食品衛生学 第15章:直前総まとめ

第15章

食品衛生学 総まとめ

直前総まとめ

はじめに

本章は、試験の直前に見直すための総まとめである。第1章から第14章までの内容から、試験でよく問われる数値、病因物質の比較、まぎらわしい用語、対応表、そして古い教材と答えが変わったところを整理する。新しい事実は加えていない。くわしい説明は、各行の右にある章で確認してほしい。

食品衛生学は、製菓衛生師試験で60問中11〜15問程度(多くの都道府県で12問)が出題され、製菓理論・実技に次いで出題数の多い科目である。中でも食中毒(原因となる菌やウイルスの性質、潜伏期間、原因食品、予防)は毎年かならず複数問出題される。本章の2の比較表は、とくに時間をかけて確認してほしい。

1. 数値の一覧

1-1. 食中毒の統計(令和7年)

項目数値章
全国の食中毒の事件数1,172件3
全国の食中毒の患者数24,727人3
事件数の1位ノロウイルス(462件)3・6
事件数の2位・3位アニサキス(280件)、カンピロバクター(220件)3
患者数の1位ノロウイルス(18,566人)3・6
患者数の2位ウエルシュ菌(1,260人)3・4
原因施設の1位飲食店(事件数の約56%)3
寄生虫による食中毒305件(うちアニサキス280件)8
自然毒による食中毒47件7

1-2. 加熱・冷却の温度と時間

項目数値章
一般の細菌を死滅させる加熱中心温度75℃・1分間以上2・12
ノロウイルスを不活化させる加熱中心温度85〜90℃・90秒間以上6・12
殻付き卵・未殺菌液卵の加熱殺菌70℃・1分間以上4
芽胞を死滅させる高圧蒸気滅菌121℃・15〜20分2・13
レトルト食品の殺菌中心部120℃・4分間以上5・13
牛乳の殺菌(乳等命令)63℃・30分間、またはこれと同等以上13
高温短時間殺菌(HTST)72℃以上・15秒以上13
超高温瞬間殺菌(UHT)120〜130℃・2〜3秒13
熱湯消毒80℃以上・5分間以上13
エンテロトキシン(黄色ブドウ球菌)100℃・30分でも壊れない5
ボツリヌス毒素が失活する条件80℃・20分、または100℃・1〜2分5
アニサキスが死ぬ条件70℃以上(60℃なら1分)、または−20℃・24時間以上の冷凍8
クドアが死ぬ条件中心75℃・5分間以上、または−15〜−20℃・4時間以上の冷凍8
調理後の冷却(大量調理施設)30分以内に20℃付近(または60分以内に10℃付近)4・12
保温・保冷(大量調理施設)65℃以上、または10℃以下12
食中毒菌が増えやすい温度帯おおむね10〜60℃(最もよく増えるのは30〜40℃前後)2

1-3. 保存温度

項目数値章
食肉・生食用鮮魚介類などの保存基準(食品衛生法)10℃以下12
殻付き卵10℃以下4・12
液卵8℃以下4・12
凍結液卵(食品衛生法)−15℃以下4・12
凍結卵(大量調理施設の目安)−18℃以下12
冷凍食品(食品衛生法)−15℃以下12
生鮮魚介類(大量調理施設の目安)5℃以下12
ナッツ・チーズ・バター(大量調理施設の目安)15℃以下12
検食50g程度を−20℃以下で2週間以上3・12

1-4. 微生物の性質

項目数値章
細菌の大きさ約1μm2
ノロウイルスの大きさ約30〜40nm2・6
増殖に必要な水分活性の下限細菌約0.90、酵母約0.88、黄色ブドウ球菌約0.86、カビ約0.802
ほとんどの微生物が増えない水分活性0.60未満2
多くの食中毒菌が増えにくいpH4.6以下2
大腸菌の世代時間約20分(腸炎ビブリオは約10分)2・4
一般生菌数の測り方標準寒天培地・35℃・48時間2
牛乳の細菌数の規格1mLあたり5万以下2
生乳の総菌数の規格1mLあたり400万以下2
腸炎ビブリオが好む食塩濃度3%前後4
カンピロバクターが好む酸素5〜15%程度(微好気性)2・4
ノロウイルスの感染に必要な量10〜100個程度6

1-5. 消毒と洗浄

項目数値章
次亜塩素酸ナトリウム(器具・ドアノブなど)0.02%(200ppm)6・13
次亜塩素酸ナトリウム(嘔吐物・便)0.1%(1,000ppm)6・13
アルコールの最適な濃度70〜80%程度13
紫外線の殺菌波長260nm付近13
野菜・果実を洗浄剤に浸す時間5分以上浸さない13
すすぎ(流水)野菜・果実30秒以上、飲食器5秒以上13
すすぎ(ため水)水を替えて2回以上13
遊離残留塩素(井戸水・貯水槽)0.1mg/L以上12
貯水槽の清掃年1回以上12
井戸水などの水質検査年1回以上12
冷蔵庫の収容量70%程度まで12

1-6. 添加物・有害物質の基準

項目数値章
指定添加物476品目(令和7年8月25日現在)9
既存添加物327品目(同)9
ADIの安全係数1/100(種差1/10×個人差1/10)9
用途名を併記する添加物8種類9
一括名で表示できる添加物14種類9
不使用表示ガイドラインの類型10類型(令和4年3月)9
タール色素12種類10
総アフラトキシン10μg/kg11
牛乳のアフラトキシンM10.5μg/kg11
小麦のデオキシニバレノール1.0mg/kg11
りんごジュースのパツリン0.050ppm11
魚介類の水銀(暫定的規制値)総水銀0.4ppm、メチル水銀0.3ppm11
米のカドミウム0.4ppm11
ダイオキシン類のTDI4pg/kg体重/日11
残留農薬の一律基準0.01ppm11
放射性セシウム一般食品100、乳児用食品・牛乳50、飲料水10(Bq/kg)11
油脂で処理した菓子の指導基準酸価3をこえ、かつ過酸化物価30をこえないこと/酸価5または過酸化物価50をこえないこと8
シアン化合物を含む製あん用の豆シアン化水素500ppm以下で、生あんの原料に限る7
リステリア(非加熱食肉製品・ナチュラルチーズ)1gあたり100以下4

1-7. 年・日付

項目年・日付章
食品衛生法の制定昭和22年(1947年)1
食品安全基本法の制定(食品安全委員会の設置)平成15年(2003年)1
天然の添加物も指定制度の対象に平成7年(1995年)9
残留農薬等のポジティブリスト制度の施行平成18年(2006年)5月11
HACCPに沿った衛生管理の完全施行令和3年(2021年)6月1日14
自主回収(リコール)の届出の義務化令和3年(2021年)6月14
規格基準・添加物の指定の消費者庁への移管令和6年(2024年)4月1
国立健康危機管理研究機構(JIHS)の発足令和7年(2025年)4月1
器具・容器包装のポジティブリスト制度の完全施行令和7年(2025年)6月1日11
堺市のO157集団食中毒平成8年(1996年)3・4
森永ヒ素ミルク事件昭和30年(1955年)11
カネミ油症事件昭和43年(1968年)11

2. 食中毒の比較表

2-1. 細菌性食中毒

菌型潜伏期間の目安主な原因食品覚えるべき特徴章
サルモネラ属菌感染型6〜72時間(多くは12〜24時間)鶏卵、食肉高熱。ネズミ・ペット・爬虫類も保菌4
腸炎ビブリオ感染型8〜24時間生の魚介類好塩菌(食塩3%)。真水に弱い。増殖が速い。夏4
カンピロバクター感染型2〜7日鶏肉の生食・加熱不足微好気性。少量で感染。ギラン・バレー症候群4
腸管出血性大腸菌感染型(生体内毒素型)2〜9日(多くは3〜5日)牛肉、生野菜ベロ毒素。少量で感染。HUS。三類感染症4・6
ウエルシュ菌感染型(生体内毒素型)6〜18時間カレー・煮物の大量調理偏性嫌気性・芽胞。1件あたりの患者数が多い4
エルシニア感染型半日〜6日豚肉低温でも増える。虫垂炎に似た痛み4
リステリア感染型1日〜数週間ナチュラルチーズ、生ハム低温・高塩分でも増える。妊婦・高齢者4
黄色ブドウ球菌毒素型30分〜6時間おにぎり、シュークリーム、和菓子エンテロトキシン(耐熱性)。手指の化膿巣。嘔吐。発熱ほぼなし5
ボツリヌス菌毒素型8〜36時間いずし、からしれんこん、真空包装食品偏性嫌気性・芽胞。神経まひ。致命率が最も高い。毒素は熱に弱い。E型が多い5
セレウス菌(嘔吐型)毒素型30分〜6時間米飯・麺、餡芽胞。セレウリド(耐熱性)。日本は嘔吐型が多い5
セレウス菌(下痢型)生体内毒素型6〜15時間食肉、スープ下痢毒は熱に弱い5

2-2. ウイルス・寄生虫・自然毒・化学物質

病因物質潜伏期間の目安主な原因覚えるべき特徴章
ノロウイルス24〜48時間調理従事者の手指、二枚貝食品中で増えない。冬。アルコールが効きにくい6
A型肝炎ウイルス2〜6週間二枚貝、水黄疸。四類感染症6
E型肝炎ウイルス平均約6週間豚・イノシシ・シカの生食豚の生食用提供は禁止6
アニサキス数時間〜十数時間サバ・イカなどの生食酢・しょうゆ・わさびで死なない8
クドア数時間ヒラメ24時間以内に回復8
サルコシスティス数時間馬肉冷凍で予防8
フグ毒20分〜3時間フグの肝臓・卵巣テトロドトキシン。加熱で壊れない7
ヒスタミン食後すぐ〜1時間以内赤身魚アレルギー様。加熱で壊れない8

2-3. 「熱に強いもの」と「熱に弱いもの」

熱に強い(加熱しても壊れない・死なない)熱に弱い
黄色ブドウ球菌のエンテロトキシン黄色ブドウ球菌の菌
ボツリヌス菌の芽胞ボツリヌス菌の毒素
セレウス菌の芽胞とセレウリドセレウス菌の下痢毒
ウエルシュ菌の芽胞サルモネラ、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、病原大腸菌の菌
フグ毒、貝毒、毒きのこの毒、ソラニン類ノロウイルス(85〜90℃・90秒で不活化)
ヒスタミン、アフラトキシンアニサキス(70℃以上で死ぬ)

3. まぎらわしい用語の整理

3-1. 行政のしくみ

用語違い章
リスク評価食品安全委員会(内閣府)。科学的に評価する1
リスク管理消費者庁・厚生労働省・農林水産省など。規制や基準を決めて実施する1
リスクコミュニケーションすべての関係者の双方向の情報・意見交換1
規格基準の策定・添加物の指定消費者庁(内閣総理大臣)、食品衛生基準審議会(令和6年4月から)1・9
監視指導・HACCPなど衛生管理の基準厚生労働省(変わらない)1
食品衛生法の目的飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止1
食品安全基本法の目的施策を総合的に推進1

3-2. 微生物

用語違い章
好気性菌酸素が必要(カビ)2
偏性嫌気性菌酸素があると増えない(ボツリヌス菌、ウエルシュ菌)2
通性嫌気性菌酸素があってもなくても増える(大腸菌、サルモネラ、黄色ブドウ球菌)2
微好気性菌少ない酸素で増える(カンピロバクター)2
芽胞をつくる菌ボツリヌス菌、ウエルシュ菌、セレウス菌2
一次汚染原材料がもともともっている汚染2
二次汚染製造・調理の途中でつく汚染2
一般生菌数生きた菌の数2
総菌数死んだ菌も含めた数2
自由水微生物が利用できる水2
結合水微生物が利用できない水2

3-3. 食中毒の型

用語違い章
感染型生きた菌が体内で増えて起こる。潜伏期間が長い。加熱で予防できる3・4
毒素型食品中でできた毒素で起こる。潜伏期間が短い。毒素が熱に強いと加熱で予防できない3・5
生体内毒素型腸の中で菌が毒素をつくる(腸管出血性大腸菌、ウエルシュ菌など)。感染型に含める教材もある3
細菌の予防三原則つけない・増やさない・やっつける3
ノロウイルスの予防四原則持ち込まない・ひろげない・つけない・やっつける3・6

3-4. 添加物

用語違い章
保存料増殖を抑える(静菌)。殺菌作用はない10
殺菌料菌を殺す(次亜塩素酸ナトリウムなど)10
着色料色をつける10
発色剤それ自体は無色。色を安定させる(亜硝酸ナトリウム)10
酸化防止剤自らが酸素と結びつくことで酸化を防ぐ10
漂白剤色を抜く(亜硫酸ナトリウム)10
防かび剤輸入のかんきつ類・バナナのかびを防ぐ(OPP、TBZ、イマザリル)10
指定添加物内閣総理大臣が指定。合成品も天然物も9
既存添加物長い使用実績のある天然の添加物。消除で減っている9
加工助剤最終の食品にほとんど残らない。表示を省略できる9
キャリーオーバー原材料に含まれ、最終の食品で効果を示さない。表示を省略できる9

3-5. 洗浄・殺菌・消毒

用語違い章
消毒病原微生物を殺す。芽胞は残ることがある13
滅菌芽胞を含むすべての微生物を殺す13
静菌殺さずに増殖を抑える(低温保存、保存料)13
中性洗剤洗浄効果はあるが消毒効果はない13
逆性石けん殺菌力は強いが洗浄力はない。普通の石けんと混ぜると効果がなくなる。食品には使えない13
アルコールぬれていると効かない。ノロウイルスに効きにくい13
次亜塩素酸ナトリウムノロウイルスに有効。金属を腐食。汚れで効果が落ちる13

3-6. HACCP

用語違い章
HA危害要因分析14
CCP重要管理点14
モニタリングCCPの管理基準が守られているかをその場で確認する14
検証計画全体が機能しているかを後から定期的に確かめる14
原則1危害要因分析(手順1の「HACCPチームの編成」と取り違えない)14
HACCPに基づく衛生管理大規模な事業者。7原則にもとづく14
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理小規模な事業者(菓子店など)。手引書を参考にする14

3-7. 公害と事故

用語原因物質区分章
水俣病メチル水銀公害(魚介類の生物濃縮)11
イタイイタイ病カドミウム公害(米などの農作物)11
森永ヒ素ミルク事件ヒ素製造中の事故(乳児用粉ミルク)11
カネミ油症事件PCB製造中の事故(米ぬか油)11

4. 対応表

4-1. 自然毒と原因

毒原因間違えやすいもの・注意章
テトロドトキシンフグ(肝臓・卵巣)加熱で壊れない7
サキシトキシンなど麻痺性貝毒(ホタテガイなど)プランクトン由来。死亡することがある7
オカダ酸など下痢性貝毒数日で回復7
テトラミンツブ貝(エゾボラ)の唾液腺唾液腺を取り除く7
シガトキシンなどシガテラ(サンゴ礁の魚)ドライアイスセンセーション7
ビタミンAイシナギの肝臓皮膚がはがれる7
ワックスバラムツ・アブラソコムツ販売禁止7
ソラニン類じゃがいもの芽・緑色の部分加熱で壊れない7
アミグダリン青梅、あんず・びわの種青酸配糖体7
アコニチントリカブトニリンソウと間違える7
コルヒチンイヌサフランギョウジャニンニク、玉ねぎと間違える7
リコリンなどスイセンニラ、玉ねぎと間違える7
ギンコトキシンぎんなん子どもに多い。けいれん7
毒きのこツキヨタケ・クサウラベニタケ・カキシメジ加熱・塩漬けでも毒は消えない7

4-2. カビ毒と食品

カビ毒カビ食品章
アフラトキシンアスペルギルス属ナッツ類、とうもろこし、香辛料、カカオ豆11
デオキシニバレノールフザリウム属(アカカビ)小麦11
パツリンペニシリウム属などりんごジュース11
シトリニンペニシリウム属黄変米11

4-3. 添加物と用途

物質名用途章
ソルビン酸・ソルビン酸カリウム、安息香酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロピオン酸保存料10
次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素殺菌料10
ビタミンC、ビタミンE、BHA、BHT酸化防止剤10
亜硝酸ナトリウム発色剤10
タール色素、β-カロテン、銅クロロフィル、クチナシ色素着色料10
亜硫酸ナトリウム漂白剤10
OPP、TBZ、イマザリル防かび剤10
サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア甘味料10
L-グルタミン酸ナトリウム調味料(アミノ酸)10
ペクチン、カラギナン増粘剤・ゲル化剤10
グリセリン脂肪酸エステル、レシチン乳化剤10
炭酸水素ナトリウム(重曹)膨脹剤10
塩化マグネシウム(にがり)豆腐用凝固剤10
流動パラフィン離型剤(パン)10
酢酸ビニル樹脂被膜剤10

4-4. 異物の分類

分類例章
動物性毛髪、ダニ、昆虫、ネズミの毛11
植物性種子、木片、紙片、糸くず11
鉱物性小石、砂、ガラス片、金属片、陶磁器片11

5. 古い教材と答えが変わったところ

古い教材や過去問を解くときは、次の点に注意する。試験では、受験する年の教材がどの時点の制度にもとづいているかを確認してほしい。

内容古い教材現在(本書)章
規格基準の策定・添加物の指定厚生労働大臣、薬事・食品衛生審議会内閣総理大臣(消費者庁)、食品衛生基準審議会(令和6年4月から)1・9
国の感染症の研究機関国立感染症研究所国立健康危機管理研究機構(JIHS)(令和7年4月から)1
食中毒の事件数の1位カンピロバクター、またはアニサキスノロウイルス(令和7年)3
指定添加物・既存添加物の品目数475品目・357品目など476品目・327品目(令和7年8月25日現在)9
小麦のデオキシニバレノール暫定基準値1.1ppm規格基準1.0mg/kg(令和3年)11
器具・容器包装制度の記載なし合成樹脂のポジティブリスト制度(令和7年6月1日完全施行)11
HACCP総合衛生管理製造過程の承認制度制度は廃止。令和3年6月から原則すべての事業者にHACCPに沿った衛生管理14
水分活性・pH0.50以下で増えない、pH4.5以下0.60未満、pH4.6以下(食品学の本とそろえた値)2
低温保持殺菌65℃30分など63℃30分(乳等命令)13
ボツリヌス毒素の失活80℃30分80℃20分(100℃なら1〜2分)5

6. 製菓とのつながり(振り返り)

本書の各章の「製菓とのつながり」から、菓子をつくる人として必ず覚えておきたいことを振り返る。

テーマ要点章
菓子の特徴加熱したあとに人の手が入る工程が多い。「やっつける」だけでなく「つけない・増やさない」が中心1・3
水分活性と菓子生菓子は細菌、半生菓子はカビ・酵母、焼き菓子は湿気に注意2
卵とサルモネラ生や加熱の弱い使い方には殺菌液卵。割り置きをしない。卵を割ったら手を洗う4
クリームと黄色ブドウ球菌手指の化膿した傷がある人は食品に直接触れない。毒素は加熱で壊れない5
餡とセレウス菌炊いたら浅く広げて急速に冷やす5
はちみつ1歳未満の乳児に与えない。焼いても芽胞は死なない5
ノロウイルス体調の悪い人は作業しない。アルコールだけにたよらない6
種と豆苦扁桃・苦杏仁のアミグダリン。製あん用の輸入豆は生あんの原料に限る7
飾りの葉・花食用として栽培されたものを使う7
揚げ菓子揚げ油の劣化に注意。酸価・過酸化物価の指導基準8
添加物の表示原材料に含まれる添加物も確認する。「無添加」の表示は誤解を招かないように9
着色料カステラ・スポンジケーキにタール色素は使えない10
ナッツ・カカオアフラトキシン。カビが見えたら全体を使わない11
器具・包装食品用として販売されているものを使う11
作業区域卵を割る場所と仕上げの台を離す12
器具の洗浄口金・絞り袋は汚れが残りやすい。洗浄→消毒→乾燥13
HACCP菓子店は手引書による衛生管理。加熱後に手作業が入る菓子(ケーキ、シュークリーム、餅菓子)は二次汚染の防止が重要14

試験対策:ひっかけ問題BEST20

試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。

Q1ノロウイルスの消毒には、アルコールが最も有効である

正しくは:アルコールは効きにくい。次亜塩素酸ナトリウムが有効

Q2食品添加物の指定は、令和6年4月から内閣総理大臣(消費者庁)が行う

この文のとおりです。⚠️ 令和6年3月までは厚生労働大臣。古い教材・過去問ではこちらが正解になっている。

Q3令和3年6月から、原則としてすべての食品等事業者に、HACCPに沿った衛生管理が求められている

この文のとおりです。(小規模な菓子店は、手引書にもとづく「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」)

Q4冷蔵庫で保存すれば、食品中の細菌は死滅する

正しくは:低温は増殖を抑える静菌で、細菌は死滅しない

Q5令和7年の全国の食中毒では、ノロウイルスが事件数・患者数ともに1位であった

この文のとおりです。(事件数462件、患者数18,566人)

Q6消毒とは、芽胞を含めてすべての微生物を死滅させることである

正しくは:それは滅菌。消毒では芽胞が残ることがある

Q7水俣病の原因物質は、カドミウムである

正しくは:水俣病はメチル水銀。カドミウムはイタイイタイ病

Q8芽胞は、100℃で5分間加熱すればすべて死滅する

正しくは:芽胞は100℃でも死滅しにくい。121℃・15〜20分の高圧蒸気滅菌などが必要

Q9一日摂取許容量(ADI)の安全係数は1/10であり、日本ではJECFAがADIを定める

正しくは:安全係数は1/100(種差1/10×個人差1/10)で、日本では食品安全委員会がADIを定める

Q10ヒスタミンは加熱すれば分解されるため、魚を十分に加熱すれば食中毒は防げる

正しくは:ヒスタミンは加熱しても分解されない。魚の低温管理が予防の中心

Q11アニサキスは、食酢やわさびで死滅する

正しくは:アニサキスは食酢・しょうゆ・わさびでは死なない。冷凍か加熱が必要

Q12カンピロバクター食中毒の潜伏期間は、30分〜6時間と短い

正しくは:カンピロバクターの潜伏期間は2〜7日と長い

Q13ノロウイルスは、食品の中で増殖する

正しくは:ノロウイルスは人の腸の細胞の中でだけ増殖し、食品の中では増えない

Q14保存料には、食品中の微生物を殺す強い殺菌作用がある

正しくは:保存料は増殖を抑えるだけで、殺菌作用はない。殺菌するのは殺菌料

Q15腸炎ビブリオは、真水の中でよく増殖する

正しくは:腸炎ビブリオは好塩菌で、真水に弱い

Q16黄色ブドウ球菌がつくるエンテロトキシンは、熱に弱いため加熱すれば壊れる

正しくは:エンテロトキシンは100℃で30分間加熱しても壊れない

Q17大量調理施設衛生管理マニュアルでは、検食を50g程度ずつ、−20℃以下で2週間以上保存する

この文のとおりです。

Q181歳未満の乳児には、乳児ボツリヌス症を防ぐため、はちみつを与えない

この文のとおりです。

Q19逆性石けんは、洗浄力と殺菌力の両方をもつ

正しくは:逆性石けんは殺菌力は強いが洗浄力はない

Q20フグ毒は、十分に加熱すれば無毒化できる

正しくは:フグ毒(テトロドトキシン)は加熱しても壊れない

Q21発色剤は、食品に色をつける添加物である

正しくは:色をつけるのは着色料。発色剤はそれ自体は無色で、色を安定させる

Q22ボツリヌス菌は芽胞が熱に強く、毒素は熱に弱い

この文のとおりです。(黄色ブドウ球菌は、菌が熱に弱く、毒素が熱に強い)

Q23三類感染症の患者と無症状病原体保有者は、飲食物に直接接触する業務への就業が制限される

この文のとおりです。(コレラ・細菌性赤痢・腸管出血性大腸菌感染症・腸チフス・パラチフス)

Q24ウエルシュ菌は、好気性菌である

正しくは:ウエルシュ菌は偏性嫌気性菌

Q25HACCPでは、最終製品の検査を最も重視する

正しくは:HACCPは製造の工程の管理に重点を置く

Q26じゃがいもの芽に含まれる毒は、アフラトキシンである

正しくは:じゃがいもの芽の毒はソラニン類。アフラトキシンはカビ毒

Q27カステラやスポンジケーキには、タール色素を使用できない

この文のとおりです。(卵の黄色など、本来の色が品質の目安になるため)

Q28ノロウイルスを不活化するには、中心温度75℃で1分間以上加熱すればよい

正しくは:ノロウイルスには中心温度85〜90℃で90秒間以上の加熱が必要
結果:

まとめ

食品衛生学は、食品の安全を微生物、化学物質、施設と人の衛生管理の三つの面から学ぶ科目である。

食中毒では、ノロウイルスが事件数・患者数とも最も多く(令和7年)、食品の中では増えず、手指から広がり、アルコールが効きにくい。細菌性食中毒は、生きた菌による感染型(サルモネラ・腸炎ビブリオ・カンピロバクター・腸管出血性大腸菌・ウエルシュ菌など)と、食品中の毒素による毒素型(黄色ブドウ球菌・ボツリヌス菌・セレウス菌嘔吐型)に分けられ、潜伏期間と熱への強さが問われる。自然毒、寄生虫、ヒスタミンの多くは加熱しても壊れない。

化学物質では、食品添加物の指定の制度(令和6年4月から内閣総理大臣)、ADI(無毒性量×1/100)、表示(用途名併記8種類・一括名14種類)、用途の取り違え(保存料と殺菌料、着色料と発色剤)が重要である。有害物質では、アフラトキシン、公害と事故の区別、残留農薬の一律基準0.01ppm、放射性セシウムの基準値を押さえる。

衛生管理では、汚染作業区域と非汚染作業区域の区分、手洗い、検便(無症状病原体保有者の発見)、消毒と滅菌の違い、消毒薬の使い分け、そしてHACCP(7原則12手順、令和3年6月からの制度化)が中心となる。

菓子は、加熱したあとに人の手が入る工程が多い食品である。菓子をつくる人にとって、食品衛生学の知識は、試験のためだけでなく、毎日の作業の中で客の健康を守るための技術そのものである。

※ 本書は、令和8年10月時点の法令・制度、令和7年の食中毒統計にもとづいています。

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