食品学 第一部 食品の成分のはなし
食品学の基礎
はじめに
小麦粉、砂糖、卵、バター、牛乳。菓子をつくる人が毎日手にするこれらの材料は、すべて「食品」である。食品は、それぞれに固有の成分を持ち、加熱や撹拌、時間の経過によって成分が変化し、その結果として色や香りや食感が生まれる。こうした食品の「中身」と「ふるまい」を、科学の目で整理する学問が食品学である。
製菓衛生師試験では、食品学は全体の約10%(60問中6問程度)を占める。出題の中心は、水分活性、色・味・香りの成分、褐変反応、穀類・豆類・卵・乳などの個別食品の特徴、食品の保存と表示、食料自給率である。製菓の材料とそのまま重なる内容が多く、理解すればするほど実技にも役立つ科目である。
本章では、食品学を学ぶための土台として、「食品とは何か」「食品にはどのような働きがあるか」「食品をどう分類するか」を整理し、食品の成分を調べるときの基本資料である日本食品標準成分表の読み方を学ぶ。
本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいて記述する。古い教材と答えが異なる箇所には、試験対策の欄で注意を記す。
1. 食品とは何か
1-1. 食品・食物・料理
日常生活では区別せずに使われることが多いが、食品学では次のように言葉を使い分ける。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 食品 | 天然の動植物、またはそれを加工したもので、有害な物質を含まず、栄養素を1種類以上含み、食べものの材料となるもの | 小麦粉、卵、牛乳、砂糖、りんご |
| 食物 | 食品を調理・加工して、そのまま食べられる状態にしたもの | パン、ゆで卵、ホットミルク |
| 料理 | 食物のうち、味付けや盛り付けをととのえて食卓に出すもの | ショートケーキ、オムレツ |
菓子づくりにあてはめると、薄力粉・卵・砂糖・バターは「食品」であり、それを混ぜて焼き上げたスポンジ生地は「食物」、デコレーションして皿に盛ったケーキは「料理(製品)」にあたる。
なお、法律上の定義は少し異なる。食品衛生法では、食品を「すべての飲食物(医薬品、医薬部外品および再生医療等製品を除く)」と定めている。つまり、法律の上では、生の材料から完成品まで、口に入るものはすべて「食品」として扱われる(詳しくは衛生法規の食品衛生法の章を参照)。
1-2. 食品に求められる条件
ある物が「食品」として利用されるためには、次の条件を満たしている必要がある。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 安全性 | 有害な物質や病原微生物を含まず、食べても健康を損なわないこと。すべての条件の前提となる |
| 栄養性 | 体に必要な栄養素を1種類以上含んでいること |
| 嗜好性 | 色・味・香り・食感などが、人にとって好ましいこと |
| 経済性・生産性 | 安定して生産でき、手に入れやすい価格であること |
| 保存性・流通性 | 一定期間保存でき、運搬・流通できること |
このうち最も大切なのは安全性である。どれほど栄養があり、どれほどおいしくても、安全でなければ食品とはいえない。食品学では安全性を前提としたうえで、栄養性と嗜好性を中心に学ぶ。安全性そのものを詳しく扱うのは食品衛生学である。
1-3. 食品学で学ぶこと
食品学の範囲は広いが、おおまかに次の5つに分けられる。
- 食品の成分:水分、炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル、色・味・香りの成分(第2〜4章)
- 成分の変化:褐変、脂質の酸化、腐敗・変敗など(第5章)
- 個々の食品の特徴:穀類、いも類、豆類、野菜、果実、肉、魚、卵、乳、油脂、砂糖など(第6〜11章)
- 食品の加工・保存・表示(第12章・第13章)
- 食料の生産と消費:食料自給率など(第14章)
ほかの科目との関係は、次のように整理できる。
| 科目 | 中心となる問い | 食品学との関係 |
|---|---|---|
| 食品学 | 食品は何でできていて、どうふるまうか | — |
| 栄養学 | 食べた成分が体の中でどう働くか | 同じ栄養素を、栄養学は「体の側」から、食品学は「食品の側」から見る |
| 食品衛生学 | 食品をどうすれば安全に保てるか | 食品の変質、微生物、添加物、自然毒が重なる |
| 製菓理論 | 材料が菓子の中でどう働くか | 食品学の知識を、菓子づくりの技術に応用したもの |
2. 食品の三つの機能
食品には、安全であることを前提として、次の三つの機能(はたらき)があるとされる。この考え方は1980年代に日本で提唱されたもので、現在では食品を評価する基本的な枠組みになっている。
| 機能 | 名称 | 内容 | 関係する成分・要素 |
|---|---|---|---|
| 一次機能 | 栄養機能 | 生命を維持するために必要な栄養素やエネルギーを供給する | 炭水化物・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラル |
| 二次機能 | 嗜好機能(感覚機能) | 色・味・香り・食感などで、おいしさや満足感を与える | 色素、呈味成分、香気成分、テクスチャー(物性) |
| 三次機能 | 生体調節機能 | 体の調子を整え、病気の予防や健康の維持に役立つ | 食物繊維、オリゴ糖、ポリフェノールなど |
2-1. 一次機能(栄養機能)
食品のもっとも基本的な働きで、体をつくり、エネルギーを生み出し、体の調子を整える栄養素を供給する。栄養素の体内での働きは、栄養学の本で詳しく扱う。
2-2. 二次機能(嗜好機能)
食品が人の感覚(視覚・味覚・嗅覚・触覚・聴覚)に訴え、「おいしい」と感じさせる働きである。菓子は、主食に比べて一次機能よりも二次機能が重視される食品の代表といえる。焼き色、香ばしい香り、さくさくとした食感、なめらかな口どけは、すべて二次機能にかかわる。色・味・香りの成分は第4章で学ぶ。
2-3. 三次機能(生体調節機能)
食品に含まれる成分が、消化器・循環器・免疫・内分泌などに作用し、体の調子を整える働きである。たとえば、食物繊維やオリゴ糖の整腸作用、特定の成分による血圧や血糖値の上昇をおだやかにする作用などがある。三次機能を表示できる食品として、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品がある(第13章参照)。
2-4. 三つの機能の関係
三つの機能は、一つの食品の中で同時に働いている。たとえば、いちごには、ビタミンCを供給する一次機能、赤い色と甘酸っぱい香りでおいしさを与える二次機能、アントシアニンなどのポリフェノールによる三次機能がある。
試験では、二次機能と三次機能の取り違えが繰り返し出題される。「二次=おいしさ(嗜好)」「三次=体の調子(生体調節)」と、番号と内容を正確に対応させて覚える。
3. 食品の分類
食品は非常に種類が多いため、目的に応じてさまざまな方法で分類される。
3-1. 起源による分類
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 植物性食品 | 植物に由来する食品 | 穀類、いも類、豆類、種実類、野菜類、果実類 |
| 動物性食品 | 動物に由来する食品 | 肉類、魚介類、卵類、乳類 |
| その他 | 菌類・藻類、または特定の起源に分けにくいもの | きのこ類、藻類、食塩、調味料 |
きのこ類は植物ではなく菌類であり、藻類も一般的な植物とは区別される。
3-2. 生産のしかたによる分類
| 分類 | 例 |
|---|---|
| 農産食品 | 米、小麦、野菜、果実、豆、さとうきび・てん菜 |
| 畜産食品 | 肉、卵、乳 |
| 水産食品 | 魚介類、藻類 |
| 林産食品 | きのこ、山菜、くり |
3-3. 加工の程度による分類
食品表示の制度(食品表示基準)では、食品を次のように分けている。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 生鮮食品 | 加工していないもの(洗う・切る・冷凍するなどの簡単な処理は含む) | 生の果実、鶏卵、精米、生乳 |
| 加工食品 | 製造または加工したもの | 小麦粉、砂糖、バター、菓子、パン |
| 添加物 | 食品の製造・加工・保存の目的で使用するもの | 膨脹剤、乳化剤、香料 |
小麦粉や砂糖は「材料」として身近であるが、製粉・精製という加工を経ているため、表示の上では加工食品として扱われる。表示の決まりは第13章と、衛生法規の食品表示法の章で扱う。
3-4. 主な栄養素による分類
栄養素の特徴にもとづいて食品をグループに分ける方法として、三色食品群、6つの基礎食品、4つの食品群などがある。これらは食事の組み立てに使う分類であるため、栄養学の本(食事摂取基準と食事の指針の章)で扱う。
3-5. 日本食品標準成分表の18食品群
日本で最も基本となる分類は、次節で学ぶ日本食品標準成分表の18の食品群である。
| 番号 | 食品群 | 製菓材料の例 |
|---|---|---|
| 1 | 穀類 | 小麦粉、米粉、上新粉、白玉粉、コーンフレーク |
| 2 | いも及びでん粉類 | さつまいも、くず粉、コーンスターチ、タピオカ |
| 3 | 砂糖及び甘味類 | 砂糖、黒糖、和三盆、はちみつ、水あめ、メープルシロップ |
| 4 | 豆類 | あずき、こしあん、きな粉、豆乳 |
| 5 | 種実類 | アーモンド、くるみ、ごま、くり、落花生 |
| 6 | 野菜類 | かぼちゃ、にんじん、しょうが |
| 7 | 果実類 | いちご、りんご、レモン、ドライフルーツ、ジャム |
| 8 | きのこ類 | — |
| 9 | 藻類 | 寒天、こんぶ |
| 10 | 魚介類 | — |
| 11 | 肉類 | — |
| 12 | 卵類 | 鶏卵、卵黄、卵白 |
| 13 | 乳類 | 牛乳、生クリーム、ホイップクリーム、チーズ、ヨーグルト |
| 14 | 油脂類 | バター、マーガリン、ショートニング、植物油 |
| 15 | 菓子類 | カステラ、ようかん、ショートケーキ、ビスケット |
| 16 | し好飲料類 | 緑茶、紅茶、コーヒー、ココア、洋酒 |
| 17 | 調味料及び香辛料類 | 食塩、しょうゆ、シナモン、バニラ |
| 18 | 調理済み流通食品類 | 冷凍食品、そう菜 |
試験では、ある食品がどの群に入るかが問われる。とくに次の点がまぎらわしい。
- はちみつは「菓子類」ではなく「砂糖及び甘味類」
- ホイップクリームは「乳類」(乳類の中のクリーム類)
- マーガリン・バターは「油脂類」(バターは乳からつくるが、成分表では油脂類)
- 落花生は植物学的には豆の仲間だが、成分表では「種実類」
- かぼちゃは「野菜類」(果実を食べるが果実類ではない)
分類が意外な食品もあるため、迷ったときは成分表で確かめる習慣をつけるとよい。
4. 日本食品標準成分表
4-1. 成分表とは
日本食品標準成分表(以下、成分表)は、日本で日常的に食べられている食品の成分値を、食品ごとに一覧にした国の公式資料である。文部科学省の科学技術・学術審議会 資源調査分科会が作成・公表している。
成分表は、次のような場面で使われる。
- 学校給食・病院・事業所の給食の献立づくり
- 「日本人の食事摂取基準」にもとづく食事の評価
- 食品の栄養成分表示の計算
- 食料自給率の計算(各品目の重量をカロリーに換算する)
- 栄養や食品の教育・研究
成分表は、食品の成分を知るための「唯一の公的なデータ」と位置づけられている。
4-2. 成分表のあゆみ
| 年 | 版 |
|---|---|
| 昭和25年(1950年) | 初版(日本食品標準成分表) |
| 昭和38年(1963年) | 三訂 |
| 昭和57年(1982年) | 四訂 |
| 平成12年(2000年) | 五訂 |
| 平成27年(2015年) | 2015年版(七訂) |
| 令和2年(2020年) | 2020年版(八訂):収載食品数2,478 |
| 令和5年(2023年) | 八訂 増補2023年(データの更新・追加) |
現在使われているのは、2020年版(八訂)とその増補2023年である。
4-3. 成分表の読み方
成分表の数値には、次のような約束ごとがある。
① 可食部100gあたりの値である
成分値は、食品の可食部(食べられる部分)100gあたりで示される。卵なら殻を除いた部分、りんごなら皮や芯を除いた部分である。
② 廃棄率
食品全体の重さのうち、通常の食習慣で捨てる部分(皮・種・殻・骨など)の割合を廃棄率(%)として示す。たとえば鶏卵の廃棄率は約14%(殻と付着卵白)である。買った重さから可食部の重さを求めるときに使う。
可食部の重さ = 食品全体の重さ ×(100 − 廃棄率)÷ 100
③ 記号の意味
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| 0 | 最小記載量の1/10未満、または検出されなかった |
| Tr(トレース) | 微量。最小記載量の1/10以上、5/10未満 |
| (0) | 測定していないが、文献などから含まれていないと推定される |
| (Tr) | 測定していないが、微量に含まれると推定される |
| − | 測定していない(未測定) |
| ( )付きの数値 | 計算や推定による値 |
たとえば鶏卵のビタミンCは「0」と示されている。卵にビタミンCがほとんど含まれないことは、試験でもよく問われる。
④ 収載されている主な成分
エネルギー、水分、たんぱく質、脂質、炭水化物(利用可能炭水化物、食物繊維など)、有機酸、灰分、無機質(ミネラル)、ビタミン、食塩相当量などが収載されている。アミノ酸、脂肪酸、炭水化物の詳しい組成は、別冊(アミノ酸成分表編・脂肪酸成分表編・炭水化物成分表編)にまとめられている。
4-4. エネルギーの求め方
アトウォーター係数による方法(試験で使う方法)
食品のエネルギーは、エネルギー源となる成分の量に、1gあたりのエネルギー量(エネルギー換算係数)を掛けて合計して求める。19世紀末にアメリカのアトウォーターが示した値がアトウォーター係数である。
| 成分 | 1gあたりのエネルギー |
|---|---|
| 炭水化物(糖質) | 4 kcal |
| たんぱく質 | 4 kcal |
| 脂質 | 9 kcal |
| 水分・ミネラル | 0 kcal(エネルギーにならない) |
計算例(試験の典型):炭水化物50g、水分23g、脂質5g、たんぱく質18gを含む食品
(50 × 4)+(5 × 9)+(18 × 4)= 200 + 45 + 72 = 317 kcal
水分23gは計算に入れない。問題文に水分が書かれていても、それは「計算に使わない数値」である。
製菓での例:クッキー1枚に炭水化物6g、脂質2.5g、たんぱく質0.6gが含まれる場合
(6 × 4)+(2.5 × 9)+(0.6 × 4)= 24 + 22.5 + 2.4 = 48.9 kcal(約49 kcal)
脂質は1gあたりのエネルギーが炭水化物の2倍以上あるため、バターを多く使う焼き菓子は、小さくてもエネルギーが高くなる。
八訂での変更点
成分表2020年版(八訂)では、より実際に近いエネルギー値を示すため、計算のもとにする成分が変わった。
| 項目 | 七訂まで | 八訂 |
|---|---|---|
| たんぱく質 | 窒素量から計算したたんぱく質 | アミノ酸組成によるたんぱく質(4.0 kcal/g) |
| 脂質 | 有機溶媒で抽出した脂質 | 脂肪酸のトリアシルグリセロール当量(9.0 kcal/g) |
| 炭水化物 | 差し引き法による炭水化物 | 利用可能炭水化物(単糖当量)(3.75 kcal/g)など |
| その他 | — | 食物繊維(2.0)、アルコール(7.0)、糖アルコール、有機酸にも係数を設定 |
この結果、多くの食品で、八訂のエネルギー値は七訂より少し低くなった。ただし、製菓衛生師試験の計算問題は、これまでどおりアトウォーター係数(4・9・4)で答える。八訂の方法は「成分表のエネルギーの計算方法が変わった」という知識として理解しておけばよい。
エネルギーの単位はkcal(キロカロリー)とkJ(キロジュール)の両方が示されており、1 kcal = 4.184 kJ である。
4-5. 成分値を使うときの注意
成分表の値は、多くの分析値をもとにした標準的な値であり、実際の食品の成分は、品種、産地、季節、飼料、保存期間、調理の方法などによって変わる。たとえば、牛乳の脂肪分やカロテン量は季節によって変わり、果実の糖度は熟度によって大きく異なる。成分表の値は「目安」として使い、実際の製品の表示には、必要に応じて分析値も用いる。
5. 食品学を学ぶうえでの基本用語
以降の章で繰り返し使う用語を、ここで整理しておく。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 可食部 | 食品のうち、ふつう食べる部分 |
| 一般成分 | 水分、たんぱく質、脂質、炭水化物、灰分の5つ |
| 灰分 | 食品を燃やしたあとに残る無機質(ミネラル)の量の目安 |
| 糖質 | 炭水化物から食物繊維を除いたもの(第3章) |
| 嗜好成分 | 色・味・香りなど、おいしさにかかわる成分(第4章) |
| 変質 | 食品の成分が変化し、品質が低下すること(第5章) |
| 加工食品 | 製造・加工した食品(第12章・第13章) |
6. 製菓とのつながり
6-1. 菓子は「二次機能」の食品
菓子は、主食や主菜に比べて、一次機能(栄養)よりも二次機能(おいしさ)を重視してつくられる食品である。焼き色、香り、つや、口どけ、歯ざわりといった菓子の価値は、ほとんどが二次機能にかかわっている。製菓の技術とは、材料の成分を理解し、二次機能を最大限に引き出す技術であるといえる。
一方で、近年は食物繊維やオリゴ糖を加えた菓子、糖質やエネルギーを抑えた菓子など、三次機能や一次機能に配慮した製品も増えている。食品の三つの機能を知ることは、新しい商品を考えるうえでも役に立つ。
6-2. 材料は「成分のかたまり」
薄力粉はでんぷんとたんぱく質、卵白は水とたんぱく質、バターは乳脂肪と少しの水、砂糖はほぼショ糖である。材料を「成分のかたまり」として見ると、配合を変えたときに何が起こるかを予測しやすくなる。たとえば、卵白の一部を卵黄に置きかえれば脂質が増えて泡立ちにくくなり、砂糖の一部をはちみつに置きかえれば還元糖が増えて焼き色が濃くなる。こうした予測の根拠になるのが、成分表と食品学の知識である。各材料の菓子の中での働きは、製菓理論の本で詳しく扱う。
6-3. 成分表は表示づくりの道具
洋菓子店や和菓子店で包装した菓子を販売する場合、原則として熱量・たんぱく質・脂質・炭水化物・食塩相当量の栄養成分表示が必要になる(小規模事業者などには省略できる場合がある。詳しくは衛生法規の食品表示法の章を参照)。この計算では、配合した材料ごとに成分表の値を使い、焼成による水分の減少を考えて製品100gあたりの値を求めることが多い。成分表の「可食部100gあたり」「廃棄率」の考え方は、ここで直接役に立つ。
6-4. 分類を知ると材料の性格が見える
成分表で、はちみつが「砂糖及び甘味類」、バターが「油脂類」、落花生が「種実類」に分類されていることは、それぞれの材料の性格をよく表している。はちみつは甘味料として、バターは油脂としてふるまい、落花生は豆でありながらナッツのように脂質が多い。分類は単なる暗記ではなく、材料の性格をつかむ手がかりになる。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1日本食品標準成分表は厚生労働省が作成している
Q2食品の三次機能は、体の調子を整え、病気の予防などにかかわる生体調節機能である
Q3成分表2020年版(八訂)では、エネルギーの計算に、アミノ酸組成によるたんぱく質や脂肪酸のトリアシルグリセロール当量などを用いるようになった
Q4小麦粉や砂糖は、食品表示の上では加工食品として扱われる
Q5日本食品標準成分表で、落花生は豆類に分類される
Q6食品の二次機能には、色素成分・呈味成分・香気成分や食感がかかわる
Q7日本食品標準成分表で、マーガリンは乳類に分類される
Q8食品の二次機能は、健康の維持や増進にかかわる生体調節機能である
Q9食品に求められる条件のうち、最も優先されるのは嗜好性である
Q10現在使われている日本食品標準成分表は、2020年版(八訂)とその増補2023年である
Q11食品衛生法では、医薬品・医薬部外品・再生医療等製品を除くすべての飲食物を食品としている
Q12炭水化物50g、水分23g、脂質5g、たんぱく質18gを含む食品のエネルギーは、アトウォーター係数で計算すると409kcalである
Q13日本食品標準成分表の食品群は15群である
Q14日本食品標準成分表で、ホイップクリームは乳類に分類される
Q15アトウォーター係数では、脂質1gあたりのエネルギーは4kcalである
Q16きのこ類は植物性食品である
Q17日本食品標準成分表の成分値は、食品全体(廃棄部分を含む)100gあたりの値である
Q18成分表の記号『Tr』は、測定していないことを表す
Q19日本食品標準成分表で、かぼちゃは野菜類に分類される
Q20食品の三次機能は、栄養素を供給して生命を維持する働きである
Q21日本食品標準成分表で、はちみつは菓子類に分類される
Q22食品の一次機能は、色・味・香りによっておいしさを与える働きである
まとめ
食品とは、有害な物質を含まず、栄養素を1種類以上含み、食べものの材料となるものである。食品には、安全であることを前提に、栄養素を供給する一次機能、おいしさを与える二次機能、体の調子を整える三次機能があり、試験では二次と三次の取り違えが繰り返し問われる。
食品は、起源、生産のしかた、加工の程度、栄養素など、目的に応じてさまざまに分類される。最も基本となるのは、文部科学省が作成する日本食品標準成分表の18食品群であり、はちみつが「砂糖及び甘味類」、バターやマーガリンが「油脂類」、落花生が「種実類」に入る点は、とくに注意が必要である。
成分表の値は可食部100gあたりで示され、廃棄率や記号(0、Tr、−など)の約束ごとがある。現在の成分表は2020年版(八訂)増補2023年で、エネルギーの計算方法が組成にもとづく方法に変わったが、試験の計算問題はアトウォーター係数(4・9・4)で答え、水分はエネルギーに含めない。
菓子は二次機能を重視する食品であり、材料を「成分のかたまり」として理解することが、配合の工夫や栄養成分表示の作成につながる。次章からは、食品の成分を一つずつ見ていく。最初は、すべての食品に含まれ、保存性を左右する「水」である。
※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

