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限。この期限を過ぎても、すぐに食べられなくなるわけではない | 比較的劣化が遅い食品。焼き菓子、スナック菓子、缶詰 など | 年月日。製造日から賞味期限までが3か月を超える場合は年月でもよい |
- 期限は、その食品の特性を熟知している製造者などが、科学的・合理的な根拠にもとづいて設定する
- 期限は、開封前の状態で、表示された方法で保存した場合の期限である。開封した後は、期限にかかわらず早めに食べる必要がある
- 「消費期限」と「賞味期限」は、どちらか一方を表示する
6. 栄養成分表示
6-1. 義務表示の5項目
容器包装に入れられた消費者向けの加工食品には、次の5項目の表示が義務づけられている。表示する順番も決まっている。
- 熱量(エネルギー)
- たんぱく質
- 脂質
- 炭水化物
- 食塩相当量(ナトリウムの量を食塩相当量に換算して表示する)
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 義務 | 熱量、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量 |
| 推奨 | 飽和脂肪酸、食物繊維 |
| 任意 | 糖質、糖類、コレステロール、ビタミン、ミネラル など |
- 100g、100mL、1食分、1包装などの単位あたりで表示する。1食分を単位とする場合は、その量も表示する
- 含有量が0であっても、義務表示の項目は省略できない
6-2. 表示を省略できる場合
- 食品を製造・加工した場所で販売する場合
- 表示可能面積が30cm²以下の場合
- 栄養の供給源としての寄与の程度が小さいもの(コーヒー豆、香辛料など)
- 酒類
- 販売する者が小規模の事業者である場合。具体的には、消費税を納める義務が免除される事業者、または、おおむね常時使用する従業員の数が20人(商業・サービス業を主とする事業者は5人)以下の事業者
小規模の事業者が製造した食品でも、小規模ではないスーパーなどが販売する場合は省略できない。また、容器包装に「たんぱく質たっぷり」などの栄養に関する表示をする場合は、省略できない。
7. その他の主な表示ルール
7-1. 原料原産地表示
国内で製造したすべての加工食品(輸入品を除く)について、重量の割合が最も高い原材料の原産地を表示する。平成29年(2017年)9月に始まり、令和4年(2022年)3月末に経過措置期間が終わった。
- 原材料が生鮮食品の場合は国名を(例:「豚肉(アメリカ産)」)、加工食品の場合は製造地を(例:「チョコレート(国内製造)」)表示する
- 原産地が複数ある場合は、重量の割合の高い順に表示する。条件を満たせば「又は表示」「大括り表示」もできる
7-2. 添加物の表示
添加物は、原則として物質名で表示する。
| 表示方法 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 物質名 | 添加物の名前を表示する | ソルビン酸K、クエン酸 |
| 用途名の併記 | 消費者が特に関心をもつ8種類の用途は、用途名と物質名を並べて表示する | 甘味料(アスパルテーム)、着色料(カロテン)、保存料(ソルビン酸K)、増粘剤(ペクチン)、酸化防止剤(ビタミンC)、発色剤、漂白剤、防かび剤 |
| 一括名 | 複数を組み合わせて使うことが多い14種類の用途は、一括名で表示できる | 香料、乳化剤、膨脹剤、酸味料、調味料、pH調整剤、イーストフード、ガムベース、光沢剤 など |
| 表示の免除 | 加工助剤、キャリーオーバー、栄養強化の目的で使われるもの | ― |
- 令和2年(2020年)の食品表示基準の改正で、添加物の表示から「人工」「合成」という用語が削除された(例:「人工甘味料」ではなく「甘味料」)
- 「無添加」「○○不使用」の表示については、消費者の誤認を防ぐため、令和4年(2022年)に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」が定められた
- 添加物の種類や働きの詳細は、食品衛生学で扱う
7-3. 遺伝子組換え食品の表示
大豆、とうもろこしなどの対象農産物と、それを原料とする加工食品について、遺伝子組換えの表示のルールがある。令和5年(2023年)4月から、「遺伝子組換えでない」と表示できるのは、遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる場合に限られるようになった。
8. 保健機能食品
健康に関する機能を表示できる食品を保健機能食品といい、次の3つがある。これ以外の一般の食品(いわゆる健康食品を含む)は、機能性を表示することができない。
| 種類 | 表示の根拠 | 国の関わり | マーク | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 特定保健用食品(トクホ) | 健康増進法(特別用途食品の一つ)・食品表示法 | 製品ごとに国(消費者庁長官)の許可が必要 | あり | 有効性と安全性について国が個別に審査する |
| 栄養機能食品 | 食品表示法 | 許可・届出不要(自己認証) | なし | 国が定めた規格基準(ビタミン・ミネラルなど)を満たせば、定められた栄養成分の機能を表示できる |
| 機能性表示食品 | 食品表示法 | 販売前に消費者庁長官に届出 | なし | 事業者の責任で、科学的根拠を示して機能を表示する。国は審査を行わない |
機能性表示食品の制度改正
紅麹を原料とする製品による健康被害を受けて、制度が見直された。
- 令和6年(2024年)9月1日から、医師が診断した健康被害の情報を把握した事業者は、速やかに行政(消費者庁長官・都道府県知事等)に報告することが義務となった
- サプリメント形状の機能性表示食品は、製造工程の管理基準(GMP)に従って製造することが要件となった(経過措置は令和8年8月末まで)
特別用途食品については、第6章(健康増進法)で扱う。
9. 違反への対応と罰則
9-1. 行政の措置
- 表示基準に違反した事業者に対して、国や都道府県知事等は、表示事項を表示することなどを指示し、正当な理由なく従わない場合は命令を行う(第6条)
- アレルゲンなど安全性に重要な影響を及ぼす事項の表示違反で、緊急の必要がある場合は、食品の回収や業務の停止を命じることができる(第6条第8項)
- 内閣総理大臣などは、指示や命令をしたときは、その旨を公表する
9-2. 自主回収の届出(第10条の2)
アレルゲンや消費期限など、安全性に関わる表示の誤りによって食品を自主回収する場合は、行政に届け出なければならない(令和3年6月1日施行)。食品衛生法のリコール届出(第3章参照)と同じ考え方の制度である。
9-3. 消費者の参加
- 誰でも、表示が適正でないと考えるときは、内閣総理大臣などに申出をして、適切な措置をとるよう求めることができる(第12条)
- 内閣総理大臣が認定した適格消費者団体は、著しく事実と異なる表示をする事業者に対して、表示の差止めを請求できる(第11条)
9-4. 主な罰則
| 違反 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 安全性に関わる緊急の回収命令・業務停止命令に違反 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり) | 3億円以下の罰金 |
| アレルゲンなど安全性に重要な影響を及ぼす事項を表示しないで販売(直罰) | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金(併科あり) | 1億円以下の罰金 |
| 原産地(原料原産地を含む)の虚偽表示(直罰) | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 指示にもとづく命令に違反 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | ― |
「直罰」とは、行政の指示や命令を経ずに、違反した時点で直ちに罰則が科されることをいう。アレルゲンの表示漏れと産地偽装は、それだけ重大な違反とされている。
10. 表示に関わる4つの法律の役割分担
食品の包装や広告には、食品表示法のほかにも、いくつかの法律が関わっている。試験では「この表示を定めているのはどの法律か」がよく問われる。
| 法律 | 何を定めるか | 所管 |
|---|---|---|
| 食品表示法 | 安全と選択のために、食品に必ず表示すべき事項(原材料、アレルゲン、期限、栄養成分など) | 消費者庁 |
| JAS法 | 品質の規格と、それを満たしたことを示すJASマーク(格付け) | 農林水産省 |
| 計量法 | 内容量を正確にはかること、はかりの検定 | 経済産業省(実務は都道府県の計量検定所など) |
| 景品表示法 | うそや大げさな表示と、行き過ぎた景品の禁止 | 消費者庁 |
11. JAS法
11-1. 制定と現在の役割
正式名称は「日本農林規格等に関する法律」で、略してJAS法という。JASは、Japanese Agricultural Standards(日本農林規格)の略である。
- 昭和25年(1950年)に制定された
- 平成27年(2015年)に食品表示法が施行され、それまでJAS法が定めていた品質表示の規定は食品表示法に移った
- 平成29年(2017年)の改正で現在の名称となり、モノの品質だけでなく、生産の方法や試験の方法なども規格の対象に広げられた
現在のJAS法は、主に「規格を定め、それを満たしたものにマークを付ける」ための法律である。
11-2. JAS制度のしくみ
- 農林水産大臣が、品目ごとに日本農林規格(JAS)を定める
- 農林水産大臣の登録を受けた登録認証機関が、製造業者などを認証する
- 認証を受けた事業者は、自ら製品を検査(格付け)し、規格に合ったものにJASマークを付けることができる
- JAS制度は任意の制度である。JASが定められている品目でも、JASマークを付けずに販売することはできる
11-3. JASマークの種類
| マーク | 対象 |
|---|---|
| JASマーク | 品位、成分、性能などの品質について規格を満たす食品や林産物(しょうゆ、即席めん、合板など) |
| 有機JASマーク | 化学的に合成された肥料や農薬に頼らないことを基本として生産された農産物、畜産物、加工食品など |
| 特色JASマーク | 相当程度明確な特色のある規格を満たすもの(熟成ハム類、手延べ干しめん、持続可能性に配慮した鶏卵・鶏肉など)。平成30年に、それまでの3種類のマークを統合して定められた |
11-4. 「有機」「オーガニック」の表示
有機JASマークが付いていない農産物、畜産物、加工食品に、「有機」「オーガニック」などの名称や、これとまぎらわしい表示を付けることは、法律で禁止されている。JAS制度は任意の制度であるが、有機の表示に限っては例外的に強い規制がある。
菓子店が「オーガニッククッキー」のように商品名で有機をうたう場合は、その製品自体が有機加工食品として認証を受けていなければならない。有機の小麦粉を使っているだけでは、商品を「オーガニック」と表示することはできない。
12. 計量法
12-1. 制定と目的
計量法は、計量の基準を定め、適正な計量の実施を確保することで、経済の発展と文化の向上に寄与することを目的とする法律である。昭和26年(1951年)に制定され、平成4年(1992年)に全面改正された。所管は経済産業省で、実際の検査などは都道府県や特定市の計量検定所などが行う。
12-2. 商品の内容量
- 長さ・質量・体積をはかって販売するのに適する商品は、グラムやリットルなどの法定計量単位で示して販売するよう努める
- 政令で定める特定商品(精米、食肉、野菜、菓子類など29の商品群)を、内容量を示して販売するときは、定められた誤差(量目公差)を超えて不足しないように、正確にはからなければならない
- 量目公差は、平均ではなく、一つひとつの商品について守らなければならない
- 特定商品のうち一定のものは、密封して販売するときに、内容量と、表記した者の氏名または名称・住所を表記しなければならない
菓子類の特定商品
菓子類では、ビスケット類・米菓・キャンデー(1個の質量が3g未満のもの。クリームなどをはさんだものを除く)、油菓子、缶入りの水ようかん・プリン・ゼリー、チョコレート、スナック菓子などが特定商品として定められている。
12-3. はかりの検定
商品の取引や証明に使うはかりは、検定に合格したもの(検定証印の付いたもの)でなければならない。また、使用中のはかりは、原則として2年に1回、都道府県などが行う定期検査を受けなければならない。
菓子店が量り売りをしたり、焼き菓子の内容量を量って表示したりする場合、その計量に使うはかりもこの対象である。家庭用のキッチンスケールは、取引や証明には使えない。
13. 景品表示法
13-1. 制定と目的
正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」で、略して景品表示法(景表法)という。
- 昭和37年(1962年)に、独占禁止法の特例として制定された
- 当初は公正取引委員会が所管していたが、平成21年(2009年)に消費者庁へ移管された
- 目的は、商品やサービスの取引に関する不当な表示と過大な景品類を制限・禁止することにより、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を守り、一般消費者の利益を保護すること
食品表示法が「必ず書かなければならないこと」を定める法律であるのに対し、景品表示法は「書いてはいけないこと(うそ・大げさ)」を定める法律である。包装の表示だけでなく、店頭のポップ、チラシ、ウェブサイト、SNSでの広告も対象となる。
13-2. 不当表示の3つの類型
| 類型 | 内容 | 菓子店での例 |
|---|---|---|
| 優良誤認表示 | 商品の品質や規格などについて、実際のものや他社のものより著しく優良であると示す表示 | 一部にしか使っていないのに「発酵バター100%使用」と表示する。国産でない果物を「国産フルーツ使用」と表示する |
| 有利誤認表示 | 商品の価格や取引条件について、実際のものや他社のものより著しく有利であると示す表示 | いつも同じ価格で売っているのに「本日限り半額」「通常価格○○円」と表示する(不当な二重価格表示) |
| その他の不当表示 | 内閣総理大臣が指定するもの | 無果汁の清涼飲料水に果物の絵を描くなどの表示、原産国の不当な表示、おとり広告、ステルスマーケティング など |
ステルスマーケティングの規制
令和5年(2023年)10月1日から、事業者が行う広告であるにもかかわらず、消費者にそれが広告であることがわからない表示(ステルスマーケティング)が、不当表示として規制されている。たとえば、菓子店がインフルエンサーに依頼して新商品を紹介してもらう場合、その投稿に「広告」「PR」などの表示がないと、依頼した菓子店の側が規制の対象となる。
不実証広告規制
消費者庁は、商品の効果や性能をうたう表示について、事業者に合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。期限内(原則15日以内)に提出できない場合は、優良誤認表示とみなされる。「食べるだけでやせる焼き菓子」のような表示は、根拠がなければ不当表示となる。
13-3. 景品類の制限
商品を買った人などに提供する景品(おまけ)について、最高額と総額の上限が定められている。
| 種類 | 内容 | 景品の最高額 | 景品の総額 |
|---|---|---|---|
| 一般懸賞 | くじや抽選などで、一部の人に提供する | 取引価額が5,000円未満:取引価額の20倍/5,000円以上:10万円 | 懸賞に関わる売上予定総額の2% |
| 共同懸賞 | 商店街などが共同で行う懸賞 | 30万円 | 売上予定総額の3% |
| 総付景品 | 購入者や来店者の全員に提供する | 取引価額が1,000円未満:200円/1,000円以上:取引価額の10分の2 | 制限なし |
たとえば、800円の焼き菓子を買った人全員にプレゼントを配る場合、景品の上限は200円である。
13-4. 違反への対応
| 措置 | 内容 |
|---|---|
| 措置命令 | 違反行為の差止め、再発防止策の実施、消費者への周知(公示)などを命じる |
| 課徴金納付命令 | 優良誤認表示・有利誤認表示に対し、対象商品の売上額の3%の課徴金を課す |
| 確約手続(令和6年10月から) | 違反の疑いがある事業者が自ら是正計画を作成し、認定を受けた場合は、措置命令や課徴金を受けない |
| 課徴金の加算(令和6年10月から) | 10年以内に課徴金納付命令を受けたことがある事業者は、課徴金が1.5倍(4.5%)になる |
| 直罰(令和6年10月から) | 悪質な優良誤認表示・有利誤認表示に対し、100万円以下の罰金を科すことができる |
このほか、業界団体が景品表示法にもとづいて自主的なルール(公正競争規約)を定め、消費者庁と公正取引委員会の認定を受けている。菓子の分野でも、チョコレート類、ビスケット類、アイスクリーム類などに公正競争規約がある。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1製造日から賞味期限までが1か月を超える場合は、年月で表示できる
Q2原産地の虚偽表示は、行政の指示を経ずに直ちに罰則の対象となる
Q3栄養成分表示の義務項目は、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の5つである
Q4アーモンドやピスタチオは特定原材料であり、表示が義務づけられている
Q5栄養成分表示では、食物繊維の表示が義務づけられている
Q6有機JASマークのない農産物加工食品に『有機』と表示することは、法律で禁止されている
Q7機能性表示食品は、国が有効性と安全性を個別に審査して許可したものである
Q8食品表示法は、食品衛生法・JAS法・景品表示法の表示規定を統合して制定された
Q9特定原材料に準ずるものは21品目で、まつたけが含まれる
Q10特定原材料は、使用量がごく微量であれば表示しなくてよい
Q11令和8年4月から、特定原材料にカシューナッツが追加された
Q12保健機能食品には、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品の3種類がある
Q13栄養機能食品として表示するには、消費者庁長官の許可が必要である
Q14店内で製造し、容器包装に入れずに対面で販売する菓子には、原則として表示の義務がない
Q15商品の品質を実際より著しく優良であると示す表示を、有利誤認表示という
Q16食品表示法の施策は、消費者基本法にもとづく消費者政策の一環として行われる
Q17食品表示基準は、厚生労働大臣が定める
Q18景品表示法は、不当な表示と過大な景品類を制限・禁止し、一般消費者の利益を保護することを目的とする
Q19アレルゲンが混入するかもしれない場合は、『入っているかもしれません』と表示すればよい
Q20特定原材料は、卵・乳・小麦・えび・かに・くるみ・そば・落花生の8品目である
Q21特定保健用食品は、事業者が消費者庁長官に届け出れば表示できる
Q22賞味期限を過ぎた食品は、すぐに食べられなくなる
Q23量目公差は、同じ商品全体の平均が範囲内であればよい
Q24消費期限は、おいしく食べることができる期限である
Q25景品表示法に違反しても、措置命令が出されるだけで罰則はない
Q26ステルスマーケティングは、令和5年10月1日から景品表示法の不当表示として規制されている
Q27アレルゲンの表示漏れがあっても、行政の命令に従わない場合でなければ罰則はない
Q28インフルエンサーに依頼した投稿であっても、投稿者本人の感想であれば『広告』と示す必要はない
Q29有機JASマークがなくても、有機栽培の原料を使っていれば『オーガニック』と表示できる
Q30食品表示法は、平成15年に施行された
Q31効果をうたう表示の合理的な根拠を示す資料を期限内に提出できない場合、優良誤認表示とみなされる
Q32栄養成分表示の義務項目は、熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・ナトリウムである
Q33計量法を所管するのは消費者庁である
Q34JAS規格が定められた品目は、必ずJASマークを付けて販売しなければならない
Q35アレルゲンの表示は、原材料欄の最後にまとめて表示する一括表示が原則である
Q36食品表示法は、食品衛生法・JAS法・健康増進法の食品の表示に関する規定を統合したものである
Q37洋生菓子には、賞味期限を表示する
Q38消費期限は、定められた方法で保存した場合に、腐敗・変敗などにより安全性を欠くおそれがない期限である
Q39JAS法を所管するのは消費者庁である
Q40食品の格付け(JASマーク)について定めているのは食品表示法である
Q41期限表示は、開封前の状態で、表示された方法で保存した場合の期限である
Q42景品表示法を所管するのは、現在も公正取引委員会である
Q43くるみは、特定原材料であり、表示が義務づけられている
Q44商品の計量に使うはかりは、購入時に検定を受けていれば、その後の検査は必要ない
Q451,000円の商品を買った人全員に、500円相当の景品を配ることができる
まとめ
- 食品表示法は、食品衛生法・JAS法・健康増進法の表示規定を統合し、平成27年(2015年)4月に施行された
- 目的は、食品を摂取する際の安全性の確保と、自主的かつ合理的な食品選択の機会の確保
- 食品表示基準は内閣総理大臣(消費者庁)が定める
- 特定原材料(義務)は、令和8年4月から9品目:卵・乳・小麦・えび・かに・くるみ・そば・落花生・カシューナッツ(カシューナッツは令和10年4月から本格適用)
- 特定原材料に準ずるもの(推奨)は20品目。ピスタチオが追加、まつたけは削除済み
- アレルゲン表示は個別表示が原則。微量でも表示が必要。可能性表示は不可
- 消費期限は安全に食べられる期限(生菓子など)、賞味期限はおいしく食べられる期限(焼き菓子など)。賞味期限3か月超は年月表示可
- 栄養成分表示の義務は熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量。推奨は飽和脂肪酸・食物繊維
- 保健機能食品は、トクホ(許可)、栄養機能食品(自己認証)、機能性表示食品(届出)の3種類
- アレルゲンの表示漏れと産地偽装は直罰。自主回収は届出が必要
- JAS法(農林水産省):品質の規格とJASマーク(格付け)。制度は任意だが、有機JASマークのないものに「有機」「オーガニック」と表示することは禁止
- 計量法(経済産業省):特定商品は量目公差を守って正確にはかる。取引に使うはかりは検定と2年に1回の定期検査
- 景品表示法(消費者庁):優良誤認(品質)・有利誤認(価格)・その他(ステマなど)の不当表示と、過大な景品を禁止。令和6年10月から直罰(100万円以下の罰金)、確約手続、課徴金の加算
※ 本書は令和8年(2026年)9月時点の法令にもとづいています。表示の具体的な方法は、消費者庁の「食品表示基準Q&A」や、管轄の保健所にご確認ください。

