食品衛生学 第三部 食品と化学物質
食品添加物①制度と安全性
はじめに
第三部では、食品に含まれる化学物質を学ぶ。化学物質には、食品に意図して加えるものと、意図せずに含まれてしまうものがある。前者の代表が食品添加物であり、後者には、カビ毒、残留農薬、環境汚染物質などがある(第11章参照)。
食品添加物は、菓子づくりと深くかかわっている。生地をふくらませるベーキングパウダー(膨脹剤)、チョコレートやアイスクリームをなめらかにする乳化剤、ゼリーを固めるペクチンやゲル化剤、香りをつけるバニリンや香料、色をつける着色料。これらはすべて食品添加物である。
一方で、食品添加物に不安を感じる消費者も少なくない。「無添加」という言葉が、商品の魅力として強調されることも多い。菓子をつくる人は、食品添加物がどのような制度のもとで、どのように安全性を確かめて使われているのかを正しく理解し、客に説明できなければならない。
本章では、食品添加物の定義と分類、指定の制度、安全性を確かめるしくみ(ADI)、そして表示のルールを学ぶ。個々の添加物の用途は、次章で学ぶ。
本書は、令和6年4月の行政の移管を反映し、食品添加物の指定は内閣総理大臣(消費者庁)が行うものとして記述する(第1章参照)。品目数は令和7年8月25日現在の数を用いる。
1. 食品添加物とは何か
1-1. 定義
食品衛生法では、食品添加物を次のように定めている。
食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用する物
この定義から、次のことがわかる。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 使用の目的 | 食品の製造の過程で使うもの、または加工や保存の目的で使うもの |
| 使い方 | 添加、混和(混ぜる)、浸潤(しみこませる)など、方法は問わない |
| 合成か天然か | 化学的合成品か、天然物かを問わない。天然由来のものも食品添加物である |
| 最終製品に残るか | 製造の途中で使い、最終の食品に残らないものも食品添加物に含まれる(豆腐をつくるときの消泡剤など) |
「天然のものは添加物ではない」「食品に残らなければ添加物ではない」という理解は誤りである。
1-2. 使用の目的
食品添加物は、主に次のような目的で使われる。
| 目的 | 主な添加物の例 |
|---|---|
| 食品の製造や加工に必要 | 膨脹剤(ベーキングパウダー)、乳化剤、かんすい、豆腐用凝固剤(にがり)、ゲル化剤 |
| 保存性を高め、食中毒を防ぐ | 保存料、防かび剤、酸化防止剤、殺菌料 |
| 品質を高め、おいしくする(嗜好性の向上) | 着色料、香料、甘味料、調味料、酸味料、増粘剤 |
| 栄養価を補う・高める | ビタミン、ミネラル(カルシウムなど)、アミノ酸 |
1-3. 食品添加物の分類
食品添加物は、次の4つに分けられる。
| 分類 | 品目数 | 内容 | 例 |
|---|---|---|---|
| 指定添加物 | 476品目 | 安全性と有効性を確認し、内閣総理大臣が指定したもの。合成品も天然物も含む | ソルビン酸、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、L-アスコルビン酸(ビタミンC)、炭酸水素ナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル |
| 既存添加物 | 327品目 | 長い使用の実績があり、例外的に使用が認められて既存添加物名簿に載っている天然の添加物 | ペクチン、カラギナン、クチナシ色素、ベニコウジ色素、ステビア抽出物、コチニール色素、カラメル色素の一部 |
| 天然香料 | 約600品目が例示 | 動植物から得られ、香りをつける目的で使うもの | バニラ、レモン、ミント |
| 一般飲食物添加物 | 約100品目が例示 | 一般に食品として食べられているものを、添加物として使うもの | 果汁を着色の目的で使う、寒天を増粘の目的で使う、エタノール |
(品目数は令和7年8月25日現在)
指定添加物以外の3つは、指定を受けずに使用できる例外として扱われている。
1-4. 指定制度のあゆみ
かつて、化学的合成品の添加物だけが指定の対象であり、天然の添加物は自由に使われていた。平成7年(1995年)の食品衛生法の改正で、天然物も含めて指定制度の対象になった。このとき、すでに長く使われていた天然の添加物は、例外として既存添加物名簿に登録された。
その後、既存添加物も安全性の見直しが進められ、安全性に問題があるとされたもの(アカネ色素など)や、使われていないものは、名簿から消除されている。そのため、既存添加物の品目数は年々減っている。古い教材の品目数(既存添加物357品目など)は、現在とは異なる。
2. 指定の制度
2-1. ポジティブリスト方式
食品添加物は、指定されたもの(と既存添加物などの例外)だけを使ってよいという方式で管理されている。このように、使ってよいものを一覧にし、それ以外を原則として禁止する方式をポジティブリスト方式という。
2-2. 指定の手続き
食品添加物の指定は、次の流れで行われる。
- 事業者などが、使いたい添加物について、安全性や有効性の資料をそろえて指定を要請する
- 食品安全委員会(内閣府)が、安全性を評価(リスク評価)し、一日摂取許容量(ADI)などを定める
- 消費者庁の食品衛生基準審議会が、評価の結果をもとに、使用基準や成分規格を審議する
- 内閣総理大臣が、食品添加物として指定し、必要に応じて使用基準や成分規格を定める
令和6年3月までは、指定は厚生労働大臣が、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて行っていた(第1章参照)。
2-3. 指定の考え方
食品添加物は、次のような考え方で指定される。
| 指定される条件 | 内容 |
|---|---|
| 安全性 | 安全性が、科学的な資料で確かめられていること |
| 有効性 | 使う目的に対して、効果があること。すでにある添加物と同等以上の効果があること |
| 消費者の利点 | 消費者にとって何らかの利点があること |
| 確認できること | 化学分析などで、使われていることを確認できること |
一方、次のような場合には指定されない。
| 指定されない場合 | 例 |
|---|---|
| 食品の品質の悪さや粗悪な原料をごまかす目的 | 腐敗を隠すための着色など |
| 消費者をだます目的 | 実際より品質がよく見えるように見せかける |
| 食品の栄養価を著しく低下させる | |
| 病気の治療や予防(医療効果)を目的とする | |
| 製造方法を改善すれば、使う必要がなくなる |
2-4. 規格と基準
指定された添加物などには、必要に応じて、次のような規格や基準が定められる。
| 規格・基準 | 内容 |
|---|---|
| 成分規格 | 添加物そのものの純度や、ヒ素・鉛などの不純物の限度 |
| 使用基準 | 使ってよい食品、使ってよい量、使い方の制限 |
| 製造基準 | 添加物をつくるときの決まり |
| 保存基準 | 添加物を保存するときの決まり |
| 表示基準 | 添加物そのものを販売するときの表示 |
これらの規格や基準をまとめたものが、食品添加物公定書である。国が作成し、おおむね5年ごとに改訂されている。
3. 安全性の評価
3-1. 動物を使った試験
食品添加物の安全性は、主に動物実験によって確かめられる。どのくらいの量を、どのくらいの期間与えると、どのような影響が出るかを調べる試験には、次のようなものがある。
| 試験 | 内容 |
|---|---|
| 急性毒性試験 | 一度に大量に与えたときの影響 |
| 反復投与毒性試験 | 一定期間(28日、90日、1年など)続けて与えたときの影響 |
| 発がん性試験 | 長期間与えて、がんができるかどうか |
| 生殖・発生毒性試験 | 次の世代(胎児・子)への影響 |
| 遺伝毒性試験 | 遺伝子や染色体への影響 |
| アレルギー性試験 | アレルギーを起こすかどうか |
3-2. 無毒性量(NOAEL)
動物実験で、有害な影響が認められなかった最大の量を、無毒性量(NOAEL)という。体重1kgあたり、1日に何mgかで表す(mg/kg体重/日)。
3-3. 一日摂取許容量(ADI)
一日摂取許容量(ADI)とは、人が毎日一生食べ続けても、健康に悪い影響が出ないと考えられる1日あたりの量である。ADIは、無毒性量に安全係数をかけて求める。
ADI = 無毒性量(NOAEL)× 1/100
安全係数の1/100は、次の二つを掛け合わせたものである。
| 安全係数 | 理由 |
|---|---|
| 1/10(種差) | 動物と人の違い。人のほうが感受性が高い場合を考える |
| 1/10(個人差) | 人の個人差。子ども、高齢者、病気の人など、影響を受けやすい人を考える |
たとえば、ある添加物の無毒性量が、体重1kgあたり1日500mgだったとすると、ADIは5mg/kg体重/日となる。体重50kgの人なら、1日あたり250mgまでが、一生食べ続けても影響が出ないと考えられる量である。
ADIは、日本では食品安全委員会がリスク評価の中で定める。国際的には、FAOとWHOの合同の専門家会議であるJECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)が、各国の基準づくりのもとになる評価を行っている(第1章参照)。
3-4. 使用基準とADIの関係
使用基準は、さまざまな食品から添加物を摂取しても、合計の摂取量がADIを十分に下回るように定められる。
3-5. 実際の摂取量の調査(マーケットバスケット方式)
国は、日本人が実際にどのくらいの食品添加物を食べているかを調べている。その方法の一つがマーケットバスケット方式である。
- スーパーなどで、さまざまな食品を実際に購入する
- 国民健康・栄養調査などをもとに、日本人が食べる量に合わせて組み合わせ、調理する
- その中に含まれる添加物の量を分析する
- 1日あたりの摂取量を推定し、ADIと比べる
これまでの調査では、多くの添加物の摂取量は、ADIを大きく下回っていることが確認されている。
4. 食品添加物の表示
4-1. 表示の原則
食品添加物の表示は、食品表示法にもとづく食品表示基準で定められている(表示の全体は衛生法規の食品表示法の章を参照)。容器包装に入れた加工食品では、使用したすべての添加物を表示することが原則である。
表示のしかたには、次の原則がある。
| 原則 | 内容 |
|---|---|
| 表示の場所 | 原材料と添加物を区別して表示する。記号(/)で区切る、改行する、別欄を設けるなどの方法がある |
| 表示の順序 | 添加物の中で、使った重量の多い順に表示する |
| 名称 | 原則として物質名で表示する |
表示の例は次のようになる。
原材料名:小麦粉、砂糖、バター、鶏卵、アーモンド/膨脹剤、香料、乳化剤(大豆由来)
4-2. 物質名の表示
添加物は、原則として、物質名で表示する。物質名は、正式な名称のほか、別名、簡略名、類別名で表示してもよい。
| 正式な名称 | 簡略名・別名などの例 |
|---|---|
| L-アスコルビン酸ナトリウム | ビタミンC、V.C |
| 炭酸水素ナトリウム | 重曹、炭酸水素Na |
| 硫酸カルシウム | 硫酸Ca |
| D-ソルビトール | ソルビトール、ソルビット |
4-3. 用途名を併記する添加物(8種類)
次の8種類の用途に使う添加物は、消費者が用途を知る必要性が高いとされ、物質名に加えて用途名も表示する。
| 用途名 | 表示例 |
|---|---|
| 甘味料 | 甘味料(ステビア) |
| 着色料 | 着色料(カロテン) |
| 保存料 | 保存料(ソルビン酸K) |
| 増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料 | 増粘剤(キサンタンガム)、ゲル化剤(ペクチン) |
| 酸化防止剤 | 酸化防止剤(ビタミンE) |
| 発色剤 | 発色剤(亜硝酸Na) |
| 漂白剤 | 漂白剤(亜硫酸塩) |
| 防かび剤(防ばい剤) | 防かび剤(イマザリル) |
ただし、「赤色3号」「カロテン色素」のように、名称に「色」の文字がある着色料や、増粘多糖類と表示する場合などは、用途名を省略できる。
4-4. 一括名で表示できる添加物(14種類)
次の14種類の用途に使う添加物は、複数の物質を組み合わせて使うことが多く、個々の物質名を書くより用途を示したほうがわかりやすいため、一括名で表示してよい。
| 一括名 | ||
|---|---|---|
| イーストフード | ガムベース | かんすい |
| 酵素 | 光沢剤 | 香料 |
| 酸味料 | 軟化剤 | 調味料(アミノ酸等) |
| 豆腐用凝固剤 | 苦味料 | 乳化剤 |
| pH調整剤 | 膨脹剤 |
菓子によく使う香料、乳化剤、膨脹剤、酸味料、pH調整剤は、この一括名で表示できる。調味料は、「調味料(アミノ酸等)」のように、主な成分の種類を( )で示す。
4-5. 表示が免除されるもの
次の場合は、添加物の表示を省略できる。
| 免除されるもの | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 加工助剤 | 製造の途中で使われるが、最終の食品にはほとんど残らない、または食品の成分と同じになって量が増えない、または効果を示さないもの | 油を抽出するときのヘキサン、ろ過に使う活性炭、豆腐の消泡剤 |
| キャリーオーバー | 原材料に含まれている添加物で、最終の食品では効果を示さない量しかないもの | せんべいの原料のしょうゆに含まれていた保存料(せんべいでは保存料としての効果がない) |
| 栄養強化の目的で使うもの | ビタミン、ミネラル、アミノ酸を栄養強化のために使う場合 | 栄養強化のためのビタミンC |
| 表示面積が小さいもの | 容器包装の表示できる面積がおおむね30cm²以下の場合(原材料名などの表示を省略できる) | 小さな個包装の菓子 |
| 容器包装に入っていないもの | ばら売りなど、容器包装に入れずに販売する場合 | 対面で量り売りする菓子 |
ただし、キャリーオーバーであっても、着色料や甘味料のように、最終の食品で色や味に効果を示す場合は、表示しなければならない。また、加工助剤やキャリーオーバーであっても、アレルギーの原因となる特定原材料に由来するものは、アレルゲンの表示が必要である。
4-6. アレルゲンを含む添加物の表示
添加物の中には、特定原材料(卵、乳、小麦など)からつくられるものがある。そのような添加物は、「乳化剤(大豆由来)」「カゼインNa(乳由来)」のように、由来する特定原材料を表示する(アレルゲン表示の全体は衛生法規の食品表示法の章を参照)。
4-7. 「無添加」「不使用」表示のガイドライン
「無添加」や「○○不使用」という表示は、それだけで「添加物は危ないもの」「この商品のほうが安全」と消費者に思わせることがある。そこで、消費者庁は、令和4年(2022年)3月に「食品添加物の不使用表示に関するガイドライン」を定め、消費者に誤解を与えるおそれが高い表示を、次の10の類型に整理した。
| 類型 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 単なる「無添加」 | 何を使っていないのかがわからない | 「無添加」とだけ表示する |
| ② 食品表示基準にない用語 | 「人工」「合成」「化学」「天然」などの用語を使う | 「人工甘味料不使用」「化学調味料無添加」 |
| ③ 使うことが認められていない添加物の不使用 | もともとその食品には使えない添加物について「不使用」とする | 清涼飲料水に「ソルビン酸不使用」 |
| ④ 同じ働きの添加物を使っている | ある添加物を使わないかわりに、同じ働きの別の添加物を使っている | 別の保存料を使いながら「保存料不使用」 |
| ⑤ 同じ働きの原材料を使っている | 添加物を使わないかわりに、同じ働きをもつ原材料を使っている | うま味成分の多いエキスを使いながら「調味料不使用」 |
| ⑥ 健康や安全と結びつける | 「無添加だから体にいい」「安全」と示す | |
| ⑦ 健康や安全以外と結びつける | 「無添加だからおいしい」などと示す | |
| ⑧ もともと使われない添加物の不使用 | その種類の食品にふつうは使わない添加物について「不使用」とする | もともと色のついた食品に「着色料不使用」 |
| ⑨ 加工助剤・キャリーオーバーを使っている | 加工助剤やキャリーオーバーとして使っているのに「不使用」とする。または、使っていないことを確認できない | |
| ⑩ 過度に強調する | 「無添加」を大きく目立たせ、使っている添加物の表示を小さくする |
このガイドラインは、「不使用」の表示そのものを禁止するものではない。消費者に誤解を与えない、正確な表示を求めるものである。
5. 製菓とのつながり
5-1. 菓子と食品添加物
菓子づくりには、多くの食品添加物がかかわっている。
| 菓子の場面 | 主な添加物 | 表示のしかた |
|---|---|---|
| 生地をふくらませる | ベーキングパウダー、重曹、イスパタ | 一括名「膨脹剤」 |
| チョコレートやアイスをなめらかにする、クリームを安定させる | レシチン、グリセリン脂肪酸エステル | 一括名「乳化剤」 |
| ゼリー、ジャム、ムースを固める | ペクチン、カラギナン、寒天(添加物として使う場合) | 用途名を併記「ゲル化剤(ペクチン)」など |
| 香りをつける | バニリン、バニラ香料 | 一括名「香料」 |
| 色をつける | クチナシ色素、カラメル色素、赤色3号 | 着色料(用途名を併記、または名称に「色」があれば省略) |
| 酸味をつける、pHを整える | クエン酸、酒石酸 | 一括名「酸味料」「pH調整剤」 |
| 日もちをよくする | ソルビン酸K、グリシン、酢酸Na | 保存料は用途名を併記 |
ベーキングパウダーのように、菓子づくりに欠かせない材料の多くが食品添加物であることを、まず理解しておきたい。
5-2. 菓子店の表示とキャリーオーバー
菓子店で包装して販売する菓子には、原材料名と添加物の表示が必要である。このとき見落としやすいのが、原材料に含まれている添加物である。
| 原材料 | 含まれていることがある添加物 |
|---|---|
| マーガリン、ショートニング | 乳化剤、香料、着色料(カロテン) |
| ホイップクリーム(植物性脂肪のもの) | 乳化剤、安定剤、香料 |
| チョコレート、コーティング用チョコレート | 乳化剤(レシチン)、香料 |
| フィリング、ジャム、フルーツソース | ゲル化剤(ペクチン)、酸味料、着色料 |
| ドライフルーツ | 漂白剤(亜硫酸塩)、着色料 |
| 製菓用の色素、トッピング | 着色料、光沢剤 |
これらが最終の菓子でも効果を示す場合(チョコレートの乳化剤が菓子の口どけに働いている、ジャムの着色料が菓子の色になっている、など)は、キャリーオーバーにはあたらず、表示が必要になる。仕入れた原材料の規格書を確認し、添加物を正しく把握することが、正確な表示の第一歩である。
5-3. 「無添加」をうたう前に
菓子店でも、「無添加」「保存料不使用」を商品の魅力として表示したくなることがある。しかし、ガイドラインに照らすと、次のような表示は誤解を招くおそれがある。
- 「無添加」とだけ書く(何を使っていないかがわからない)→ 類型①
- ベーキングパウダーや乳化剤を使っているのに「無添加のケーキ」と書く → 類型①・⑩
- 焼き菓子に「合成保存料不使用」と書く → 類型②
- 保存料のかわりに日もち向上剤(グリシン、酢酸Naなど、保存性を高める働きの添加物)を使いながら「保存料不使用」と書く → 類型④
- 「保存料不使用だから体にやさしい」と書く → 類型⑥
客に伝えたいのは、多くの場合「この菓子は今日焼いたばかりで、日もちさせるための工夫ではなく、早く食べてほしい菓子です」ということであろう。その場合は、「無添加」という言葉ではなく、消費期限や保存方法、おいしく食べられる時期をわかりやすく示すほうが、客にとって正確で役に立つ情報になる。
5-4. 客に質問されたときに
「この菓子に添加物は入っていますか」「添加物は体に悪いのですか」と客に聞かれることがある。そのときは、
- 使っている添加物を、表示にもとづいて正確に伝える
- 食品添加物は、国が安全性を評価し、使ってよい食品や量を決めたうえで使われていることを説明する
- アレルギーの心配がある客には、添加物に由来するアレルゲンも含めて確認する
ことが大切である。不安をあおることも、根拠なく「まったく問題ない」と言い切ることも避け、制度にもとづいて正確に答えるのが、食品を扱う専門家の姿勢である。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1食品添加物は、使用した量の少ない順に表示する
Q2甘味料、着色料、保存料、増粘剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤は、物質名に用途名を併記する
Q3一日摂取許容量(ADI)とは、人が毎日一生涯食べ続けても健康に影響が出ないと考えられる1日あたりの量である
Q4食品添加物公定書には、食品添加物の成分規格や使用基準などが定められている
Q5使用した食品添加物は、簡略名で表示することはできない
Q6用途名を併記する添加物には、香料や乳化剤が含まれる
Q7既存添加物の品目数は、新しい品目の追加によって年々増えている
Q8保存料は物質名を表示すればよく、用途名を併記する必要はない
Q9『人工甘味料不使用』『化学調味料無添加』は、食品表示基準で定められた正式な用語を使った表示である
Q10消費者庁のガイドラインにより、『保存料不使用』などの不使用表示は、すべて禁止された
Q11食品添加物は、ポジティブリスト方式で管理され、指定されたもの以外は原則として使用できない
Q12病気の予防など医療効果を目的とする物質も、食品添加物として指定される
Q13食品添加物の指定にあたっては、食品安全委員会がリスク評価を行う
Q14食品の粗悪な品質をごまかす目的であっても、安全性が確認されれば添加物として指定される
Q15既存添加物は、化学的合成品で、内閣総理大臣が個別に指定したものである
Q16化学的合成品・天然物の区別なく、使用した物質名を表示することが基本である
Q17製造の過程で使用し、最終の食品に残らないものは、食品添加物ではない
Q18膨脹剤、乳化剤、香料、酸味料、pH調整剤は、一括名で表示することができる
Q19食品添加物の指定は、消費者に利点がなくても、製造者に利点があれば行われる
Q20ADIの安全係数1/100は、動物と人の種差1/10と、動物どうしの個体差1/10を掛け合わせたものである
Q21日本で使う食品添加物のADIは、JECFAが定め、日本はそれをそのまま使っている
Q22マーケットバスケット方式は、市販の食品を購入して分析し、食品添加物の1日摂取量を推定する方法である
Q23平成7年の法改正で、天然の添加物も指定制度の対象となった
Q24炭酸水素ナトリウムを『重曹』と表示することは認められている
Q25キャリーオーバーの添加物は、最終の食品で色や味の効果を示していても表示しなくてよい
Q26ADIは、無毒性量に安全係数1/100をかけて求め、1/100は種差1/10と個人差1/10による
Q27現在、食品添加物の指定は、厚生労働大臣が行う
Q28加工助剤やキャリーオーバーも、すべて表示しなければならない
Q29食品添加物とは、化学的に合成されたもののみをいい、天然物は含まれない
Q30一日摂取許容量(ADI)は、無毒性量に安全係数1/10をかけて求める
まとめ
食品添加物とは、食品の製造の過程で、または加工・保存の目的で、食品に添加・混和などの方法で使うものであり、化学的合成品か天然物かを問わず、最終の食品に残らないものも含まれる。食品添加物は、指定添加物(476品目)、既存添加物(327品目)、天然香料、一般飲食物添加物の4つに分けられる(令和7年8月25日現在)。既存添加物は消除が続き、品目数は年々減っている。
食品添加物はポジティブリスト方式で管理され、食品安全委員会のリスク評価を経て、内閣総理大臣(消費者庁)が指定する(令和6年4月から。それまでは厚生労働大臣)。指定には、安全性、有効性、消費者の利点、化学分析で確認できることが必要で、品質をごまかす目的や、医療効果を目的とするものは指定されない。
安全性は動物実験で確かめられ、無毒性量(NOAEL)に安全係数1/100(種差1/10×個人差1/10)をかけて、一日摂取許容量(ADI)が定められる。日本では食品安全委員会がADIを定める。使用基準は、摂取量がADIを十分下回るように定められ、マーケットバスケット方式の調査で実際の摂取量が確かめられている。
表示は、物質名が原則で、重量の多い順に表示する。甘味料・着色料・保存料・増粘剤等・酸化防止剤・発色剤・漂白剤・防かび剤の8種類は用途名を併記し、香料・乳化剤・膨脹剤・酸味料・調味料などの14種類は一括名で表示できる。加工助剤、キャリーオーバー、栄養強化の目的のものなどは表示を省略できる。令和4年3月には、誤解を招く「無添加」「不使用」の表示を10の類型に整理したガイドラインが定められた。
菓子づくりには、膨脹剤、乳化剤、ゲル化剤、香料など、多くの添加物が欠かせない。原材料に含まれる添加物も含めて正確に把握し、正しく表示すること、そして客の質問に制度にもとづいて正確に答えることが求められる。次章では、保存料、着色料、甘味料など、用途ごとに主な食品添加物を学ぶ。
※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

