食品衛生学 第四部 衛生管理
HACCPと衛生管理計画
はじめに
本書ではこれまで、食中毒の原因、食品中の化学物質、施設と人の衛生管理、洗浄・殺菌・消毒を学んできた。本章では、それらの知識を一つのしくみにまとめて、食品の安全を確実に守る方法として、HACCP(ハサップ)を学ぶ。
かつての食品の衛生管理は、できあがった製品の一部を抜き取って検査し、問題がないかを確かめる方法が中心であった。しかし、この方法では、検査しなかった製品に問題があっても見つけることができない。HACCPは、製造の工程のどこに危害が起こりうるかをあらかじめ分析し、とくに重要な工程を連続的に管理して記録することで、すべての製品の安全を確保しようとする方法である。
令和3年(2021年)6月1日から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が求められている。菓子店も例外ではない。小規模な菓子店は、菓子の業界団体が作成した手引書にもとづいて、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行う。
本章では、HACCPの考え方と7原則12手順、日本での制度化、HACCPを支える一般的衛生管理、そして菓子製造業の手引書の内容を学ぶ。制度の法律上の位置づけは、衛生法規の食品衛生法の章もあわせて参照してほしい。
1. HACCPとは
1-1. 名前の意味
HACCPは、英語の Hazard Analysis and Critical Control Point の頭文字をとったもので、日本語では「危害要因分析重要管理点」と訳される。
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| HA(Hazard Analysis) | 危害要因分析。原材料の受け入れから製品の出荷までの工程ごとに、どのような危害要因(生物学的・化学的・物理的。第1章参照)が起こりうるかを分析する |
| CCP(Critical Control Point) | 重要管理点。危害要因を防ぐために、とくに重点的に管理すべき工程(たとえば加熱、冷却、金属探知)。ここでの管理に失敗すると、製品の安全が確保できない |
1-2. HACCPの生まれ
HACCPは、1960年代に、アメリカの宇宙計画(アポロ計画)で、宇宙飛行士が食べる宇宙食の安全を確保するために考え出された。宇宙で食中毒が起きれば命にかかわるため、「すべての製品を検査することはできないが、すべての製品が安全でなければならない」という課題に対して生まれた方法である。
その後、FAOとWHOが合同で設置したコーデックス委員会が、HACCPを導入するためのガイドラインを示し(第1章参照)、世界中に広がった。
1-3. 従来の方法との違い
| 項目 | 従来の方法 | HACCP |
|---|---|---|
| 管理の重点 | 最終製品の抜き取り検査 | 製造の工程の管理 |
| 問題の見つけ方 | 製品ができてから見つける | 工程の中で問題が起きる前に防ぐ |
| 対象 | 検査した一部の製品 | すべての製品 |
| 問題が見つかったとき | 製品をまとめて廃棄することが多い | その場で改善措置をとる |
| 記録 | 検査の結果 | 工程の管理の記録 |
HACCPは、最終製品の検査をやめるものではないが、安全を確保する中心を、工程の管理に置く。
2. HACCPの7原則12手順
HACCPを導入するための手順は、コーデックス委員会のガイドラインで、12の手順としてまとめられている。そのうち、手順6から12が、HACCPの7原則にあたる。
2-1. 準備の5手順
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 手順1 HACCPチームの編成 | 製品や工程をよく知る人を集め、HACCPの計画をつくるチームをつくる |
| 手順2 製品説明書の作成 | 製品の名前、原材料、アレルゲン、特性(水分活性、pHなど)、包装、保存方法、期限などをまとめる |
| 手順3 意図する用途と対象者の確認 | 製品が、誰に、どのように食べられるか(加熱して食べるか、そのまま食べるか、乳幼児や高齢者が食べるか)を確認する |
| 手順4 製造工程一覧図(フローダイアグラム)の作成 | 原材料の受け入れから出荷まで、工程を順番に図にする |
| 手順5 製造工程一覧図の現場での確認 | 図が実際の作業と合っているかを、現場で確認する |
2-2. 7原則(手順6〜12)
| 手順 | 原則 | 内容 | 菓子の例 |
|---|---|---|---|
| 手順6 | 原則1 危害要因分析(HA) | 工程ごとに、起こりうる危害要因を挙げ、その管理の方法を決める | 卵のサルモネラ、手指からの黄色ブドウ球菌、金属片の混入 |
| 手順7 | 原則2 重要管理点(CCP)の決定 | 危害要因を防ぐために、とくに重要な工程を決める | カスタードクリームの加熱、炊いた後の冷却、金属探知 |
| 手順8 | 原則3 管理基準(CL)の設定 | CCPで、安全か安全でないかを分ける基準を決める | 中心温度75℃・1分間以上、30分以内に20℃以下 |
| 手順9 | 原則4 モニタリング方法の設定 | 管理基準が守られているかを、連続的または相当の頻度で確認する方法を決める | 毎回、温度計で中心温度を測り、記録する |
| 手順10 | 原則5 改善措置の設定 | 管理基準が守られていなかったときに、どう対処するかを決めておく | 温度が足りなければ再加熱する。冷却が遅れたものは廃棄する |
| 手順11 | 原則6 検証方法の設定 | HACCPの計画が正しく機能しているかを、定期的に確かめる方法を決める | 記録の見直し、温度計の校正、製品の微生物検査 |
| 手順12 | 原則7 記録と保存方法の設定 | 管理の結果を記録し、保存する方法を決める | 加熱温度の記録表、改善措置の記録を一定期間保存する |
2-3. 覚え方と注意点
7原則は、「分析して(HA)→ 決めて(CCP)→ 基準をつくり(CL)→ 見張って(モニタリング)→ 外れたら直し(改善措置)→ 確かめて(検証)→ 書き残す(記録)」という流れで覚えるとよい。
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 原則1は危害要因分析 | 12手順の手順1は「HACCPチームの編成」。原則と手順の番号を取り違えない |
| モニタリングと検証の違い | モニタリングは、CCPの管理基準が守られているかを、その場で毎回確認すること。検証は、計画全体が機能しているかを後から定期的に確かめること |
| 見直しが必要 | HACCPは、一度つくれば終わりではない。原材料、工程、設備、製品が変わったときや、問題が起きたときには、計画を見直す |
| 施設の新築は不要 | HACCPは衛生管理の方法(ソフト)であり、HACCPのために施設や設備(ハード)を新しくする必要は、必ずしもない |
3. 日本での制度化
3-1. 制度化までの流れ
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 平成7年(1995年) | 食品衛生法の改正で、HACCPの考え方を取り入れた「総合衛生管理製造過程」の承認制度ができた(乳製品、食肉製品、清涼飲料水など、一部の食品で、事業者の任意の申請による) |
| 平成30年(2018年) | 食品衛生法の改正で、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理を求めることが決まった |
| 令和2年(2020年)6月 | 改正法の施行。総合衛生管理製造過程の承認制度は廃止された |
| 令和3年(2021年)6月1日 | 1年間の経過措置が終わり、HACCPに沿った衛生管理が完全に施行された |
3-2. 二つの基準
HACCPに沿った衛生管理は、事業者の規模や業種によって、次の二つに分けられる。
| 区分 | 対象となる主な事業者 | 内容 |
|---|---|---|
| HACCPに基づく衛生管理 | 大規模な事業者、と畜場、食鳥処理場など | 7原則にもとづき、事業者が自ら衛生管理計画をつくり、管理する |
| HACCPの考え方を取り入れた衛生管理 | 小規模な事業者など。菓子店のように、製造した菓子を、その施設に併設・隣接した店舗で販売する事業者、飲食店、従業員の少ない製造事業者など | 業界団体が作成し、国が内容を確認した手引書を参考にして、簡略化した方法で管理する |
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理では、事業者は、手引書を参考にして、次のことを行う。
- 衛生管理計画をつくる(一般的衛生管理と、重要管理のポイントを決める)
- 必要に応じて、手順書をつくる
- 計画にもとづいて実施する
- 実施したことを確認し、記録する
- 記録を振り返り、必要に応じて計画を見直す
3-3. 食品衛生責任者の役割
施設ごとに置かれる食品衛生責任者は、営業者の指示に従い、衛生管理計画にもとづく衛生管理の実施や、従業員の衛生教育などにあたる(食品衛生責任者の制度は、衛生法規の食品衛生法の章を参照)。
3-4. 自主回収(リコール)の届出
令和3年(2021年)6月から、食品等事業者が、食品衛生法や食品表示法に違反するおそれのある食品を自主的に回収する場合、その情報を都道府県等に届け出ることが義務になった。届け出られた回収の情報は、国によって一元的に公表され、消費者が確認できるようになっている。アレルゲンの表示の誤りによる自主回収も、この届出の対象である。
4. 一般的衛生管理
4-1. HACCPの土台
HACCPは、それだけで成り立つものではない。施設の清掃、手洗い、温度管理など、毎日の基本的な衛生管理がきちんと行われていることが前提になる。これを一般的衛生管理(前提条件プログラム)という。
食品の安全を守るしくみは、ピラミッドにたとえられる。土台に原材料の安全と施設・設備の衛生、その上に一般的衛生管理があり、その上にHACCPがのる。土台がしっかりしていなければ、HACCPは機能しない。
4-2. 一般的衛生管理の項目
食品衛生法の施行規則などで示されている、一般的衛生管理の主な項目は、次のとおりである。
| 項目 | 主な内容 | 本書の章 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者の選任 | 施設ごとに選任し、衛生管理にあたらせる | 第1章 |
| 施設の衛生管理 | 清掃、清潔の保持、換気、照明 | 第12章 |
| 設備・器具の衛生管理 | 洗浄・消毒、点検、温度計の確認 | 第12章・第13章 |
| 使用水の管理 | 水道水または飲用に適する水の使用、水質の確認 | 第12章 |
| ねずみ・昆虫の対策 | 侵入防止、生息調査、駆除 | 第12章 |
| 廃棄物・排水の取り扱い | ふた付き容器での保管、搬出 | 第12章 |
| 食品取扱者の衛生管理 | 健康状態の確認、手洗い、服装 | 第12章 |
| 検食の実施 | 大量調理施設など、必要な場合 | 第12章 |
| 情報の提供 | アレルゲンなどの情報を消費者に提供する | 第9章 |
| 回収・廃棄 | 問題のある製品の回収の手順を決めておく | 本章 |
| 運搬 | 温度管理、汚染の防止 | 第13章 |
| 販売 | 適切な温度での陳列、期限の管理 | 第12章 |
| 教育・訓練 | 従業員への衛生教育 | 第12章 |
5. 菓子製造業の手引書
5-1. 手引書の作成
菓子製造業では、全日本菓子協会・全国菓子工業組合連合会、全国和菓子協会、日本洋菓子協会連合会、全日本洋菓子工業会の団体が、小規模な菓子製造業者のための「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」を作成している(平成31年2月に国が内容を確認し、その後改訂されている)。
5-2. 菓子のグループ分け
手引書では、菓子を、どの工程で加熱するか、加熱したあとに手作業が入るかによって、次の5つのグループに分けて、それぞれの重要管理のポイントを示している。
| グループ | 例 | 重要管理のポイント |
|---|---|---|
| ① 生地の調整(煮詰め)の段階で加熱する菓子 | 型物のゼリー、キャラメル、ドロップ、ゼリー菓子 | 生地を煮詰める温度の管理 |
| ② 生地を調整したあとで加熱する菓子 | 蒸し菓子、焼き菓子、油菓子、糖蔵菓子、バターケーキ、自家製のあん | 加熱(蒸す・焼く・揚げる・炊く)の管理 |
| ③ 加熱したあとに手細工などの加工が入る菓子 | 餅菓子、スポンジケーキ、ペストリー、シュークリーム、米菓 | 加熱の管理に加え、加熱後の手作業による二次汚染の防止 |
| ④ 仕上げ(充填・巻き締め)のあとで加熱する菓子 | 缶詰のようかん、瓶詰のコンポート | 充填・密封したあとの加熱殺菌の管理 |
| ⑤ 加熱しない、または低い温度でしか加熱しない菓子 | おか物、打ち菓子・押し菓子、掛け物、チョコレート、生チョコレート | 加熱による殺菌の工程がないため、原材料と作業の衛生、水分活性、包装、期限の設定が重要 |
同じ菓子でも、作り方によってグループが変わることがある。たとえばカステラは、焼いたあと機械で切って包装する場合はグループ②、手で切る場合はグループ③として扱う。加熱したあとに人の手が入るかどうかが、管理の重さを大きく変えるためである。
5-3. 手引書の一般的衛生管理の例
手引書では、菓子店の一般的衛生管理として、次のような点が示されている。
| 項目 | 主な内容 |
|---|---|
| 冷蔵・冷凍庫 | 作業の始めと終わりに温度を確認する。冷蔵庫が10℃以上、冷凍庫が−15℃より高いときは、原因を調べて対処する。停電への対応も決めておく |
| 従業員の衛生 | 毎日の健康状態の確認、決められたときの手洗い、清潔な作業着、装飾品を外す。下痢や嘔吐などの症状がある人は、報告して作業をしない |
| 原材料の受け入れ | 信頼できる仕入れ先から購入し、納品物と期限を確認し、記録する。卵はできるだけ殺菌液卵を使う |
| 製造・保管 | 二次汚染の防止、器具の点検、粉のふるい、アレルゲンの管理。殺菌していない卵を使う場合は75℃・1分間以上加熱する。クリームは冷やして早く使う。表示の確認。金属探知機の作動確認。回収の手順 |
| 販売 | 店内の清掃、販売員の健康確認、商品の確認、アレルゲンの情報提供、冷蔵品の温度管理 |
5-4. 記録の付け方
手引書では、毎日の点検を、月ごとの記録表(製造の衛生記録、販売の衛生記録)に記入する方法が示されている。
- 点検した項目ごとに、問題がなければ○(✓)、問題があれば×をつける
- 問題があったときは、とった措置(改善措置)を書く
- 確認した人の名前を書く
- 記録は1年以上(賞味期限が1年をこえる製品はそれ以上)保存する
- 記録を定期的に振り返り、改善すべき点を見つけて、衛生管理計画を見直す
6. 製菓とのつながり
6-1. 自分の店の菓子をグループに分けてみる
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の第一歩は、自分の店でつくる菓子を、手引書のグループに分けてみることである。
| 菓子 | グループ | 重要管理のポイントの例 |
|---|---|---|
| クッキー、マドレーヌ、パウンドケーキ | ② | 焼成の温度と時間。焼きむらがないか |
| どら焼きの皮、蒸しまんじゅう | ② | 焼く・蒸す温度と時間 |
| 自家製のあん | ② | 炊く温度と時間、炊いたあとの急速な冷却 |
| ショートケーキ、ロールケーキ | ③ | スポンジの焼成に加え、デコレーションの手作業(手洗い、手袋、器具の消毒、作業の時間と室温) |
| シュークリーム | ③ | シューの焼成、カスタードの加熱と冷却、クリームの充填作業 |
| 大福、おはぎ、だんご | ③ | 餅を蒸す・つく工程に加え、包餡・成形の手作業 |
| 生チョコレート、トリュフ | ⑤ | 原材料(生クリームなど)の管理、作業の衛生、低温での保管、期限の設定 |
| ジャムの瓶詰め | ②または④ | 煮詰める温度、瓶の殺菌、充填・密封後の加熱 |
グループ③の菓子が多い店ほど、手洗い、手袋の使用、器具の消毒、作業する人の健康管理、作業中の温度管理が、衛生管理の中心になる。
6-2. 菓子店の重要管理のポイント
たとえば、シュークリームの重要管理のポイントは、次のように整理できる。
| 工程 | 危害要因 | 管理のポイント(管理基準の例) | 確認の方法 | 外れたときの対応 |
|---|---|---|---|---|
| カスタードの加熱 | 卵のサルモネラなど | 中心までしっかり沸騰させる(75℃・1分間以上を確実にこえる) | 炊き上がりの状態と温度を確認し、記録する | 再加熱する |
| カスタードの冷却 | 芽胞菌・ブドウ球菌の増殖 | 浅いバットに広げて急速に冷やす。冷えたら10℃以下で保管 | 冷却の開始と終了の時刻、温度を記録する | 冷却が遅れたものは使わない |
| クリームの充填 | 手指からの黄色ブドウ球菌・ノロウイルス | 手洗い、使い捨て手袋、口金・絞り袋の洗浄・消毒。作業を短時間で | 作業前の手洗いと体調の確認を記録する | 体調不良の人は作業から外す |
| 保管・販売 | 菌の増殖 | 10℃以下で保管・陳列。消費期限を守る | ショーケースの温度を記録する | 温度が上がっていたら原因を調べ、必要なら廃棄する |
このように整理すると、本書で学んだ知識(第4章のサルモネラ、第5章の黄色ブドウ球菌、第6章のノロウイルス、第12章・第13章の衛生管理)が、一つの菓子の工程の中で、すべてつながっていることがわかる。
6-3. 記録は「店を守る証明」
HACCPの記録は、保健所に見せるための書類ではない。毎日の点検を習慣にすることで、問題に早く気づき、すぐに直すための道具である。そして、万一、客の体調不良などの申し出があったとき、記録は、その日の作業が正しく行われていたことを示す証明になる。逆に、記録がなければ、正しく作業していたとしても、それを示すことができない。
記録の付け方は、ていねいである必要はない。○と×、気づいたこと、名前。それを毎日、続けることが大切である。
6-4. 自主回収の手順を決めておく
アレルゲンの表示の誤りや、異物の混入が見つかったとき、すぐに対応できるよう、回収の手順を決めておく。
- 誰が判断し、誰に連絡するか
- どの製品を、いつ、どれだけ販売したかを、記録からすぐに調べられるようにしておく
- 保健所に相談し、必要な場合は自主回収の届出を行う
- 店頭やホームページで、客にわかりやすく知らせる
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1HACCPの7原則の原則1は、HACCPチームの編成である
Q2HACCPの『CCP』は、危害要因分析を意味する
Q3総合衛生管理製造過程の承認制度は、現在も食品衛生法にもとづいて運用されている
Q4平成30年の食品衛生法の改正により、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が求められることになった
Q5食品の自主回収(リコール)の情報は、届出にもとづいて国によって一元的に公表される
Q6小規模な事業者は、業界団体が作成し国が確認した手引書を参考に、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行う
Q7HACCPの7原則は、危害要因分析、重要管理点の決定、管理基準の設定、モニタリング方法の設定、改善措置の設定、検証方法の設定、記録と保存方法の設定である
Q8HACCPは衛生管理の手法(ソフト)であり、導入のために施設や設備を新しくする必要は必ずしもない
Q9管理基準が守られていなかった場合にとる対処を、改善措置という
Q10菓子製造業の手引書では、加熱したあとに手細工などの加工が入る菓子として、餅菓子やシュークリームが挙げられている
Q11小規模な菓子店は、HACCPに沿った衛生管理の対象外である
Q12モニタリングとは、HACCPの計画全体が機能しているかを、年に一度確かめることである
Q13HACCPの考え方を取り入れた衛生管理では、記録をつける必要はない
Q14一般的衛生管理は、HACCPを導入すれば不要になる
Q15HACCPの7原則には、施設・設備の新築が含まれる
Q16HACCPは、1960年代にアメリカで、安全な宇宙食を製造するための手法として考案された
Q17HACCPは、危害要因分析重要管理点と訳される
Q18HACCPは、一度導入してしまえば、その後システムの検証や見直しを行う必要はない
Q19HACCPの12手順のうち、最初の5手順は、HACCPチームの編成、製品説明書の作成、用途の確認、製造工程一覧図の作成、その現場確認である
Q20食品等事業者が食品を自主回収する場合でも、行政に届け出る必要はない
Q21HACCPでは、最終製品の抜き取り検査を最も重視する
Q22HACCPに沿った衛生管理は、大規模な事業者だけに義務づけられている
Q23HACCPの手順では、製造工程一覧図(フローダイアグラム)は机の上で作成すればよく、現場で確認する必要はない
Q24HACCPは、1990年代にヨーロッパで、乳製品の品質管理のために考案された
Q25HACCPを効果的に機能させるためには、一般的衛生管理プログラムが実施されていることが前提となる
まとめ
HACCP(危害要因分析重要管理点)は、1960年代にアメリカで宇宙食の安全のために考案された衛生管理の方法である。最終製品の抜き取り検査ではなく、製造の工程を分析し、とくに重要な工程(CCP)を連続的に管理して記録することで、すべての製品の安全を確保する。
HACCPの導入は12手順で行う。手順1〜5は準備(HACCPチームの編成、製品説明書の作成、用途の確認、製造工程一覧図の作成と現場確認)で、手順6〜12が7原則(危害要因分析、重要管理点の決定、管理基準の設定、モニタリング方法の設定、改善措置の設定、検証方法の設定、記録と保存方法の設定)である。HACCPは一度つくれば終わりではなく、検証と見直しを続ける。また、衛生管理の方法(ソフト)であり、施設の新築を必ずしも必要としない。
日本では、平成7年の総合衛生管理製造過程の承認制度を経て、平成30年の食品衛生法改正により、令和3年6月1日から、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められている(総合衛生管理製造過程は廃止)。大規模な事業者は「HACCPに基づく衛生管理」、菓子店などの小規模な事業者は、業界団体の手引書を参考にした「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行う。同じ時期から、食品の自主回収の届出も義務になった。HACCPの土台には、施設・人・水・ねずみ昆虫対策などの一般的衛生管理がある。
菓子製造業の手引書は、菓子を、加熱の工程と加熱後の手作業の有無によって5つのグループに分けている。とくに、加熱したあとに手細工などが入る菓子(餅菓子、スポンジケーキ、シュークリームなど)では、加熱後の二次汚染の防止が重要管理のポイントになる。毎日の点検を記録し、振り返って改善することが、客と店を守る。次章は、本書の総まとめとして、試験の直前に確認したい重要事項を整理する。
※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

