食品学 第一部 食品の成分のはなし
水分と水分活性
はじめに
ほとんどすべての食品には水が含まれている。牛乳はおよそ9割が水であり、しっとりしたスポンジケーキでも3割前後、乾いたクッキーでもわずかに水を含む。食品の中の水は、ただの「量」として存在しているのではない。食品の成分と強く結びついて動けない水もあれば、自由に動きまわり、微生物に利用され、蒸発していく水もある。
この「水の状態」の違いが、食品の日持ち、食感、変質のしやすさを大きく左右する。食品の水の状態を数値で表したものが水分活性(Aw)であり、製菓衛生師試験では、自由水と結合水の違い、水分活性の値と微生物の増殖、塩漬け・砂糖漬けのしくみが毎年のように出題される。
本章では、水そのものの性質から始めて、食品中の水の2つの状態(自由水と結合水)、水分活性の意味と数値、水分活性を下げて食品を保存する方法、そして微生物の増殖にかかわるもう一つの条件であるpHを学ぶ。
1. 水の性質
1-1. 水の分子と水素結合
水は、水素原子2つと酸素原子1つが結びついた分子(H₂O)である。酸素は電子を引きつける力が強いため、水分子の酸素の側はわずかにマイナス、水素の側はわずかにプラスの電気を帯びている。このため、ある水分子の水素と、となりの水分子の酸素が引き合う。この引き合いを水素結合という。
水素結合のはたらきによって、水は分子の大きさのわりに、次のような特別な性質を持つ。
| 性質 | 内容 | 食品とのかかわり |
|---|---|---|
| 沸点・融点が高い | 1気圧で0℃で凍り、100℃で沸騰する | 加熱・冷却の基準になる |
| 比熱が大きい | 温まりにくく冷めにくい | 湯せん・蒸し加熱がおだやかに伝わる |
| 蒸発熱が大きい | 蒸発するときに多くの熱をうばう | 焼成中、生地の水分が蒸発している間は内部の温度が100℃前後にとどまる |
| ものをよく溶かす | 砂糖・食塩・水溶性ビタミンなどを溶かす | シロップ、漬け込み、成分の溶け出し |
| 固体(氷)のほうが軽い | 水素結合ですき間の多い結晶をつくる | 氷が浮く。凍ると体積が約1割増える |
1-2. 水の状態変化
水は温度によって、固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)と状態を変える。氷になると、水分子どうしが水素結合で規則正しく並び、液体のときよりも結びつきが強く、すき間の多い構造になる。このため氷は水より密度が小さく、水に浮く。「氷のほうが水素結合が弱い」という記述は誤りである。
食品を凍らせると、中の水が氷の結晶になって体積が増える。結晶が大きいと細胞や組織をこわし、解凍したときに水分が流れ出る(ドリップ)。急速に凍らせて結晶を小さくする理由はここにある(第12章参照)。
1-3. 食品の水分含量
食品の水分含量は、食品によって大きく異なる。おおよその値(可食部100gあたり、日本食品標準成分表をもとにした目安)を示す。
| 食品 | 水分(約) | 食品 | 水分(約) |
|---|---|---|---|
| いちご | 90% | 練りようかん | 26% |
| 牛乳 | 87% | はちみつ | 18% |
| 鶏卵(全卵) | 75% | バター | 16% |
| 食パン | 39% | 薄力粉 | 14% |
| スポンジケーキ | 32% | ハードビスケット | 3% |
| グラニュー糖 | ほぼ0% |
ここで注意したいのは、水分含量が同じくらいでも、日持ちは同じではないということである。たとえば、はちみつは水分が約18%あるが、常温で長く保存できる。一方、薄力粉は水分が約14%でも、湿気を吸うとカビが生えることがある。日持ちを決めるのは水の「量」だけでなく、水の「状態」である。これを説明するのが、次に学ぶ自由水と結合水、そして水分活性である。
2. 自由水と結合水
2-1. 2つの状態
食品中の水は、成分との結びつき方によって、大きく2つに分けられる。
結合水は、たんぱく質や炭水化物などの成分の表面に、水素結合などで強く引きつけられている水である。成分にしばりつけられているため、自由に動けない。
自由水は、成分と結びついておらず、食品の組織のすき間などで自由に動ける水である。ふつうの水と同じようにふるまう。
2-2. 自由水と結合水の比較
| 性質 | 自由水 | 結合水 |
|---|---|---|
| 成分との結合 | 結合していない(自由に動ける) | 強く結合している(動けない) |
| 凍結 | 0℃付近で凍る | 凍りにくい(−20℃以下でも凍りにくい) |
| 蒸発・乾燥 | 蒸発しやすく、乾燥で除かれる | 蒸発しにくく、乾燥でも除かれにくい |
| 溶媒としての働き | ものを溶かす | ものを溶かさない |
| 微生物の利用 | 利用できる(腐敗・変敗の原因) | 利用できない |
| 化学反応・酵素反応 | かかわる | かかわりにくい |
微生物が増殖や生命活動に使えるのは自由水だけである。自由水が多い食品ほど、微生物が増えやすく、腐敗しやすい。
2-3. 自由水を結合水に変える
食品に砂糖や食塩を加えると、これらが水に溶けて水分子を引きつけ、自由水の一部が結合水に近い状態に変わる。水の総量は変わらなくても、微生物が使える水が減るため、食品は腐りにくくなる。これが砂糖漬け(糖蔵)や塩漬け(塩蔵)のしくみである。
試験では「砂糖漬けや塩漬けは自由水を増やして保存性を高める」という誤った記述がよく出る。正しくは、自由水を減らし、結合水を増やすことで保存性を高める。
3. 水分活性(Aw)
3-1. 水分活性とは
自由水の多さ、つまり「微生物や化学反応が利用できる水がどれだけあるか」を数値で表したものが水分活性である。記号はAw(Water activity)で表す。
水分活性(Aw)= 食品の水蒸気圧(P)÷ 同じ温度の純水の水蒸気圧(P₀)
密閉した容器に食品を入れておくと、容器の中の空気の湿度は、食品の水の状態に応じた一定の値に落ち着く。このときの湿度(平衡相対湿度)を100で割った値が、その食品の水分活性にほぼ等しい。
- 純水の水分活性は 1.00(最大値)
- 食品の水分活性は 0〜1.00 の範囲にある
- 自由水が多いほど1.00に近づき、結合水の割合が多いほど低くなる
水分活性は割合を表す数値であり、最大値は1.00である。「最大値は100」という記述は誤りである。
3-2. 水分活性と微生物の増殖
微生物は、種類ごとに増殖できる水分活性の下限が決まっている。
| 微生物 | 増殖できる水分活性の下限(目安) |
|---|---|
| 一般的な細菌 | 約0.90 |
| 一般的な酵母 | 約0.88 |
| 一般的なカビ | 約0.80 |
| 黄色ブドウ球菌(食中毒菌) | 約0.86 |
| 好塩細菌 | 約0.75 |
| 耐乾性カビ | 約0.65 |
| 耐浸透圧性酵母 | 約0.60 |
この表から、次のことがわかる。
- 微生物の中で、細菌が最も多くの水を必要とし、カビは乾燥に強い
- 水分活性が0.60未満になると、ほとんどの微生物が増殖できない
- 水分活性が低いほど微生物は増殖しにくく、保存性が高い
「水分活性が高いほど微生物は増殖しにくい」は逆であり、頻出のひっかけである。
3-3. 食品の水分活性
主な食品の水分活性の目安を示す。
| 水分活性(目安) | 食品の例 | 増殖できる主な微生物 |
|---|---|---|
| 0.98以上 | 生の肉・魚、果実、野菜、牛乳 | ほとんどの微生物 |
| 0.93〜0.98 | パン、カスタードクリーム、生菓子 | 多くの細菌、酵母、カビ |
| 0.85〜0.93 | 熟成チーズ、生ハム、サラミ | 酵母、カビ、一部の細菌(黄色ブドウ球菌など) |
| 0.60〜0.85 | ジャム、ドライフルーツ、加糖練乳、ようかん、半生菓子 | カビ、酵母 |
| 0.60未満 | はちみつ(約0.6)、ビスケット・クッキー、チョコレート、粉乳、乾燥麺 | ほとんど増殖しない |
3-4. 中間水分食品
水分活性が0.65〜0.85程度の食品を中間水分食品という。水分をある程度含むため、しっとりとやわらかい食感を持ちながら、冷蔵しなくても比較的長く保存できる。ジャム、ドライフルーツ、ようかん、甘納豆、半生菓子などがこれにあたる。
中間水分食品は、砂糖・水あめ・食塩・グリセリンなどを加えて水分活性を下げ、カビ・酵母に対しては包装(脱酸素剤など)や保存料などを組み合わせて保存性を確保していることが多い。
3-5. 加える物質による水分活性の下がり方の違い
水に溶けた物質が水分活性を下げる力は、おおまかにいうと、溶けている分子(またはイオン)の数に関係する。同じ重さを加えた場合、分子の小さいものほど分子の数が多くなるため、水分活性を下げる力が大きい。
| 物質 | 分子の大きさ | 同じ重さでの水分活性を下げる力 |
|---|---|---|
| 食塩 | 小さく、水中でナトリウムと塩化物のイオンに分かれる | 非常に大きい |
| ブドウ糖・果糖(転化糖) | 単糖で、ショ糖の約半分の大きさ | 大きい |
| ショ糖(砂糖) | 二糖 | 中程度 |
| 水あめ(でんぷん分解物) | 大きな分子を含む | 小さめ |
少量でも水分活性を大きく下げられるため、食塩は塩蔵に使われる。菓子では、ショ糖の一部を転化糖やブドウ糖、ソルビトールなどに置きかえることで、甘さを抑えながら水分活性を下げ、しっとり感を保つ工夫が行われる。
3-6. 水分活性と化学反応
水分活性は、微生物の増殖だけでなく、食品の中で起こる化学反応の速さにもかかわる。
| 反応 | 水分活性との関係(目安) |
|---|---|
| 微生物の増殖 | 約0.6以上で起こり、高いほど盛ん |
| 酵素反応 | 水分活性が高いほど進みやすい |
| 非酵素的褐変(メイラード反応) | 中程度(約0.6〜0.8)で最も進みやすい。水が多すぎても少なすぎても遅くなる |
| 脂質の酸化 | 水分活性が極端に低い(約0.2以下)と、かえって進みやすい。中程度(約0.3〜0.4)で最も遅い |
脂質の酸化が、水分の少ない食品でかえって進みやすいことは重要である。揚げ菓子、ナッツ、ポテトチップスのような水分が少なく油脂の多い食品は、「乾いているから傷まない」のではなく、酸化による劣化(油の変敗)に注意が必要な食品である(第5章参照)。
3-7. 等温吸湿曲線
一定の温度で、食品の水分含量と水分活性の関係を表したグラフを等温吸湿曲線(等温吸湿脱湿曲線)という。食品の種類によって曲線の形が異なるため、水分含量が同じでも、食品が違えば水分活性は異なる。前に述べた「はちみつは水分約18%でも日持ちするが、薄力粉は水分約14%でも湿気るとカビる」という違いは、この関係で説明できる。はちみつは糖が水をしっかり引きつけているため水分活性が低く、薄力粉は湿気を吸うとすぐに水分活性が上がる。
4. 水分活性を下げて保存する方法
水分活性を下げることは、食品を保存する基本的な方法の一つである。
| 方法 | しくみ | 例 |
|---|---|---|
| 乾燥 | 水そのものを取り除く | 干し柿、ドライフルーツ、乾燥卵白、粉乳、寒天 |
| 糖蔵(砂糖漬け) | 砂糖が水を引きつけ、自由水を減らす | ジャム、マーマレード、砂糖漬け(コンフィ)、ようかん、甘納豆 |
| 塩蔵(塩漬け) | 食塩が水を引きつけ、自由水を減らす | 塩漬けの桜の花・葉、漬物、塩辛 |
| 冷凍 | 自由水が氷になり、微生物が使える水がなくなる | 冷凍生地、冷凍フルーツ |
| 中間水分食品化 | 糖・グリセリンなどを加えてAwを中程度に下げる | 半生菓子、ソフトクッキー |
冷凍は、低温で微生物の活動を止めるとともに、自由水を氷にすることで水分活性を下げる方法でもある。ただし、冷凍で多くの微生物は死滅しないため、解凍すると再び増殖を始める。保存方法の全体は第12章で学ぶ。
5. pH(水素イオン濃度)
5-1. pHとは
水分活性と並んで、微生物の増殖を左右するもう一つの条件がpHである。pHは、溶液の酸性・アルカリ性の強さを0〜14の数値で表したもので、7が中性、7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性である。
| pH(目安) | 食品の例 |
|---|---|
| 2〜3 | レモン果汁、食酢 |
| 3〜4 | りんご、いちご、オレンジ、ジャム、ヨーグルト |
| 4〜5 | トマト、バナナ、ワイン |
| 6〜7 | 牛乳、卵黄(約6)、多くの野菜、肉、魚、パン、小麦粉 |
| 7〜9 | 卵白(産みたては7.5前後。古くなると二酸化炭素が抜けて9以上) |
| 8以上 | 重曹の水溶液 |
5-2. pHと微生物
| 微生物 | 増殖しやすいpH(至適pH) |
|---|---|
| 多くの細菌 | 中性付近(6.5〜7.5) |
| 酵母・カビ | 弱酸性(4〜6) |
| 乳酸菌・酢酸菌 | 酸性 |
多くの細菌は中性付近でよく増え、酸性になると増えにくくなる。pH4.6以下では、食中毒菌を含む多くの細菌が増殖しにくくなる。一方で、乳酸菌・酢酸菌・酵母・カビは酸性にも比較的強い。
5-3. 酸を利用した保存
食品のpHを下げる(酸性にする)ことで、細菌の増殖を抑えることができる。これが酢漬けの原理である。ピクルスやマリネは、酢によってpHを3〜4程度まで下げている。ジャムに果実の酸やレモン果汁が含まれることも、砂糖による水分活性の低下と合わせて保存性を高めている。
「酢漬けはpHを上げて微生物の繁殖を抑える」という記述は誤りである。
6. 製菓とのつながり
6-1. 砂糖は「水を抱える」材料
菓子に使う砂糖は、甘味をつけるだけでなく、水を引きつけて離さない性質(保水性・吸湿性)を持つ。この性質によって、次のような効果が生まれる。
- 日持ちがよくなる:ジャム、砂糖漬け、ようかん、甘納豆は、糖が自由水を減らして水分活性を下げている
- しっとりした状態が続く:スポンジケーキやカステラは、砂糖が水を抱えることで乾燥しにくい
- やわらかさが続く:求肥は、もち粉に砂糖や水あめを加えて練ることで、時間がたってもかたくなりにくい(でんぷんの老化を抑える。第3章参照)
6-2. 生菓子と焼き菓子の日持ちの違い
カスタードクリームや生クリームを使った洋生菓子、餅や餡を使った和生菓子は、水分活性が高く、微生物が増えやすい。そのため冷蔵保存が必要で、消費期限を表示する。一方、クッキーやサブレのような水分の少ない焼き菓子は、水分活性が低くカビにくいため、賞味期限を表示する(第13章参照)。
ただし、焼き菓子でも、湿気を吸えば水分活性が上がり、食感が悪くなり、カビの原因にもなる。焼き菓子の包装に乾燥剤を入れたり、防湿性の高い袋を使ったりするのはこのためである。また、油脂の多い焼き菓子は、乾燥しているほど脂質の酸化が進みやすいため、脱酸素剤を組み合わせることも多い。
6-3. 組み合わせた菓子での水の移動
水は、水分活性の高いところから低いところへ移動する。タルトの生地にクリームを詰めたり、パイにフルーツをのせたりすると、時間とともにクリームや果実の水が生地に移り、さくさくした食感が失われる。生地の内側にチョコレートやココアバターを塗ったり、焼き込んだりするのは、水の移動を防ぐための工夫である。同じように、焼き菓子どうしを同じ袋に入れる場合も、しっとりしたものと乾いたものを一緒にすると、乾いたほうが湿気る。
6-4. 酸と色・保存性
ジャムやコンフィチュールでは、果実の酸(クエン酸・リンゴ酸)が、pHを下げて保存性を高めるとともに、ペクチンのゲル化を助ける(第8章参照)。レモン果汁を加えるのは、香りづけだけが目的ではない。
試験対策:よくある間違いポイント
試験に出る文です。正しい文(○)と間違った文(×)がまざっています。選んでから答えを確かめてください。
Q1自由水は日常の生活条件(1気圧)では蒸発しない
Q2ジャムの保存性が高いのは、砂糖によって水分活性が下がり、果実の酸によってpHも低いためである
Q3水分含量が同じでも、食品の種類が違えば水分活性は異なる
Q4微生物の増殖に利用されるのは結合水である
Q5結合水の割合が多いと、水分活性は低下する
Q6水分活性(Aw)は、食品の水蒸気圧を純水の水蒸気圧で割った値である
Q7pH3.0〜5.0の酸性域では、多くの細菌が繁殖しやすい
Q8水分活性が高いほど、微生物は増殖しにくい
Q9自由水は結合水と逆の性質をもち、腐敗などが起こりにくい
Q10純水の水分活性は100である
Q11酢漬けは、食品のpHを上昇させることで微生物の繁殖を抑える
Q12微生物の中で、増殖に最も多くの水を必要とするのはカビである
Q13水が氷になると、水分子どうしの水素結合は液体のときより弱くなる
Q14結合水の割合が多いと、水分活性は上昇する
Q15水分活性が0.60未満では、ほとんどの微生物の増殖が阻止される
Q16一般に、水分活性が0.60以下になると微生物が活発に増殖する
Q17乾燥法・塩漬け法・砂糖漬け法は、いずれも水分活性の値を下げて保存性を高める方法である
Q18結合水は自由水に比べて凍結しやすい
Q19塩漬けや砂糖漬けは、自由水を増やすことで保存性を高める方法である
Q20水分の少ない揚げ菓子は、脂質の酸化がほとんど起こらない
Q21一般に、多くの細菌の至適pHは7付近である
Q22結合水は食品中の成分と結合しているため、運動性を持たない
まとめ
食品中の水は、成分と強く結びついて動けない結合水と、自由に動ける自由水に分けられる。結合水は凍りにくく、蒸発しにくく、微生物に利用されない。微生物が利用できるのは自由水だけであり、自由水が多い食品ほど腐敗しやすい。
自由水の多さを数値で表したものが水分活性(Aw)で、食品の水蒸気圧を純水の水蒸気圧で割って求める。最大値は1.00で、値が低いほど微生物は増殖しにくい。細菌は約0.90、酵母は約0.88、カビは約0.80が増殖の下限の目安で、0.60未満ではほとんどの微生物が増殖できない。水分活性は化学反応にもかかわり、メイラード反応は中程度で、脂質の酸化は極端に低い水分活性でかえって進みやすい。
乾燥・糖蔵・塩蔵・冷凍は、いずれも自由水を減らして水分活性を下げる保存法である。糖蔵・塩蔵は自由水を「増やす」のではなく「減らす」方法である点に注意する。また、多くの細菌は中性付近で増えやすく、酢漬けはpHを下げて保存性を高める。
菓子では、砂糖が水を抱えることで、ジャムやようかんの日持ち、スポンジやカステラのしっとり感、求肥のやわらかさが生まれる。生菓子と焼き菓子の日持ちの違い、乾燥剤や脱酸素剤の使い分け、タルト生地が湿気る理由も、水分活性で説明できる。次章では、水以外の成分である炭水化物・たんぱく質・脂質などを、食品の側から見ていく。
※ 本書は、日本食品標準成分表(八訂)増補2023年、令和7年度の食料自給率(令和8年8月公表)、令和8年4月施行の改正食品表示基準にもとづいています。

