食品衛生学 第二部 食中毒
寄生虫と化学性食中毒
はじめに
食中毒の部の最後に、寄生虫による食中毒と、化学物質による食中毒を学ぶ。
寄生虫による食中毒は、近年大きく増えている。令和7年(2025年)の全国の食中毒のうち、寄生虫によるものは305件で、そのうち280件がアニサキスであった。アニサキスは、令和6年まで事件数の1位が続き、令和7年もノロウイルスに次ぐ2位である(第3章参照)。生の魚を食べる日本の食文化と深くかかわる食中毒である。
化学性食中毒は、件数は少ない(令和7年は14件)が、原因はさまざまである。その多くを占めるのは、鮮度の落ちた赤身の魚で起こるヒスタミンによる食中毒である。ほかに、器具や容器から溶け出す金属、洗剤や消毒薬の誤用、そして変敗した油脂による食中毒がある。
菓子づくりとのかかわりでは、ドーナツ、かりんとう、揚げせんべい、ポテトチップスのような油で揚げた菓子の油脂の変敗が、とくに重要である。食品学の本の成分の変化と食品の変質の章で学んだ油脂の酸化が、どのような基準で管理されているかを、本章で確認する。
1. 寄生虫による食中毒
1-1. 寄生虫とは
寄生虫は、ほかの生物(宿主)の体の中や表面に住み、栄養を得て生きる生物である。食品を通じて人に感染する寄生虫には、目に見える大きさの線虫・吸虫・条虫などと、顕微鏡でしか見えない単細胞の原虫などがある。
寄生虫は、細菌のように食品の中で増えることはない。そのかわり、多くの寄生虫は、魚や肉の中に生きたまま入っており、それを生で、または加熱不足で食べることで感染する。そのため、予防の基本は、加熱する、冷凍する、目で見て取り除くの三つである。
1-2. アニサキス
アニサキスは、サバ、アジ、イワシ、サンマ、サケ、イカなどの海の魚介類に寄生する線虫である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 大きさ・見た目 | 幼虫は長さ2〜3cm、幅0.5〜1mmほどで、白い糸のような見た目。肉眼で見える |
| 寄生している場所 | 生きている魚では主に内臓。魚が死んで時間がたつと、内臓から筋肉(身)に移動する |
| 主な原因食品 | サバ(しめさばを含む)、アジ、イワシ、サンマ、カツオ、サケ、イカなどの刺身や生食 |
| 症状 | 急性胃アニサキス症:食後数時間〜十数時間で、みぞおちの激しい痛み、吐き気、嘔吐。急性腸アニサキス症:食後十数時間〜数日で、下腹部の激しい痛み |
| 原因施設 | 家庭(スーパーで買った丸ごとの魚や、釣った魚を自分で刺身にした場合)、飲食店、販売店 |
| 1件あたりの患者数 | ほぼ1人。そのため、事件数は多いが患者数は少ない |
アニサキスの幼虫が、胃や腸の壁に刺さりこもうとすることで、激しい痛みが起こる。治療は、内視鏡で虫体を取り除く方法がとられる。また、アニサキスに対するアレルギーを起こす人もいる。
アニサキスの予防
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 冷凍 | −20℃で24時間以上冷凍する |
| 加熱 | 70℃以上、または60℃なら1分間加熱する |
| 目で見て取り除く | 調理のときに、身に幼虫がいないかよく見て取り除く |
| 内臓の処理 | 魚は新鮮なうちに内臓を取り除く。取り除いた内臓は生で食べない |
効果がないものとして、次の点が試験で繰り返し問われる。
- 食酢(しめさばの酢じめ)、しょうゆ、わさび、塩漬けでは、アニサキスの幼虫は死なない
- 家庭用の冷凍庫は、−20℃まで下がらないことや、冷凍に時間がかかることがあり、確実ではない場合がある
- よく噛めば安全というわけではない
1-3. クドア・セプテンプンクタータ
クドア・セプテンプンクタータは、ヒラメの筋肉に寄生する、顕微鏡でしか見えない小さな寄生虫(粘液胞子虫)である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な原因食品 | ヒラメの刺身など |
| 症状 | 食後数時間(多くは1〜数時間)で、一過性の下痢、嘔吐。24時間以内に回復し、後遺症はない |
| 予防 | −15〜−20℃で4時間以上の冷凍、または中心温度75℃で5分間以上の加熱 |
養殖ヒラメの稚魚の検査などの対策が進められている。
1-4. サルコシスティス・フェアリー
サルコシスティス・フェアリーは、馬肉に寄生する原虫である。馬刺しを食べて、数時間で一過性の下痢、嘔吐、腹痛を起こす。冷凍によって予防でき、生食用の馬肉は、冷凍処理(−20℃で48時間以上など)をしてから流通するよう指導されている。
1-5. そのほかの寄生虫
| 寄生虫 | 主な感染源(原因食品) | 特徴 |
|---|---|---|
| 旋毛虫(トリヒナ) | クマ肉などの野生鳥獣の肉、豚肉 | 筋肉に寄生する。発熱、筋肉痛、顔のむくみ。冷凍に強いものがあるため、十分な加熱が必要 |
| トキソプラズマ(原虫) | 豚肉、ジビエの生食・加熱不足、猫のふん | 妊婦が初めて感染すると、胎児に影響することがある |
| 日本海裂頭条虫 | サケ・マスの生食 | 腸の中で数mにまで成長する「さなだむし」 |
| 肝吸虫 | コイ、フナなどの淡水魚の生食 | 肝臓の胆管に寄生する |
| 横川吸虫 | アユ、シラウオの生食 | 腸に寄生し、下痢、腹痛 |
| 顎口虫 | ドジョウ、ライギョなどの淡水魚の生食 | 皮膚の下を移動し、はれやかゆみを起こす |
| 肺吸虫 | サワガニ、モクズガニの生食・加熱不足 | 肺に寄生し、せきや血痰 |
| 旋尾線虫 | ホタルイカの生食 | 皮膚の下を移動したり、腸閉塞を起こしたりする。生食用は冷凍処理(−30℃で4日間以上など)されたものを使う |
| 回虫 | 人のふん尿を肥料にした野菜 | かつては日本で非常に多かったが、衛生環境の改善と化学肥料の普及で激減した |
| 有鉤条虫・無鉤条虫 | 有鉤条虫は豚肉、無鉤条虫は牛肉の生食 | 腸の中で長く成長する |
全体に共通するのは、淡水魚、野生の鳥獣の肉(ジビエ)、豚肉は生で食べないことである。海の魚の多くは冷凍や目視で対策できるが、淡水魚やジビエには、冷凍だけでは防げない寄生虫もいる。
2. 化学性食中毒
2-1. 化学性食中毒とは
化学性食中毒は、有害な化学物質を含む食品を食べることで起こる食中毒である。原因は、次のように分けられる。
| 種類 | 主な原因 |
|---|---|
| 食品の中で生成される物質 | ヒスタミン(鮮度の落ちた赤身魚)、変敗した油脂 |
| 器具・容器から溶け出す物質 | 銅、亜鉛、スズ、鉛などの金属 |
| 誤用・誤飲 | 洗剤、消毒薬、殺虫剤、農薬の誤用。添加物の過量使用 |
| 環境汚染物質 | メチル水銀、カドミウムなど(第11章参照) |
化学性食中毒の多くは、作業の誤りや管理の不足で起こるため、正しい知識と手順で防ぐことができる。
2-2. ヒスタミン(アレルギー様食中毒)
ヒスタミンによる食中毒は、化学性食中毒の中で最も多い。症状がアレルギーによく似ているため、アレルギー様食中毒ともよばれる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原因となる魚 | マグロ、カジキ、カツオ、サバ、イワシ、アジ、サンマ、ブリなどの赤身魚とその加工品(干物、みりん干し、つみれなど) |
| ヒスタミンができるしくみ | 赤身魚の筋肉には、アミノ酸の一種のヒスチジンが多く含まれる。魚を常温に置くなどして、ヒスタミンをつくる細菌(ヒスタミン産生菌)が増えると、その酵素のはたらきで、ヒスチジンがヒスタミンに変わる |
| 潜伏期間 | 食後すぐ〜1時間以内が多い(教材によっては30分〜数時間) |
| 主な症状 | 顔面の紅潮(顔が赤くなる)、じんましん、かゆみ、頭痛、口のまわりや耳たぶの熱感、発熱など。多くは数時間〜1日で回復する |
| 熱への強さ | ヒスタミンは熱に強く、一度できると、加熱しても分解されない |
| 見分け方 | ヒスタミンがたまった魚でも、見た目やにおいはほとんど変わらない。口に入れたときに、唇や舌にぴりぴりとした刺激を感じることがある |
ヒスタミン食中毒の予防
予防の中心は、ヒスタミンをつくらせないこと、つまり魚の低温管理である。
- 赤身魚は、購入後すぐに冷蔵・冷凍し、常温に置かない
- 冷凍した魚の解凍は、冷蔵庫の中で行い、解凍と再冷凍をくり返さない
- 鮮度が落ちた魚は食べない
- 口に入れてぴりぴりした刺激を感じたら、食べるのをやめる
「火を通したから大丈夫」が通用しない点は、黄色ブドウ球菌のエンテロトキシン(第5章参照)とよく似ている。
2-3. 金属による食中毒
器具や容器に使われている金属が、酸性の食品などによって溶け出し、中毒を起こすことがある。
| 金属 | 主な原因 | 主な症状 |
|---|---|---|
| 銅 | 古くなった銅製の鍋や器具にできる緑青(銅のさび)、酸性の食品を銅の容器に入れたままにする | 吐き気、嘔吐、腹痛 |
| 亜鉛 | 亜鉛めっきの容器(トタンのバケツなど)に、酸性の飲み物(スポーツドリンク、ジュースなど)を入れたままにする | 吐き気、嘔吐、腹痛 |
| スズ | 内面を塗装していないスズめっきの缶詰の果汁などを、開けたまま缶の中で保存する | 吐き気、嘔吐、腹痛 |
| 鉛 | 鉛を含むうわぐすりを使った陶磁器やガラス器に、酸性の食品を入れる | 慢性の中毒 |
金属による食中毒の多くは、食後すぐ(数分〜1時間ほど)に、吐き気や嘔吐を起こす。予防のために、次の点に注意する。
- 酸性の食品や飲み物を、金属の容器に長く入れたままにしない
- 缶詰は、開けたら別の容器に移して保存する
- 銅の鍋や器具は、緑青がつかないよう手入れし、内側のスズめっきがはげたものは使わない
- 器具・容器は、食品用として売られているものを、本来の用途で使う
2-4. 洗剤・消毒薬・殺虫剤の誤用
調理場で起こる化学性食中毒には、誤用や取り違えによるものがある。
| 例 | 原因 |
|---|---|
| 漂白剤や洗剤を、水や調味料と間違えて食品に入れた | ペットボトルなど、食品用の容器に小分けして、表示をしていなかった |
| 食器に洗剤や消毒薬が残っていた | すすぎが不十分だった |
| 殺虫剤が食品にかかった | 調理中に殺虫剤を使った。食品のそばに保管していた |
| 添加物を入れすぎた | 計量を誤った。使用基準を知らなかった |
予防の基本は次のとおりである。
- 洗剤、消毒薬、殺虫剤などの化学物質は、食品と別の場所に保管する
- 小分けにする場合は、食品用の容器を使わず、必ず品名を表示する
- 洗剤や消毒薬を使ったあとは、十分にすすぐ
- 調理中や、食品がむき出しの場所で殺虫剤を使わない
- 添加物は、使用基準を守り、正確に計量する(第9章・第10章参照)
3. 油脂の変敗による食中毒
3-1. 油脂の変敗と食中毒
油脂は、空気中の酸素、光、熱、金属などの影響で酸化し、品質が悪くなる。これを油脂の変敗(酸敗)という。酸化が進むと、過酸化脂質ができ、さらに分解されてアルデヒドなどのいやなにおいの物質ができる(油脂の酸化のしくみは、食品学の本の成分の変化と食品の変質の章を参照)。
変敗が大きく進んだ油脂を含む食品を食べると、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの中毒を起こすことがある。かつては、長く店頭に並べられた即席めんや油で揚げた菓子による中毒が、たびたび起きていた。
3-2. 油脂の変敗を測る指標
油脂の変敗の程度を知るために、主に次の二つの指標が使われる。
| 指標 | 意味 | 値が高いと |
|---|---|---|
| 酸価(AV) | 油脂が分解されてできた遊離脂肪酸の量の目安 | 油脂の分解(劣化)が進んでいる |
| 過酸化物価(POV) | 油脂の酸化の初期にできる過酸化物の量の目安 | 油脂の酸化が進んでいる |
3-3. 油で処理した菓子の指導基準
昭和52年(1977年)、国(当時の厚生省)は「菓子の製造・取扱いに関する衛生上の指導について」という通知を出し、油脂で処理した菓子(油で揚げた菓子、油脂を吹き付けた菓子など)について、製品に含まれる油脂の変敗の基準を示した。
| 基準 | 内容 |
|---|---|
| 基準① | 製品中の油脂の酸価が3をこえ、かつ、過酸化物価が30をこえるものであってはならない |
| 基準② | 製品中の油脂の酸価が5をこえるもの、または過酸化物価が50をこえるものであってはならない |
この二つの基準は、組み合わせになっている点に注意する。
- 基準①は「かつ」である。酸価が3をこえ、しかも過酸化物価が30をこえる場合に不適合となる
- 基準②は「または」である。酸価が5をこえるか、過酸化物価が50をこえるか、どちらか一方でも不適合となる
あわせて、この通知では、次のような取り扱いが求められている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 包装 | 長期間流通する菓子は、光を通しにくく、気体(酸素)を通しにくい容器包装で密封する |
| 表示と保存 | 期限を表示し、直射日光や高温多湿を避けて保存・陳列する |
| 製造者 | 定期的に製品の検査を行い、記録を保存する |
| 販売者 | 先入れ先出しを徹底し、長期間店頭に置かない |
なお、即席めんのうち油脂で処理したものには、食品衛生法の成分規格として、含まれる油脂の酸価が3以下、過酸化物価が30以下であることが定められている。菓子の基準は「指導基準」であり、法律で定めた成分規格とは位置づけが異なる。
3-4. 油脂の変敗を防ぐ
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 酸素を断つ | 窒素などのガスを入れた包装、脱酸素剤、真空包装 |
| 光を断つ | 光を通さない包装(アルミ蒸着フィルムなど)、直射日光の当たらない陳列 |
| 低温で保存する | 高温を避け、涼しい場所で保存する |
| 金属との接触を防ぐ | 鉄や銅は酸化を早める。揚げ油に金属のかすを混ぜない |
| 酸化防止剤 | ビタミンE(トコフェロール)などを使う(第10章参照) |
4. 製菓とのつながり
4-1. 揚げ菓子と揚げ油の管理
ドーナツ、かりんとう、揚げまんじゅう、揚げせんべい、チュロス、ポテトチップスなど、油で揚げた菓子は、菓子店にとって身近な製品である。揚げ菓子の品質と安全は、揚げ油の管理と製品の保存の両方で決まる。
揚げ油は、使うたびに熱・空気・食材の水分によって劣化する。
| 劣化のサイン | 内容 |
|---|---|
| 色 | 茶色く濃くなる |
| 泡 | 細かい泡が消えにくくなる(持続性の泡) |
| 煙 | 低い温度で煙が出るようになる |
| におい・粘り | いやなにおいがする。粘りが出る |
劣化した油で揚げた製品は、最初から酸価が高く、日がたつと酸化がさらに進む。揚げ油は、劣化のサインや、市販の酸価測定用の試験紙などで状態を確かめ、早めに交換する。使ったあとの油は、こしてかすを取り除き、ふたをして光の当たらない涼しい場所に置く。
4-2. 焼き菓子とナッツの酸化
揚げ菓子だけでなく、バターを多く使った焼き菓子や、ナッツ、チョコレート、ナッツペーストも、油脂の酸化によって品質が落ちる。とくにナッツ類は不飽和脂肪酸を多く含み、酸化しやすい。
- ナッツは、使う分だけをこまめに仕入れ、冷暗所(または冷蔵)で、密封して保存する
- 長く日もちさせる焼き菓子は、脱酸素剤と、光や酸素を通しにくい包装を組み合わせる
- 店頭では、直射日光の当たらない場所に陳列し、先入れ先出しを守る
4-3. 銅鍋と金属の器具
菓子づくりでは、銅鍋がジャムやキャラメル、フォンダンなどに使われる。銅は熱の伝わりがよく、製菓に欠かせない道具であるが、緑青(銅のさび)がついたまま使ったり、酸性の食品(果物のピュレ、レモン果汁など)を銅鍋に入れたまま長く置いたりすると、銅が溶け出すおそれがある。
- 銅鍋は、使用後すぐに洗い、水気をふき取って乾燥させる。緑青が出たら落としてから使う
- ジャムを煮たら、銅鍋に入れたまま保存せず、ほかの容器に移す
- 内側がスズめっきの銅鍋は、めっきがはげたら再めっきするか、使用をやめる
4-4. 洗剤・消毒薬の保管
菓子店の厨房には、次亜塩素酸ナトリウムやアルコール、洗剤など、多くの化学物質がある。これらが、シロップや水と取り違えられる事故を防ぐため、薬剤は専用の容器に入れ、品名と濃度を表示して、食品の棚とは別の場所に置く。とくに、透明な液体を、計量カップやペットボトル、シロップ用のボトルに小分けすることは避ける。
4-5. 魚を使わない店でも
菓子店で生の魚を扱うことは少ないが、ヒスタミンやアニサキスの知識は、総菜系の製品(キッシュ、サンドイッチ、パイ包み)を作る店や、カフェを併設する店では必要になる。また、従業員の家庭での食事を含め、体調不良の原因を正しく理解することは、食品を扱う人としての基本の知識である。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1ヒスタミンが多く生成された魚は、必ず強い腐敗臭がするので見分けられる
Q2サルコシスティス・フェアリーは、生の鶏肉に寄生する
Q3油脂の変敗を防ぐには、酸素や光を断つ包装、低温での保存、金属との接触を避けることが有効である
Q4洗剤や消毒薬は、使いやすいよう、空のペットボトルに小分けして食品のそばに置くのがよい
Q5淡水魚や野生鳥獣の肉は、寄生虫の危険があるため生で食べない
Q6ヒスタミンは熱に弱いため、魚を中心まで十分に加熱すれば食中毒は防げる
Q7クドア・セプテンプンクタータは、主にサバの刺身で食中毒を起こす
Q8油脂の変敗は、低温・暗所で保存すれば起こらないため、包装は関係がない
Q9酸性のジュースは、亜鉛めっきの容器に入れて保存しても問題はない
Q10化学性食中毒を防ぐため、洗剤や殺虫剤などは食品と別の場所に保管し、容器に品名を表示する
Q11ヒスタミン食中毒は、主にタイやヒラメなどの白身魚で起こる
Q12ヒスタミン食中毒の予防には、魚を常温に置かず、低温で管理することが重要である
Q13旋毛虫(トリヒナ)は、冷凍すれば必ず死滅するため、クマ肉は冷凍すれば生で食べてよい
Q14アニサキスは、70℃以上、または60℃で1分間の加熱で死滅する
Q15クドア・セプテンプンクタータによる食中毒は、一過性の下痢や嘔吐で、24時間以内に回復し後遺症はない
Q16油脂で処理した菓子は、製品中の油脂の酸価が5をこえる、または過酸化物価が50をこえるものであってはならない
Q17アニサキスは、食酢やわさびで死滅するため、しめさばにすれば安全である
Q18ヒスタミン食中毒の潜伏期間は、食後12〜24時間である
Q19ヒスタミンは、赤身魚に多いヒスチジンが、細菌の酵素によって変化してできる
Q20アニサキスによる食中毒では、みぞおちの激しい痛み、吐き気、嘔吐が起こる
Q21アニサキスによる食中毒は、1件あたりの患者数が多いため、患者数の順位が高い
Q22アニサキスは、主に淡水魚に寄生する
Q23アニサキスは、魚が死んだあとも内臓にとどまり、筋肉に移動することはない
Q24ヒスタミン食中毒の主な症状は、顔面の紅潮、じんましん、頭痛など、アレルギーに似た症状である
Q25アニサキスの予防には、−5℃で1時間冷凍すればよい
Q26ヒスタミン食中毒の主な原因食品は、焼き飯や仕出し弁当である
Q27缶詰は、開けたあとも缶に入れたまま冷蔵庫で保存するのがよい
Q28油脂で処理した菓子の指導基準では、酸価が3をこえれば、過酸化物価にかかわらず不適合となる
まとめ
寄生虫による食中毒は近年増えており、令和7年は305件、そのうちアニサキスが280件であった。アニサキスはサバ・アジ・イワシ・カツオ・イカなどの海の魚介類に寄生し、生食によってみぞおちの激しい痛みを起こす。魚が死ぬと内臓から筋肉に移動する。食酢・しょうゆ・わさび・塩漬けでは死なず、予防には−20℃で24時間以上の冷凍か、70℃以上(60℃なら1分)の加熱、目で見て取り除くことが必要である。クドアはヒラメ、サルコシスティスは馬肉に寄生し、一過性の下痢を起こす。淡水魚、ジビエ、豚肉は生で食べない。
化学性食中毒で最も多いのはヒスタミンによるアレルギー様食中毒である。赤身魚のヒスチジンが、常温に置かれて増えた細菌の酵素によってヒスタミンに変わる。潜伏期間は食後すぐ〜1時間以内と短く、顔面紅潮、じんましん、頭痛が起こる。ヒスタミンは加熱しても分解されないため、魚の低温管理が予防の中心である。ほかに、酸性の食品による銅・亜鉛・スズなどの金属の溶出や、洗剤・消毒薬の誤用による食中毒がある。
油脂の変敗による食中毒を防ぐため、油脂で処理した菓子には、昭和52年の国の通知で、製品中の油脂の酸価が3をこえ、かつ、過酸化物価が30をこえるもの、および酸価が5をこえる、または過酸化物価が50をこえるものであってはならない、という指導基準が示されている。光と酸素を通しにくい包装、直射日光と高温を避けた保存、先入れ先出しが求められる。
菓子づくりでは、揚げ油の管理、ナッツや焼き菓子の酸化防止、銅鍋の手入れ、洗剤や消毒薬の保管に注意が必要である。これで食中毒の部を終える。次章からは、食品に意図して加える食品添加物と、意図せずに含まれる有害物質を学ぶ。まず、食品添加物の制度と安全性のしくみである。
※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

