食品衛生学 第三部 食品と化学物質
食品添加物②用途別
はじめに
前章では、食品添加物の制度と安全性のしくみ、そして表示のルールを学んだ。本章では、食品添加物を用途ごとに整理し、それぞれの働きと代表的な物質、使用の決まりを学ぶ。
試験では、「添加物の名前」と「用途」の組み合わせが繰り返し問われる。とくに、名前や働きが似ている用途の取り違えが多い。
| 取り違えやすい組み合わせ | 違い |
|---|---|
| 保存料と殺菌料 | 保存料は菌の増殖を抑える。殺菌料は菌を殺す |
| 着色料と発色剤 | 着色料は色をつける。発色剤は食品の色を安定させる(それ自体は無色) |
| 酸化防止剤と漂白剤 | 酸化防止剤は酸化を防ぐ。漂白剤は色を抜く |
| 防かび剤と保存料 | 防かび剤は主に輸入のかんきつ類などのかびを防ぐ。保存料は食品全般の腐敗を遅らせる |
本章では、まず食品の保存にかかわる添加物、次に色にかかわる添加物、味と香りにかかわる添加物、食感・形にかかわる添加物、そして製造・加工に使う添加物の順に学ぶ。最後に、菓子づくりで使う添加物を整理する。
1. 食品の保存にかかわる添加物
1-1. 保存料
保存料は、食品の中の微生物の増殖を抑えて、腐敗や変敗を遅らせる添加物である。保存料には菌を殺す作用(殺菌作用)はほとんどない。菌の増殖を抑える静菌作用によって、食品の日もちを延ばす。そのため、保存料を使っていても、温度管理や衛生管理が不要になるわけではない。
| 物質名 | 主な特徴と使われる食品 |
|---|---|
| ソルビン酸、ソルビン酸カリウム | 最も広く使われる保存料。酸性の食品でよく効く。かまぼこ、ハム・ソーセージ、あん類、ジャム、フラワーペースト(カスタード系のクリーム)、漬物、つくだ煮など |
| 安息香酸、安息香酸ナトリウム | 酸性でよく効く。清涼飲料水、しょうゆ、シロップ、マーガリン、キャビアなど |
| デヒドロ酢酸ナトリウム | チーズ、バター、マーガリン |
| プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム・ナトリウム | パン、洋菓子、チーズ。カビの発生を抑える |
| パラオキシ安息香酸エステル類 | しょうゆ、果実ソース、清涼飲料水など |
| ε-ポリリシン、しらこたん白抽出物(既存添加物) | 天然由来の保存料 |
保存料は、使ってよい食品と量が、使用基準で細かく決められている。また、表示では、「保存料(ソルビン酸K)」のように用途名を併記する(第9章参照)。
日もち向上剤
グリシン(アミノ酸の一種)、酢酸ナトリウム、リゾチームなどは、短い期間の保存性を高めるために使われ、日もち向上剤とよばれることがある。保存料ほど効果は強くなく、表示上は「保存料」とは書かず、物質名だけを表示する。弁当、総菜、和菓子などによく使われる。
1-2. 防かび剤(防ばい剤)
防かび剤は、主に輸入のかんきつ類(オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど)やバナナの、輸送・保管中のかびの発生を防ぐために使われる添加物である。
| 物質名 | 主に使われる食品 |
|---|---|
| オルトフェニルフェノール(OPP)、OPPナトリウム | かんきつ類 |
| チアベンダゾール(TBZ) | かんきつ類、バナナ |
| イマザリル | かんきつ類、バナナ |
| フルジオキソニル、アゾキシストロビンなど | かんきつ類、キウイフルーツなど |
これらは、収穫したあとの農産物に使う薬剤で、海外ではポストハーベスト農薬として使われている。日本では、収穫後に使うものは「食品添加物(防かび剤)」として扱われる(収穫前に畑で使うものは農薬として扱われる。第11章参照)。
防かび剤を使ったかんきつ類やバナナは、ばら売りであっても、売り場に防かび剤の名前を表示する必要がある。
1-3. 殺菌料
殺菌料は、食品や飲料水、器具などの微生物を殺すための添加物である。殺菌作用が強いぶん、使い方には制限がある。
| 物質名 | 内容 |
|---|---|
| 次亜塩素酸ナトリウム | 野菜・果物、器具、飲料水などの殺菌。ノロウイルスの消毒にも使う(第6章参照)。ごまには使用できない |
| 次亜塩素酸水 | 電気分解でつくる。野菜や器具の殺菌(第13章参照) |
| 過酸化水素 | 殺菌に使うが、最終の食品の完成前に分解または除去しなければならない(かずのこの漂白・殺菌など) |
| 高度さらし粉 | 飲料水、器具の殺菌 |
1-4. 酸化防止剤
酸化防止剤は、食品の中の油脂などの酸化を防ぎ、変色や風味の劣化を防ぐ添加物である。酸化防止剤は、それ自身が酸素と結びつく(自らが先に酸化される)ことで、食品の酸化を防ぐ。「食品に酸素を結びつける」のではない点に注意する。
| 物質名 | 主な特徴と使われる食品 |
|---|---|
| L-アスコルビン酸(ビタミンC)、L-アスコルビン酸ナトリウム | 水に溶ける。果汁、清涼飲料水、果物の加工品、ハム。変色防止 |
| エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム | ビタミンCに似た構造だが、ビタミンCとしての働きはない。魚介の加工品、ハム |
| dl-α-トコフェロール(ビタミンE)、ミックストコフェロール | 油に溶ける。油脂、バター、揚げ菓子、ナッツ類 |
| ジブチルヒドロキシトルエン(BHT) | 油に溶ける合成の酸化防止剤。油脂、バター、魚介の冷凍品、チューインガム |
| ブチルヒドロキシアニソール(BHA) | 油に溶ける合成の酸化防止剤。油脂、バター、魚介の冷凍品 |
| エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩 | 金属と結びつき、金属による酸化を防ぐ。缶詰・瓶詰の清涼飲料水など |
ビタミンCやビタミンEは、栄養強化の目的で使うこともある。酸化防止の目的で使った場合は「酸化防止剤(ビタミンE)」と用途名を併記し、栄養強化の目的で使った場合は、原則として表示を省略できる(第9章参照)。
2. 色にかかわる添加物
2-1. 着色料
着色料は、食品に色をつける、または加工でうすれた色を補う添加物である。大きく、化学的に合成したタール色素などと、天然の色素に分けられる。
タール色素
タール色素(合成着色料)は、かつて石炭のタールを原料にしてつくられたことからこの名がある(現在は石油製品などからつくられる)。日本で使用が認められているタール色素は、次の12種類である。
| 色 | タール色素 |
|---|---|
| 赤 | 食用赤色2号、3号、40号、102号、104号、105号、106号 |
| 黄 | 食用黄色4号、5号 |
| 緑 | 食用緑色3号 |
| 青 | 食用青色1号、2号 |
このうち8種類には、水に溶けにくい粉末にしたアルミニウムレーキもあり、油脂を含む菓子やチョコレートのコーティングなどに使われる。
タール色素には、次のような決まりがある。
| 決まり | 内容 |
|---|---|
| 製品検査 | タール色素は、国が登録した検査機関の製品検査に合格し、合格証紙を貼ったものでなければ、販売・使用できない |
| 使用してはならない食品 | カステラ、スポンジケーキ、マーマレード、きなこ、めん類、みそ、しょうゆ、茶、のり類、こんぶ類、わかめ類、豆類、野菜、食肉、食肉漬物、鮮魚介類、魚肉漬物、鯨肉漬物 |
使用してはならない食品の多くは、着色によって鮮度や品質をごまかすおそれのある食品(鮮魚介類、食肉、野菜など)や、卵の黄色やきなこの色など、本来の色が品質の目安になる食品(カステラ、スポンジケーキ、きなこなど)である。
天然の着色料
天然の色素の多くは既存添加物であり、植物や動物、微生物などから得られる。
| 色 | 主な天然色素 | 由来 |
|---|---|---|
| 黄 | クチナシ黄色素、ウコン色素(ターメリック)、ベニバナ黄色素、β-カロテン | クチナシの実、ウコンの根、ベニバナの花、にんじんなど |
| 赤・紫 | ベニコウジ色素、コチニール色素(カルミン酸)、アントシアニン色素(ブドウ果皮、ムラサキイモ、赤キャベツなど)、ビート赤 | 紅麹菌、エンジムシ(昆虫)、果皮・野菜など |
| 緑 | 銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム | 植物の葉緑素に銅を結びつけたもの |
| 青 | クチナシ青色素、スピルリナ色素 | クチナシの実、藻類 |
| 茶 | カラメル色素 | 糖類を加熱したもの |
天然の色素も、鮮魚介類、食肉、野菜、のり類、茶、豆類などの、品質をごまかすおそれのある食品には使用できない。
天然の色素だからといって、必ず安全というわけではない。既存添加物だったアカネ色素は、動物実験で腎臓への発がん性が認められたため、平成16年(2004年)に既存添加物名簿から消除された。また、コチニール色素では、まれにアレルギー(アナフィラキシー)の報告がある。
2-2. 発色剤
発色剤は、それ自体には色がないが、食品の中の色素(肉のミオグロビンなど)と反応して、色を安定させ、鮮やかに保つ添加物である。
| 物質名 | 主に使われる食品 |
|---|---|
| 亜硝酸ナトリウム | ハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉製品、魚肉ソーセージ、いくら、すじこ、たらこ |
| 硝酸カリウム、硝酸ナトリウム | 食肉製品、チーズ、清酒 |
亜硝酸ナトリウムには、食肉製品の色を保つだけでなく、ボツリヌス菌の増殖を抑える働きもある。一方で、食品中のアミン類(魚卵や魚に多い)と反応して、発がん性のあるニトロソアミンができるおそれが指摘されており、使用量が厳しく制限されている。
着色料と同様、発色剤も生鮮の食肉や鮮魚介類には使用できない。生の肉や魚の色を鮮やかに見せて、鮮度をごまかすことになるためである。
2-3. 漂白剤
漂白剤は、食品の色素を分解したり、変色を防いだりして、色を白くする添加物である。
| 物質名 | 主に使われる食品 |
|---|---|
| 亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム・ナトリウム | かんぴょう、干しあんずなどのドライフルーツ、こんにゃく粉、甘納豆、煮豆、果実酒(ワイン) |
| 亜塩素酸ナトリウム | かずのこの加工品、かんきつ類の果皮(菓子製造に用いるもの)、さくらんぼ、ふき、生食用野菜類など |
亜硫酸塩などは、漂白のほか、酸化防止や保存の働きもある。ワインに使う場合は、酸化防止剤の目的で使われ、「酸化防止剤(亜硫酸塩)」と表示されることが多い。
亜硫酸塩などは、ごま、豆類、野菜には使用できない(品質をごまかすおそれがあるため)。また、使ったあとの食品に残る量(二酸化硫黄としての残存量)の基準が、食品ごとに決められている。
3. 味と香りにかかわる添加物
3-1. 甘味料
甘味料は、食品に甘味を与える添加物である。砂糖(ショ糖)、ぶどう糖、はちみつなどは食品であり、添加物ではない。
| 物質名 | 分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| サッカリン、サッカリンナトリウム | 指定添加物 | 砂糖の約300〜500倍の甘さ。使ってよい食品と量が決められている |
| アスパルテーム | 指定添加物 | 砂糖の約200倍の甘さ。アミノ酸(フェニルアラニンなど)からつくられる。「L-フェニルアラニン化合物」を含む旨の表示が必要(フェニルケトン尿症の人のため) |
| スクラロース | 指定添加物 | 砂糖の約600倍の甘さ。熱に強い |
| アセスルファムカリウム | 指定添加物 | 砂糖の約200倍の甘さ。ほかの甘味料と合わせて使われることが多い |
| キシリトール、D-ソルビトール | 指定添加物 | 糖アルコール。虫歯の原因になりにくい。ソルビトールは保湿にも使われる |
| ステビア抽出物 | 既存添加物 | ステビアの葉から得る。砂糖の約200〜300倍の甘さ |
| カンゾウ抽出物(グリチルリチン) | 既存添加物 | 甘草の根から得る |
甘味料は、エネルギーを抑えたい、虫歯の原因になりにくくしたい、といった目的で使われる。表示では「甘味料(ステビア)」のように用途名を併記する。
3-2. 調味料
調味料(添加物としての調味料)は、食品にうま味などを与える添加物である。一括名「調味料」で表示し、主な成分の種類を( )で示す。
| 種類 | 代表的な物質 | 表示の例 |
|---|---|---|
| アミノ酸系 | L-グルタミン酸ナトリウム(こんぶのうま味) | 調味料(アミノ酸) |
| 核酸系 | 5′-イノシン酸二ナトリウム(かつお節のうま味)、5′-グアニル酸二ナトリウム(しいたけのうま味) | 調味料(核酸) |
| 有機酸系 | コハク酸二ナトリウム(貝のうま味) | 調味料(有機酸) |
| 無機塩 | 塩化カリウムなど | 調味料(無機塩) |
いくつかの種類を組み合わせた場合は、「調味料(アミノ酸等)」のように、主なものに「等」をつけて表示する。
3-3. 酸味料・pH調整剤
酸味料は、食品に酸味を与える添加物で、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、フマル酸などがある。
pH調整剤は、食品のpHを適切な範囲に保ち、品質の安定や保存性の向上に役立てる添加物である。クエン酸、乳酸、リン酸塩、炭酸水素ナトリウムなどが使われる。酸味料もpH調整剤も、一括名で表示できる。
3-4. 香料
香料は、食品に香りをつけたり、強めたり、整えたりする添加物である。着香の目的に限って使用できる。
| 種類 | 例 |
|---|---|
| 合成香料(指定添加物) | バニリン、エチルバニリン、ベンズアルデヒド(アーモンド・チェリーの香り)、酢酸イソアミル(バナナの香り)、アセト酢酸エチル |
| 天然香料 | バニラ、レモン、オレンジ、ミント、シナモン、コーヒーなど |
香料は、何十種類もの物質を組み合わせてつくることが多いため、一括名「香料」で表示できる。
3-5. 苦味料
苦味料は、食品に苦味を与える添加物で、カフェイン(抽出物)、ナリンジン(かんきつ類の苦味)、ホップ抽出物などがある。一括名「苦味料」で表示できる。
4. 食感・形にかかわる添加物
4-1. 増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料
増粘安定剤は、食品に粘りやとろみをつけたり(増粘剤)、成分が分かれないように安定させたり(安定剤)、ゼリー状に固めたり(ゲル化剤)する添加物である。同じ物質でも、使う目的によって用途名が変わる。表示では、「増粘剤」「安定剤」「ゲル化剤」「糊料」のうち、目的に合うものを用途名として併記する。
| 物質名 | 由来 | 主な用途と特徴 |
|---|---|---|
| ペクチン | かんきつ類やりんごの皮 | ジャム、ゼリー、フルーツソース。糖と酸でゲル化するもの(HMペクチン)と、カルシウムでゲル化するもの(LMペクチン)がある |
| カラギナン | 紅藻類 | ゼリー、プリン、アイスクリーム、乳製品 |
| キサンタンガム | 微生物の発酵でつくる多糖類 | ドレッシング、ソース。少量で強いとろみ |
| グァーガム、ローカストビーンガム | 豆の種子 | アイスクリーム、ゼリー |
| アルギン酸ナトリウム | 褐藻類 | 麺、アイスクリーム |
| カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC) | 植物の繊維(セルロース) | アイスクリーム、ジャム |
2種類以上の増粘多糖類を組み合わせて使う場合は、「増粘多糖類」とまとめて表示でき、このとき用途名は省略できる(ゲル化剤として使う場合を除く)。
なお、ゼラチンや寒天は、ふつう食品として扱われる。
4-2. 乳化剤
乳化剤は、水と油のように本来混ざり合わないものを、均一に混ぜ合わせる添加物である。一つの分子の中に、水になじむ部分と油になじむ部分の両方をもつ。
| 物質名 | 主な用途 |
|---|---|
| グリセリン脂肪酸エステル | 最も多く使われる。パン、菓子、アイスクリーム、ホイップクリーム |
| ショ糖脂肪酸エステル | 菓子、飲料、ホイップクリーム |
| ソルビタン脂肪酸エステル | チョコレート、ホイップクリーム |
| プロピレングリコール脂肪酸エステル | ケーキ用の起泡剤 |
| レシチン(植物レシチン・卵黄レシチン) | チョコレート、マーガリン。大豆や卵黄からつくる(既存添加物) |
| ステアロイル乳酸カルシウム | パン、麺、菓子など。使用基準がある |
乳化剤は、混ぜ合わせる働きのほか、泡立ちをよくする、パンや菓子をやわらかく保つ(でんぷんの老化を防ぐ)、チョコレートの流動性を高めるなど、さまざまな目的で使われる。一括名「乳化剤」で表示できるが、大豆や卵黄からつくったものは「乳化剤(大豆由来)」のように、アレルゲンを表示する。
4-3. 膨脹剤
膨脹剤は、加熱によってガス(主に二酸化炭素)を発生させ、生地をふくらませる添加物である。菓子づくりで最もなじみの深い添加物の一つである。
| 物質名 | 内容 |
|---|---|
| 炭酸水素ナトリウム(重曹) | 加熱すると二酸化炭素を出す。単独で使うと、生地がアルカリ性になり、黄色くなったり、苦味が出たりする。どら焼き、まんじゅう、かりんとう |
| 炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム | 加熱するとガスとアンモニアを出す。薄い焼き菓子に使う |
| 塩化アンモニウム | 重曹と組み合わせて使う。イスパタ(イーストパウダー)の成分。蒸しまんじゅうを白く仕上げる |
| 酒石酸水素カリウム、グルコノデルタラクトン、リン酸塩(リン酸二水素カルシウムなど)、焼ミョウバン | 酸性剤。重曹と反応させて、ガスの発生を調整し、アルカリ性に傾くのを防ぐ |
ベーキングパウダーは、重曹に酸性剤と、湿気を防ぐでんぷんなどの分散剤を組み合わせたものである。酸性剤の種類によって、ガスの出方(混ぜたときにすぐ出るか、加熱してから出るか)が変わる。焼ミョウバンはアルミニウムを含むため、アルミニウムを含まないベーキングパウダーも販売されている。
膨脹剤は一括名「膨脹剤」(または「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」)で表示できる。
5. 製造・加工に使う添加物
| 用途 | 主な物質と内容 |
|---|---|
| 豆腐用凝固剤 | 塩化マグネシウム(にがりの主成分)、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン。豆乳のたんぱく質を固める |
| かんすい | 炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸塩。中華めんのこしと黄色い色をつくる(アルカリ性) |
| イーストフード | 塩化アンモニウム、炭酸カルシウムなど。パン酵母の発酵を助ける |
| ガムベース | 酢酸ビニル樹脂、チクルなど。チューインガムの基材 |
| 光沢剤 | シェラック、カルナウバロウ、ミツロウ。チョコレート菓子や糖衣菓子、キャンディーにつやを出す |
| 酵素 | アミラーゼ、プロテアーゼなど。でんぷんやたんぱく質を分解する。製パン、水あめの製造など |
| 被膜剤 | 酢酸ビニル樹脂、モルホリン脂肪酸塩。果実や果菜の表皮に塗って、水分の蒸発を防ぐ。使える食品が限られる |
| 品質保持剤 | プロピレングリコール。生めん、ぎょうざ・しゅうまいの皮などに使い、しっとり感を保つ。使用量の制限がある |
| 結着剤 | ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム。ハム・ソーセージ・かまぼこの保水性と結着性を高める |
| 離型剤 | 流動パラフィン。パンの生地を型や機械からはがれやすくする。パン以外への使用は制限されている |
| 消泡剤 | シリコーン樹脂。豆腐の製造などで出る泡を消す。加工助剤として表示を省略できることが多い |
| 抽出溶剤 | ヘキサン。植物から油を抽出するのに使い、最終の食品の完成前に除去する |
| 栄養強化剤 | ビタミン類、ミネラル類(カルシウム、鉄など)、アミノ酸類。食品の栄養を補う。栄養強化の目的の場合、原則として表示を省略できる |
6. 製菓とのつながり
6-1. 菓子に使う添加物の一覧
菓子づくりで使う主な添加物を、用途ごとに整理すると次のようになる。
| 用途 | 菓子での主な使い方 | 主な物質 | 表示 |
|---|---|---|---|
| 膨脹剤 | スポンジ、マフィン、どら焼き、まんじゅう、クッキー | ベーキングパウダー、重曹、イスパタ | 一括名「膨脹剤」 |
| 乳化剤 | チョコレート、アイスクリーム、ホイップクリーム、スポンジ(起泡剤) | レシチン、グリセリン脂肪酸エステル | 一括名「乳化剤」(由来の表示) |
| ゲル化剤・増粘剤 | ジャム、ゼリー、ムース、ナパージュ、フルーツソース | ペクチン、カラギナン、ローカストビーンガム | 用途名を併記 |
| 香料 | バニラ、柑橘、洋酒の風味 | バニリン、天然香料 | 一括名「香料」 |
| 着色料 | アイシング、マカロン、和菓子の色付け、ゼリー | クチナシ色素、ベニコウジ色素、赤色3号など | 用途名を併記(名称に「色」があれば省略可) |
| 酸味料・pH調整剤 | ゼリー、グミ、フルーツの風味 | クエン酸、酒石酸 | 一括名 |
| 甘味料 | 糖質を抑えた菓子 | ステビア、スクラロース、ソルビトール | 用途名を併記 |
| 光沢剤 | チョコレート菓子、ドラジェ、糖衣菓子 | シェラック、カルナウバロウ | 一括名「光沢剤」 |
| 酸化防止剤 | 揚げ菓子、ナッツを使った焼き菓子 | ビタミンE、ビタミンC | 用途名を併記 |
| 保存料・日もち向上剤 | あん、カスタード系のクリーム、和菓子 | ソルビン酸K、グリシン、酢酸Na | 保存料は用途名を併記。日もち向上剤は物質名のみ |
6-2. 着色料の使い方に注意する
タール色素は、カステラとスポンジケーキには使用できない。これは、カステラやスポンジケーキの黄色が、卵の量や質を示すものであり、着色によって品質をごまかすことができてしまうためである。カステラやスポンジケーキの黄色を濃く見せたい場合でも、タール色素で着色してはならない。
同じ理由で、マーマレードやきなこにもタール色素は使えない。一方、アイシング、マカロン、練り切りなどの色付けには、タール色素や天然の色素が使われる。
製菓用の色素は、どの色素が使われているか(タール色素か、天然の色素か)を確認し、使う菓子の種類に合っているかを確かめる。また、合格証紙のついたタール色素を使う。
6-3. 膨脹剤と菓子の仕上がり
膨脹剤は、菓子の仕上がりを大きく左右する。
| 使い方 | 結果 |
|---|---|
| 重曹だけを多く入れる | 生地がアルカリ性に傾き、黄色〜茶色に色づき、苦味や独特のにおいが出る(どら焼きやかりんとうでは、この色と風味を生かすこともある) |
| ベーキングパウダーを入れすぎる | 生地がふくらみすぎてしぼむ、きめが粗くなる、薬品のような味が残る |
| イスパタを使う | 蒸しまんじゅうを白く仕上げられる。アンモニア臭が残らないよう、十分に蒸す |
膨脹剤の働きについては、製菓理論の本で詳しく扱う。
6-4. ドライフルーツと漂白剤
干しあんず、レーズン、ドライチェリーなどのドライフルーツには、色を保つために亜硫酸塩(漂白剤・酸化防止剤)が使われていることがある。これを菓子の材料に使う場合、最終の菓子でも色を保つ効果を示しているなら、キャリーオーバーにはあたらず、表示が必要になることがある(第9章参照)。また、亜硫酸塩は、ぜんそくの人などで症状を起こすことがある。仕入れたドライフルーツの規格書を確認しておきたい。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1ソルビン酸カリウムは、甘味料である
Q2保存料には強い殺菌作用があり、食品中の微生物を死滅させる
Q3イマザリルは、甘味料である
Q4調味料は、食品にうま味などを与えるもので、L-グルタミン酸ナトリウムはアミノ酸系の調味料である
Q5アカネ色素は、現在も既存添加物として使用が認められている
Q6アスパルテームを使った食品には、特別な表示は必要ない
Q7亜硫酸ナトリウムなどの漂白剤は、ごまや豆類の漂白に使用できる
Q8亜硝酸ナトリウムには、ボツリヌス菌の増殖を抑える働きもある
Q9被膜剤の酢酸ビニル樹脂は、どのような食品にも使用できる
Q10豆腐用凝固剤には、にがりの主成分である塩化マグネシウムがある
Q11タール色素は、製品検査を受けなくても販売・使用できる
Q12炭酸水素ナトリウムは、豆腐用凝固剤である
Q13サッカリンナトリウムは、発色剤である
Q14タール色素は、カステラやスポンジケーキの着色に使用できる
Q15着色料の銅クロロフィルは、チョコレートなどに使われる
Q16着色料は、食品中の成分と反応して食品の色調を安定させるものである
Q17酸化防止剤は、食品に酸素を結合させることで、食品の変質を防ぐ
Q18防かび剤(防ばい剤)は、かんきつ類やバナナなどのかびの発生を防止する
Q19発色剤は、それ自体に鮮やかな色があり、食品に色をつける
Q20亜硝酸ナトリウムは、生鮮食肉の色を保つために使ってよい
Q21離型剤の流動パラフィンは、パンの製造に使われる
Q22酸化防止剤は、食品の酸化による品質の低下を防止する
Q23天然の着色料であれば、鮮魚介類や食肉に使って色を鮮やかにしてよい
Q24亜硝酸ナトリウムは、殺菌料である
Q25流動パラフィンは、すべての菓子の離型剤として自由に使用できる
Q26ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、殺菌料である
Q27膨脹剤の炭酸水素ナトリウムは、菓子の製造に使われる
Q28乳化剤は、水と油のように混ざり合わないものを均一に混ぜ合わせる
Q29ソルビン酸や安息香酸などの保存料は、酸性の食品でよく効く
Q30日本では、収穫後の農産物に使うポストハーベスト農薬は、食品添加物(防かび剤)として扱われる
まとめ
食品添加物は、用途によって働きが大きく異なる。保存料(ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸など)は菌の増殖を抑えるもので、殺菌作用はない。菌を殺すのは殺菌料(次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素など)である。防かび剤(OPP、TBZ、イマザリル)は主に輸入のかんきつ類やバナナに使われ、日本ではポストハーベスト農薬を食品添加物として扱う。酸化防止剤(ビタミンC・E、BHA、BHT)は、自らが酸素と結びつくことで食品の酸化を防ぐ。
色にかかわる添加物では、着色料が色をつけるのに対し、発色剤(亜硝酸ナトリウム)はそれ自体は無色で、食肉製品などの色を安定させる。漂白剤(亜硫酸ナトリウムなど)は色を抜く。タール色素は12種類で、製品検査に合格したものだけが使え、カステラ・スポンジケーキ・マーマレード・きなこなどには使用できない。着色料と発色剤は、生鮮の食肉・鮮魚介類・野菜など、品質をごまかすおそれのある食品には使えない。アカネ色素は発がん性から消除された。
味と香りでは、甘味料(サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ステビアなど。アスパルテームにはL-フェニルアラニン化合物の表示)、調味料(グルタミン酸ナトリウムなど)、酸味料、香料(着香の目的に限る)がある。食感と形では、増粘安定剤(ペクチン、カラギナンなど)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなど)、膨脹剤(重曹、ベーキングパウダー、イスパタ)がある。製造・加工には、豆腐用凝固剤、かんすい、光沢剤、被膜剤、品質保持剤、結着剤、パンの離型剤(流動パラフィン)などが使われる。
菓子づくりでは、膨脹剤・乳化剤・ゲル化剤・香料・着色料が欠かせない。とくに、カステラとスポンジケーキにタール色素を使えないことは、菓子をつくる人として必ず知っておきたい決まりである。次章では、食品に意図せずに含まれる有害物質として、カビ毒、有害金属、残留農薬、放射性物質などを学ぶ。
※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

