食品衛生学 第四部 衛生管理
施設と食品取扱者の衛生管理
はじめに
第四部では、これまで学んだ知識を、毎日の衛生管理としてどのように実践するかを学ぶ。食中毒の原因となる微生物の性質、有害物質の種類、添加物の決まりを知っていても、それが毎日の作業に生かされなければ、食品の安全は守られない。
食品の衛生管理は、大きく施設・設備の管理、食品の管理、人(食品取扱者)の管理の三つに分けられる。本章では、まず施設・設備(建物の構造、温度管理の設備、水、ネズミや昆虫の対策、廃棄物)を、次に食品の取り扱い(保存温度、二次汚染の防止)を、そして食品取扱者の衛生管理(健康管理、検便、手洗い、服装)を学ぶ。
最後に、学校給食や病院、仕出し弁当などの施設のために国が示している大量調理施設衛生管理マニュアルを学ぶ。このマニュアルは、大量調理施設のためのものであるが、加熱温度、冷却の方法、保存温度、検食などの具体的な数値が示されており、菓子店を含むすべての食品施設にとって、衛生管理の目安として役に立つ。
施設や食品取扱者の衛生管理は、次章で学ぶ洗浄・殺菌・消毒、第14章で学ぶHACCPとあわせて、食品の安全を支える土台(一般的衛生管理)となる。
1. 施設・設備の衛生管理
1-1. 施設の基準
食品を扱う営業施設の構造や設備については、食品衛生法にもとづいて施設の基準が定められている。令和3年6月からは、国がすべての業種に共通する基準と業種ごとの基準を示し、それをもとに都道府県等が条例で定めている(営業許可の詳細は、衛生法規の食品衛生法の章を参照)。
1-2. 建物の構造
| 場所 | 衛生的な構造のポイント |
|---|---|
| 床 | 耐水性で、清掃・洗浄しやすい材料(タイル、コンクリート、樹脂塗装など)。排水がよく、水がたまらない。床と壁の境目に丸みをつけると、汚れがたまりにくく掃除しやすい |
| 内壁 | 清掃・洗浄しやすく、耐水性の材料。とくに床に近い部分(床から1m程度)は水や汚れがかかりやすいため、耐水性の材料にする |
| 天井 | ほこりがたまらず、清掃しやすい構造。結露を防ぐ |
| 排水 | 排水溝は清掃しやすく、汚水が逆流しない構造。排水口には網や格子をつけ、ネズミなどの侵入を防ぐ |
| 照明 | 作業面で十分な明るさを確保する。異物の見落としを防ぐ |
| 換気 | 蒸気や熱、においがこもらないよう換気設備を設ける。換気口には網をつける |
| 窓・出入口 | 網戸や自動で閉まる扉を設け、ネズミや昆虫の侵入を防ぐ |
1-3. ドライシステム
調理場の床を常に乾いた状態に保つしくみをドライシステムという。床がぬれていると、はね水で食品が汚染されたり、湿気で細菌やカビが増えたり、すべって転倒したりする。床に水を流して洗う方式(ウエットシステム)より、ドライシステムのほうが衛生的である。床に水をこぼさない作業手順を守り、こぼした水はすぐにふき取ることが、ドライシステムの運用の基本となる。
1-4. 作業区域の区分
調理場の中を、作業の内容によって汚染作業区域と非汚染作業区域に分け、汚れたものから清潔なものへの一方向に作業が流れるようにすると、二次汚染を防ぎやすい。
| 区域 | 主な作業 |
|---|---|
| 汚染作業区域 | 原材料の検収(受け入れ)、保管、下処理(野菜の泥落とし、肉・魚の処理、卵の殻の処理)、食器の洗浄 |
| 非汚染作業区域(準清潔作業区域) | 加熱調理 |
| 非汚染作業区域(清潔作業区域) | 加熱後の調理(冷却、盛り付け、仕上げ)、包装 |
区域を壁や床の色などで分け、区域をまたぐときは、手を洗い、エプロンや履物を替えるなどのルールを決めておく。人と物の動き(動線)が、清潔な区域から汚れた区域へ戻ったり、交差したりしないように配置する。
1-5. 手洗い設備
手洗い設備は、食品の衛生管理の最も基本的な設備である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設置場所 | 作業場の入口、トイレ、作業区域ごとなど、手を洗うべき場所に設ける |
| 大きさ | ひじまで洗える大きさ |
| 水栓 | 手で直接触れずに使えるレバー式、足踏み式、自動式(センサー式)など。手でひねる蛇口は、洗った手で触れると再び汚染される |
| 備品 | 液体石けん、消毒薬、使い捨てのペーパータオルを常に備える。共用の布タオルは使わない |
| トイレ | トイレの個室の中にも専用の手洗い設備を設ける |
1-6. 冷蔵・冷凍設備
冷蔵庫と冷凍庫は、食品の「増やさない」を支える設備である。
- 温度計を設け、温度を毎日確認して記録する
- 冷蔵庫に食品を詰めすぎない(収容量の70%程度が目安)。詰めすぎると冷気が循環せず、温度が下がらない
- 扉の開け閉めの回数と時間をできるだけ少なくする
- 食品の種類ごとに区分して保管し、生の肉や魚は下段に置き、汁が他の食品にかからないようにする
- 定期的に清掃し、霜取りを行う
1-7. 給水の管理
食品の製造に使う水は、水道水または飲用に適する水でなければならない。
| 水の種類 | 管理のポイント |
|---|---|
| 水道水 | 水道事業者が管理している。施設内の貯水槽(受水槽)を経由する場合は、施設側の管理が必要 |
| 貯水槽(受水槽) | 年1回以上清掃する。点検と清掃の記録を残す |
| 井戸水など水道水以外の水 | 年1回以上の水質検査を行い、飲用に適することを確認し、検査の結果を保存する。殺菌装置や浄水装置が正常に動いているか確認する |
| 遊離残留塩素 | 貯水槽や井戸水を使う場合、遊離残留塩素が0.1mg/L以上であることを、作業の開始前と終了後に毎日確認し、記録する |
1-8. ネズミと昆虫の対策
ネズミ、ゴキブリ、ハエなどは、食中毒菌を運ぶとともに、異物の原因にもなる。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 侵入を防ぐ | 窓や換気口に網、排水口に格子をつける。出入口の扉は自動で閉まるものにする。建物のすき間をふさぐ |
| すみかをなくす | 段ボールや不要な物を置かない。食品のくずを残さない。清掃を徹底する |
| 発生を確かめる | 粘着トラップなどを置き、定期的に生息を調査する(少なくとも年に2回程度。発生を確認したら駆除する) |
| 駆除する | 専門の業者に依頼するなど、食品を汚染しない方法で駆除する。殺そ剤や殺虫剤は、食品のそばで使わない |
1-9. 廃棄物の管理
生ごみなどの廃棄物は、ふた付きの容器に入れ、作業場から離れた決められた場所に保管し、こまめに搬出する。容器は定期的に洗浄・消毒する。廃棄物の保管場所は、ネズミや昆虫の発生源にならないよう管理する。
食品の製造や販売で出る食品廃棄物については、食品リサイクル法にもとづいて、発生をおさえることと、肥料や飼料などへの再生利用が求められている。
2. 食品の取り扱い
2-1. 原材料の受け入れ(検収)
原材料を受け取るときは、次の点を確認し、記録する。
- 品質、鮮度、品温(冷蔵品・冷凍品の温度)、期限表示、包装の破損、異物の有無
- 仕入れ先、ロット、受け入れた日時
受け入れたものは、すぐに適切な温度で保管する。段ボールなどの外装は、作業場の中に持ち込まない。
2-2. 保存温度
食品の保存温度には、食品衛生法で定められた基準(保存基準)と、衛生管理の目安がある。
食品衛生法の主な保存基準
| 食品 | 保存基準 |
|---|---|
| 食肉、食肉製品の多く | 10℃以下 |
| 生食用の鮮魚介類 | 10℃以下 |
| 殻付き卵 | 10℃以下が望ましい(表示による) |
| 液卵 | 8℃以下 |
| 凍結液卵 | −15℃以下 |
| 冷凍食品 | −15℃以下 |
大量調理施設衛生管理マニュアルなどで示されている保存温度の目安
| 食品 | 保存温度の目安 |
|---|---|
| 生鮮魚介類 | 5℃以下 |
| 食肉、食肉製品、魚肉練り製品、牛乳、乳製品(チーズ以外)、固形油脂 | 10℃以下 |
| 液卵 | 8℃以下 |
| 凍結卵 | −18℃以下 |
| 冷凍食品、冷凍食肉製品 | −15℃以下 |
| 生鮮果実・野菜 | 10℃前後 |
| 種実類(ナッツ)、チーズ、バター、練乳 | 15℃以下 |
| 穀類加工品(小麦粉・でんぷん)、砂糖、液状の油脂、調味料など | 室温 |
冷凍の温度は、食品衛生法の保存基準では−15℃以下であるが、国際的な規格(コーデックス)や業界の目安、大量調理施設のマニュアルなどでは、品質を保つため−18℃以下が示されているものもある。試験では、どの基準を問われているかに注意する。
冷蔵庫の温度についても、食品衛生法の保存基準の多くは10℃以下であるが、より安全のために、5℃以下など低めの温度で管理するよう示されることがある。
2-3. 二次汚染の防止
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| 器具の使い分け | まな板・包丁などは、肉用・魚用・野菜用・加熱済み食品用などに分けて使う。色分けすると間違えにくい |
| 器具の洗浄・消毒 | 使用後はすぐに洗浄し、熱湯や薬剤で消毒して乾燥させる(第13章参照) |
| 保管の区分 | 生の食品と加熱済みの食品、そのまま食べる食品を分けて保管する |
| 作業区域と動線 | 汚染作業区域と非汚染作業区域を分ける(本章1-4参照) |
| 手洗い | 生の肉・魚・卵を触ったあと、区域をまたぐときなどに手を洗う |
2-4. 先入れ先出し
食品は、先に仕入れたものから先に使う(先入れ先出し)。期限の近いものを手前に置き、古いものが奥に残らないように保管する。
2-5. 解凍と再凍結
冷凍食品の解凍は、冷蔵庫の中や流水などで、食品の温度が上がりすぎないように行う。室温に長時間置いて解凍すると、表面で菌が増える。一度解凍した食品を再び凍結することは避ける。再凍結すると品質が大きく落ち、解凍中に増えた菌もそのまま残る。
3. 食品取扱者の衛生管理
3-1. 「人」は最大の汚染源
食中毒の多くは、食品を扱う人が原因で起こる。黄色ブドウ球菌は人の手指の傷や鼻から(第5章参照)、ノロウイルスは人の便や嘔吐物から(第6章参照)食品に移る。食品取扱者の衛生管理は、食中毒予防の中心である。
食品衛生は、手洗いに始まり、手洗いに終わる
3-2. 健康管理
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 毎日の健康チェック | 作業前に、下痢・嘔吐・腹痛・発熱、手指の化膿した傷、のどの痛みなどがないか確認し、記録する |
| 症状があるとき | 責任者に報告し、食品に直接触れる作業をしない。下痢や嘔吐がある場合は医療機関を受診する |
| 家族の体調 | 家族に下痢・嘔吐の症状がある場合も、責任者に報告する |
| 化膿した傷 | 手指に化膿した傷がある人は、食品に直接触れる作業をしない(手袋をしても、クリームの充填や成形など食品に直接触れる作業からは外れる) |
| 健康診断 | 定期的に健康診断を受ける |
3-3. 検便
検便は、便を検査して、腸管出血性大腸菌、サルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体をもっていないかを調べるものである。検便の最大の目的は、症状のない保菌者(無症状病原体保有者)を見つけることにある(第6章参照)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 目的 | 無症状病原体保有者の発見 |
| 頻度 | 大量調理施設では、月1回以上。10月から3月には、ノロウイルスの検査を含めることが望ましいとされる。その他の施設でも、定期的に行うよう指導されている |
| 雇い入れ時・配置換え時 | 新しく食品を扱う業務に就く前にも行う |
| 陽性の場合 | 三類感染症(腸管出血性大腸菌感染症など)の病原体を保有している場合は、病原体を保有しなくなるまで、飲食物に直接接触する業務に就けない(第6章参照) |
検便は、本人の希望で行うものではなく、食品を扱う人の義務として、定期的に行うものである。
3-4. 手洗い
手洗いは、作業の前、トイレのあと、生の肉・魚・卵を触ったあと、汚染作業区域から非汚染作業区域へ移るとき、ごみや汚れたものを触ったあと、鼻や髪の毛、顔に触れたあとなどに行う。
大量調理施設衛生管理マニュアルでは、次の手順が示されている。
- 水で手をぬらし、石けんをつける
- 指、腕を洗う。とくに、指の間、指先をよく洗う(30秒程度)
- 石けんをよく洗い流す(20秒程度)
- 使い捨てのペーパータオルなどでふく(タオルの共用はしない)
- 消毒用のアルコールを手指によくすりこむ
必要な場合(トイレのあとや、生の食品を扱ったあとなど)は、1〜3の手順を2回くり返す(2度洗い)。
手洗いの前には、時計や指輪を外し、爪を短く切っておく。爪の間は、つめブラシを使って洗う。マニキュアやつけ爪は、はがれて異物になるおそれがあり、汚れも落ちにくいため避ける。
3-5. 服装と身だしなみ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作業着 | 清潔な作業専用のもの。汚れが目立つ白色などの明るい色が望ましい。こまめに洗濯する |
| 作業着での外出 | 作業着のまま外出しない。トイレには作業着のまま入らない(エプロンを外す、トイレ専用の履物に替えるなど) |
| 帽子・ネット | 髪の毛を完全に覆う。前髪や後ろ髪がはみ出さないようにする |
| マスク | 加熱後の食品の盛り付けや仕上げなど、とくに必要な作業では着用する。鼻まで覆う |
| 履物 | 作業場専用の履物を使う。汚染作業区域と非汚染作業区域で履き替える |
| 装飾品 | 指輪、時計、ピアス、ネックレスなどは外す。異物の原因にもなる |
| 使い捨て手袋 | 加熱後の食品やそのまま食べる食品に触れるときに使う。手袋を着ける前にも手を洗う。汚れたとき、作業が変わるときは交換する |
3-6. 作業中の行動
- 作業中に、髪の毛、顔、鼻、口に触れない。触れたら手を洗う
- 作業場で喫煙・飲食をしない。つばを吐かない
- くしゃみやせきは、食品から顔をそむけ、ひじの内側などで口をおさえる
- 作業場に私物を持ち込まない
- 作業場にペットを入れない
3-7. 衛生教育
食品取扱者の衛生管理は、一人一人の知識と意識にかかっている。施設の責任者(食品衛生責任者など)は、従業員に対して、衛生教育を定期的に行い、手洗いや健康管理のルールが守られているかを確認する。新しく働き始める人には、作業に入る前に教育を行う。
4. 大量調理施設衛生管理マニュアル
4-1. マニュアルとは
大量調理施設衛生管理マニュアルは、平成8年(1996年)の堺市の腸管出血性大腸菌O157の集団食中毒などをきっかけに、平成9年(1997年)に国が作成したものである(第3章参照)。HACCPの考え方にもとづき、同じメニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設(学校給食、病院、事業所の給食、仕出し弁当など)に適用される。
4-2. 重要管理事項
マニュアルでは、次の点が重要管理事項として示されている。
- 原材料の受け入れ・下処理段階における管理を徹底する
- 加熱調理食品については、中心部まで十分に加熱し、食中毒菌等(ウイルスを含む)を死滅させる
- 加熱調理後の食品と、非加熱調理食品の二次汚染を防止する
- 食中毒菌が付着した場合に菌の増殖を防ぐため、原材料と調理後の食品の温度管理を徹底する
4-3. 主な数値
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 加熱の条件 | 中心温度75℃で1分間以上。二枚貝などノロウイルスの汚染のおそれのある食品は、85〜90℃で90秒間以上 |
| 中心温度の測り方 | 校正した温度計で、3点以上測る |
| 調理後の食品 | 調理が終わった食品は、2時間以内に食べることが望ましい |
| 冷却 | 加熱調理した食品を冷やす場合は、30分以内に中心温度を20℃付近(または60分以内に10℃付近)まで下げるよう工夫する |
| 保温・保冷 | 調理が終わってから食べるまでの間、65℃以上で保温するか、10℃以下で保冷する |
| 検食 | 原材料と調理済みの食品を、食品ごとに50g程度ずつ清潔な容器に入れて密封し、−20℃以下で2週間以上保存する |
| 検便 | 調理従事者は月1回以上。10月から3月にはノロウイルスの検査を含めることが望ましい |
| 使用水 | 貯水槽や井戸水を使う場合は、遊離残留塩素0.1mg/L以上を、始業前と終了後に確認し、記録する |
4-4. 記録の重要性
マニュアルでは、温度、時間、健康状態、清掃・点検など、さまざまな記録をつけて保存することが求められている。記録は、毎日の作業を確実に行うためだけでなく、食中毒が起きたときに、原因を調べる手がかりになる。
5. 製菓とのつながり
5-1. 菓子店の作業区域と動線
菓子店では、原材料の受け入れから、計量、生地づくり、焼成、冷却、仕上げ、包装、販売までの作業が、小さな厨房の中で行われることが多い。それでも、汚れたものから清潔なものへの流れを意識することはできる。
| 区域 | 菓子店での作業の例 |
|---|---|
| 汚染作業区域 | 段ボールの開封、卵の殻を割る作業、果物の洗浄、器具の洗浄 |
| 準清潔作業区域 | 生地づくり、焼成、カスタードや餡を炊く作業 |
| 清潔作業区域 | 焼き上がった生地の冷却、クリームのデコレーション、カット、包装 |
とくに、卵を割る場所と仕上げの作業台は、できるだけ離し、卵の殻に触れた手で仕上げの作業をしないことが大切である。
5-2. 菓子の材料の保存温度
菓子の材料には、保存温度の異なるものが多い。
| 材料 | 保存温度の目安 |
|---|---|
| 生クリーム、牛乳、ヨーグルト | 10℃以下(できるだけ低温) |
| 殻付き卵 | 10℃以下 |
| 液卵 | 8℃以下 |
| 凍結卵 | −18℃以下(法の基準は−15℃以下) |
| バター、チーズ | バターは冷蔵(チーズとともに目安は15℃以下。風味を保つにはより低い温度で) |
| ナッツ類、チョコレート | 15℃以下の涼しい場所。湿気を避け、密封する |
| 小麦粉、砂糖 | 室温。湿気と虫を避け、密封する |
| 果物 | 10℃前後(種類による) |
| 冷凍の生地、冷凍のフルーツピューレ | −15℃以下(−18℃以下が望ましい) |
5-3. 生菓子の保冷
洋生菓子や和生菓子の冷蔵ショーケースは、温度計で温度を確認し、記録する。扉の開け閉めが多い時間帯や、夏場は温度が上がりやすい。生クリームやカスタードを使った生菓子は、10℃以下を目安に、できるだけ低い温度で保管・陳列する。客が持ち帰る時間を確認し、保冷剤をつけるなど、店を出たあとの温度管理にも配慮する。
5-4. 小さな店の健康管理
従業員が少ない菓子店では、「自分が休むと店が回らない」と、体調が悪くても無理に働いてしまうことがある。しかし、ノロウイルスや黄色ブドウ球菌の食中毒は、一人の従業員から多くの客に広がる。
- 毎朝の健康チェック表をつくり、全員が記入する
- 下痢や嘔吐があるときに、食品に直接触れない仕事(包装材の準備、レジ、洗い場以外の作業など)や、休むことを選べるようにしておく
- 手に傷があるときの作業の分担を、あらかじめ決めておく
5-5. 検食の考え方を取り入れる
菓子店には、大量調理施設のような検食の義務はない。しかし、イベント用や学校・施設向けなど、一度に大量の菓子を納める場合には、製品の一部を冷凍して一定期間保存しておくと、万一の問題のときに原因を調べる手がかりになる。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理食品は中心温度60℃で1分間以上加熱するとされている
Q2検便は、食品取扱者が希望する場合にだけ行えばよく、定期的に行う必要はない
Q3保菌者でないことを確認するために、食品取扱者は定期的に検便を受ける必要がある
Q4大量調理施設衛生管理マニュアルでは、検食は原材料と調理済み食品を50g程度ずつ、−20℃以下で2週間以上保存するとされている
Q5冷蔵庫には、できるだけ多くの食品を詰めて保管するほうが、温度が安定してよい
Q6大量調理施設衛生管理マニュアルでは、加熱調理後の食品を冷却する場合、30分以内に中心温度を20℃付近まで下げるよう工夫するとされている
Q7貯水槽は、年1回以上清掃する
Q8手の爪は短く切り、時計や指輪を外してから手洗いを行う
Q9調理場の床は、常に水を流しておくウエットシステムが最も衛生的である
Q10食品は、先に仕入れたものから先に使う先入れ先出しを励行する
Q11手をふくには、共用の布タオルを使うのがよい
Q12生鮮魚介類は、大量調理施設衛生管理マニュアルでは15℃以下で保存するとされている
Q13大量調理施設衛生管理マニュアルでは、検食は冷蔵庫(10℃以下)で3日間保存するとされている
Q14肉・魚・野菜用のまな板は、それぞれ専用のものを用意する
Q15調理場は、汚染作業区域と非汚染作業区域に分け、汚れたものから清潔なものへ一方向に作業が流れるようにする
Q16作業着は汚れが目立たない濃い色のものを選び、作業着のまま外出してもよい
Q17作業着や履物を着用したまま作業場から出たり、トイレに行ったりしてはならない
Q18製造施設では、衣服や履物は専用のものを使用し、作業着での外出は避ける
Q19床と壁の境目に丸みをつけると、汚れがたまりにくく清掃しやすい
Q20くしゃみや鼻水、皮膚のおできなどには、サルモネラ属菌が多く存在する
Q21冷凍食品は、品質を保つため、一度解凍したものを急速冷凍で再凍結するとよい
Q22腸管出血性大腸菌の保菌者であっても、症状がなければ食品に直接触れる作業をしてよい
Q23手洗い設備の水栓は、手でひねるハンドル式の蛇口が最も衛生的である
Q24水道水以外の水を使用する場合は、年1回以上水質検査を行い、飲用に適することを確認する
Q25食品衛生法で定められた冷凍食品の保存基準は、−25℃以下である
Q26使い捨て手袋をしっかり着ければ、作業前の手洗いは不要である
Q27汚染作業区域では、加熱後の食品の盛り付けや包装を行う
Q28井戸水を使う施設では、遊離残留塩素が0.01mg/L以上あればよい
Q29検便の主な目的は、食品取扱者の栄養状態を調べることである
まとめ
食品の衛生管理は、施設・設備、食品、人の三つの管理からなる。
施設は、耐水性で清掃しやすい床と内壁、床と壁の境目の丸み、排水口の格子、網戸などで、汚れとネズミ・昆虫を防ぐ構造にする。床を乾いた状態に保つドライシステムが望ましい。調理場は汚染作業区域(検収・下処理)と非汚染作業区域(加熱調理、加熱後の調理・包装)に分け、汚れたものから清潔なものへの一方向に作業を流す。手洗い設備はひじまで洗える大きさで、手で触れずに使える水栓と、液体石けん・消毒薬・ペーパータオルを備える。冷蔵庫は温度を記録し、70%程度の収容にとどめる。貯水槽は年1回以上清掃し、井戸水などは年1回以上の水質検査と、遊離残留塩素0.1mg/L以上の確認が必要である。
食品は、検収で品温や期限を確認し、適切な温度で保存する。食品衛生法の保存基準では、食肉や生食用鮮魚介類の多くは10℃以下、液卵は8℃以下、冷凍食品と凍結液卵は−15℃以下である。大量調理施設のマニュアルでは、生鮮魚介類5℃以下、凍結卵−18℃以下、ナッツ・チーズ・バター15℃以下などの目安が示されている。器具の使い分け、先入れ先出し、再凍結をしないことも大切である。
食品取扱者は、毎日の健康チェックを行い、下痢・嘔吐や手指の化膿した傷がある場合は食品に直接触れない。検便は無症状病原体保有者を見つけるために定期的に行う。手洗いは、石けんで指の間・指先まで洗い、ペーパータオルでふき、必要なら2度洗いをする。作業着のまま外出したりトイレに入ったりせず、帽子で髪の毛を完全に覆う。
大量調理施設衛生管理マニュアルでは、中心温度75℃・1分間以上(二枚貝などは85〜90℃・90秒間以上)の加熱、30分以内に20℃付近までの冷却、65℃以上の保温または10℃以下の保冷、調理後2時間以内の喫食、検食50g程度を−20℃以下で2週間以上の保存、月1回以上の検便などが示されている。次章では、器具や手指、食品を清潔にするための洗浄・殺菌・消毒の方法と、食品の保存の方法を学ぶ。
※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

