食品衛生学 第二部 食中毒
細菌性食中毒②毒素型
はじめに
前章で学んだ感染型の食中毒は、体に入った生きた菌によって起こり、食べる前に十分に加熱すれば予防できた。本章で学ぶ毒素型(食品内毒素型)の食中毒は、これとは考え方が大きく異なる。
毒素型の食中毒は、細菌が食品の中で増えるときにつくった毒素を食べることで起こる。原因は菌そのものではなく毒素なので、食べたあと菌が体の中で増えるのを待つ必要がなく、潜伏期間は短い。そして、毒素の中には熱にきわめて強いものがある。そのような毒素は、いったん食品の中でできてしまうと、食べる前に加熱しても壊れない。つまり、「あとで加熱すれば大丈夫」という考え方が通用しない。
毒素型の食中毒を防ぐ中心は、菌をつけないことと、菌を増やさないこと(毒素をつくらせないこと)である。
本章では、毒素型の代表である黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌の3つを学ぶ。とくに黄色ブドウ球菌は、人の手指から食品につくため、手作業が多い菓子とのかかわりが最も深い食中毒菌である。シュークリーム、ケーキ、おはぎ、大福、だんごなど、菓子が原因になった例が数多くある。
1. 毒素型食中毒の全体像
1-1. 3つの菌の比較
| 項目 | 黄色ブドウ球菌 | ボツリヌス菌 | セレウス菌(嘔吐型) |
|---|---|---|---|
| 毒素 | エンテロトキシン | ボツリヌス毒素(神経毒) | セレウリド |
| 毒素の熱への強さ | きわめて強い(100℃・30分でも壊れない) | 弱い(80℃・20分、100℃・1〜2分で失活) | きわめて強い(121℃・30分でも壊れない) |
| 菌の芽胞 | つくらない | つくる | つくる |
| 酸素 | 通性嫌気性 | 偏性嫌気性 | 通性嫌気性 |
| 潜伏期間の目安 | 30分〜6時間(平均3時間ほど) | 8〜36時間 | 30分〜6時間 |
| 主な症状 | 激しい嘔吐、吐き気、腹痛、下痢。発熱はほとんどない | 神経のまひ(ものが二重に見える、まぶたが下がる、飲みこめない、呼吸困難) | 吐き気、嘔吐 |
| 主な原因食品 | おにぎり、弁当、シュークリーム、和菓子 | いずし、からしれんこん、真空包装の食品、缶詰・瓶詰 | 焼き飯(チャーハン)、ピラフ、スパゲティ、餡 |
| 汚染源 | 人の手指の傷・鼻・のど | 土、水底の泥 | 土、穀類、野菜 |
1-2. 「菌」と「毒素」の熱への強さは別のもの
毒素型の食中毒を理解するうえで最も大切なのは、菌の熱への強さと毒素の熱への強さを分けて考えることである。試験でも、この取り違えが繰り返し問われる。
| 菌 | 菌そのもの | 毒素 |
|---|---|---|
| 黄色ブドウ球菌 | 熱に弱い(芽胞をつくらず、ふつうの加熱で死ぬ) | 熱に強い |
| ボツリヌス菌 | 熱に強い(芽胞は120℃・4分などの加熱が必要) | 熱に弱い |
| セレウス菌(嘔吐型) | 熱に強い(芽胞をつくる) | 熱に強い |
黄色ブドウ球菌とボツリヌス菌は、ちょうど逆の組み合わせになっている。
- 黄色ブドウ球菌:加熱すれば菌は死ぬが、すでにできた毒素は残る。→ 菌をつけない・増やさないことで、毒素をつくらせないことが予防の中心
- ボツリヌス菌:ふつうの加熱では芽胞が生き残るが、毒素は加熱で壊せる。→ 菌を増やさない保存のしかたに加え、食べる前の加熱も予防になる
2. 黄色ブドウ球菌
2-1. 菌の性質
黄色ブドウ球菌は、グラム陽性の球菌で、ぶどうの房のように集まった形をしている。通性嫌気性で、芽胞はつくらない。
黄色ブドウ球菌は、自然界に広く住んでいるが、食品衛生の上で最も重要な汚染源は人である。健康な人の鼻の中、のど、皮膚、髪の毛にもいて、健康な人の2〜3割前後が鼻の中にもっているといわれる。とくに、手指の切り傷・やけど・にきびなどの化膿した傷(化膿巣)には、たくさんの菌がいる。また、乳房炎にかかった牛の乳から見つかることもある。
ほかの食中毒菌と比べて、次のような性質がある。
| 性質 | 内容 |
|---|---|
| 食塩 | 食塩に強く、食塩濃度が10%前後の食品でも増殖できる |
| 乾燥 | 食中毒菌の中では比較的乾燥に強く、水分活性約0.86まで増殖できる(第2章参照) |
| 熱 | 菌そのものは熱に弱く、ふつうの加熱で死ぬ |
食塩や砂糖が多く、ほかの細菌が増えにくい食品でも増えることがあるのは、このためである。
2-2. エンテロトキシン
黄色ブドウ球菌は、食品の中で増えるときに、エンテロトキシンという毒素をつくる。エンテロトキシンには、次の特徴がある。
- 熱にきわめて強く、100℃で30分間加熱しても壊れない。ふつうの調理の加熱では、ほとんど壊すことができない
- たんぱく質を分解する消化酵素でも壊れにくい
- 菌が食品1gあたり数十万〜100万個程度にまで増えると、症状を起こすほどの毒素ができるとされる
食品の中で菌が増えて毒素ができれば、そのあと加熱して菌を殺しても、毒素は残る。
2-3. 症状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 潜伏期間 | 30分〜6時間(平均3時間ほど)。細菌性食中毒の中で最も短いものの一つ |
| 主な症状 | 吐き気、激しい嘔吐、腹痛、下痢 |
| 発熱 | ほとんどない |
| 経過 | 多くは1〜2日で回復する。死亡することはまれ |
食べてから数時間のうちに激しい嘔吐が始まり、熱はない。これが黄色ブドウ球菌の食中毒の典型である。
2-4. 原因食品
黄色ブドウ球菌の原因食品は、人の手で直接触れる作業が多く、そのあと加熱せずに食べる食品である。
| 食品 | 理由 |
|---|---|
| おにぎり、すし | 素手で握る。かつては原因食品の代表だった |
| 弁当、仕出し料理、調理パン、サンドイッチ | 盛り付け・詰め込みで手が触れる |
| シュークリーム、ケーキ、クレープ | クリームの充填やデコレーションで手や器具が触れ、乳・卵を含むクリームの中で菌が増える |
| 和菓子(おはぎ、大福、だんご、まんじゅう、餅菓子) | 成形、包餡、粉をまぶす作業を素手で行うことが多い |
| 玉子焼き、サラダ | 調理後の切る・盛る作業で手が触れる |
2-5. 大規模な事例
平成12年(2000年)、大手乳業メーカーの低脂肪乳などによって、患者1万3千人以上という大規模な食中毒が起きた。原因は、原料の脱脂粉乳をつくる工場で停電が起き、製造途中の乳が長時間温度の高い状態に置かれて、黄色ブドウ球菌が増え、エンテロトキシンがつくられたことであった。その脱脂粉乳は、のちに加熱殺菌されて菌は死んだが、毒素は残り、それを原料にした乳製品で食中毒が起きた。
この事例は、「加熱殺菌しても、熱に強い毒素は残る」ことを、社会に強く印象づけるものとなった。
2-6. 予防
予防の中心は、菌をつけないことと、菌を増やさないことである。
- 手指に化膿した傷のある人は、食品に直接触れる作業をしない(手袋をしていても、クリームや成形など、食品に直接触れる作業からは外れる)
- 作業前、トイレのあと、鼻やのど、髪の毛に触れたあとは、丁寧に手を洗う
- 食品に素手で直接触れない。使い捨て手袋、トング、へらなどを使う
- 帽子とマスクを着用し、髪の毛や、くしゃみ・せきのしぶきが食品に入らないようにする
- 調理した食品は室温に長く置かず、10℃以下で保存する。作り置きをしない
3. ボツリヌス菌
3-1. 菌の性質
ボツリヌス菌は、土や川・湖・海の底の泥などに広く住むグラム陽性の桿菌で、偏性嫌気性(酸素があると増えない)で、芽胞をつくる。
ボツリヌス菌がつくる毒素には、A型からG型までの型がある。人に食中毒を起こすのは、主にA型・B型・E型・F型である。日本では、北海道や東北地方のいずし(魚と米飯などを漬けこんだ発酵食品)によるE型の食中毒が多かった。
3-2. ボツリヌス毒素と芽胞
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 毒素の強さ | 自然界で最も毒性の強い物質の一つ。ごくわずかな量で人を死に至らせる |
| 毒素の熱への強さ | 熱に弱い。80℃で20分間、または100℃で1〜2分間の加熱で失活する |
| 芽胞の熱への強さ | 熱に強い。A型などの芽胞を死滅させるには、120℃で4分間程度の加熱が必要。E型などの芽胞は比較的熱に弱い |
容器包装に詰めて加圧加熱殺菌する食品(レトルト食品や缶詰)に「中心部を120℃・4分間以上、またはこれと同等以上」という殺菌条件が定められているのは、熱に強いボツリヌス菌の芽胞を確実に殺すためである。
3-3. 症状
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 潜伏期間 | 8〜36時間が多い(短いと数時間、長いと2〜3日) |
| 主な症状 | 吐き気や嘔吐のあとに、神経のまひの症状が現れる。ものが二重に見える(複視)、まぶたが下がる、目のピントが合わない、口が渇く、言葉がうまく話せない、飲みこめない、手足に力が入らない。進むと呼吸ができなくなり、死亡することもある |
| 発熱・意識 | 発熱はほとんどなく、意識ははっきりしていることが多い |
| 致命率 | 細菌性食中毒の中で最も致命率が高い。かつては約30%といわれたが、抗毒素による治療が行われるようになってから、約4%に下がった |
多くの食中毒が、腹痛や下痢などの胃腸の症状を中心とするのに対し、ボツリヌス菌の食中毒は神経の症状が中心である点が、大きな特徴である。
3-4. 原因食品
ボツリヌス菌は酸素のない環境で増えるため、空気に触れない状態で、ボツリヌス菌の芽胞が生き残る程度の加熱しかしていない食品が、原因になる。
| 原因食品の例 | 毒素の型 | 内容 |
|---|---|---|
| いずし | E型 | 北海道・東北地方の郷土料理。日本のボツリヌス食中毒の大部分を占めてきた |
| からしれんこん(真空包装) | A型 | 昭和59年(1984年)、熊本県の真空包装のからしれんこんで、全国で患者30人以上、死者11人 |
| 真空包装・容器包装詰めの食品(ハヤシライスの具など)、缶詰、瓶詰 | A型・B型など | 冷蔵が必要なのに常温で保存された例などがある |
| 海外の例 | 自家製のハム・ソーセージ、野菜の瓶詰・缶詰など |
3-5. 乳児ボツリヌス症
1歳未満の乳児は、腸の中の細菌のバランスがまだ整っていないため、ボツリヌス菌の芽胞を食べると、腸の中で芽胞が発芽して菌が増え、毒素をつくることがある。これを乳児ボツリヌス症という。大人の食中毒が「食品の中でできた毒素」によるのに対し、乳児ボツリヌス症は「腸の中で増えた菌がつくる毒素」による点が異なる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な原因 | はちみつ(ボツリヌス菌の芽胞が含まれていることがある) |
| 主な症状 | 便秘が数日続き、哺乳力の低下、泣き声が弱くなる、首のすわりが悪くなる、などの筋力の低下 |
| 予防 | 1歳未満の乳児には、はちみつやはちみつ入りの食品を与えない |
平成29年(2017年)には、はちみつを混ぜた飲みものを与えられていた生後5か月の乳児が、乳児ボツリヌス症で死亡した。国内で初めての死亡例であった。
はちみつは、ふつうの加熱調理では芽胞が死なないため、はちみつを使って焼いた菓子やパンであっても、1歳未満の乳児には与えない。1歳以上になれば、腸内の細菌のバランスが整い、はちみつを食べても乳児ボツリヌス症になることはほとんどない。
3-6. 予防
ボツリヌス菌は、次の条件のいずれかを満たすと、増殖や毒素の産生ができなくなる。
| 条件 | 目安 |
|---|---|
| 温度 | 3℃未満(A型・B型の多くは10℃未満で増えにくい) |
| 水分活性 | 0.94未満 |
| pH | 4.6未満(酸性) |
これをふまえて、予防の基本は次のとおりである。
- 真空包装や容器包装に詰めた食品で、「10℃以下で保存してください」などの表示があるものは、必ず冷蔵する。「真空包装だから常温で大丈夫」と考えない
- 缶詰や真空包装の食品で、容器がふくらんでいるもの、開けたときに異臭があるものは食べない
- 自家製の瓶詰・缶詰・真空包装の保存食は、とくに注意する
- 毒素は熱に弱いので、食べる前に十分に加熱することも予防になる
- 1歳未満の乳児にはちみつを与えない
4. セレウス菌
4-1. 菌の性質
セレウス菌は、土、水、ほこりの中、穀類や野菜などに広く住むグラム陽性の桿菌で、通性嫌気性で、芽胞をつくる。米や小麦などの穀類には、ふつうにセレウス菌の芽胞がついている。
芽胞は、ふつうの加熱調理では死なない。炊いたご飯やゆでた麺の中で生き残った芽胞は、室温に置かれると発芽して増える。セレウス菌は10〜48℃前後で増殖し、30℃前後で最もよく増える。
4-2. 嘔吐型と下痢型
セレウス菌の食中毒は、つくる毒素の違いによって、嘔吐型と下痢型の2つに分けられる。
| 項目 | 嘔吐型 | 下痢型 |
|---|---|---|
| 毒素 | セレウリド | エンテロトキシン(下痢毒) |
| 毒素ができる場所 | 食品の中(食品内毒素型) | 主に腸の中(生体内毒素型) |
| 毒素の熱への強さ | きわめて強い(121℃・30分でも壊れない)。酸やアルカリにも強い | 弱い(60℃程度以上で失活) |
| 潜伏期間 | 30分〜6時間 | 6〜15時間 |
| 主な症状 | 吐き気・嘔吐(黄色ブドウ球菌に似る) | 腹痛・下痢(ウエルシュ菌に似る) |
| 主な原因食品 | 米飯(焼き飯・ピラフ・おにぎり)、麺類(スパゲティ、焼きそば)、餡 | 食肉、野菜、スープ、弁当 |
日本で起きるセレウス菌の食中毒は、ほとんどが嘔吐型である。米を主食とする食生活と関係していると考えられている。
4-3. 予防
セレウス菌の芽胞は、ふつうの加熱では死なず、嘔吐型の毒素は加熱しても壊れない。そのため、予防の中心は「増やさない」ことである。
- 炊いたご飯、ゆでた麺、煮た餡などを、室温に長く置かない
- すぐに食べない場合は、小分けにして速やかに冷やし、低温(10℃以下)で保存するか、65℃以上で保温する
- 一度に大量に作り置きをしない。食べる量だけ調理する
- 前日に炊いたご飯を室温に置いて、翌日に焼き飯にする、といった扱いを避ける
5. 製菓とのつながり
5-1. 菓子は黄色ブドウ球菌の「好物」がそろっている
黄色ブドウ球菌の食中毒が起こるためには、①菌がつく、②菌が増えやすい食品である、③増えるための時間と温度がある、という3つがそろう必要がある。菓子、とくに生菓子は、この3つがそろいやすい。
| 条件 | 菓子にあてはめると |
|---|---|
| ① 菌がつく | クリームの充填、絞り、デコレーション、フルーツののせ、カット、和菓子の成形・包餡など、加熱したあとに人の手が触れる作業が多い |
| ② 増えやすい食品 | 乳・卵・でんぷんを含むクリームや生地は栄養が豊富。黄色ブドウ球菌は砂糖や食塩にも比較的強いため、甘い餡やクリームの中でも増えうる |
| ③ 時間と温度 | 作業中や、ショーケースに出す前の待ち時間、持ち帰りの時間に、室温に置かれることがある |
そして、いったんエンテロトキシンができれば、焼いても蒸しても壊れない。菓子の衛生管理の中心が「手指の衛生」と「温度管理」にあるのは、このためである。
5-2. 和菓子と黄色ブドウ球菌
和菓子は、餅を丸める、餡を包む、きな粉をまぶす、練り切りを細工するなど、素手で成形する作業が多い。過去にも、ずんだ餅、みたらしだんご、おはぎ、大福、どら焼きなどで、黄色ブドウ球菌の食中毒が起きている。
和菓子をつくる人は、次の点に特に注意する。
- 手指に傷があるときは、成形・包餡の作業をしない。傷は小さくても化膿していれば菌が多い
- 作業前に爪を短く切り、指輪や時計を外して、手首までしっかり洗う
- 素手で触れる作業では、手洗いの回数を増やし、使い捨て手袋を使う
- 包餡や成形を終えた菓子は、室温で長く待たせない
5-3. 餡とセレウス菌
小豆などの豆類にも、セレウス菌の芽胞がついている。餡を炊いたあと、大きな鍋のまま、室温で長時間置いて冷ますと、生き残った芽胞が発芽して増え、熱に強いセレウリドがつくられることがある。過去には、餡を使った餅菓子で、患者が数百人にのぼる食中毒も起きている。
餡を炊いたら、
- 浅い容器に小分けにして広げ、急速に冷やす
- 冷めたら10℃以下で保存し、早めに使い切る
- 炊く量を、使い切れる量にする
ことが大切である。前章で学んだウエルシュ菌と同じく、芽胞をつくる菌には「加熱後に速やかに冷やす」が最も有効な対策である。
5-4. はちみつを使う菓子
はちみつを使った菓子(はちみつ入りのカステラ、マドレーヌ、ハニーケーキ、ヌガーなど)を販売する場合は、1歳未満の乳児に与えないよう、客に伝える配慮が望ましい。焼成しても芽胞は死なないため、「焼いた菓子だから大丈夫」とは言えない。子どもの誕生日ケーキや、赤ちゃん向けのギフトの相談を受けたときには、とくに注意したい。
5-5. 真空包装と脱酸素剤の過信
焼き菓子やケーキを真空包装したり、脱酸素剤を入れたりすると、カビは生えにくくなる。しかし、酸素がなくなると、ボツリヌス菌のような嫌気性菌にとっては、かえって都合のよい環境になる。
焼き菓子のように水分活性が低いものであれば、ボツリヌス菌は増えない(水分活性0.94未満)。しかし、水分が多く、酸性でもない食品(たとえば、しっとりしたケーキに具材をはさんだもの、総菜系の製品)を真空包装して常温で売ることは避けるべきである。真空包装した製品で冷蔵が必要なものは、「10℃以下で保存」の表示をはっきりと示し、販売中も冷蔵を守る。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1手指に化膿した傷があっても、手袋をすれば、クリームの充填など食品に直接触れる作業をしてよい
Q2黄色ブドウ球菌は菌自体が熱に強いが、つくる毒素は熱に弱い
Q3毒素型食中毒は、菌が食品中で増殖するときにつくった毒素を食べることで起こる
Q4セレウス菌の食中毒には嘔吐型と下痢型があり、嘔吐型の原因は米飯や麺類などの穀類加工品に多い
Q5黄色ブドウ球菌による食中毒は、増殖するときにつくるアフラトキシンという毒素が原因である
Q6黄色ブドウ球菌は、食塩濃度の高い食品では増殖できない
Q7黄色ブドウ球菌による食中毒の主な原因食品は、いずしやからしれんこんである
Q8黄色ブドウ球菌食中毒では、40℃近い高熱が出るのが特徴である
Q9ボツリヌス菌は、芽胞をつくる偏性嫌気性菌である
Q10黄色ブドウ球菌食中毒の予防には、手洗いの徹底、食品に素手で触れないこと、帽子やマスクの着用が有効である
Q11日本で発生するセレウス菌食中毒は、下痢型が多い
Q12黄色ブドウ球菌がつくるエンテロトキシンは熱に弱く、加熱すれば壊れる
Q13真空包装した食品は、酸素がないので常温で保存しても食中毒の心配はない
Q14黄色ブドウ球菌に汚染され毒素ができた食品は、加熱しても安全にはならない
Q151歳未満の乳児には、乳児ボツリヌス症を防ぐため、はちみつを与えない
Q16黄色ブドウ球菌食中毒の主な症状は、吐き気・激しい嘔吐・腹痛・下痢で、発熱はほとんどない
Q17ボツリヌス菌は芽胞をつくるため、菌(芽胞)とつくられた毒素はともに熱に強い
Q18黄色ブドウ球菌食中毒の潜伏期間は12〜72時間で、神経症状が主である
Q19セレウス菌食中毒を防ぐには、炊いたご飯などを室温に長く放置せず、すぐに食べないものは小分けにして冷蔵する
Q20黄色ブドウ球菌は、健康な人の皮膚や鼻にはいない
Q21ボツリヌス毒素は、80℃で20分間程度の加熱で失活する
Q22ボツリヌス菌による食中毒の主な症状は、腹痛と下痢などの胃腸の症状である
Q23ボツリヌス菌は、酸素がある環境でよく増殖する好気性菌である
Q24黄色ブドウ球菌は、手指の化膿巣に多く存在する
Q25セレウス菌の嘔吐型食中毒の主な原因食品は、生の魚介類である
Q26乳児ボツリヌス症は、はちみつを加熱して与えれば防ぐことができる
Q27セレウス菌の嘔吐型の毒素は熱に弱いため、食べる前に再加熱すれば予防できる
Q28日本のボツリヌス食中毒で最も多い型はA型で、原因食品は主に缶詰である
Q29ボツリヌス菌による食中毒は、細菌性食中毒の中で最も致命率が高い
Q30セレウス菌は芽胞をつくらない菌で、ふつうの加熱で死滅する
まとめ
毒素型食中毒は、細菌が食品の中で増えるときにつくった毒素を食べることで起こる。潜伏期間は短く、毒素が熱に強い場合は、食べる前に加熱しても予防できない。予防の中心は、菌をつけないことと、菌を増やさない(毒素をつくらせない)ことである。
黄色ブドウ球菌は、人の手指の化膿した傷、鼻、のどなどにいて、手作業から食品につく。食塩や乾燥に比較的強く、食品の中で増えるとエンテロトキシンをつくる。エンテロトキシンは100℃で30分間加熱しても壊れない。潜伏期間は30分〜6時間と短く、激しい嘔吐が特徴で、発熱はほとんどない。おにぎり、弁当、シュークリーム、和菓子などが原因になる。菌は熱に弱く、毒素は熱に強い。
ボツリヌス菌は、土や泥に住む偏性嫌気性の芽胞をつくる菌で、酸素のないいずし、からしれんこん、真空包装の食品、缶詰・瓶詰などで増え、神経のまひを起こす。細菌性食中毒の中で最も致命率が高い。日本ではE型が多い。芽胞は熱に強く、毒素は熱に弱い(80℃・20分、100℃・1〜2分で失活)。1歳未満の乳児にははちみつを与えない(乳児ボツリヌス症)。
セレウス菌は芽胞をつくる菌で、嘔吐型(毒素セレウリド、熱にきわめて強い、米飯・麺類・餡)と、下痢型(腸の中で毒素をつくる、食肉・スープ)がある。日本では嘔吐型が多い。炊いたものを室温に置かないことが予防の中心である。
菓子、とくに生菓子と和菓子は、加熱後の手作業が多く、栄養も豊富で、黄色ブドウ球菌の食中毒の条件がそろいやすい。手指の衛生と、加熱後の速やかな冷却・低温保存が、菓子の衛生管理の中心となる。次章では、菌ではなくウイルスによる食中毒と、食品を介して広がる経口感染症を学ぶ。患者数が最も多いノロウイルスが中心になる。
※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

