食品衛生学 第10章:食品添加物②用途別

第10章

食品衛生学 第三部 食品と化学物質

食品添加物②用途別

はじめに

前章では、食品添加物の制度と安全性のしくみ、そして表示のルールを学んだ。本章では、食品添加物を用途ごとに整理し、それぞれの働きと代表的な物質、使用の決まりを学ぶ。

試験では、「添加物の名前」と「用途」の組み合わせが繰り返し問われる。とくに、名前や働きが似ている用途の取り違えが多い。

取り違えやすい組み合わせ違い
保存料と殺菌料保存料は菌の増殖を抑える。殺菌料は菌を殺す
着色料と発色剤着色料は色をつける。発色剤は食品の色を安定させる(それ自体は無色)
酸化防止剤と漂白剤酸化防止剤は酸化を防ぐ。漂白剤は色を抜く
防かび剤と保存料防かび剤は主に輸入のかんきつ類などのかびを防ぐ。保存料は食品全般の腐敗を遅らせる

本章では、まず食品の保存にかかわる添加物、次に色にかかわる添加物、味と香りにかかわる添加物、食感・形にかかわる添加物、そして製造・加工に使う添加物の順に学ぶ。最後に、菓子づくりで使う添加物を整理する。

1. 食品の保存にかかわる添加物

1-1. 保存料

保存料は、食品の中の微生物の増殖を抑えて、腐敗や変敗を遅らせる添加物である。保存料には菌を殺す作用(殺菌作用)はほとんどない。菌の増殖を抑える静菌作用によって、食品の日もちを延ばす。そのため、保存料を使っていても、温度管理や衛生管理が不要になるわけではない。

物質名主な特徴と使われる食品
ソルビン酸、ソルビン酸カリウム最も広く使われる保存料。酸性の食品でよく効く。かまぼこ、ハム・ソーセージ、あん類、ジャム、フラワーペースト(カスタード系のクリーム)、漬物、つくだ煮など
安息香酸、安息香酸ナトリウム酸性でよく効く。清涼飲料水、しょうゆ、シロップ、マーガリン、キャビアなど
デヒドロ酢酸ナトリウムチーズ、バター、マーガリン
プロピオン酸、プロピオン酸カルシウム・ナトリウムパン、洋菓子、チーズ。カビの発生を抑える
パラオキシ安息香酸エステル類しょうゆ、果実ソース、清涼飲料水など
ε-ポリリシン、しらこたん白抽出物(既存添加物)天然由来の保存料

保存料は、使ってよい食品と量が、使用基準で細かく決められている。また、表示では、「保存料(ソルビン酸K)」のように用途名を併記する(第9章参照)。

日もち向上剤

グリシン(アミノ酸の一種)、酢酸ナトリウム、リゾチームなどは、短い期間の保存性を高めるために使われ、日もち向上剤とよばれることがある。保存料ほど効果は強くなく、表示上は「保存料」とは書かず、物質名だけを表示する。弁当、総菜、和菓子などによく使われる。

1-2. 防かび剤(防ばい剤)

防かび剤は、主に輸入のかんきつ類(オレンジ、グレープフルーツ、レモンなど)やバナナの、輸送・保管中のかびの発生を防ぐために使われる添加物である。

物質名主に使われる食品
オルトフェニルフェノール(OPP)、OPPナトリウムかんきつ類
チアベンダゾール(TBZ)かんきつ類、バナナ
イマザリルかんきつ類、バナナ
フルジオキソニル、アゾキシストロビンなどかんきつ類、キウイフルーツなど

これらは、収穫したあとの農産物に使う薬剤で、海外ではポストハーベスト農薬として使われている。日本では、収穫後に使うものは「食品添加物(防かび剤)」として扱われる(収穫前に畑で使うものは農薬として扱われる。第11章参照)。

防かび剤を使ったかんきつ類やバナナは、ばら売りであっても、売り場に防かび剤の名前を表示する必要がある。

1-3. 殺菌料

殺菌料は、食品や飲料水、器具などの微生物を殺すための添加物である。殺菌作用が強いぶん、使い方には制限がある。

物質名内容
次亜塩素酸ナトリウム野菜・果物、器具、飲料水などの殺菌。ノロウイルスの消毒にも使う(第6章参照)。ごまには使用できない
次亜塩素酸水電気分解でつくる。野菜や器具の殺菌(第13章参照)
過酸化水素殺菌に使うが、最終の食品の完成前に分解または除去しなければならない(かずのこの漂白・殺菌など)
高度さらし粉飲料水、器具の殺菌

1-4. 酸化防止剤

酸化防止剤は、食品の中の油脂などの酸化を防ぎ、変色や風味の劣化を防ぐ添加物である。酸化防止剤は、それ自身が酸素と結びつく(自らが先に酸化される)ことで、食品の酸化を防ぐ。「食品に酸素を結びつける」のではない点に注意する。

物質名主な特徴と使われる食品
L-アスコルビン酸(ビタミンC)、L-アスコルビン酸ナトリウム水に溶ける。果汁、清涼飲料水、果物の加工品、ハム。変色防止
エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウムビタミンCに似た構造だが、ビタミンCとしての働きはない。魚介の加工品、ハム
dl-α-トコフェロール(ビタミンE)、ミックストコフェロール油に溶ける。油脂、バター、揚げ菓子、ナッツ類
ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)油に溶ける合成の酸化防止剤。油脂、バター、魚介の冷凍品、チューインガム
ブチルヒドロキシアニソール(BHA)油に溶ける合成の酸化防止剤。油脂、バター、魚介の冷凍品
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)塩金属と結びつき、金属による酸化を防ぐ。缶詰・瓶詰の清涼飲料水など

ビタミンCやビタミンEは、栄養強化の目的で使うこともある。酸化防止の目的で使った場合は「酸化防止剤(ビタミンE)」と用途名を併記し、栄養強化の目的で使った場合は、原則として表示を省略できる(第9章参照)。

2. 色にかかわる添加物

2-1. 着色料

着色料は、食品に色をつける、または加工でうすれた色を補う添加物である。大きく、化学的に合成したタール色素などと、天然の色素に分けられる。

タール色素

タール色素(合成着色料)は、かつて石炭のタールを原料にしてつくられたことからこの名がある(現在は石油製品などからつくられる)。日本で使用が認められているタール色素は、次の12種類である。

色タール色素
赤食用赤色2号、3号、40号、102号、104号、105号、106号
黄食用黄色4号、5号
緑食用緑色3号
青食用青色1号、2号

このうち8種類には、水に溶けにくい粉末にしたアルミニウムレーキもあり、油脂を含む菓子やチョコレートのコーティングなどに使われる。

タール色素には、次のような決まりがある。

決まり内容
製品検査タール色素は、国が登録した検査機関の製品検査に合格し、合格証紙を貼ったものでなければ、販売・使用できない
使用してはならない食品カステラ、スポンジケーキ、マーマレード、きなこ、めん類、みそ、しょうゆ、茶、のり類、こんぶ類、わかめ類、豆類、野菜、食肉、食肉漬物、鮮魚介類、魚肉漬物、鯨肉漬物

使用してはならない食品の多くは、着色によって鮮度や品質をごまかすおそれのある食品(鮮魚介類、食肉、野菜など)や、卵の黄色やきなこの色など、本来の色が品質の目安になる食品(カステラ、スポンジケーキ、きなこなど)である。

天然の着色料

天然の色素の多くは既存添加物であり、植物や動物、微生物などから得られる。

色主な天然色素由来
黄クチナシ黄色素、ウコン色素(ターメリック)、ベニバナ黄色素、β-カロテンクチナシの実、ウコンの根、ベニバナの花、にんじんなど
赤・紫ベニコウジ色素、コチニール色素(カルミン酸)、アントシアニン色素(ブドウ果皮、ムラサキイモ、赤キャベツなど)、ビート赤紅麹菌、エンジムシ(昆虫)、果皮・野菜など
緑銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム植物の葉緑素に銅を結びつけたもの
青クチナシ青色素、スピルリナ色素クチナシの実、藻類
茶カラメル色素糖類を加熱したもの

天然の色素も、鮮魚介類、食肉、野菜、のり類、茶、豆類などの、品質をごまかすおそれのある食品には使用できない。

天然の色素だからといって、必ず安全というわけではない。既存添加物だったアカネ色素は、動物実験で腎臓への発がん性が認められたため、平成16年(2004年)に既存添加物名簿から消除された。また、コチニール色素では、まれにアレルギー(アナフィラキシー)の報告がある。

2-2. 発色剤

発色剤は、それ自体には色がないが、食品の中の色素(肉のミオグロビンなど)と反応して、色を安定させ、鮮やかに保つ添加物である。

物質名主に使われる食品
亜硝酸ナトリウムハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉製品、魚肉ソーセージ、いくら、すじこ、たらこ
硝酸カリウム、硝酸ナトリウム食肉製品、チーズ、清酒

亜硝酸ナトリウムには、食肉製品の色を保つだけでなく、ボツリヌス菌の増殖を抑える働きもある。一方で、食品中のアミン類(魚卵や魚に多い)と反応して、発がん性のあるニトロソアミンができるおそれが指摘されており、使用量が厳しく制限されている。

着色料と同様、発色剤も生鮮の食肉や鮮魚介類には使用できない。生の肉や魚の色を鮮やかに見せて、鮮度をごまかすことになるためである。

2-3. 漂白剤

漂白剤は、食品の色素を分解したり、変色を防いだりして、色を白くする添加物である。

物質名主に使われる食品
亜硫酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、ピロ亜硫酸カリウム・ナトリウムかんぴょう、干しあんずなどのドライフルーツ、こんにゃく粉、甘納豆、煮豆、果実酒(ワイン)
亜塩素酸ナトリウムかずのこの加工品、かんきつ類の果皮(菓子製造に用いるもの)、さくらんぼ、ふき、生食用野菜類など

亜硫酸塩などは、漂白のほか、酸化防止や保存の働きもある。ワインに使う場合は、酸化防止剤の目的で使われ、「酸化防止剤(亜硫酸塩)」と表示されることが多い。

亜硫酸塩などは、ごま、豆類、野菜には使用できない(品質をごまかすおそれがあるため)。また、使ったあとの食品に残る量(二酸化硫黄としての残存量)の基準が、食品ごとに決められている。

3. 味と香りにかかわる添加物

3-1. 甘味料

甘味料は、食品に甘味を与える添加物である。砂糖(ショ糖)、ぶどう糖、はちみつなどは食品であり、添加物ではない。

物質名分類特徴
サッカリン、サッカリンナトリウム指定添加物砂糖の約300〜500倍の甘さ。使ってよい食品と量が決められている
アスパルテーム指定添加物砂糖の約200倍の甘さ。アミノ酸(フェニルアラニンなど)からつくられる。「L-フェニルアラニン化合物」を含む旨の表示が必要(フェニルケトン尿症の人のため)
スクラロース指定添加物砂糖の約600倍の甘さ。熱に強い
アセスルファムカリウム指定添加物砂糖の約200倍の甘さ。ほかの甘味料と合わせて使われることが多い
キシリトール、D-ソルビトール指定添加物糖アルコール。虫歯の原因になりにくい。ソルビトールは保湿にも使われる
ステビア抽出物既存添加物ステビアの葉から得る。砂糖の約200〜300倍の甘さ
カンゾウ抽出物(グリチルリチン)既存添加物甘草の根から得る

甘味料は、エネルギーを抑えたい、虫歯の原因になりにくくしたい、といった目的で使われる。表示では「甘味料(ステビア)」のように用途名を併記する。

3-2. 調味料

調味料(添加物としての調味料)は、食品にうま味などを与える添加物である。一括名「調味料」で表示し、主な成分の種類を( )で示す。

種類代表的な物質表示の例
アミノ酸系L-グルタミン酸ナトリウム(こんぶのうま味)調味料(アミノ酸)
核酸系5′-イノシン酸二ナトリウム(かつお節のうま味)、5′-グアニル酸二ナトリウム(しいたけのうま味)調味料(核酸)
有機酸系コハク酸二ナトリウム(貝のうま味)調味料(有機酸)
無機塩塩化カリウムなど調味料(無機塩)

いくつかの種類を組み合わせた場合は、「調味料(アミノ酸等)」のように、主なものに「等」をつけて表示する。

3-3. 酸味料・pH調整剤

酸味料は、食品に酸味を与える添加物で、クエン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、酢酸、フマル酸などがある。

pH調整剤は、食品のpHを適切な範囲に保ち、品質の安定や保存性の向上に役立てる添加物である。クエン酸、乳酸、リン酸塩、炭酸水素ナトリウムなどが使われる。酸味料もpH調整剤も、一括名で表示できる。

3-4. 香料

香料は、食品に香りをつけたり、強めたり、整えたりする添加物である。着香の目的に限って使用できる。

種類例
合成香料(指定添加物)バニリン、エチルバニリン、ベンズアルデヒド(アーモンド・チェリーの香り)、酢酸イソアミル(バナナの香り)、アセト酢酸エチル
天然香料バニラ、レモン、オレンジ、ミント、シナモン、コーヒーなど

香料は、何十種類もの物質を組み合わせてつくることが多いため、一括名「香料」で表示できる。

3-5. 苦味料

苦味料は、食品に苦味を与える添加物で、カフェイン(抽出物)、ナリンジン(かんきつ類の苦味)、ホップ抽出物などがある。一括名「苦味料」で表示できる。

4. 食感・形にかかわる添加物

4-1. 増粘剤・安定剤・ゲル化剤・糊料

増粘安定剤は、食品に粘りやとろみをつけたり(増粘剤)、成分が分かれないように安定させたり(安定剤)、ゼリー状に固めたり(ゲル化剤)する添加物である。同じ物質でも、使う目的によって用途名が変わる。表示では、「増粘剤」「安定剤」「ゲル化剤」「糊料」のうち、目的に合うものを用途名として併記する。

物質名由来主な用途と特徴
ペクチンかんきつ類やりんごの皮ジャム、ゼリー、フルーツソース。糖と酸でゲル化するもの(HMペクチン)と、カルシウムでゲル化するもの(LMペクチン)がある
カラギナン紅藻類ゼリー、プリン、アイスクリーム、乳製品
キサンタンガム微生物の発酵でつくる多糖類ドレッシング、ソース。少量で強いとろみ
グァーガム、ローカストビーンガム豆の種子アイスクリーム、ゼリー
アルギン酸ナトリウム褐藻類麺、アイスクリーム
カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)植物の繊維(セルロース)アイスクリーム、ジャム

2種類以上の増粘多糖類を組み合わせて使う場合は、「増粘多糖類」とまとめて表示でき、このとき用途名は省略できる(ゲル化剤として使う場合を除く)。

なお、ゼラチンや寒天は、ふつう食品として扱われる。

4-2. 乳化剤

乳化剤は、水と油のように本来混ざり合わないものを、均一に混ぜ合わせる添加物である。一つの分子の中に、水になじむ部分と油になじむ部分の両方をもつ。

物質名主な用途
グリセリン脂肪酸エステル最も多く使われる。パン、菓子、アイスクリーム、ホイップクリーム
ショ糖脂肪酸エステル菓子、飲料、ホイップクリーム
ソルビタン脂肪酸エステルチョコレート、ホイップクリーム
プロピレングリコール脂肪酸エステルケーキ用の起泡剤
レシチン(植物レシチン・卵黄レシチン)チョコレート、マーガリン。大豆や卵黄からつくる(既存添加物)
ステアロイル乳酸カルシウムパン、麺、菓子など。使用基準がある

乳化剤は、混ぜ合わせる働きのほか、泡立ちをよくする、パンや菓子をやわらかく保つ(でんぷんの老化を防ぐ)、チョコレートの流動性を高めるなど、さまざまな目的で使われる。一括名「乳化剤」で表示できるが、大豆や卵黄からつくったものは「乳化剤(大豆由来)」のように、アレルゲンを表示する。

4-3. 膨脹剤

膨脹剤は、加熱によってガス(主に二酸化炭素)を発生させ、生地をふくらませる添加物である。菓子づくりで最もなじみの深い添加物の一つである。

物質名内容
炭酸水素ナトリウム(重曹)加熱すると二酸化炭素を出す。単独で使うと、生地がアルカリ性になり、黄色くなったり、苦味が出たりする。どら焼き、まんじゅう、かりんとう
炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム加熱するとガスとアンモニアを出す。薄い焼き菓子に使う
塩化アンモニウム重曹と組み合わせて使う。イスパタ(イーストパウダー)の成分。蒸しまんじゅうを白く仕上げる
酒石酸水素カリウム、グルコノデルタラクトン、リン酸塩(リン酸二水素カルシウムなど)、焼ミョウバン酸性剤。重曹と反応させて、ガスの発生を調整し、アルカリ性に傾くのを防ぐ

ベーキングパウダーは、重曹に酸性剤と、湿気を防ぐでんぷんなどの分散剤を組み合わせたものである。酸性剤の種類によって、ガスの出方(混ぜたときにすぐ出るか、加熱してから出るか)が変わる。焼ミョウバンはアルミニウムを含むため、アルミニウムを含まないベーキングパウダーも販売されている。

膨脹剤は一括名「膨脹剤」(または「ベーキングパウダー」「ふくらし粉」)で表示できる。

5. 製造・加工に使う添加物

用途主な物質と内容
豆腐用凝固剤塩化マグネシウム(にがりの主成分)、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトン。豆乳のたんぱく質を固める
かんすい炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸塩。中華めんのこしと黄色い色をつくる(アルカリ性)
イーストフード塩化アンモニウム、炭酸カルシウムなど。パン酵母の発酵を助ける
ガムベース酢酸ビニル樹脂、チクルなど。チューインガムの基材
光沢剤シェラック、カルナウバロウ、ミツロウ。チョコレート菓子や糖衣菓子、キャンディーにつやを出す
酵素アミラーゼ、プロテアーゼなど。でんぷんやたんぱく質を分解する。製パン、水あめの製造など
被膜剤酢酸ビニル樹脂、モルホリン脂肪酸塩。果実や果菜の表皮に塗って、水分の蒸発を防ぐ。使える食品が限られる
品質保持剤プロピレングリコール。生めん、ぎょうざ・しゅうまいの皮などに使い、しっとり感を保つ。使用量の制限がある
結着剤ピロリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム。ハム・ソーセージ・かまぼこの保水性と結着性を高める
離型剤流動パラフィン。パンの生地を型や機械からはがれやすくする。パン以外への使用は制限されている
消泡剤シリコーン樹脂。豆腐の製造などで出る泡を消す。加工助剤として表示を省略できることが多い
抽出溶剤ヘキサン。植物から油を抽出するのに使い、最終の食品の完成前に除去する
栄養強化剤ビタミン類、ミネラル類(カルシウム、鉄など)、アミノ酸類。食品の栄養を補う。栄養強化の目的の場合、原則として表示を省略できる

6. 製菓とのつながり

6-1. 菓子に使う添加物の一覧

菓子づくりで使う主な添加物を、用途ごとに整理すると次のようになる。

用途菓子での主な使い方主な物質表示
膨脹剤スポンジ、マフィン、どら焼き、まんじゅう、クッキーベーキングパウダー、重曹、イスパタ一括名「膨脹剤」
乳化剤チョコレート、アイスクリーム、ホイップクリーム、スポンジ(起泡剤)レシチン、グリセリン脂肪酸エステル一括名「乳化剤」(由来の表示)
ゲル化剤・増粘剤ジャム、ゼリー、ムース、ナパージュ、フルーツソースペクチン、カラギナン、ローカストビーンガム用途名を併記
香料バニラ、柑橘、洋酒の風味バニリン、天然香料一括名「香料」
着色料アイシング、マカロン、和菓子の色付け、ゼリークチナシ色素、ベニコウジ色素、赤色3号など用途名を併記(名称に「色」があれば省略可)
酸味料・pH調整剤ゼリー、グミ、フルーツの風味クエン酸、酒石酸一括名
甘味料糖質を抑えた菓子ステビア、スクラロース、ソルビトール用途名を併記
光沢剤チョコレート菓子、ドラジェ、糖衣菓子シェラック、カルナウバロウ一括名「光沢剤」
酸化防止剤揚げ菓子、ナッツを使った焼き菓子ビタミンE、ビタミンC用途名を併記
保存料・日もち向上剤あん、カスタード系のクリーム、和菓子ソルビン酸K、グリシン、酢酸Na保存料は用途名を併記。日もち向上剤は物質名のみ

6-2. 着色料の使い方に注意する

タール色素は、カステラとスポンジケーキには使用できない。これは、カステラやスポンジケーキの黄色が、卵の量や質を示すものであり、着色によって品質をごまかすことができてしまうためである。カステラやスポンジケーキの黄色を濃く見せたい場合でも、タール色素で着色してはならない。

同じ理由で、マーマレードやきなこにもタール色素は使えない。一方、アイシング、マカロン、練り切りなどの色付けには、タール色素や天然の色素が使われる。

製菓用の色素は、どの色素が使われているか(タール色素か、天然の色素か)を確認し、使う菓子の種類に合っているかを確かめる。また、合格証紙のついたタール色素を使う。

6-3. 膨脹剤と菓子の仕上がり

膨脹剤は、菓子の仕上がりを大きく左右する。

使い方結果
重曹だけを多く入れる生地がアルカリ性に傾き、黄色〜茶色に色づき、苦味や独特のにおいが出る(どら焼きやかりんとうでは、この色と風味を生かすこともある)
ベーキングパウダーを入れすぎる生地がふくらみすぎてしぼむ、きめが粗くなる、薬品のような味が残る
イスパタを使う蒸しまんじゅうを白く仕上げられる。アンモニア臭が残らないよう、十分に蒸す

膨脹剤の働きについては、製菓理論の本で詳しく扱う。

6-4. ドライフルーツと漂白剤

干しあんず、レーズン、ドライチェリーなどのドライフルーツには、色を保つために亜硫酸塩(漂白剤・酸化防止剤)が使われていることがある。これを菓子の材料に使う場合、最終の菓子でも色を保つ効果を示しているなら、キャリーオーバーにはあたらず、表示が必要になることがある(第9章参照)。また、亜硫酸塩は、ぜんそくの人などで症状を起こすことがある。仕入れたドライフルーツの規格書を確認しておきたい。

試験対策:よくある間違いポイント

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1ソルビン酸カリウムは、甘味料である

正しくは:ソルビン酸カリウムは保存料

Q2保存料には強い殺菌作用があり、食品中の微生物を死滅させる

正しくは:保存料は微生物の増殖を抑える(静菌)働きで、殺菌作用はほとんどない。殺菌するのは殺菌料

Q3イマザリルは、甘味料である

正しくは:イマザリルは、かんきつ類やバナナに使う防かび剤

Q4調味料は、食品にうま味などを与えるもので、L-グルタミン酸ナトリウムはアミノ酸系の調味料である

この文のとおりです。

Q5アカネ色素は、現在も既存添加物として使用が認められている

正しくは:アカネ色素は、発がん性が認められ、平成16年に既存添加物名簿から消除された

Q6アスパルテームを使った食品には、特別な表示は必要ない

正しくは:アスパルテームを使った食品にはL-フェニルアラニン化合物を含む旨の表示が必要

Q7亜硫酸ナトリウムなどの漂白剤は、ごまや豆類の漂白に使用できる

正しくは:漂白剤はごま・豆類・野菜には使用できない

Q8亜硝酸ナトリウムには、ボツリヌス菌の増殖を抑える働きもある

この文のとおりです。(ニトロソアミンの生成のおそれから、使用量が制限されている)

Q9被膜剤の酢酸ビニル樹脂は、どのような食品にも使用できる

正しくは:被膜剤は果実や果菜の表皮など、使える食品が限られている

Q10豆腐用凝固剤には、にがりの主成分である塩化マグネシウムがある

この文のとおりです。

Q11タール色素は、製品検査を受けなくても販売・使用できる

正しくは:タール色素は製品検査に合格したものでなければ、販売・使用できない

Q12炭酸水素ナトリウムは、豆腐用凝固剤である

正しくは:炭酸水素ナトリウム(重曹)は膨脹剤。豆腐用凝固剤は塩化マグネシウムなど

Q13サッカリンナトリウムは、発色剤である

正しくは:サッカリンナトリウムは甘味料

Q14タール色素は、カステラやスポンジケーキの着色に使用できる

正しくは:タール色素はカステラ、スポンジケーキ、マーマレード、きなこなどには使用できない

Q15着色料の銅クロロフィルは、チョコレートなどに使われる

この文のとおりです。

Q16着色料は、食品中の成分と反応して食品の色調を安定させるものである

正しくは:色調を安定させるのは発色剤。着色料は食品に色をつけるもの

Q17酸化防止剤は、食品に酸素を結合させることで、食品の変質を防ぐ

正しくは:酸化防止剤はそれ自身が酸素と結合することで、食品の酸化を防ぐ

Q18防かび剤(防ばい剤)は、かんきつ類やバナナなどのかびの発生を防止する

この文のとおりです。(OPP・TBZ・イマザリルなど)

Q19発色剤は、それ自体に鮮やかな色があり、食品に色をつける

正しくは:発色剤はそれ自体は無色で、食品の色素と反応して色を安定させる

Q20亜硝酸ナトリウムは、生鮮食肉の色を保つために使ってよい

正しくは:発色剤は生鮮食肉や鮮魚介類には使用できない

Q21離型剤の流動パラフィンは、パンの製造に使われる

この文のとおりです。(パン以外への使用は制限されている)

Q22酸化防止剤は、食品の酸化による品質の低下を防止する

この文のとおりです。(ビタミンE、ビタミンC、BHA、BHTなど)

Q23天然の着色料であれば、鮮魚介類や食肉に使って色を鮮やかにしてよい

正しくは:天然の色素も鮮魚介類・食肉・野菜などには使用できない

Q24亜硝酸ナトリウムは、殺菌料である

正しくは:亜硝酸ナトリウムは発色剤。殺菌料は次亜塩素酸ナトリウムなど

Q25流動パラフィンは、すべての菓子の離型剤として自由に使用できる

正しくは:流動パラフィンはパンの離型剤としての使用に限られている

Q26ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、殺菌料である

正しくは:BHTは酸化防止剤

Q27膨脹剤の炭酸水素ナトリウムは、菓子の製造に使われる

この文のとおりです。(重曹。単独で多く使うと生地が黄色くなり、苦味が出る)

Q28乳化剤は、水と油のように混ざり合わないものを均一に混ぜ合わせる

この文のとおりです。(グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなど)

Q29ソルビン酸や安息香酸などの保存料は、酸性の食品でよく効く

この文のとおりです。

Q30日本では、収穫後の農産物に使うポストハーベスト農薬は、食品添加物(防かび剤)として扱われる

この文のとおりです。
結果:

まとめ

食品添加物は、用途によって働きが大きく異なる。保存料(ソルビン酸、安息香酸、プロピオン酸など)は菌の増殖を抑えるもので、殺菌作用はない。菌を殺すのは殺菌料(次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素など)である。防かび剤(OPP、TBZ、イマザリル)は主に輸入のかんきつ類やバナナに使われ、日本ではポストハーベスト農薬を食品添加物として扱う。酸化防止剤(ビタミンC・E、BHA、BHT)は、自らが酸素と結びつくことで食品の酸化を防ぐ。

色にかかわる添加物では、着色料が色をつけるのに対し、発色剤(亜硝酸ナトリウム)はそれ自体は無色で、食肉製品などの色を安定させる。漂白剤(亜硫酸ナトリウムなど)は色を抜く。タール色素は12種類で、製品検査に合格したものだけが使え、カステラ・スポンジケーキ・マーマレード・きなこなどには使用できない。着色料と発色剤は、生鮮の食肉・鮮魚介類・野菜など、品質をごまかすおそれのある食品には使えない。アカネ色素は発がん性から消除された。

味と香りでは、甘味料(サッカリン、アスパルテーム、スクラロース、ステビアなど。アスパルテームにはL-フェニルアラニン化合物の表示)、調味料(グルタミン酸ナトリウムなど)、酸味料、香料(着香の目的に限る)がある。食感と形では、増粘安定剤(ペクチン、カラギナンなど)、乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル、レシチンなど)、膨脹剤(重曹、ベーキングパウダー、イスパタ)がある。製造・加工には、豆腐用凝固剤、かんすい、光沢剤、被膜剤、品質保持剤、結着剤、パンの離型剤(流動パラフィン)などが使われる。

菓子づくりでは、膨脹剤・乳化剤・ゲル化剤・香料・着色料が欠かせない。とくに、カステラとスポンジケーキにタール色素を使えないことは、菓子をつくる人として必ず知っておきたい決まりである。次章では、食品に意図せずに含まれる有害物質として、カビ毒、有害金属、残留農薬、放射性物質などを学ぶ。

※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

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